タイトル 「CF」(文庫版)
著者 吉村萬壱
文庫 336ページ
出版社 徳間書店
発売日 2025年1月10日

<<この作者の作品で既に読んだもの>>
ブログを始める前に「ボラード病」やら「バースト・ゾーン―爆裂地区」やら「独居45」やら「臣女」など色々読んでいる。
・「回遊人」
・「クチュクチュバーン」
<< ここ最近の思うこと >>
地元からちと離れたスーパー銭湯の露天風呂から見下ろす街並み風景。その中に製紙工場の煙突がにょっきり立っているんだけど、いつ見てもモクモクと白い煙を出し続けているんだよね。
製紙工場でなんでそんなに白煙が出続けるのか謎なんだけど、それを眺めながら湯につかるのが極楽なんだよね~。最近行ってないからまた行きたいなぁ(*´ω`*)
話変わって。
謎会社の巨大建造物が白煙を出すと言ったら、アニメ「フリクリ」のメディカルメカニカを思い出しちゃう。あのOVAめっちゃ好きなんよね、作中の楽曲が全部「the pillows」の曲ってのもめちゃセンスいいし、続編も出たみたいだから早く観たいなぁ~なんて思いながら未だに視聴の予定なし。
はい、そんなこんなでやってきました今回の小説。
久しぶりの吉村萬一作品だいっ。
長編の文庫版が出たからすぐに手に入れたけど、帯には「予言的作品」とか「超問題作」とか、おじさんの期待値をバサバサ扇いでくるじゃないの。これは期待しちゃっていいのかなぁ?
ではでは、謎の巨大企業CFが提供する怪しすぎるサービスがグングン根を張りだして、何かが失われ始めた世界に向かってダイブするんじゃ~い(=゚ω゚)ノ
<< かるーい話のながれ >>
事故や事件の責任を消滅させるサービスを提供している超巨大企業Central Factory(通称CF)。
全国各地に建造物が建ち、日本のみならず海外にも進出しているCFの本社がある街で暮らす人々は、責任消滅サービスをどこか怪しいと思いながらも、受け入れて日々を過ごしている。
CF作業員、クラブのホステス、一般家庭の家族、CFを信仰する人々、罪人たち、CF役員、元外交官、加害者にも被害者にも成り兼ねない人々はCFという存在を無視して生きることは出来ない。
チルネック疑獄だよ、お化け煙突、CFって怪しくない?、独特の薄い匂い、眠っている間に決めた?、危険な匂いのする男だ、じゃあCFに行く?、CFカフェ、出来ます!、何を言ってる、こひつじ園、これは象徴的な破壊や、あなたの責任は完全に処理されます、ジェノサイド、何が無血テロだ、決行は今夜、話があるの、透き通った涙、奥様の完熟太もも、キュウチャク、不気味な渦の片鱗、人はいつ加害者になるかも知れません、ストーリーを絶やすな、ミッション完了です、何もない巨大な穴。
その男はCFを悪の象徴と妄信して仲間と共に爆弾を作り爆破テロの実行作戦を練っていた。
彼はテロに必要な人材を探していて、ある人物に目を付ける。
万人に開かれた夢のようなサービスを提供する謎の企業CF。
その存在は正義か悪か、そのどちらでもないのか・・・。
<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>
///高梨恵という女///
おそらく場末のクラブであろうアカシアにて、ホステスとして働く二十八歳の高梨恵。
仕事を終えた彼女は、ミニスカートと真っ赤なパンプスを履いた出で立ちで夜遅くに歩いて帰ろうとも、危険な目に会ったことは一度も無いようで。余程悲壮感の漂う顔と体を持ち合わせているらしい。
「叱られて廊下に立たされている小学生のようだな」「貧乏が服を着て歩いている」「間違いなく不幸を呼ぶご面相」など、えらい言われようの高梨恵は251Pでも見当違いな返答をして好きな者に馬鹿にされる残念なキャラクター。
そんな彼女の一番印象に残った場面がコチラ。
288Pより。
―――「私は由紀夫にとって何なの!イチゴやブドウじゃないのか!?」
しかし彼は彼女に背を向けたまま手を振って「任せとかんかい!」と叫びながら、公園の植え込みの陰に姿を消した。高梨恵は地面にしゃがみ込んだまま泣き続けた。―――
この後に走り抜いていったジョギングじじいの言った一言。
〇〇〇て(笑)
しょーもないことを叫んで走り去っていくんじゃねえわ!普通に笑っちまうだろう(;´∀`)
高梨恵は根は良い人間なんだろうけど、運命的にいろんなことが平均以下になっちゃうのよね。
でもそんなところに愛着のようなものも湧いてくるから不思議。
///真実はいつも金///
過去におかした罪の責任を消滅させる為にCFの作業員となった二十六歳の北岡雄二。
全てが謎に包まれた攪拌作業に戸惑いながら、この仕事に何の意味があるのか考える。
228Pより。
―――この嘘っぱちの仕事を本当のことにしてしまうものがあるとすれば、それは金以外にない。もしこれが嘘の仕事に過ぎないとすれば、ただ棒で溶液を攪拌するだけの作業にどうしてこんなに金が支払われることがあろう。―――
無い物を有ると信じ込ませる力が金にあるのは納得。
どんなに馬鹿げたことでも、そこに大金の動きがあるならば信憑性が増してしまうもんね。
現実社会でも間違いなく無駄・無意味・逆効果な社内規則や会議や行事が存在しているのに、金を稼ぐ為にみんな黙って従ってしまう。
それが資本主義社会なんだろうけど、何か芯となるモノが存在していないのよねぇ。
え、じゃあ「宗教」についてはどう考えてるんだって?
・・・・・その辺のことは、『CF』を読んでみたらいいんじゃないかな(;^ω^)
///あなた最近、何か忘れていませんか///
テロ事件が起こり遺族となった野崎浩子の様子を見に来た平野明。お互いに共通した苦痛と喪失を経験したはずなのに、意味のない口喧嘩をして早々に平野明は帰っていった。
一人になった野崎浩子は軽薄な明と自分、そして変わりつつある社会全体にいて考える。
276Pより。
―――世界全体から、何か途轍もなく大切なものが刻々と蒸発しつつある気がする。至る所に鬆が入り、世界は重篤な骨粗鬆症となっていずれ瓦解するだろう。
そして彼女自身もまた、その原因の一端を荷う、世界を蝕むシロアリの一匹であるに違いない。そんな気がした。―――
これは読んでいてバシッときたね、すんごく共感したわ。
ちらほらと言われている「人類の終焉は何も起こらず自然と数が減っていく説」を思い出して、その原因の一つが「現代社会の鬆」なんじゃないの?って勝手に妄想してしまった。
ネットやメディアから流れてくる恣意的な情報の波に煽られて前向きになれない現代社会。その中を生きていく為に人々は無関心力を強化する方向へ進化しているとか?
その進化の行き着く先は、人類の緩やかな絶滅・・・・・まさかね(;´・ω・)
<< 気になった・謎だった・合わなかった部分 >>
///覚えて損はないタバコ芸?///
高梨恵が勤めているクラブにやって来た野崎道太郎。テーブルに二人でいる時、野崎のタバコが切れたので高梨恵が新しい物を買って持ってくると、野崎は紙人形を作っており「どちらが処女かわかるか?」と聞いてきた。
167Pより。
―――テーブルの上には人型に切り取られた二体の紙人形が四つん這いの姿勢で置かれていた。一つは銀色、一つは白で、それは煙草の箱の銀紙の裏表だった。―――
へぇ~初めて知ったわこんなしょうもない遊び(笑)
ネット検索してみると本当にやっていたようで、白紙と銀紙の膨張率の違いを利用しているのね。
いつかクラブやスナックとか行った時に軽いアプローチとして使えるかもだから習得すべきか。
でも加工するためにハサミが必要になるのかぁ、それに上手に切り抜く練習も必要やね。
そんでもって技術を習得していざ実戦でやってみると・・・・・おいおいおい、このオッサンこんな古典芸を得意げに披露してきたよ・・・・・ってドン引きされると( ˘ω˘ )
つーか水商売の店に飲みに行くような機会がないし、先立つものもない。
///CF業務の安全性は?///
テロに巻き込まれて気を失った渡辺宏は、やがて医療関係者らしき二人の男性の話声を聞いた。
CFを止めてから体調が著しく悪くなり、そこに加えてテロのダメージを受けてしまったので彼の状態はほぼ瀕死だったが、遠くから聞こえてくる会話の内容が気になり渡辺は意識を向けた。
282Pより。
―――「この患者、たっぷりキュウチャクしてますね」
「解毒剤も、大した効果はなかったか」二人の男が話しているらしい。医者だろうか。
「これだけキュウチャクしてしまうと、まず解毒は不可能ですよ」―――
なんなんよキュウチャクって、それに解毒剤って何の話をしてるのよ?
やはりあのピンク溶液攪拌業務には恐ろしい有毒性の何かが・・・・・いや待て、はっきりと関連付けされた会話内容でもなかったし。
でも310P辺りの会話を読む限りでは・・・・・う~むむ、わからん煙に巻かれるわ。
///都市伝説的現象?///
平野家にやって来た野崎浩子と翔。用事を済ませてからケーキとコーヒーを味わってくつろいでいると、TVを眺めていた翔が突然声を上げた。
画面にはいつも流れているCFの無言コマーシャルが映っている。
315Pより。
―――いつもは制止しているだけの画面の右下のCFのロゴマークがカクカクと震えていたのだ。こんなことは初めてだった。今日のSNSは、間違いなくこの話題で持ちきりだろう。―――
なぜにロゴマークが動いたん?この現象に関係する展開はこの後なにも描かれていなかったから、ほんとうにただ意味もなくカクカク動いたってだけなんだよね。
これも追加されたストーリーのひとつということ?わからん、何かが起きてもその意図が見えない。
何か意味深なことを見せてやれば、大衆は勝手に妄想を膨らませて納得して忘れるっつーことかな?
<< 読み終えてどうだった? >>
///全体の印象とか///
スマホもSNSのXも存在している現代の日本が舞台。
CF本社がある街(おそらく東京かなぁ?)を中心として、そこに住む様々な人々にスポットが当たりながら三人称視点で語れていく作り。高梨恵が一番よく登場していた気がするかな。
近年日本で起こった事件や騒動、世界での問題などが練り込まれているので親近感が湧きやすい世界観になっている。
吉村萬一作品を久しぶりに読んでみたけど、初期の頃に感じた「うげぇ」っていうエグイ描写とかが全然なかったなぁ。大衆向けになって客層の間口が広がったなと思う一方、個人的にはちょっと物足りない感が残るね。『バースト・ゾーン』とか『クチュクチュバーン』とか『臣女』とかに詰め込まれた、溢れんばかりのパッションをもう一度感じてみたかった。
本編でも語られていた謎作業のように、『CF』では「うげぇ」感がまんべんなく攪拌されて薄められちゃったのかもね(^^;)
///話のオチはどうだった?///
分かりやすい一本の物語があるわけじゃなく、CF本社がある街で起こるいくつかの騒動が描かれている内容だから、どんでん返しとかカタルシスとかは求めない方がよいかと。
でも読みはじめた読者全員が気になるであろうCFの中身というか本質については、最後の最後に語られているからご安心を。CFて、これもう現実に存在してるんじゃないの?っておじさんは思っちゃった。
あとこの小説の〆に綴られている言葉が個人的に気に入ったよ。全然笑えないしむしろゾッとするような事実なんだけど、まぁ~そうなんだよねぇ~ってニヤリとしちゃう。おじさんもいつの間にか体のあちこちに鬆が入っているわ。
///まとめとして///
現実世界ではどんどん閉塞感が強くなっていくし、テクノロジーが進歩したってちっとも人生は楽にならない。何かの責任問題が出ても次から次へと新しいニュースが流れてきて関心は薄まっていくし、一般国民は生きてるだけで精一杯な毎日。なんでこんなことになっているんだろうね?見えざる権力者がそう仕向けているのか、はたまたこれが人間社会の完成系なのか。
日々感じる漠然とした倦怠感やら不安感やらを物語として分かりやすく伝えてくれた、気がする(;^ω^)
たまにはテイストの違う物語を読まないとね。そういう意味では『CF』を読んで正解だった。
では締めとしませう。
おじさんたちが生きているこの世界の本質って、真っ暗で底の見えない巨大な穴から吐き出されるいくつもの儚い夢なんじゃないのか?
なんて柄にもなくポエムっぽいものを書きたくなっちゃう満読感、頂きました。
なんだかエリック・サティ作曲「グノシエンヌ 第1番」が脳内に流れてくるわぁ~。
(ついでにかもめんたるのう大も浮かんでくる)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。
25年1月26日の日曜日、冬らしい寒さだけど陽射しは暖かい快晴な天気の日に読了。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
15Pより。
―――「俺もCFに転職するかな」バーコード頭が言った。
「いいですね!私も付いていきますよ!」と天狗鼻。
「何ですか、散々CFを腐しておいて」ママが半畳をいれた。―――
「はんじょうをいれる」とは、昔の芝居小屋で役者の芸に不満があると客は敷いているござを舞台に向かって投げたことから、人の言動を非難したりヤジをとばすこと。
茣蓙のサイズが半畳だったからこう言われるようになったのかね?
令和ではまったく聞かない表現が逆に新鮮。
61Pより。
―――松前清和は、工場の隅に重ねてあったドンゴロスを一枚右手に引っ掴み、左手にもったビニール袋をクルクル回しながらA4f地区内を歩いた。―――
「ドンゴロス」とは、麻袋のこと。または麻袋を作る目の粗い厚手の布、梱包こんぽう・天幕などにも用いられるらしい。ドンゴロスなんて初めて聞いたのになんだか懐かしい?
あぁ、お笑いコンビ「ドロンズ」のせいかも(笑)
67Pより。
―――「この社会の裏には隠されたカラクリがあるんや」
「知行合一」
「何としても奴らに一撃を喰らわしたらなあかん」
SNS上に溢れているようなそんな凡庸な台詞を、森嶋由紀夫は恰も自分独自の洞察であるかのように熱を込めて語った。―――
「ちこうごういつ」は、中国の明で王陽明がおこした学問である陽明学の命題のひとつ。「知ること」と「行うこと」は同じ心の良知(人間に先天的に備わっている善悪是非の判断能力)から発する作用であり、分離不可能であるとする考え。
論語の為政第二にある「先ず其の言を行い、而して後にこれに従う」が元になっている、とのこと。
正しいと理解はしても実行しなければ理解できていないも同然ってこと?
124Pより。
―――こういった人々はこの世に恒河沙の如く、即ちガンジス川の砂のように数え切れないほど存在する。―――
「ごうがしゃ」とは漢字文化圏における数の単位の一つで、恒河沙がいくつを示すかは時代や地域により異なるらしい。現在、一般的には10の52乗を指す・・・・・って、それほぼ無限じゃんか('Д')
170Pより。
―――野崎道太郎にとって、嫉妬は最も深刻な宿痾であった。―――
「しゅくあ」とは、長くなおらない病気。持病。
178Pより。
―――車が好きなのだ。そして、彼が欲しがっている車種の調べも付いていた。
「セリグマンS500は、いかがでしょうか?」―――
ネットで軽く調べてみたところ、セリグマンS500とう自動車は見つからなかった。じゃあこの名前は何なのかというと、セリグマンは多くのアメリカ人がかつて夢を持って憧れのカリフォルニア目指し東部から移動したアメリカのマザーロード『ルート66』の途中にある小さな田舎町。ルート66はアメリカのメインロードとして1920年代半ばに当時の主要都市シカゴから初めての大陸横断道路としてアメリカの東西を結んでいたようで。
ちなみにS500で調べるとメルセデスベンツがドンッと出てくるわ。
203Pより。
―――天気は曇りで、今日も特にこれと言って面白いこともないまま日が暮れて、晩御飯を食べ、風呂に入り、寝るだけの一日だと思いながら、CFに関するSNSの書き込みに目を通し、推しメンのアイドルの動画を見た。―――
推しメンとは「推しているメンバー」の略語で、アイドルグループのファン同士で頻繁に使用されるワード。 AKB48の人気が高まった約10年前から広まった言葉てことらしい。
最初読んだ時、「推しのメンズアイドル」って意味かと思ってちょっとびっくりしちゃった(笑)
213Pより。
―――それからマツマエキヨカズは微に入り細を穿って、一頻り犬殺しの話をした。―――
「びにはいりさいをうがつ」とは、きわめて細かな点にまで気を配る。という意味らしい。
街中で野良犬は本当にさっぱり見なくなったよね、野犬は今でも山の中とかにいるのだろうか?
野良を排除したのは人間のエゴですわ、でもこの安全な社会にどっぷり適応してしまっているのです(>_<)
275Pより。
―――まるで鬆の入った大根のような中身のなさが、二人を取り囲む世界の隅々にまで広がっているようで、浩子は何もかもどうでもいいような気がした。―――
「すが入る」とは主に茶碗蒸しやプリンを蒸したり、湯豆腐を温めるときに起こりやすく、加熱のし過ぎが原因でスポンジのように細かい穴が空いてしまうことを指すらしい。
大根にも鬆が入ったりするのかね?う~むむ、想像するに食感がよろしくなさそうだなぁ。
<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>
今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
304Pより。
―――彼女は階段を下りて改札を出ると、真っ直ぐにCFの幟を目指した。
彼女に気づいた平野京香が笑顔で頷き、豊崎和子が両手を差し出してきた時、高梨恵はこの先自分はCFのシステムを信じ、これを支える人間の一人になることを自分に課そうと決意した。―――

255Pの包丁握り締めて夜の街を駆けていく京香の場面は、読んでいてスカッとしたから描いてみたかったけどね。
それにしても罪を犯した人間にキッチリ罰を与えること、これが正しい人間社会ってやつでしょうに。
反省やら謝罪やら更生ってのはそのあとに続くことじゃないの。
だから京香がキツ~イ罰を与えた部分は読んでいて拍手喝采な気分だったよ。
でもああなってしまったらもう反省も謝罪も更生も出来ないか(笑)









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