忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

ただ、それだけでよかったんです 読書感想

タイトル 「ただ、それだけでよかったんです」(文庫版)
著者 松村涼哉
文庫 280ページ
出版社 KADOKAWA
発売日 2016年2月10日

 



<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「ただ、それだけでよかったんです」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

数年前に『桐島、部活やめるってよ』をレンタルして観たのよね。
観終わってすぐの感想は、本編全部あの歌のPVみたいだったって思ってた。
でも時が経つにつれて映画の印象が変わってきたのよ。
色んな登場人物たちの一瞬を切り取った場面が、学生時代の独特な空気感を上手く表現してあるから、懐かしくも痛々しいセピア色が蘇ってくるんだわ(´-ω-`)
おじさんの学生時代はこの映画のような日常じゃなかったけど、共感するポイントはちらほらあった。

そんなこんなで、似ているようで似ていない作品だけど今回はコチラの一冊。
ラノベの学園モノってことは、もう擦り尽くされたくらいありきたりな内容じゃないの?
ブコメか、ラッキースケベか、SFかオカルトかファンタジーか?
はてさてどんなラノベ的要素が組み込まれているのか、早くも色眼鏡で判断してしまっている自分に愛の体罰的指導を叩き込みつつ、遥か昔の学生生活時代へ飛び込むぜ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

頭脳明晰、スポーツ万能、コミュニケーション能力抜群の稀有な中学生、岸谷昌也。
彼は自宅で首を吊り、14歳の短い人生を終了させた。
残された遺書には「菅原拓は悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはいけない」とだけ書かれていた。
昌也の姉である香苗は、一人の目立たない生徒が複数の人気者達をいじめていたという事件の真相を知るために、単独で調査を開始する。

桁外れな中学生、解剖するんだ、暫定師匠、ソーさん、秘密兵器、モンスター、会ったことがある、地獄ですよね、一世一代の決意だ、革命はさらに進む、欠落お姉ちゃん、拓昌同盟、本当の地獄、悪魔の構造、合格です、第二次革命、何かを隠してる、友だちの重さ、究極の手段、絶叫、ざまーみろ、失敗した、ご苦労だった、僕の望みは・・・。

菅原拓は自身が革命を決意するまでのことを思い出し、一人静かに語り始める。
どうか自分を嘲笑って欲しいと願いながら。
そして真実に近づく岸谷香苗と、現在までを語り終えた菅原拓が出会ったとき、革命はフィナーレに向かって動き出した。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///面白いけどやりたくはない///
自殺事件の調査に動き出した香苗は、まず昌也の通っていた中学校へ出向き藤本校長に「人間力テスト」なる制度の詳細を問う。
人間力テスト」とは、その学校で行われている独自の教育方法だった。
20Pより。
―――評価はさまざまだが、とにかく多くの日本人が注目したのも無理もない。
人間力テストとは——————生徒同士で、他人の性格を点数化するものだから。―――
なぜこんな制度を作ったのか?藤本校長の言葉を聞いてなるほどと思った。
社会人として生き抜く為に作ったのかぁ。たしかに何においてもコミュ力って必要だからね。
思い出すのは『道徳の時間』で語られていた「みんなくん」を使った教育方法。
あれもなかなか面白かった。
ゆとり教育にしろなんにしろ、いろんな方法を模索しているけどなかなか成果は・・・。
日本教育の明日はどっちだ?

///この情景を思い浮かべると、怖いな///
藤本校長に話を聞き終えて帰宅した香苗は、それまでのストレスを爆発させるかのように家の中で騒ぎ暴れる。香苗は在校生だった頃から藤本校長を苦手としていた。
26Pより。
―――「もう、胡散臭いよ!藤本校長の胡散臭さだけで、世界中の香水屋が閉店するよ!」
家に帰ったわたしがまず一番にしたのは、とにかく叫びまわることだった。―――
世界中の香水屋が閉店するって(笑)
てか胡散臭さが強ければ強いほど、香水の需要は高まるんじゃないのか?なんて真面目にツッコミを入れるのは止して。
それにしてもこの岸谷香苗というキャラは個性が強い、強いと言うよりどこか壊れているような気もする。(あ、臭すぎてみんなが香水を買い漁るから閉店しちゃうって意味か)
家で一人喚き散らしながらドタバタ動き回っている時点でヤバイ性格なんだろうけどね(;^ω^)
でもなんか嫌いじゃないのよ、被虐心を誘うというかなんというか・・・ううん、止めておこう。

///なるほどコレにはあっぱれ///
調査を進めて真実に近づく香苗は「秘密兵器」の力を借りて、ついに菅原拓と面会する。
そして今まで謎に包まれていた部分、菅原拓と岸谷昌也の間に一体何が起こったのかを知ることとなる。
210Pより。
―――「そこで、やっと僕が反撃する番になった」―――
なるほどこんなやり方は想像もできなかったわΣ(・□・;)
理屈としてはそーゆー変化が起こることにも納得できるかと。
かなり強靭な精神力が必要になるだろうけど、まさしく「革命」が起きたって訳だね。
まあフィクションの話だから現実に適応できるのかって聞かれるとうーむってなるけど、それでも「あっぱれ」を三つくらいあげちゃいたい。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///鉄壁の情報漏洩防止能力でもあるのか///
菅原拓のクラスメイトである加藤幸太を紹介してもらい、喫茶店で聞き込み調査をする香苗。
岸谷昌也たちへのいじめが発覚して、加害者である拓がどのような制裁を受けたのかを知って動揺する。
65Pより。
―――「菅原は一週間、土下座させられていたんですよ。学校中を回って」―――
作中ではスマホが当たり前に普及している時代。
いくら構内とはいえそんなことさせていたら、すぐに情報リークされて大炎上間違いなしでは?せめて全校集会で一回だけ土下座謝罪ってくらいにしとけば・・・だとしても噂が広まって確実にバレるわな(笑)

///公共サービスの活用を///
自殺事件の調査を進める香苗は、突然何者かに襲撃され暴力を振るわれる。
そして「これ以上事件に関わるな。今すぐ手を引け」と脅迫された。
しかし香苗は恐怖に屈しず調査を辞めようとはしなかった。
146Pより。
―――もちろん、真実を知ることへの恐怖もあったし、襲撃者への怯えもあった。しかし、それでも、諦めることへの踏ん切りがつかないのが理由である。―――
アイスピックを突きつけられて何度も蹴りつけられて、脅迫までされてなぜ警察に被害届出さないの?
大事になればなるほど、関係者たちが口を閉ざしてしまう可能性があるから?
とはいえ犯人を逮捕できれば、そいつから事件の詳細を吐かせることも出来たかもしれないし。
でも真実を知っている人間は殆どいないから、やっぱり無意味なのかなぁ。

///好奇心に満ちた外野の行動力///
自殺事件が報道されて家の周りをマスコミが囲み、日本中から死ねという念を感じている拓は、部屋に閉じこもり震えていた。
誰もいない一人きりの自宅で過ごす彼は、冴えてきた思考に導かれて一つの答えに辿り着く。
そして深夜に行動を開始した。
170Pより。
―――だから僕は誰にも気づかれないように、深夜こっそりと裏口から家を出て、ある場所へと向かうのだった。―――
話題沸騰のいじめ首謀宅はマスコミに貼りつかれて、おそらく動画配信者や野次馬だって群がるはず。
そんな中で夜中にこっそり抜け出ることが出来るのかなと疑問に思った。
もちろんマスコミに囲まれる経験なんてないし、あくまでも想像なんだけどね。
数日経過したらすぐに世間の関心は別なモノへ移っちゃうのかな?


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
ほぼ全編が拓と香苗の一人称視点で、代わる代わる語られていく作り。
過去と現在がコロコロ変わるからちょっと分かりづらいってのもあったね。
と言っても、思い返すと香苗視点は現在の話で、拓視点は事件の少し前から回想していくって感じだからそれほどややこしくもない作りだったわけか。

拓の語りパートでは斜に構えたラノベ男子学生感が強くて、おじさんとしては読んでいて「うーん、台詞がラノベだなぁ」って苦笑いしちゃう場面もあったり(;^ω^)
まあ中年がライトノベル読んでんだから、感性のズレは当たり前だよね。

///話のオチはどうだった?///
事件の真相も拓の目的も全く読めない展開で、いつどこから今風なラノベ展開になるのかと待ち構えていたけどそんなことは一切起こらず、最後まで普通の人間達による切実な物語だったのが予想外だった。

さらに予想外は重なって、学生青春ラノベでここまで心をえぐられるような気分にされたのが驚きよ。
もちろん無理矢理な部分も多々あるけれど、終盤の物語が加速&加熱していく展開にはすっぽり引き込まれちゃった。
あと個人的にメンタル低空飛行な時期に読んだから、最後は少し涙がポロリしそうになっちゃったり。

///まとめとして///
読む前と読み終わってからの印象がガラリと変わる小説だった。
未読の方は如何にもライトノベルな絵柄と、電撃文庫というレーベルに騙されないよう気を付けて。
おじさんは見事に騙されたよ、まさかこんな物語だったなんて想定外だったし。
大賞を受賞するのも納得の一冊だったわ。

集団が出来れば必ず起こるのが順位付けといじめ。(程度の差はあれど)
被害者は拓のように突飛な策で革命を起こすしかないのか!?いやいやそんなんムリじゃい!!
逃げれば良い。より生きやすい場所を探せば良いのよ。
おじさんの親友も言っていた。
「人生なんてただ生きてるだけで充分なんだ」
んでもって同時に思い出す。
「生きる為に戦うこと、それ以外にモラルなど無い」
他人に立ち向かわなくてもいいんだよ、生きること自体が既に戦いなんだから。
そんな自己愛に満ち満ちた満読感、頂きました。
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。
(んむむぅ、『道徳の時間』に引っ張られてる感想になっちゃった感)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

ただ、それだけでよかったんです』は第22回電撃小説大賞受賞作なのです!

TUTAYA限定書き下ろしショートストーリーが挟まっているから少しお得な感じがするよ。
内容は本編から少し時間が経過したある日の小さなお話ですわ。

あと応募用しおりが三枚も付いてきた!
三枚も付いてるなんて気前イイじゃないか、よーしやるぞーってもう期限過ぎまくりだよ(゚Д゚)ノ


51Pより。
―――以上は、岸谷昌也が亡くなる二カ月前、街外れのプラネタリウムでの邂逅。―――
「かいこう」とは思いがけなく会うこと、または、めぐりあいという意味。
過去に調べたことあると思うけど忘れちゃってるね。思い出みたいな意味だと勘違いしてた。

164Pより。
―――不遜を取り繕うのだ、と力一杯の努力をするしかないのだけれど。―――
「ふそん」とはへりくだる気持ちがないこと、または思いあがっていること。
同じく過去に調べたことあると思うけど忘れちゃってるわ。

249Pより。
―――現代社会において人々は評価軸を他人に依拠せざるをえない。―――
「いきょ」とはあるものに基づくこと、またはよりどころとすること。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
もうこれしかないっしょって決めていた180Pの場面。
どんなふうに描こうかな~って思いながら読み終わったとき・・・・・チクショウやられたぜ!
よく分かってるじゃねえか、誰が選んで指示を出したのか知らないが。
つーわけで、第二候補だったコッチにしたよ。
243Pより。
―――「菅原くんか。どうしたんだい?」
当然、初対面ではない。昌也を水筒で殴ったとき、昌也が自殺したとき、そこで二回会っている。直接会話をしたことはあまりないけれど、お互いの顔は知っていた。―――


げげっ!やっちまったぜよ。
拓の服装描写がなかったからパーカーにして描いたけど、制服かブレザーっぽいの着てますやん。
もう描き終わってから気付いてしまった・・・・・まぁ、おじさんのイメージだからご勘弁を(>_<)