忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

土獏の花 読書感想

タイトル 「土獏の花」(文庫版)
著者 月村了衛
文庫 406ページ
出版社 幻冬舎
発売日 2016年8月5日

f:id:mitemite753kakuyo:20210620172104j:plain f:id:mitemite753kakuyo:20210620172111j:plain


この作者の作品で既に読んだもの
・「機龍警察 〔完全版〕」
・「機龍警察 自爆条項 上」
・「機龍警察 自爆条項 下」

 

<< ここ最近の思うこと >>


以前に読んだ「機龍警察」がとても気に入ったので、他の作品も読んでみたくなった。
だからラインナップを調べてみて一番気になった今作を購入してみることに。
アフリカをテーマにした作品で一番直近に観た作品は「ブラッド・ダイヤモンド」だったね。
劇中でディカプリオが言っていた「TIA」という言葉がずっと頭に残っているのよ。
―――「これがアフリカだ」―――
今回読んだ作品でも語られていた。
―――「これが、これがソマリアの姿です」―――
戦争を経験したことのない自衛隊と平和が消えたアフリカ。
この二つが合わさって作られた物語・・・・・オラワクワクしてきたぞ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

ソマリアの国境付近で活動する陸上自衛隊第一空挺団の精鋭12名。
墜落したヘリの救助要請を受けて現場に駆け付けたのだが、乗員は全員死亡して遺体引き上げ作業も困難なために現場で一泊し、翌日に引き上げ作業をすることにした。

その日の夜、他氏族に命を狙われているので助けてほしいと言う女性達が現れる。
避難民保護の名目で女性達の要望を受け入れる空挺隊員だったが、直後に激しい銃撃を受けた。
彼女らを追ってきた武装集団に全員が捉えられて一斉に処刑されそうになるが、先に自衛隊89式小銃の銃声が響き渡った。
何とかその場を逃げ延びた隊員数名と女性だったが、敵は執拗に追いかけてきて彼らの命を狙い続ける。

捜索救助要請、ビヨマール・カダン小氏族、海外派遣部隊で殉職者、ガソリン、兵員輸送車、雨、唯一の希望、処刑墓地、オアシス、竹とんぼ、アフリカの現実、兄、見捨てられた街、ハムシン、運命はすでに決した、人事を尽くして天命を待つ、倉庫の作戦、クラブタワー、これが最後の花道だ、たった20キロ、タケトンボ、可憐な花の残り香・・・。

武器無し、装備無し、援軍無し、絶望的な状況に置かれた自衛隊空挺団と命を狙われる女性。
生きてジブチ自衛隊拠点基地に辿り着くことが出来るのだろうか!?
(日本とは全く違う土地で、実戦経験の無い自衛隊が巻き込まれる氏族間虐殺・・・・・ある意味これも異世界モノ!?)


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///逃走時の破壊工作は鉄則///
幸運にも敵の兵員輸送トラックを手に入れた友永達。
別ルートをまわって来る新海達を待っていたんだけど、途中で敵に発見されてしまう。
敵から逃げながらなんとか合流した自衛隊員達はトラックに乗って逃げるんだけど、敵も残りのトラックを使って追いかけてくる。
74Pより。
―――「友永、おまえ、あの三台をそのままにしといたのか」―――
さすが新海曹長だ、チャンスを無駄にしない考え方は生き残る為に必要。
おじさんも読んでいて「そういやそうだわな」って納得しました。

///自衛隊内だけじゃない無慈悲な現実///
270Pより。
―――自衛隊にもいじめはある。さらに醜い一面も。だが一介の隊員がどうこうできるような問題ではない。人間社会である限り、それはどこに行っても<在る>ものなのだ。―――
この言葉に共感したね。
程度の差はあれど未来永劫いじめは必ずある、そしてなくならない。
まずそのことを社会全体が認めることが出来たら、そこから程良い対応策が出てくるのではと思った。
被害者が自殺してしまうほど深刻化しない工夫とか対策とか(まあ、言うだけなら簡単なんだけどさ・・・)

///死亡フラグを建て続ける男///
日本に妻と娘がいて、その娘を溺愛していて、自衛隊でも屈指の射撃名手である津久田宗一2曹。
そんな彼は「娘を人殺しの子供にしたくない」という思いが強くて敵を撃てない問題がある。
しかし話が進むにつれて状況は厳しくなっていき、津久田自身も戦わねばならない時がやってくる。
熱く燃え上がれ津久田!!
無事に妻子のいる日本へ帰れることを願うばかりだ(; ・`д・´)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///さすがに元水泳選手でもキビシイ?///
105Pの部分から。
猛烈な雨のせいで濁流となった川にロープを張って渡ろうとする自衛隊員達。
しかし追いついた敵もロープを掴んで最後尾の新海に迫って来る。
敵も味方も状況が悪く射撃も当たらない。そんな中、同じく先頭でロープを掴んでいた市ノ瀬が自ら手を離し水中に沈み込み・・・。
両手でしっかりとロープを掴んでいないと流されてしまうような濁流を泳ぐってのは、人間に可能なの?
でも水中ならばそれほど流れも強くない?・・・・・いやいや、そんなこと無いと思うけど(^^;)
だけど元水泳選手で空挺隊員ならば、あるいは!?

///なぜ放り投げないのか///
331Pの部分から。
味方に向かう敵を少しでも減らすために対人破片手榴弾を持って特攻していく自衛隊員。
敵の状況が良くわかないから強くは言えないけど、手榴弾を投げて使うのは宜しくなかったのかな?
隠し持ったまま特攻して、敵の集団内で爆発させる為なのか?
なんにせよもう少し粘って敵を引き付けておく方法とかは・・・・・難しかったんやろなぁ。

///合気道の描写が想像しにくい///
361Pより。
―――『後ろ両手首取り』―――すべては一瞬のことだった。―――
自衛隊員の朝比奈満雄1曹は合気道をたしなむ強者なんだけど、一体どんな風に動いているのかってことが文章だとやっぱり想像しづらい。
なんとな~くこんな動きなんだろうなぁってことは想像できるんだけど、ほんとうにそんな動き出来るのか?って疑問に思っちゃう・・・・・・なので動画で『後ろ両手首取り』を検索してみた。
う~むむ、実戦でホントにこんなこと出来るのだろうか?
(渋川剛毅さんなら、あるいは・・・・・)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
んもう、最初っから最後までジェットコースター戦闘アクション小説だたよ(゚Д゚)ノ
序盤からすぐに襲撃されて、あとは最後までひたすら戦闘&逃走の特盛展開。
読んでいてず~っとハラハラドキドキしちゃうから大変よ。でも楽しいからヨシ!

基本的に逃げ続ける空挺隊員達だけの視点で物語は語られるから、よくある上層部の駆け引き場面とか国で夫の帰りを待つ妻子の描写だとか、退屈になりそうな場面が無かったのがとても良かった。
(個人個人の回想エピソードはちょこちょこっとあったけど、まったく苦にならないレベルだし)

///話のオチはどうだった?///
なぜこの小説が推理大賞をとったのか不思議だったけど、最後まで読み終えたらその理由がわかった。
捜索チームは何故いつまで経っても来ないのか?そこがポイントだった訳ね。
(とはいえ推理小説なのか?と聞かれたらNOと答えてしまうくらいアクションエンタメ小説だったけど)

それにしても最後の場面は気に入ったなぁ(*´▽`*)
頭の中に流れてくるのは映画「ボディーガード」のあの曲だよ。
叶うことのない儚い想いかぁ・・・切なくさせるラストにハートブレイクされちゃったわ。

///まとめとして///
「土獏の花」を実写映画で観てみたい!!
でも日本が作ると間違いなく家族や恋人とのコテコテ愛情演出がモリモリになっちゃうんだろうなぁ。
第一空挺師団メンバーに何故かオリジナルの女性キャラが追加されてたり・・・。

いやでも、いつか日本制作で「ブラックホークダウン」みたいなガチのアクション大作映画を作れる時がきっと来る!
今は「戦国自衛隊1549」が精一杯だとしても、未来を信じて待ってみよう。
アスキラも言っていたじゃないか。
―――「土獏では夜明けを待つ勇気のある者だけが明日を迎える」―――

読み応え抜群!!
これぞ和製「ティアーズ・オブ・ザ・サン」って訳じゃないけど(笑)
読まなきゃ損だよ満読感95点!!
さぁ~て、次はなにを読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

「土獏の花」は第六八回日本推理作家協会賞受賞作品です!

132Pより。
―――「ダロッド氏族系のモハメド・シアド・バーレによる独裁政権時代、多くの人々が虐殺されました。集団処刑です。彼らはあちこちに穴を掘り、死体を無造作に埋めました。」―――
「モハメド・シアド・バーレ」
ソマリ族が1つの国家のもとに集結すべきという大ソマリ主義を掲げてソマリ族の民族意識を煽った結果、1977年にエチオピアのオガデン地方に住むソマリ人が大ソマリ主義に共感し、分離独立を求めてエチオピア政府に対し反乱を起こした。
この紛争がソマリアの窮乏化を加速させたにもかかわらず、バーレ大統領はソマリ社会主義革命党による一党独裁体制のもと、自分の属する南部のマレハン氏族のみを重用し、北部のイサックなど他の有力氏族を見捨てるような政治運営を行った。

160Pより。
―――少なくとも今は、他人の干渉は逆効果となりかねない。アスキラの洞察は正鵠を射ている。―――
「せいこく」
弓の的の中心にある黒点のこと。
意味は物事の急所・要点ってことみたい。

305Pより。
―――右足首の痛みは増す一方だった。こうしている間にもどんどん腫れていくのが靴の上からも感じられた。防暑靴を脱いで状態を確かめようと思ったが、やめた。―――
「防暑靴」
戦闘靴防暑3型官品仕様のモノだと、・静電仕様・耐踏抜き・372種類の菌を抑制するコーキンマス・静電、Ag消臭、フィツト性の高い3層構造ター・内サイドに2つの換気ハトメ・ファイバーシャンクなどなど、とにかくワークマンもびっくりな性能!!
通販で買うと3万円くらいするっぽい?

347Pより。
―――赤いベレー帽。ひしゃげたように潰れた鼻。双眼鏡を通してはっきりと見た魁偉な容貌と体格。間違いない―――
「かいい」
顔や体が人並はずれていかつい様子。

387Pより。
―――自分も仲間の消息が途絶えたと知ったなら、なぜすぐ捜索に動かないのかと切歯扼腕し、居ても立ってもいられなかったに違いない。―――
「せっしやくわん」
はなはだしく怒り、非常にくやしく思うことの形容ってことらしい。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラ↓のシーンを描いてみた。
290Pより。
―――アスキラの手を取って走り出すと同時に、背後で爆発が起こった。衝撃に足がよろめき、凄まじい爆風と熱が背中を炙る。アスキラを連れ、地雷の仕掛けられていない通りの端を必死に走る。PG-7弾頭が次々に着弾し、立ち並ぶ店舗をかたっぱしから吹っ飛ばす。―――

f:id:mitemite753kakuyo:20210620172119p:plain
飛んでいるRPGの画像を探して「ブラックホークダウン」の画像を見たりしていたら、なんと噴射口がもうちょっと真ん中あたりだっただと!?
気づいたところで今更修正もできず・・・・・おじさんの気力はダウンしたよよよ(;´∀`)