忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「機龍警察 自爆条項 下」 読書感想

タイトル 「機龍警察 自爆条項 下」(文庫版)

著者 月村 了衛
文庫 304ページ
出版社 早川書房
発売日 2017年7月6日

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第33回日本SF大賞受賞作
この作者の作品で既に読んだもの
・「機龍警察」
・「機龍警察 自爆条項 上」


<< ここ最近の思うこと >>

この小説を読み始めてから、YouTubeでG線上のアリアを聞くことが増えたのよね。
アリアのピアノメロディを思い出そうとしてもショパンだったりカノンだったり、関係の無いメロディばかりが脳内再生されちゃってぜんぜん思い出せないからさ。
あらためて聞いてみるといい曲だよねぇ。
姉のお下がりである黄色のワンピースを着て、肩で切りそろえられた黒髪を揺らしながらG線上のアリアをピアノ演奏する無垢な妹のミリー・・・。
ああぁ、雨が降っている・・・雨が痛い・・・。
(偶然にもニコラス・ケイジ版『ウィッカーマン』を視聴したのも何かの縁かな?)


<< かるーい話のながれ >>

エルサン工場強襲によってIRAのテロリストと機甲兵装をいくつか取り押さえたが、日本に入国したメンバーはまだ多数行方不明のまま。
沖津の手腕でサザーランド来日中の警備は、警備部警護課と特捜部の合同で行うことになったのだが、キリアン・クインがどのように仕掛けてくるのか全く予測がつかないまま、当日を迎えた。
予定は順調に進行していき、何事も無く最終日まで過ぎていく。
しかしキリアンは誰も予想していなかった方法で襲撃を仕掛けてきた!
飛び交う銃弾と破片、そして血・・・・・日本の大都市が戦場に豹変する。
果たして警視庁はサザーランドを守りきれるのか?
キリアン・クインの第三の目的とは?
ライザ・ラードナーはIRFによって処刑されてしまうのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///窮地を打開する緑の言葉とALS///
キリアン達にたどり着いたが、打つ手なしで絶望的な状況のライザ。
もう二度と、大切なモノを手放すことはできないという思いに駆られて敵の要求を呑もうとする。
でもここで無線から届いた緑(機龍兵整備主任)の声がライザに力を与えた。
それはかつて妹に言われた同じ言葉だった。
雨はまだ降っていないし、アリアの音色とバンシーの悲鳴は調律するかのように響いて、ライザは起死回生の一手を打つ。
こーゆー場面って堪らないのよね!
読んでいて思わず身震いしそうなくらいゾクゾク(感動のゾクゾク)が沸いてくるわ(´▽`)

///絶対に守らねばならない自爆条項///
地の底でバンシーがピンチに陥っている状況で、姿の操縦するフィアボルグは自爆条項に付随する項目に従って狙撃体制に入る。
付随する項目を知らないユーリは姿の不審な行動に不安を感じて、特注OSV-96の銃口をフィアボルグへ向けて狙撃体制の理由を問う。
銃を向けられながらもまったく動じない姿は、端的にユーリに告げた。
「俺を信じろ」
前作にて、かつての傭兵仲間でさえ一発狙撃で殺した姿がこんなセリフ言っても信じられないでしょ!
なのに、なぜだか信頼してしまうのはプロフェッショナルな姿の活躍を見てきたせいなのか、それとも珈琲と冗談が好きな傭兵っていうキャラクターのせいなのか。
とにかく緊張感が高まるカッコイイ場面だね!


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///機甲兵装での弾倉交換は時間が掛かる///
機甲兵装は基本的に使用する銃器類は使い捨てなのか?
前作で気になっていた所が解消されたわ。

207Pより。
―――OSV-96の弾を撃ち尽くしたバーゲストは、横転したトラックの陰に身を隠し。左右のマニピュレーターを器用に操作して弾倉を交換する。十三秒で交換終了。―――
機龍兵でさえ弾倉交換に十三秒もかかるんだから、普通の機甲兵装ではもっと時間かかるんだろうね。
というか、弾倉交換が出来るようなマニピュレーターが付いていないかも知れないな。

///みんな気になる、エルティアノ湖に魚は?///
52Pより。
―――白人の男はゆっくりと首を左右に振った。「エルティアノ湖には魚はいない」
まじまじと目の前の男を見つめる。急速に力が抜けていく。
魚は・・・・・いない・・・・・―――
ネットで調べてみたけど、スペインのバスクに『エルティアノ湖』っていうのが見つからない。
架空の湖なのかな?
まあ誰にも真相は分からないっていう設定の方がロマンがあって良いけどね。

///イーファ・オドネル(踊り子)VSライザ・ラードナー(死神)///
踊り子の操るデュラハンを追って、孤立無援の場所に行ってしまうライザ。
追いついた場所で待っていたのはキリアン達だった。
チャフによって無線も使用できず、前の戦闘によってダメージを受けているバンシー。
この状況で「踊り子」の異名を持つイーファと戦うなんて、ちょっと厳しいのでは(; ・`д・´)
と思っていたら唐突に予想外な展開。
これが経験値の差なのか、それとも格が違うのか・・・。
(個人的にはもう少し二人の対決を見てみたかったなぁ)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
全体の流れとしては、上巻と同じく二つのストーリーが主に描かれている。
一つはライザがIRFに入って訓練を受けたのち、処刑人として活躍してから組織を抜けるまで。
人生のどん底に落ちていくライザのストーリーが読んでいてとてもつら谷園(ノД`)・゜・。
もう一つは現代の続きでIRFが首都圏でテロを起こし、事態が終息するまでが描かれている
こっちはライザの再生の物語って感じかな。
最後の最後にアレで〆るのが「自爆条項」のタイトルに相応しくて、同時に恐ろしくもあったわ。

///話のオチはどうだった?///
下巻のオチとして印象に残ったのはこの二人の関係が微妙に変化してきたところ。
ちょっと穏やかになったライザとツンデレ枠?みたいな緑の百合百合した妄想を掻き立てられる場面がとても良し!
それに前作から続いて恒例化?している姿のコーヒータイムもおじさんは大好きだ。
アイルランドにちなんで姿が用意したのはアイリッシュ・コーヒー
アルコールの入った珈琲なんて飲んだことないなぁ、どんな味か気になるわ。
(姿がユーリに言った雰囲気崩しのセリフ「おかわり、いる?」もお気に入りの場面)
謎の敵に関する情報もすこーしだけ判明したり、アゲンの真相と狛江事件の真相は同じ構図なんじゃないのかって疑惑も浮かんで来たり、複雑に絡まった闇はどこまで広がっているのか・・・?

///まとめとして///
これぞメカ好き中年男性が好むゴリゴリの刑事物!
そしてどことなく漂ってくる踊る大捜査線的な匂いがまた良いのよ~。
織田裕二の「Love Somebody」が流れてきそうだ)
―――「ライザには自由が必要だ」 「未知の友人は常にいる」―――
二人の父親の言葉が、ライザから人生のジャム(死と悪運)を取り去ってくれたのね。
なんとも優しい爽快感がおじさんを癒して満たしてくれたよ(´▽`)
今回の機龍警察も非常に良かったので満読感88点!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。

<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

35Pより。
―――二人は使い込まれたサラワーを手にしている。サラワーとは鋭い切先と刃先を持つ片刃のアフガン・ナイフのことで、ハイバル・ナイフとも呼ばれる。―――
「サラワー」
全長50cm~90cmで肉切り包丁みたいな姿で殺傷能力は高いらしい。
刺身包丁に似ている気がする。

108Pより。
―――ティーカップを口に運びながらピアノを眺めていると、ボウタイをしたウェイターが声をかけてきた。―――
「ボウタイ」
いわゆる「蝶ネクタイ」ってやつかと。

168Pより。
―――旅の記録に、著者特有のセンスによる随想が混じる。時にペシミスティックであったりもするが、決して諦観に陥らない。―――
「ペシミスティック」
悲観的な考え方、人生や世の中を儚いモノとして考えること、らしい。

282Pより。
―――「アイリッシュ・珈琲のベースと言えば、まずこれだ」待機室でダンフィーズのボトルを取り出した姿は、それを共用のテーブルの上に置いた。―――
「ダンフィーズ」
1950年代にアメリカでブームを捲き起こして以来、アメリカではアイリッシュ・コーヒーをつくるときにはこの銘柄が使われるとのこと。
けっこういいお値段するのね・・・でもいつか飲んでみたいなぁ。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
265Pより。
―――通信機からライザの声。終わったらしい。フィアボルグのカメラがこちらに向けられるのを感じる。姿の視線だ。にやにやと笑った顔が目に浮かんで気分が悪い。―――
(機龍兵のデザインは完全におじさんの想像で描いております)

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生真面目な元モスクワ市警のユーリと、ゆる~い雰囲気な姿のコンビが読んでいて面白いのよ。
やっぱり刑事物は正反対なコンビが大切!

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