タイトル 「横浜ではまだキスをしない 」(文庫版)
著者 樋口有介
文庫 346ページ
出版社 角川春樹事務所
発売日 2018年5月11日

<< この作者の作品で既に読んだもの >>
・「風の日にララバイ」
・「遠い国からきた少年」
・「少女の時間」
・「風景を見る犬」
・「魔女」
・「夏の口紅」
<< ここ最近の思うこと >>
ひっさしぶりに思い出したけど、2016年の9月に『窓の外は向日葵の畑』っていう小説を読んだのよ。男子高校生が主人公で、いきなり姿を消した女子生徒を探す夏のお話なんだけど、浮かんでくるイメージは明太チーズもんじゃと日焼け少女の真夏ちゃんだけ(笑)
細かい部分は全然覚えていないのが寂しくなるねぇ~。っじゃあなんで読んだ日付を覚えているかって?このブログ開始前に感想は書いたけど没にしたモノがいくつかあって、その一つが『窓の外は向日葵の畑』だったってことですたい。それならなんで急に思い出したの?って聞かれると、今回の小説を読んだせい・・・かも。
そんなこんなで樋口作品です。
2021年に作者が亡くなってから最新刊の『うしろから歩いてくる微笑』を読む前に、既刊本を読み漁るぞプランの第二弾。あらすじを読んでコレはぜひ夏に読みたいと思っていたけど、タイミングがズレたか何かでもう10月。でも温暖化現象のせいか、日本の気候がオカシクナッテいるのか、まだまだアホみたいに暑いから無問題。
それじゃあ、黄金町の大岡川沿いにある元畳屋から始まる、美女と陰謀と不思議な猫に振り回された男子高校生の夏休みに飛び込んでいこうぜ(=゚ω゚)ノ
<< かるーい話のながれ >>
高校二年の夏休みが始まったばかりの桐布アキオは、離婚して出て行った父親にある事を頼まれた。父親曰く、能代早葉子なる警察官が父親の実の娘だと告げてきたらしく、アキオにその真偽を見極めてほしいという依頼だった。父親は過去に警察に煮え湯を飲まされ、今では別の妻を持ち子供も生まれそうなのでなるべく騒ぎ立てたくないらしい。
能代の話がもし本当ならアキオの実姉になる人物で、父親から高額のおこづかいまで貰ってしまったアキオは仕方なくその依頼を引き受けた。
それが父さんの宿命だよ、歓呼堂、幽霊はなぜ夏に出るのかしら、冒険の旅に出たいです、フィーリングだよ、合格点、今年の夏休みは楽しくなる予感がしたの、たまたま、やはりなにかの確執がある、事件も解決したようなもの、怒っても無駄、幸運のピークか、自分の階級、もう事件には関わるな、背中の悪寒、負け犬の遺伝子、お前に大事な話がある、あると思うのは人間の感傷、宿命としてのご縁、キスもしていないのよ。
年上の人妻と秘密のアルバイト、ネジのぶっ飛んだ美少女と探偵ごっこ、そしてどこの誰ともわからない女性と謎の死を探る真夏の時間・・・。
今年も去年のように退屈だけど平和な夏休みなると思っていたアキオは、今まで生きてきた中で一番忙しくて運命的な夏休みを送ることとなる。
<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>
///IQ135のぶっとんだ美少女///
アルバイト中に寄った港の見える丘公園で、アキオは小学生ぶりにクラスメイトの村崎メイと再会する。一見お嬢様風な美少女だが、その中身は予想外のモノだった。38Pでは腰の後ろで腕を組み、憂うような瞳で首を傾げる仕草って、もうこれだけで可愛いと分かるメイの描写。
なのに話してみると43Pでは、早く歩けないのと告げる彼女はもしかして病弱な身体?・・・・・かと思ったら歩けるんかい!ただ単に疲れるからって理由が(笑)
そんなメイの挙動で一番驚かされたのはココかな。
ミケと赤レンガ倉庫へ行った後、山下公園でメイと待ち合わせをしたアキオ。
やって来たメイにミケの事情を説明するのだが、どうにも彼女は信じられないらしくいきなり強硬策を実行した。
141Pより。
―――「でもアキオくんにだけ話をするのは不自然すぎます」
言ったかと思うと、もうメイはこぶしを握り、知らん顔で目を閉じているミケの頭に、ガツンと拳骨を入れる。
ミケがギャッとわめき、メイの腕から跳びおりてベンチに着地し、そこからぼくの肩にジャンプして、震えながらキャップにしがみつく。
「メイ、おまえ、どうした?」―――
いきなり拳骨はヤバイよメイちゃん、そして拳骨した理由もなんつー無茶苦茶な(笑)
これはアレだね、西尾維新の物語シリーズに出てくる戦場ヶ原ひたぎみたいな感じのキャラかな。その他にもクレイジー系美少女の奇抜な言動&行動が満載だから、気になる方は読んでみるとヨロシ。
///親子の持論がおもしろい///
メイと二人で野毛山の動物園にやって来たアキオ。
久しぶりに訪れたチンパンジーの檻の前で、メイが買ってきたソフトクリームを食べながらアキオは動物園の魅力について語る。
100Pより。
―――「アキオくん、チンパンジーがお好きなの?」
「特別にチンパンジーが、ということもないけどさ。動物たちを見ているといろんなことを考えさせられる」
「たとえば?」―――
アキオが気付いた進化論の嘘になるほどなるほど、言われてみればそうだよなぁ~。
たまたま特異な個体が生き残ってきただけってのは、ロマンはないけど救いはある説って感じか。人間や動植物はこの先どうなっていくのかなぁ?
なんて途方もないことを一瞬考えちゃった(笑)
それにしても動物園よ、もう何年行ってないのかなぁ。
久しぶりに行ってみたい気もするが、でもおっさん一人は行きづらい(;´Д`)
続いてアキオの母親の持論。
自宅にて母親が仏像を木彫りする作業を眺めているアキオ。
作業が一段落したところでアキオは大学進学についての打診をしてみたが、意外にも一番問題となっていた資金面についてはあっさりと解決した。しかし母親は大学で学ぶ事についてこだわりがあるようで。
126Pより。
―――「だけどアキオ、政治とか経済とか、ああいう汚い学部はダメよ」
「分かってる」
「哲学とか心理学とか、詐欺みたいな学問もダメ」
「そうだね」
「文学部もダメ。文学なんて自分で本を読めばいいんだから」
「うん、一応ね、自然科学系を考えている」―――
子のアキオが面白いことを考えるのなら、母親のほうも独特な学問感を持っていたね。
汚い学部に詐欺みたいな学問て(笑)
そして文学なんざ本を読めば良いんだからって、確かにそうかもしれないけどさぁ(;^ω^)
こんだけスパッと言い放てる大人に憧れるよね、たとえ間違っていたとしても惹かれるものがあるわ。やはり自信のある人間は魅力的ってことか。
///新説!官僚システムの成り立ち///
大学受験勉強の合間に、メイから送られてきた過去の週刊誌記事を読み始めたアキオ。父親の書いた官僚利権を追求する記事は、確かにユーモラスで鋭く切り込まれた面白いものだった。
200Pより。
―――面白いのは「日本の官僚誕生物語」という記事で、一般的に官僚システムの成立は明治以降とされているが、親父の見解は徳川時代。―――
なるほどこれは確かに分かりやすくて納得してしまう説だわね。
でもお侍の時代なら必要なくなった人員はお上の一声で簡単に切り捨てられそうだけど、そーゆー訳にもいかなかったのかな?用済みでクビは理不尽すぎるってことで反乱でも起こされたら面倒かもだけど。
しかし勤め人の為に必要のない仕事を用意するなんて、羨ましすぎる立場ですなぁ(;´∀`)
海外にも官僚に似た存在ってあるんやろうか?
<< 気になった・謎だった・合わなかった部分 >>
///乙女が恋する理由とは///
なんで村崎メイは桐布アキオにベタ惚れしたんだろう?作中ではもう愛してるってレベルの惚れ具合。確かにアキオがモテる系男子であることは詩帆との関係から想像できるけどさ、それでもねぇ(;´・ω・)
実は小学生の頃にメイが先に好きになって、転校後ずっと死んだと思っていたら港の見える丘公園で偶然に再会。さらにメイの自宅にあるランプシェードはアキオ母製の物、こりゃもう運命でしょって感じで盛り上がったのか?
メイ自身も中身がぶっ飛んでいるにしても、外見は美少女だし実家が太いんだから狙う男は多そうだけどね。
まぁ、それを言ったら大抵のラブコメ作品は成立しなくなっちゃうけどさ(笑)
///季節と共に移りゆくもの///
歓呼堂の詩帆からアルバイトを依頼されたアキオは、誘われた軽井沢の話を頭の隅に置きつつ届け物を持って出発した。届け先の客層は社会的立場のある者がほとんどらしく、信頼と秘匿性が重要視される業務だった。
35Pより。
―――こんなアルバイトが一週間もつづくことがあるし、月に一、二度のこともある。去年の例からして夏は暇だろう。―――
なぜ夏はアレの受注が少ないのか?やはり立場ある人たちが顧客なら、夏季休暇の時期は家族サービスとかであちこち出かけるから?
寒くなってくると人肌恋しくなるから欲も沸き立つってのは共感できるけど、現実市場でも冬の方がアダルトな動画の売れ行き良いのだろうか。
自身の経験から考えてみるとぉ~・・・・・一年を通して変わらないけどなぁ(;^ω^)
///気づいてた?気付かなかった?///
保士ヶ谷にある能代早葉子のマンションへ電撃訪問したアキオ。
早葉子が出生するに至った経緯や、本当の血縁関係を知った後の選択などを聞きながら、彼女が信用できる人物かどうか判定する。
73Pより。
―――「それで母に、それとなく聞いたの。そうしたら『実は』と。気にはしなかったのよ。能代の父は凡庸だけど善人だし、私も海産物問屋のお嬢様でいたほうが楽だったもの」―――
早葉子は両親の血液型OとBからA型の子供は生まれないと知り、自身の出自に気付いたようだけど、親父さんのほうはどうだったのか?
自分の子供の血液型って知らなくても普通な事なのかね?
まぁ世の中には自分の血液型を知らないって人が何人かいたけどさ(;´∀`)
血の繋がらない早葉子のパパさんは仕事一筋で子供に関してはそれほど気にしないタイプだったのか、はたまは善人だったから知っていたけど知らないふりをしていたのか・・・。
<< 読み終えてどうだった? >>
///全体の印象とか///
2016年に単行本の『ぼくはまだ、横浜でキスをしない』が刊行されているから、恐らく2014~2015年くらいの時代設定だと思う。
いつものように全てアキオの一人称視点で語られている作り。すっかり脳に馴染んだこのスタイルが落ち着くわぁ。
今まで読んで来た樋口作品には珍しい点があって、主人公とその父親がしっかり登場してお互いに会話をしているのがおやっと思った。
それに樋口節的な独特表現が少ないような、万人向けにマイルドになっているようにも感じたね。この作者の作品を読み慣れたおじさんには、ちょいと物足りない気もした。
あとなんか実写のフォトがちょいちょい載っていて、電動自転車と美少女のモデル(おそらく村崎メイ役)が物語の想像を助けてくれる。
でも作中のメイはショートヘアーだったはず・・・。
///話のオチはどうだった?///
ビックリするような展開もあったけど、最後はなんやかんやで大円団。
いささか全てがうまくいき過ぎなハッピーエンドに物足りなさを感じるのは、やはり中年読者の感性の問題か?
まあ高校生の夏物語なんだからこれくらいが丁度いいのか。
7月後半くらいの夏の始まりに読むのが一番オススメな物語だったね。
そして気になるアキオとメイの関係ね。
大学受験を控えた二人はこの先どうなっていくのか?
負け犬の遺伝子が発動してしまうのか、メイの気まぐれが夏休みと供に終わってしまうのか、それとも五十年後も二人でこの場所にいるのか?
ワタシ、気になります!・・・・・・・いや、でもやっぱり知りたくない気もする(笑)
///まとめとして///
今回の小説に書かれていた変態小説家と黄金町、たしか前回読んだ小説は友成純一の髑髏町奇譚・・・。これまさしく奇妙な偶然か?
まあそんなことは置いといて(笑)
あっさりテイストの文体、若者向け青春ラブコメファンタジー?、洒落た電動自転車、美少女モデル起用のフォト画像、ひょっとして『横浜ではまだキスをしない』は若い世代を取り込むために、色々とコラボして作られた一冊だった?
もしそうだとしたら、販売結果はどうだったのかなぁ。個人的に無責任に考えたけど、読書しない人に寄せるより読書家は何故読書を楽しめるのか?ってことを探求していけば、その先に読書人口増加の何かが見つかるかも?なんてこと思った今日この頃です。
なんだか話が逸れたから締めとしませう。
男の子なら誰しもが憧れてしまうボーイミーツガールな夏休み。童心に帰ってアオハルな香りを嗅いだ気がしたよ。
この一冊を読み終えて、2024年の夏は終わったわ( ˘ω˘ )
高校生に戻って、夏の日差しを浴びながら電動自転車で横浜をゆったり走りたくなる満読感、頂きました。
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。
24年10月12日の土曜日。朝晩はすっかり冷え込むのに日中は26℃まで熱くなるヘンな天気の日に読了。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
14Pより。
―――親父のほうは東京のマンションで普段はまるで没交渉だから、隠し子の一人や二人出てきたところでぼくにどんな禍根が残る。―――
「ぼっこうしょう」とは、交渉がないこと、無関係、という意味らしい。
23Pより。
―――「北海道の函相寺、新幹線ができて観光客が増えてるらしいわ。私は作品さえつくれれば文句はないけどね」―――
北海道の函相寺というのはネットで検索しても見つからないから、これはフィクションということか。まあ、像のお顔を色っぽくお願いする寺を実名で出したりするわけないし当然よね(笑)
29Pより。
―――なにかの催事に「伊勢左木町ブルース」とかいう歌謡曲が流れることもあるが、ここ以外では聞いたことがない。―――
「伊勢佐木町ブルース」は青江三奈の楽曲で、1968年1月5日に発売された7枚目のシングル。
伊勢佐木町は神奈川県横浜市中区の繁華街であり、当曲は同場所のご当地ソングとしてもよく知られているとのこと。
2001年公開の映画『ウォーターボーイズ』では、劇中の挿入歌としても使われたらしいけど全く分からない。だからYouTubeで探してみたら・・・・・あぁ~、このイントロ!!
77Pより。
―――警察官の能代さんが親父に「また罠を仕掛ける」可能性も考えられないし、それどころか親父の汚名を雪ごうとまでしている。―――
汚名を「そそぐ」とは、不名誉や汚名を、名誉・功績によって消し去るという意味。または恥や、よごれを洗い落とす。「すすぐ」とも言うらしい。
そそぐと聞くと流し入れているみたいで、汚名を追加しているのかと思っていたわ(^^;)
89Pより。
―――「フグは食べられないでしょう」
「餌から毒が蓄積されるだけでフグ自体に毒はない。おれは食べるために飼ってるわけじゃないけどさ」―――
フグが毒を持つのは、餌によって体内に毒が蓄積するためで、自ら毒をつくり出している訳ではないようで。 どうもフグは偶然に餌から毒を蓄積しているのではなく、餌としてテトロドトキシンをつくる海洋細菌を食べている巻貝やヒトデ類を好んで食べているからってことらしい。
実験的にフグを卵から人間の手で管理し、人間が与えた餌のみで育てると無毒のフグとなるだってさ。養殖のフグなら免許なしで素人でも調理して良いんだろうか?いやしないけどさ(;^ω^)
136Pより。
―――「アキオねえ、ワタシ、赤レンガ倉庫へ行きたいな。あそこのバシャミチアイスって、ものすごく美味しいよ」―――
明治2年に横浜・馬車道通りで町田房蔵という人物が日本人ではじめてアイスクリームを製造販売したといわれていて、「横濱馬車道あいす」はその風味をイメージして仕上げたらしい。
ちょっと懐かしい味わいのアイスかぁ、ソフトクリームかと思ったら以外にもカップアイスだったのね。赤レンガ倉庫で馬車道アイスを食べる夏休み、過ごしてみたいねぇ。
147Pより。
―――元町のメインストリートにブティックが多い理由は、昔元町カジュアルとかいうファッションが流行った名残りだという。―――
「ハマトラ」とは、1970年代後半から1980年代前半にかけて、横浜・元町界隈で流行したトラディショナル・スタイルのファッション。「横浜トラディショナル」を略して「ハマトラ」と呼ぶらしい。
横浜・元町界隈に集う女子大生たちの独特のコーディネートを指し、主に女子学生やその年齢層の若い女性に好まれたってことみたいだけど、コレが「元町カジュアル」ってことなのかな?
338Pより。
―――「泊っているグランドマウンテンビューというホテルに、よさそうなレストランがあった。アキオ、今夜の七時でどうだ」
「お父様、あのホテルには『奥信濃』という料亭が入っています。おすすめは霜降り肉のしゃぶしゃぶで、おつまみには馬刺しも珍味です」―――
ネットで探してみたところ、グランドマウンテンビューなるホテルも奥信濃という料亭も見つからなかった。どこかを参考にして造ったのかな?逆玉の輿なアキオが羨ましいねぇ~。
<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>
今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
268~269Pより。
―――お袋の木槌がとまり、メイが腰をあげ、そのロングスカートが妙に決然と、僕のほうへ歩いてくる。いつもはぼんやりした感じの目が、今夜はぼくの顔に焦点を結んでいて、なんだか、怖い。
「やあ、来ていたのか」
「来てはいけないの」―――

畳屋と言えば、人生で一度だけ店内に入っていったことがあるのを思い出した。
めっちゃ若い頃にバイト仲間で呑み会をした時に、酔いつぶれてダウンした後輩の実家が畳店だった。ダウンした彼を数人で担ぎ運んで、その様を見たご両親は「ご迷惑をおかけしてすみません」と謝られていたけど、コチラこそご迷惑をおかけしてほんとごめんなさいだったわ。急性アルコール中毒とかになっていたら洒落にならんもんね。
マジお酒は適量を楽しみましょうってことよ。
遠い思い出だなぁ・・・・・歳をとってしまったなぁ(´-ω-`)









![アウトブレイク [DVD] アウトブレイク [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/41HaobnscpL._SL500_.jpg)