忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

虎よ、虎よ! 読書感想

タイトル 「虎よ、虎よ!」(文庫版)
著者 ベスター・アルフレッド
文庫 446ページ
出版社 早川書房 
発売日 2008年2月22日

 

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・今回の「虎よ、虎よ!」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

ついに来たぞよこの時が!
以前に読んだ『宇宙船ヴァニスの歌(1)』のあとがきで作者が語っていた作品。
あのエログロぶったぎりエンド小説で有名?な友成純一が、生涯で読んだ本で最も面白くて興奮した本の一つと言うほどの小説・・・一体どんなんだろうか期待に胸がふくらんじゃう。
とはいえ、文字数とページ数の多い昔の海外SF小説・・・・・ちょっと不安になってしまうけど表紙のインパクトある今風なイラストに願いを込めて、いざ読んでみるっきゃない(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

ジョウントと呼ばれる瞬間移動が当たり前に行われるようになった25世紀。
しかし誰一人として、宇宙空間でのジョウントに成功した者はいなかった。

敵の襲撃で大破した宇宙船の残骸。
その中のロッカー内で生存し続けていたガリー・フォイルは、同業者の船であるヴォーガに発見されて救難信号を送るが、なぜか素通りされてしまう。
奇跡から一転、絶望に引き戻されたフォイルは怒りを糧に復讐を誓い、大破した船を応急処置して発進させ小惑星群に住む科学人達に救助される。

回復したフォイルは復讐を遂げるため小惑星群を脱出し、やがて宇宙船に保護されて地球に帰ってきた。

ヴォーガ、化学人種、ノーマッド、パイア、青い患者服を着た巨人、洞窟病院、青ジョウント、ささやきライン、絶望的な叫び、フォーマイル、命令したのは誰だ?、自白阻止剤、燃える男、アルマゲドン、かわいそうなガリー、避難民、スコプツィ植民地、オリヴィア、意思と思惟だ、前人未到のこと、奇形的人間、俺は民衆を信じている、大いなる眼ざめ・・・。

フォイルはヴォーガに復讐するべく計画を練り上げるが、一方で彼を狙う者達も動き出していた。
なぜフォイルは見捨てられたのか?
なぜフォイルを付け狙うのか?
復讐心に囚われたフォイルがたどり着く結末とは如何に!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///これが1956年製のツンデレなのかな///
ジズベラと二人で双発ジェット船に乗りノーマッドへ向かっている最中、フォイルの顔面の刺青が消えたのかを確認する場面。
172Pより。
―――「そうじゃないわ」ジスベラがいった。「あなたがかわってしまったのは内面なのよ。今のあなたが見ているのは大法螺吹きで、ペテン師の食屍鬼よ」
「おい!よせ。おれにかまわないでくれ」
「食屍鬼」ジスベラはきらきら眼をかがやかせてフォイルの顔を見つめながらくりかえした。―――
キレイになったフォイルの顔をえらく気に入った様子のジズベラ。
口では罵りながらもこの後2人はイチャイチャという展開に。
もとからそれなりにイケメンだったのか、様々な経験を経てフォイルの顔つきが変わったのか、気になるし羨ましい。

///ヴォーガで行われた残酷過ぎる所業///
当時ヴォーガに乗っていたケンプシィという男を見つけ出したフォイル。
どうして漂流していた自分を救助しなかったのか問い詰める場面。
319Pより。
―――「質問に答えればおれが死なせてやるぜ、ケンプシィ。なぜ見殺しにした?」
「あんたを助けるわけにはいかなかった」―――
ケンプシィの居た労働施設、真相を聞き出すための処置手術、そしてあの時ヴォーガで行われたこと。
段々と酷くエグイ展開になっていくのがドキドキしたね。
特に600人の避難民たちにたいして、あんな恐ろしいコト・・・ケンプシィが壊れてしまうのも納得。

///アイルランドバーテンダー・ロボットの説教///
選択権を握っているフォイルが社会をどうすべきか、人類をどうすべきか皆に問うが答えは出てこない。
その時、ダーゲンハムの放射能によって故障したバーテンダー・ロボットが答えた。
419Pより。
―――「あなたのご質問に対する答えは、イエスです」
「ありがとう」フォイルはいった。
「光栄でございます」ロボットが答えた。「人間はまず社会の成員であって、つぎに個人であります。あなたは社会が破壊をえらぼうと否とにかかわらず、社会と行動をともにしなければなりません」―――
壊れたバーテンダー・ロボットの説教が染みるねぇ。
それがその希望であり栄光なのですって言葉に救われたような気持ちになる。
結局のところ人類みんな仲良く、人類みんなで一緒に歩いていくってことが真理といういうことかな?
(なんだか以前に読んだ『アイの物語』を思い出しちゃったよ)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///ジズは「あの顔」に何か苦しめられたっけ?///
グフル・マルテルから脱出してフォイルの顔面刺青を消すために馴染みの医師ベイカーの元へやって来たジスベラ。
刺青を消す手術は激痛を伴うのだが、ジスベラは麻酔無しでやってくれと言う。
149から150Pより。
―――「ジズ!あんたは彼がどんなことになるかわからないから、そんなことをいっているんだ」
「いいのよ。くるしめてやるの」彼女がひどくあらあらしく笑ったので、ベイカーはおどろいた。
「あいつもあの顔でくるしめばいいのよ」―――
慎重派のジスベラがフォイルに振り回されてきた苦労はわかるけど、それでも彼のおかげで脱出できたわけだし麻酔無しで手術させるほどの恨みがあったのは不思議だ。
ツンデレなジスベラちゃん・・・・・ツンが痛すぎるよ(; ・`д・´)

///まさかあのページとここで出会うとは///
パイアの爆発に巻き込まれて気絶したフォイルは、周りを炎と溶けた銅に囲まれて絶体絶命のピンチに。
その時、フォイルの体に異変が起こった。
397Pより。
―――フォイルの姿はあらわれては消え、また、あらわれる過程を迅速なテンポでくりかえしていた。
まるで籠のなかに入れられたホタルのようだった。
「あいつは何をしているんだ?何をやろうとしているんだろう?何が起こるんだ?」―――
ネットでラノベのネタページとして挙げられるいくつもの画像。
その中の一つがコレだったのかぁ~(´゚д゚`)
最近のラノベだとばかりに思っていたけど、まさか1956年のモノだったとは驚き。
(そしてここからの展開と描写が無茶苦茶で読むのがホントに辛谷園・・・)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
まず初めにジョウント現象が初めて観測されて一般化するまでが説明されて、そのあとガリー・フォイルの宇宙漂流生活と復讐編が進んでいく。
視点はフォイルを中心に色々な登場人物からの第三者目線で語られていたね。
(大体の海外小説が↑こーゆー作りだけど、これがスタンダードなのかな?)

そして読む前に心配していたとおり、古い海外SF小説だから馴染みのない文章の連続だったよ。
この独特な違和感はなんなんだろうねぇ。
日本語ペラペラな外人が翻訳したらもうちょっと読みやすくなったりするのかな?

///話のオチはどうだった?///
いやいやこれは予想外。
表紙の荒々しい絵から察するに壮絶な結末になるかと思いきや、人間を信じてドタバタに引っ掻き回してからの眠りと目覚め的な・・・・・イイと思います(^-^)
(その後の世界がどうなったのか知りたいけれど、そこを想像するのは読者次第か)

人類が皆等しく成長して考える存在になるためにフォイルがとった行動、この決断が吉と出るのか凶と出るのか誰にもわからない。
427Pより。
―――「それなら彼らにそれをまなばせるか、さもなければ死なせるがいい。われわれは一蓮托生だ。ともに生きのびるか死ぬか、どっちかだよ」―――
とりあえず自分の周りが安全で平和な世界であればそれでいいと考えてるおじさん。
それじゃ駄目なんだろうなぁ~、それでは何も考えていないのと一緒なんだろうなぁ~。
人類皆一つ、そして仲良く共存する。当たり前のことなのに今現在も実現できない(´;ω;`)

///まとめとして///
良くも悪くも、ほんとに読み応えのある小説だったわ。
長かったし文字も多いし馴染みない文章だし、若い頃だったら間違いなく最後まで読めなかったと思う。
読書を続けた結果、想像力が鍛錬されたから楽しむことが出来たのか・・・おじさんも成長したなぁ。

↑んなこたぁどうでもいいとして!
読み終えた今、1956年のSF小説なのに人類の未来に可能性を感じさせてくれる内容だった。
名作っていうのはやっぱりいつの時代でも通用するパイアのような力を持っているのかも。
ジョウントできるようになったら毎日の通勤&帰宅時間が一瞬で済むのかぁ羨ましいなぁ~と思いつつ、ジョウントに伴う社会不安のことを考えたらやっぱり今のままがいいのかな~なんて妄想しちゃうくらい楽しめたから満読感8点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

71Pより。
―――ある財閥の家長はわざわざ昔の自動車、古代もののベントレーや、キャディラック、または背の高いラゴンダなどを運転手に運転させて乗りまわしていた。―――
ラゴンダ (Lagonda) は、イギリスの高級車ブランドで1906年に設立された。1947年以降はアストンマーティンの傘下となったようで。
ルパン三世が乗っていたクラシックカーみたいな感じかな?

197Pより。
―――瘴癘が惑星群を毒し古い年は朽ちていった。―――
「えやみ」
悪性の流行病、ときのけ、えきびょう、という意味らしい。

246Pより。
―――この善良そうな医師はきびきびした態度で、古色蒼然たる白い帽子、上着、それに医師の部族をしめる外科用マスクをしていた。―――
「こしょくそうぜん」
長い年月を経て、いかにも古びて見える様子。

251Pより。
―――階段のガレリアは夜になると照明がきらめき、今年の大晦日は非常な雑踏だった。―――
「ガレリア」
広い廊下。屋根を設けた歩行者空間のこと。

264Pより。
―――「きみは新興成金であることを自慢しているそうだね、フォーマイル?」
「はあ。初代のプレスタインの先蹤にならっているしだいです」―――
「せんしょう」
今までにあった実例とか先例って意味らしい。

305Pより。
―――「彼はとても大きいよ。背が高く、ひどく色が黒くて、どことなく不可解なところがある。ボルジアに似ている。確信と粗野のあいだを揺れ動いているように見える」―――
ヴァレンティーノ公チェーザレ・ボルジアは、イタリア・ルネサンス期の軍人・政治家。
ちなみにイタリアにおいては単に「チェーザレ」という名前は一般にガイウス・ユリウス・カエサルを指すので、チェーザレ・ボルジアは現地では「ヴァレンティーノ公」と呼ばれることが多いとか。

311Pより。
―――空気のない月に突然の、眼のくらむような日の出がくるとき、タンクに播種がおこなわれる。―――
「はしゅ」
播種とは、植物の種子を播くこと、つまり種まきである。
それから転じて、種をばらまいたように、細かい点が無造作・無秩序にある状態を言うみたい。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
286Pより。
―――「ちくしょう!行くもんか」
彼女を抱きしめ、やわらかな珊瑚の唇をさぐりあて接吻した。彼女の唇をくるおしく吸い、最後の暗黒がやってくるのを待った。―――

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読んでいて情熱的なキスというモノが伝わってくるシーンだったよ。
まさしく荒々しい野獣と美しい美女・・・・・いや、どちらも野獣なのかも。
気になるのはこの時はフォイルの顔面に入れ墨は浮き出ていたのか、それとも出ていなかったのか。