忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

機龍警察 暗黒市場 下  読書感想

タイトル 「機龍警察 暗黒市場 下 」(文庫版)

著者 月村了衛
文庫 336ページ
出版社 早川書房
発売日 2020年12月3日

 



<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・「機龍警察 〔完全版〕」
・「機龍警察 自爆条項 上」
・「機龍警察 自爆条項 下」
・「土獏の花」
・「機龍警察 暗黒市場 下 上」


<< ここ最近の思うこと >>

はぁ~あ・・・気分は低空飛行を保ったままだわよ。
だって今日で2021年のお盆休みが終わってしまうんだから。
日数一桁だけの夏休みなんて短すぎるわ、ロシアみたいに一カ月くらい頂戴よ(ノД`)・゜・。

そんな昨今の世界的ニュースから。
ネット目にした情報によると、アフガニスタンから撤退する米軍が放棄していった兵器を、タリバン軍が回収して使用しているって話題になっていた。
米軍的には重くてかさばる物資は置いていったほうが輸送コストもかからないし、次の予算的な問題も解決されるとかなんとか・・・真相はどうだかわからないけど、理屈的には間違いではないっぽい?

兵器と金、犯罪と経済活動、善と悪、どれもこれも紙一重で相似しているのかねぇ。
てなわけで「機龍警察 暗黒市場 下巻」にいってみようぜ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

ブラックマーケットで龍機兵が出品されるという情報を確かめるべく、取引会場にやってきたユーリ。
何とかして会場の場所を本部に知らせようと強引な行動に出るが、敵に見つかってしまい正体が明らかになってしまう。
バイヤー達はユーリをすぐに処刑するのではなく、新型機甲兵装の対戦相手として戦わせて、その勝敗で賭博をすることにした。

絶望的な状況の中でユーリは自信を鼓舞する。
―――生きろ。生き延びろ。あと少し、ほんの少しだけでいい。生の側にしがみついてさえいれば。今すぐにも宮城県警が突入してくるはずだ―――

悪魔的な口調、フーイーバン、あの刺青の意味、悪夢の張本人、僅かな違和感、敵、キキモラ、セブンサムライ、ストロギノ市民ホール、試合開始の時間だ、ゾロトフの法の裁き、打つ手はない、ダムチェンコ、闇の底へ、厄介な影、理解不能の行動だ、班長、道は一つしかなかった、灼熱の地獄、七番目の条文、やるしかない、恐ろしいまでの狡猾さ、力強い技、犯罪が経済現象とは、郷愁と悔悟を呼び覚ます情感に満ちた曲・・・。

新型機甲兵装のキキモラは、本当に特捜部と同じ機龍兵なのか?
シェルビンカ貿易事件の真相は?
孤立無援の中で必死にもがき続けるユーリ、果たして警察の救援は間に合うのか?

落ちぶれた犯罪者の息子ゾロトフと優れた警察官の息子ユーリ。
影と灯火の相似した人生を送ってきた二人の結末は如何に・・・。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///よく聞く話で現実味があるのが怖い///
ルイナクの支配人を追いかけていった先で、人気の無い山中に建つ豪邸を見つけたユーリ。
警察がその建物の詳細を調べてみたところ、そこは外国企業名義の私有地であった。
213Pより。
―――日本の山林が中国をはじめとする外国に密かに買い取られているという事例は以前から頻発している。ほとんどが人の入らない、従って買い手もつかない無価値な裏山なので、誰も気に留めぬうちに売買は進行する。その中には日本人犯罪者グループによる詐欺事案も相当数含まれているという。―――
日本国内の買い手もつかない土地を外人が買う理由・・・これフィクションだし何言ってんの(笑)
って冗談として笑い飛ばしたいけれど、不安と恐ろしさのほうが勝っちゃうわ。
怪しい場所には近寄らない、肝に銘じておこう。

///機甲兵装のディーラーオプション///
新型機甲兵装を追って、雪の山中を進んできた姿は敵に追いついたのだが、その新型は見たこともない兵器を装備していた。
254Pより。
―――その用途として考えられるのは、まず無差別の掃討。つまり民間人の虐殺―――民族浄化だ。こんなモノが商品化されていたのか―――
武器密売で取り扱われる商品で、兵器や武力を相手にした物ではなく圧倒的弱者を効率的に殺戮していくための兵器が用意されているとは・・・・・恐ろしすぎる。
そして遂に機甲兵装専用の火器が登場する場面でもあるから、熱盛だぜい。
精神的にも体感的にも燃えそうだは。

///早すぎる反応速度への対抗策///
キキモラと近接戦闘をする姿は初めて戦う相手の速さに苦戦をするが、機甲兵装のスペシャリストである姿は未知の敵に対しても冷静に観察をして、その対抗策を見つけ出した。
263Pより。
―――マスター・スレイブ方式である分、キキモラは機体の自律と搭乗者の操縦との境界が最大限まで曖昧になっているだけだ。
だとすればおまえは龍機兵の敵じゃない―――
う~んこれはもう映画「沈黙シリーズ」のスティーブン・セガールを思い浮かべちゃう。
あの戦い方はカッコイイよね。
男の子なら誰でも一度は、刃物的な棒的なモノを持ってあの真似をしてしまうのは当然。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///エルティアノ湖と同じ感じかな?///
ルイナクの会場へ向かう最中の車内にて、会話をするユーリとゾロトフ。
28Pより。
―――「元はウクライナの昔話に出てくる化け物らしい。見たまんまの『骸骨女』って妖怪だ。―――
ウクライナの昔話とか、骸骨女っていう妖怪でネット検索してみたけどそれらしいものは見つからず。
これはあれか、前作『機龍警察 自爆条項』にて語られたあの湖と同じ扱いかな?

ちなみに新型機甲兵装の「キキモラ」は、スラヴに伝わる「キキーモラ」っていう働き者の味方とされる謎の多い幻獣ではないかと。
キキーモラの名は、語源的には「キキー」と「モーラ」に分けることができ、前者の意味は不明で、さまざまな説が唱えられており、「キーキー」という擬音語からという考え方が有力みたい。
後者の「モーラ」はスラヴ人の民間伝承に登場する吸血夢魔モーラとのこと。

///技名が分かればもっと理解しやすいかも///
動けないバーゲストに格闘攻撃を繰り返すキキモラ、肉体的も限界に達したユーリは絶体絶命の状況。
284Pより。
―――OMON隊員から教わった固め技だ。それはかつて、ベドヌイの店で暴れるゾロトフの父ネストルを押さえ込んだ父ミハイルの技でもあった。―――
調べてみるとそれっぽいのは縦四方固めなのかな?
この技をかけた時に相手も同じように締め上げてきたらどうなったんだろ?
機甲兵装同士の戦いだったら、装甲強度の高いほうが勝つのかね(?_?)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
上巻から引き続いて、ルイナクの開催から事件解決に至るまでまでみっちり描かれていた。
今回も姿の珈琲コーナーがあったんだけど、相手はライザだと予想していたら前回と同じくユーリだったから軽い驚き。
まあ寡黙すぎるライザ相手では、さすがの姿もやりづらいのかもね(;^ω^)

それにしても下巻ではユーリが大活躍、というか瀕死になるまで大奮闘しまくりだったわ。
ジョン・マクレーン警部よりもズタボロの瀕死状態になってたと思う。
人間も機甲兵装もたっぷり動き回る内容だったから大満足ですたい。

///話のオチはどうだった?///
今この瞬間にもネット上で取引が行われている暗黒市場。
犯罪と取締りの現状がなんとも不安な気持ちにさせられるわ。
298Pより。
―――情報メディアとテクノロジーの発達した現代において、犯罪はやすやすと国境を越えて進化するが、司法と政治の意識はそうはいかない。国際犯罪の飛躍に対し、国際捜査の態勢はまるで追いついていないどころか、むしろ捜査を阻害する方向に作用している。―――
機動警察パトレイバー』で後藤隊長が語っていた風邪と風邪薬のお話が思い出されるよよよ。

そしてユーリとゾロトフの関係。
これをなんと言えばいいのか、友情なんてものではないしでも憎しみ合っている訳でもない。
善と悪のように相似した人間である二人は一片同士の心臓。
相反するモノだからといって切り取ることなんて誰にもできない・・・・・だけど運命は最後に二人を対峙させた。
前回と同じく、上巻の最初に書かれていたアレクサンドル・イサーエヴィッチ・ソルジェニーツィンの言葉が改めて胸に染み込んできたね。
(ちなみに↑の人はソビエト連邦時代の作家、劇作家、歴史家とのこと)

///まとめとして///
いやぁ~、今回もめっちゃ楽しめちゃいましたわ。
特に下巻の中盤からどんどん加速していく白熱怒涛の展開!たまらんね(`・ω・´)
この『機龍警察 暗黒市場』でシリーズ三作目になるけれど、今のところ全部ハズレなしだよ。

そんでもって読み終わった今、どうしても聞きたくなるのはあの曲。
そうですこれです『スタンド・バイ・ミー』だよね。
映画とこの小説が似ているとは思えないけど、子供だった頃を思い出す時に感じる青春の残滓は、誰でも似たような味なんじゃないかと思う。
―――僕の側にいてくれよ―――
年を取って中年になった今だからこそ、この気持ちはよくわかる気がする。
ってな感じでらしくもない思いを綴っちゃうほどのめり込んで熱読したから満読感9点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

前回に続き改めて、『機龍警察 暗黒市場』は第34回吉川英治文学新人賞受賞作なのです!

19Pより。
―――しかしユーリの脊髄に挿入されている龍髭は、金属製ではなく高分子化合物(ポリマー)の一種だ。龍骨-龍髭間の連絡にはEPR相関が応用されており、電磁波通信とも無関係である。―――
量子力学の記述の完全性に関する思考実験で示されたパラドックスで、これを提唱したアインシュタインポドルスキー、ローゼンの3人の頭文字をとってEPRパラドックスとよばれるみたい。
EPR相関ともよばれているようで、量子暗号や量子テレポーテーションの開発に寄与しているとか。
どんなものか軽く読んでみたけど、ぜんぜんまったくわからんわ(笑)

55Pより。
―――「缶コーヒーは暑いときは美味いんだが、冬場はどうもな。ホットの缶コーヒーは甘すぎる。ホット専用の銘柄もあるにはあるが、やっぱり甘い。なんでも人間の味覚は暖かいものの甘みを強く感じるようにできてるそうだ。かと言って冷たいのは寒いし、第一、自販機はほとんどがホットになってる」―――
甘味は体温に近い温度のときに最も甘く感じるみたいで、酸味は温度による変化を受けにくい。
苦味は温度が高いほどマイルドに感じ、低くなるにつれ強く感じるとのこと。
コーヒーが温かいほうが美味しく頂けるというのはこの性質によるものみたいだね。
でも姿にとって日本の缶コーヒーでは甘味濃すぎだと?・・・・・こだわりが強い。

159Pより。
―――『ドモヴォイ』『ドヴォロヴォイ』などがその例で、最新型の『バーバーヤーガ』もスラヴ民話の妖婆に由来する。―――
バーバ・ヤーガは、スラヴ民話に登場する魔女で、もとはスラヴ神話における冬の神話的表現に起源していると考えられている。
後にスラヴ人キリスト教に改宗することで古来の神々は善神ならキリスト教の聖人、悪神や自然の脅威を象徴した神なら妖怪、悪魔に置き換えられていき、北方の凍てつく冬の神話的表現は恐ろしい魔女のような妖婆として表現されるようになったらしい。

190Pより。
―――クワンのその呟きは、最初何かの諧謔のように聞こえた。意味が分からない。ユーリの鈍い反応に、クワンは苦笑して言葉を重ねた。―――
「かいぎゃく」とは面白い気のきいた冗談、しゃれ、ユーモアなど。

308Pより。
―――「どうだい、このミル。プジョーだよプジョー
「フランス車のプジョーか」思わず訊いてしまった。
「ああ。どういうわけか車のメーカーがミルも製造してるんだ。挽きやすいのもいいが、このデザインがたまらんね」―――
プジョーはもともとプジョー兄弟によって作られたもので、初めの頃は水車の動力で製粉工場を行っていた。しかし、その動力を活かして金属加工もできるのではないかと事業拡大を行ったのが始まりで、 その後は鋭い刃を使う道具である斧、のこぎりの刃、カンナなどが製造されるようになって、1840年にはその中の一つとしてコーヒーミルが作られたようで。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
第二種機甲兵装でロシア連邦政府の正式採用機種であるバーバヤーガと、謎に包まれた自称龍機兵である新型機キキモラの決闘場面。
178Pより。
―――誰の目にも手負いの旧型機に勝ち目はない。しかし隻腕のバーバヤーガはゆっくりと半身を踏み出し、残る右腕を挑発的に大きく高々と振り上げる。戦闘再開の宣言だ。
悲愴にして滑稽なバーバヤーガの意思表示に、観客席から失笑が漏れる。
笑っていない客が二人―――クワンとゾロトフ。―――

ロボットを描くときにどうしても気になってしまうのが関節部分の作り。
人間のように可動域を持たせるためにはどんなモノがいいのか、でも動きまくる部分なら衝撃や異物に強い作りにしないとアカンし・・・。
でもその前にまず凝ったものを描く画力が・・・(´;ω;`)

 

スタンド・バイ・ミー

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