忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

噂 読書感想

タイトル 「噂」(文庫版)
著者 荻原浩
文庫 492ページ
出版社 新潮社
発売日 2006年2月28日

 


<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「噂」だけ
(かなり昔に何冊か読んだと思うけど、もうどれを読んだのかも思い出せない)


<< ここ最近の思うこと >>

一説によるとTwitterから大ヒットした曲の「香水」・・・酒を飲みつつ、これを聴きながら渋谷スクランブル交差点のライブ映像を眺めるのに一時期ハマったおじさん。
もうしばらくあの歌手の名前を聞かないけど、またヒット曲を歌う時がくるのだろうか。
そういやあの歌手に対しても、男性のことを思って曲を作ったなんてデマがネット上で話題になっていたような気がする。

インターネット上で誹謗中傷の投稿をした人を特定しやすくするためのプロバイダー責任制限法の改正案が参議院本会議で全会一致で可決され成立した今日この頃、時代を先取りしたかのようなこの小説を読む時がついに来た。
帯には期待を煽る文言があるけど、大きく出て大丈夫なのかねぇ。
ではでは、アヤシイ噂と危険なレインマンが存在している東京の街へ飛び込もうぜ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

レインマン」に会うと両足首を切断される。ただし、ミリエルの香水をつけていると狙われない。
そんな噂もあってか、ミリエルの香水は女子高生たちの間でヒットした。

妻に先立たれ一人娘の菜摘と二人暮らしをしている小暮悠一は、元捜査一課の刑事で現在は目黒署の刑事課に勤務している。
ある日、いつものように出勤すると殺人事件の連絡が入る。
被害者の女子高生は公園に全裸で放置されていて、両足首から下が切断されていており切り離された足首は見つかっていないという状況。
目黒署に捜査本部が設置されて本庁の捜査一課からも増員が送られてくる。
その中で小倉は名島という若い女性刑事とコンビを組むことになり、二人は捜査を開始した。

コムサイト、WOMの力、心ってどこ?、少女が最後に見たものは、よろしくお願いします、早くレインマンを捕まえて、人なんか殺せるはずがない、協力してやろうか、なにもかも同じだ、MURIEL、死んだダンナのこと、参考人聴取、死ね、あの手がありますよね、片足だけ、お楽しみの最中、今日で終わりだ、くすくすくす、とんだ嘘つき女だ、大人だからバカなんだよ・・・。

進展しない捜査に焦りだす警察、新たに発見される遺体、少女たちの間で広まる噂。
小暮と名島のコンビは僅かな情報を頼りに捜査を進めていくが、捜査本部の意向に合わない行動が問題になってしまう。
それぞれのタイムリミットが迫る中、果たしてレインマンなる真犯人を逮捕できるのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///ベテラン刑事と新米女刑事のコンビものは最高///
元捜査一課で働いていたベテランの小暮と、捜査一課員で小暮の一階級上である名島。
この二人がい~い味を出しているのよ。
350Pのいつかバナナシュートを教える約束を交わす会話なんて、サントリーニューオールドのCMみたいに切ない場面だったなぁ。

終盤では名島の成長というか決意が見えるところが良かったね。
最初からずっと捜査会議での発言を小暮にお願いしていた名島だったのに、420Pのところではスカート姿で捜査員たちに大演説するとこなんて、おじさん感動でちょいとウルっときたわ。
(305Pの少女たちの会話から自分の手を気にする名島が萌えポイント高しだよ)
しまった、名島のことばっかりやん(;´∀`)

///確かに身構えちゃうよね///
菜摘との生活を大切にするため制服勤務に転属をしようか悩む小暮が、職場仲間の津末にそのことを相談する場面。
198Pより。
―――「主任はもう忘れてるかもしれないけれど、世間が制服を見る目って冷たいんですよ、嫌われ者だ。制服でコンビニに弁当を買いに行くとね、凍り付きますもの、店内が。別に悪いことをしてるわけでもないだろうに、みんな目をそらす。こっちもいたたまれなくなる」―――
う~むむ、確かにその通りかも。
おじさんも運転中にすれ違うだけでなんだか妙に緊張しちゃったりするから、同じ店内で遭遇なんてしたらドキドキが激しく・・・なんにもやましいことなんてないのにねぇ。

///あの質問の答えに納得///
事件後に、小暮と名島が食事をしながら会話をしている場面。
478Pより。
―――でも、『なぜ殺しちゃいけないの?』って真顔で聞く子もいるんだとか。そういう時に何て答えたらいいんでしょう?いけないものは、いけないっていうのは簡単だけど・・・・・」―――
何故殺しはいけないのか?これって中々に答えられない問題だよね。
だけど小暮がちょうどいい感じの答えを言ってくれた。その内容がしっぽり納得したって感じだよ。
自身がその状況に直面すれば誰でも一瞬で理解できること間違いなしだわ。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///名島さんが刑事を続けている理由///
夫が警察に勤めていた名島はある意味そのせいで今の状況になってしまった訳で。
それなのに未だに警察という仕事を続けている理由は?
普通だったら組織というモノに嫌気がさしたり、憎しみをもって辞めたりしそうな気もするけど。
それ以上に名島の信念が強かったってことなのかな。
(強い意志がないと辛い職業は続けられないからねぇ)

///ミンチ機は万能か?///
ミンチ機ってのはスジ肉だとかを食べやすくする為の機械だよね?
あくまでもそれは「肉」が対象であって、骨はムリがあるのでは・・・。
本気なのか冗談なのか、中年にはわからない世界の会話で悩ませてくれるこの展開が憎い(良い意味で)
うぅ~おじさんもチョメチョメって言っちゃいそうよ(;´∀`)

///よくわからない犯人の内面///
注意!!
この部分はネタバレになるから、それでもかまわないって人は反転して読んでみて。

レインマンこと西崎譲の状態が良くわからなかった。
259Pより。
―――ここ数日、西崎はサキのことばかり考えていた。三日前の晩、部屋から消えた。西崎のところへころがりこんで来た時と同じように唐突に、いなくなってしまったのだ。―――
↑ではこんな風にサキがいなくなってワタワタしているのに・・・。

445Pより。
―――最初の子の残しておいた片足だって、あんまり冷蔵庫の中を臭くするから捨ててしまったが、あとで後悔して夜通し泣いた。―――
つまりこれって自分でサキの足首を捨てたのに、その記憶が時々によって忘れているってこと?
まあ情緒不安定なところがあるから仕方ないとは思うけど、西崎は多重人格的な人間になっちゃっていたのだろうか?


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
基本的には小暮悠一の視点で語られているけど、話が進むにつれていろんな人の視点に切り替わり語られていく作り。492ページもあって文字数も多いのに最後まで飽きずに読めてしまったのは、視点が次々に変わるおかげってのもあるかもね。

堅苦しい警察組織が渋谷の少女達の世界に入り込んでいく、この水と油のように合わないモノ同士がうまーく混ざり合って展開していくのが、都市犯罪の雰囲気をすごく醸し出していてよかったね。
都市伝説を追いかけていく警察っていう設定も「不気味」と「現実」が絡まり合っていてワクワクさせてくれた。

///話のオチはどうだった?///
刑事モノとして最後までしっかり楽しめたけど、事件の顛末としてはちょっとモヤモヤ感が残ると言えば残る終わり方かな。(最終的に謎のアレにしてやられるっていうオチもアリだと思う)
小暮と名島の関係もしっとりした大人な距離感だったから、おじさんはほっこり満足です(*´▽`*)

そして本当に最後の最後で、帯に偽りなしだった!
長い小説を読み終えて、気の抜けたその瞬間に「えっちょっ待って」と言っても、すでに全部終わってしまった後なわけで。
その後の展開は読者の妄想に任せるしかなし。
(どう考えてもバッドエンドの可能性しか浮かんでこない・・・いやいや、まだ違う可能性もあるから!)

///まとめとして///
あの頃の誰もがガラケーを持っていた時代って、こーゆーヘンな事件があってもおかしないと思える。
都市伝説や若者の集団犯罪、理解できない通り魔事件、ドラマ『池袋ウエストゲートパーク』が大流行したのもこの時期だったはず・・・?
今回の『噂』は中年視点から見る『池袋ウエストゲートパーク』って感じの小説だったかな。

現在でもTwitterやらTikTokやらInstagramやらのSNSが全盛期な時代な訳で。
誰ぞれの口コミ、デマ、嘘などが瞬間的に世界中へ広がってしまう世の中だからこそ、第二ののレインマンみたいな危険人物が誕生してもおかしくない・・・いやもうすでに何人もその辺にいるかも!?
昔も今もヘンな世の中だけど、飛び越えちゃう人間てのは頭じゃなくて心の問題ですよね、小暮さん。

最後のアレがインパクト強すぎるけど、それまでの物語も十分に楽しめた一冊。
荻原浩の他の小説も読みたくなっちゃったってことで満読感8点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

9Pより。
―――家具はみなヤコブセンのデザインだろうと西崎は当たりをつけている。―――
アルネ・イミール・ヤコブセンデンマークの建築家、デザイナー。
ユダヤ人でありモダン様式の代表的な人物の一人で、チェアやテーブルのみならず照明や時計まで幅広く手がけた天才とのこと。

20Pより。
―――関東大震災の時に朝鮮の人たちがたくさん虐殺されたのも、どこかの誰かが流した流言飛語が原因ですもの―――
関東大震災朝鮮人虐殺事件は、1923年の日本で発生した関東地震関東大震災の混乱の中で「朝鮮人共産主義者が井戸に毒を入れた」というデマが流れ、それを信じた官憲や自警団などが多数の朝鮮人共産主義者を大虐殺した事件。
恐ろしい事件だよ、怖いのはもし自分自身が当時の状況に置かれたら、デマに流されない自信がないってことだ。

38Pより。
―――酔いつぶれた女のくり言めいたリフレインが耳をくすぐった。浅川マキの『夜が明けたら』。往年の名曲だ。―――
浅川 マキは日本の歌手、作詞家、作曲家、編曲家。淺川マキと綴られることもある。
1969年7月1日、寺本幸司のプロデュースによる『夜が明けたら / かもめ』で正式にレコード・デビュー。愛煙家でありステージ上でも煙草を燻らせていたみたい。
確かにクセの強い歌声だ・・・嫌いではない。

288Pより。
―――「うちの署に来てくれ。そうすればバイト代を出せるよ。参考人日当って言うんだけどな」
「ああ、カラ支給ってヤツだね。あたし、くわしいんだよ。親父が公務員だから」
「違うよ」―――
参考人手当」を調べてみたら一日に付き一万円でるのかな?だとしたら中々にいいバイト代じゃないの。
「カラ支給」をネットで検索してみたらまったく出てこない!?「カラ出張」や「カラ出勤」はあるのに、まあ意味は似たようなもんなんだろうけど。

323Pより。
―――七〇年代の伝説のバンド、ザ・ディランⅡの『プカプカ』を聴きながら、排気ガスにけむる朝の山手通りを走り抜けた。―――
ザ・ディランIIは、大塚まさじと永井洋のバンド。フォークデュオ。
最初期は1960年代末の大阪のフォーク喫茶「ディラン」に集まった西岡恭蔵大塚まさじ、永井洋の3人を中心としたフォークソング集団で、その後3人編成のグループ「ザ・ディラン」としての活動が中心となっていったらしい。
1971年頃に西岡恭蔵が脱退して大塚まさじと永井洋の2人編成になったとのこと。
小倉さんの音楽センスが何気にイイね。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

取調室で渋谷ギャル達を相手にげんなりしている小倉と、ガッツポーズをとって応援をする名島の場面も書いてみたかったけど、描くのが大変そうだったから今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ


418Pより。
―――「犯人は、ぜひあなたの手で落として欲しい」
名島がまた首を振る。今度は素早く力強く。眉間の縦じわは消えていて、そのかわり目尻にかすかな横じわをつくっていた。小暮の鼻先に指をつき立てて言う。
「私じゃなくて、私たちでしょ、小暮さん。チームじゃないですか」―――

どうでもいいことを最後に一つ。
杖村沙耶を思い浮かべる時、アニメ『迷宮ブラックカンパニー』のベルザを連想してしまうのはおじさんだけだろうか・・・・・きっとおじさんだけだろうなぁ・・・う~ん艶っぽい(*´ω`*)

 

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