忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

暗黒細胞 読書感想

タイトル 「暗黒細胞」(kindle版)
著者 友成純一
文庫 304ページ(紙の本の長さ)
出版社 アドレナライズ
発売日 2013年11月21日


<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・「凌辱の魔界」
・「獣儀式」
・「ナイトブリード」
・「肉の儀式」
・「肉の天使」
・「獣革命」
・「女戦士・フレア伝(1) 邪神殿の少女」
・「人獣裁判」
・「宇宙船ヴァニスの歌」
・「女戦士・フレア伝(2) 絶海の黄金郷(エルドラド)」
・「宇宙船ヴァニスの歌(2) 恐怖の暗黒魔王」
・「女戦士・フレア伝(3) 虚空の要塞島(アルバロン)」
・「殺戮摩幻楼」
・「宇宙船ヴァニスの歌(3) 血飛沫電脳世界」


<< ここ最近の思うこと >>

はるか昔にテレビで『ブロブ/宇宙からの不明物体』っていう1988年のアメリカ映画を観た。
アメリカの田舎町、アーバーヴィルに出現した粘液状の生命体ブロブと人間の戦いを描くSFホラーなんだけど、これがめちゃくちゃグロい。老若男女問わず容赦なくグロ殺食されていく。こんな過激な映画をよく放送できたもんだなぁ。
地上波ロードショーにワクワクが溢れている時代だったよ。

ということで、友成小説の時間です(`・ω・´)
今回はシリーズものではない単発長編モノ。人類に迫る魔族と彼らとの決戦に備える秘密組織「地の塩」、これはなかなかエンタメしちゃいそうな予感。
「まぞく」と言ったらへなちょこほんわかな「まちカドまぞく 2丁目」(22年5月現在)が密かに流行っているけど、こっちの魔族は無慈悲で容赦ないリアル・ガチ・デーモンだぞ。
ではでは、雷雲立ち込めてきた友成純一ワールドへ思い切りダイブしようぜ(=゚ω゚)ノ



<< かるーい話のながれ >>

魔族の襲来と決戦に備えて作られた秘密組織「地の塩」。
ハロウィンで浮かれる夜の東京だが、その地下では間近に迫る魔族を迎撃するための決戦兵器を作り続ける科学者たちがいた。
この兵器が完成するか否かによって人類の未来が決まってしまうのだが、何度実験を繰り返しても兵器は起動しない状況だった。今回の実験がおそらく最後になるであろう。
失敗すれば、決戦兵器は魔族襲来に間に合わず人類は滅ぼされてしまう。

雷雲、人体建築、悪夢、蜘蛛、破壊の女王、三人目、地の塩、新島、魑魅魍魎の巣窟、戦闘行動の開始、死ねば、陰茎バット、悪魔帰還の日、工作員閑話休題、問題は意識だ、猿の腰掛丸、白昼夢だった、肉汁の海、ナパーム弾、私の使命、殺してやる!、魂の悲鳴、手っ取り早いやり方、悪魔払いの呪文、中和、ザマアミロ・・・。

人間の心の隙間に侵入して人格を乗っ取る魔族は、一人また一人と東京に紛れ込んでは大都会にぽっかり空いた無法地帯の町へ潜伏する。
襲来を察知した「地の塩」は長い世代を経て訓練してきた工作員たちを魔族迎撃に向かわせ、同時に街へ自衛隊を派遣し臨戦態勢を整える。
こうして人類VS魔族の戦いは、決戦兵器のないまま始まってしまった。
絶望的な戦力差を前にして、人類は滅亡するしかないのだろうか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///今回のインパクトシーン///
魔族との決戦用兵器である被験体が動き出し歓喜する来栖だったが、次の瞬間には猛毒の体液を浴びて悶絶してしまい、被験体も肉体をどんどん崩壊させてその形を崩していく。
位置№622より。
―――「・・・・・生きてやがるぞ、こいつ・・・・・こんな有り様になって、まだ生きてやがる・・・・・ひょっとすると、これが、こいつの"形〟なのかも知れん・・・・・」―――
ゼリーに包まれた臓物一式で、ソレがぶるぶると脈動してるってこれまたおぞましいモンだねぇ。
形は違うけど映画『サイコゴアマン』のあの少年を想像しちゃったわ。
この部分では来栖も激ヤバ体液の直撃を受けてしまい、皮膚を溶かしながら悶絶するんだけどそこんとこも読んでいてうげぇ~って気分だったよ(笑)
素晴らしきB級ホラー映画のような展開が大好きよ(*´Д`)

もひとつコチラ。
首都を侵食する肉汁を撃退するために出動した自衛隊だったが、魔族の作り出した大量の肉汁に現代兵器が通用するわけがなく、戦車は次々と飲み込まれて人間は生きたまま飲み込まれていく。
位置№2559より。
―――この恐怖は、味わった者でなければ判るまい。―――
暗くて狭い通路の中、あちらこちらで銃声と悲鳴と何かがズルズルと迫ってくる音・・・。
生き残ったとしてもPTSD間違いなしの経験だろうに。
なーんかイメージしやすいなぁって思ったら、こちらは映画『ブロブ』で似たような状況があったのを思い出した。
久しぶりに観てみたくなってきたぞい。

///未来を予言していたかのような展開///
ハロウィンに浮かれる街を走り抜け電車に乗る村越。
彼の自我は魔族に乗っ取られており、隠し持っていた注射器を使い車内の乗客をコッソリと刺しては逃げていく。電車が駅に到着するとき、彼は本性を曝け出した。
位置№708より。
―――村越は、社内で本性をさらけ出した。笑いカワセミに似た、奇声を発した。右腕を高々と振り上げ、目の前にいる吸血鬼カーミラの横面を張った。―――
思わず浮かんできたのが2021年の東京で起きた京王線ジョーカー事件。
この時も東京ではハロウィンでみんな仮装したりしてたよね。
『暗黒細胞』が発売されたのが2016年なんだけど、まるで未来を予知していたかのような展開に驚いたわ。現実ではすぐに犯人を逮捕できたけど、中身が魔族の奴だったら・・・。

///今こそ力を振るう時だぞ工作員たちよ///
魔族との決戦に備えて脈々と己の能力を高めてきた「地の塩」の工作員たち。
渡久呂町に集結した魔族を撃退するために、工作員たちは初めてそれぞれの能力を全力で奮った。
しかしその超人的な攻撃も生ける屍に対しては・・・。
位置№1874より。
―――6号は大真面目な顔でポーズを取り、気張っていた。消失した。渡久呂町の全く別な場所に、腰砕けになって出現した。
でへ、でへ、でへへへへへ。―――
この工作員たちが実に笑わせてくれた。
真面目に頑張っているんだけど、全然役に立たないし目的を見失うし、お前たちは一体何しに来たんだよってツッコミを入れたくなるポンコツっぷり。
とくに6号が酷い。ほんとにどーしようもない女なんだけど、嫌いじゃないむしろ好き(´▽`)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///相変わらずのアナログハイテク描写///
脳髄の間にて、魔族を探すために巨大なネットワークと自身を接続する作業にとりかかる「地の塩」の統領。その方法は金属の塊と化した自身の頭部に、次々とプラグを差し込むことから始まった。
位置№1178より。
―――再び気合い。両拳で、頭を打ちのめす。同時に素早く、プラグを差し換えてゆく。今度は、都内に潜伏する十人の工作員に、渡久呂町進攻をを命ずるためだ。プラグの交換をコンマ一秒で終了すると、キー・ボードに向かった。―――
肉体を機械化してネットワークを思考で管理する技術はあるのに、統領は使用用途によって頭に差し込むプラグを毎回変えなきゃいけないのか・・・相変わらずハイテクなのかアナログなのかわからん(笑)
でも必死でメタルヘッドを叩いたりプラグ差し換えたりする統領の姿はコミカルで和むやん。

///超武闘派看護婦たち///
肝臓の間にて、被験体実験の最中に酷い怪我を負った来栖を必死で治療する看護婦たち。
突然やってきて来栖を起こそうとする統領に対しては我慢していたが、さらにやって来た連絡員に対しては全力で抗議して過剰すぎる鉄拳制裁をしてしまう。
位置№2950より。
―――使いっ走りの口の中が、殺人的なビンタのせいで、切れた。頬の裏側が切れたばかりでなく、左側の歯列が上段も下段も、歯茎の付け根からザックリへし折れていた。―――
なんでただの看護婦たちがこんなに力強いのよ、そしてなんでこんなに暴力的なのよ。
秘密組織の構成員なんだからそれなりに武術一般も習得してるのかな?
それにしたって最後のあの一撃は・・・・・連絡員に同情するよ(´-ω-`)

///6号のその後は一体///
渡久呂町にやって来た工作員の一人である6号。中年女性の主婦である彼女はテレポート能力者なんだけど、技を使うと体液をまき散らすほどの絶頂に達してしまう。
戦いの場で様々なしがらみから解放された6号は、意味もなく全力でテレポートを繰り返す。
渡久呂町を全て飲み込むほどに膨れ上がった肉汁、その中でも6号は現れたり消えたりを繰り返していたのかな?
彼女は果たしているのかいないのか?死んだのか生きてるのか?
おそらく6号はどこにでもいて、どこにもいない存在になってしまったのね。
(『ブギーポップ・オーバードライブ 歪曲王』・・・懐かしいなぁ)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
この世界の成り立ちから現代にいたるまでの説明や、魔族と人類の始まりなど色々な設定がちゃんと語られていたし、なるほど面白いねっていう構想だったから良かった。
(今まで読んだ作品たちの中で一番しっかり作られていた気がする)
それにあらすじを読んでこーゆー場面が読みたいっていうおじさんの期待にしっかり応えてくれた、いやそれ以上の内容だったし。

グロくて顔をしかめる展開の連続かと思いきや、適度にメタ発言やギャグ展開が挟まれていて幕の内弁当的お得感のある作品だと思った。だけど「AH-1S コブラ」の説明はやっぱり長すぎだし間違いなく穴埋めでしょ(笑)
あえて言うなら、エロティックで興奮する描写がほぼなかったことに寂しさを感じました。
(美子は・・・うん、まあ好みは人それぞれだからね)

///話のオチはどうだった?///
決着としてはやけにあっさりしている気がするけど、しっかり最後まで書いてあるから満足かな。
とはいえ、あとがきでこんなこと書かれてたし、言われてみればやっつけ仕事な気もしてくるような?
位置№3442より。
―――特にラストの三分の一くらいは、とにかく枚数を埋めて原稿料を稼ぐために手を動かしただけで、書きながら自分で「こりゃグチャグチャだ、デタラメじゃないか」と思った。原稿に対する集中力を完全に奪われ、落ち着いて原稿を書く余裕は完全に失われていた。―――
いやぁ~でも過去に読んできた作品を思い返してみても、似たり寄ったりな気もするけどね(笑)

エピローグまで読み終えてふと思い出した。
映画『インデペンデンス・デイ』が大ヒットしたころ、学校の先生が映画の爽快なエンディングに対して、「ハッピーエンドに見えるけどこの後の世界が大変なんだ」と言っていた。
当時はなんて捻くれた数学教師だって思ったけど、この年齢になって考えると確かに『暗黒細胞』のエンディングはある意味リアルなのかなぁ~なんて考えちゃったり。
(つーか映画の方は全世界が一斉にボロボロになったんだから、なんだかんだで復興後もあんまし変わんないんじゃないの?と。アメリカが一番国力も残っていたっぽいし。そこが気になるアナタには『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』を)

///まとめとして///
今回も「電子版あとがき」は充実した内容だった。
遣り手銀座ママとの結婚から破局までがみっちり語られている
結婚生活を経て失ったモノ(主に金)もあれば、新しく手に入れてたこともあり、そのおかげで人生は色を変えていく。なるほどな~生きることを全身で楽しんでいるのね、アクティブに動けるのがスゴイわ。
でも二番目の奥さんのせいで小説のクオリティは下がり、我々読者らはその余波を・・・まあいいか(笑)

ただ生きてるだけで息苦しさを感じてしまう毎日だってある。
そんな時くらい不道徳な妄想に耽ってしまうのもしょうがないじゃない。
こんな世の中いっそのこと・・・なんて考えちゃう前に、友成小説読んで澱んだ気持ちを解消しましょ。
破壊と混沌に満ちた妄想のスプラッタ―・ワールド。
その最後のページを閉じた時、あなたの前には美しく優しい世界が広がっているかもよ?
不道徳は頭の中だけで爆発させよう。
厚切り霜降りステーキ・ノンカロリータイプな満読感、今回も頂きました。
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

位置№229より。
―――センター街にしゃがみ込んだり、ペンギン坂の雑居ビルの隙間に立ったりして、再び筆を執った。―――
「『スペイン坂』の上」と「井ノ頭通り」を結ぶ、俗称道路名で「ペンギン通り」と呼ばれる部分はあるみたいだけど、ペンギン坂ってのは見つからなかった。
時代によって呼び方が変わったのかな?

位置№399より。
―――サンバが、いつからかスキャットに変わり、ディスコ・ミュージックに変わり、ワーグナーのオペラと化し、またサンバに戻っている。―――
スキャットとは「ラララ」「ルルル」「ダバディダ」「シュビドゥワ」といった歌詞の代わりに意味のない音声で即興的にメロディーを歌うこと。
 楽器の代りに人の声の擬音を使った演奏でもあるので、楽器を弾かない人も楽しめるらしい。
スキャットと言えばもちろんスキャットマンだけど、最近だとアニメ『ゾンビランドサガ リベンジ』の6号が思い浮かぶ。

位置№434より。
―――「わたしらかい?わたしらは、ギリシャから来たのさ。オイデュプスに運命を告げ、トロイアに死をもたらした、あの合唱隊さ」―――
トロイア戦争の話かな?
調べたけどよくわからないね。


位置№1107より。
―――パネルの周囲に、五人の人間がいた。五人とも、ボディ・ソニックを思わせる、大きな椅子に腰を下ろしていた。―――
ボディソニックとは振動装置が組み込まれたポーチとザブトンクッションで構成された装置。
これらのシステムを使用すると、小音量でも振動ユニットからは臨場感溢れる重低音振動が直接体に伝わり、聴覚障がいの方も音楽をたのしむことができるとのこと。

位置№1317より。
―――「えい、えい、放せ、放さんか!我は、救世主ぞ、このパリサイ人め!予言者は、故郷には入れられぬ!」―――
新約聖書』の中のユダヤ教の一党派。パリサイという名には「分離された者」の意味があるみたい。
彼らのせいで多くのユダヤ人がキリストと福音に対して疑いを抱くようになった、なので主はパリサイ人とその行いとを非難されたらしい。
なんかで既に調べてたような気もするけど、まあいいか。

位置№1813より。
―――「全く母の言う通りじゃ。アメリカのジョウント博士とおっしゃる方がの、それをば証明なさったとか。お前もな、工作員の子供じゃ、祖母も母もテレポートが出来るのに、お前に出来ぬはずがない。ほれ、どうじゃ」―――
ジョウント博士て懐かしい(笑)
詳しくは『虎よ、虎よ!』を読むがヨロシ!

位置№1953より。
―――織田信長を暗殺した明智光秀は"地の塩"の結社員だったし、豊臣方が京都方広寺に奉納した鐘に、"国家安康"の落書をしたのも"地の塩"の結社員である。―――
鐘銘事件とは1614年に再建された京都方広寺大仏殿の釣鐘の銘「国家安康」に徳川家康が難くせをつけ,豊臣秀頼を開戦に追いこんだといわれる事件。
〈家康〉を胴切りにするものと難くせをつけた家康は,これを機会に秀頼の徳川氏への臣従化を迫った、とのこと。

位置№3373より。
―――最後に、本書のキャラクター造形では、荒木飛呂彦氏の『ジョジョの奇妙な冒険』に、多大な影響を受けた。同書より勝手に頂いた名科白も数々あり、大いに感謝しております。―――
あのセリフははその影響だったのね(笑)
気になる方は読むがヨロシ(`・ω・´)

位置№3462より。
―――女の裸を表紙にする本が売れなくなると同時に、宮崎勤事件等の影響で変態猟奇な話が嫌悪されるようになったのだ。―――
宮﨑 勤(1962年 - 2008年)は日本のシリアルキラー
4人の幼女・女児を誘拐し殺害。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の被疑者として逮捕。起訴され死刑判決が確定し執行されている。
この事件のせいで映画・漫画・アニメなどが批判されるようになったのか、ほんとうに酷い事件だよ。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
位置№2681より。
―――数秒後には、陽の光が照りつける下、鬼と相対していた。鬼と真田とは、空中で睨み合った。―――


睨み合い全身に活力を漲らせる両者は、股間のモノもガチガチに張っているとの描写があったけど、さすがに描くのはねぇ(笑)
っていうか鬼を書いていてふと気が付いたんだけど・・・。
これじゃあ「魔人ブウ」じゃないか(;´Д`)
ままま、オマージュだとかリスペクトっていうことでね。

 

暗黒細胞

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