タイトル 「少女の時間」(文庫版)
著者 樋口有介
文庫 352ページ
出版社 東京創元社
発売日 2019年5月21日
この作者の作品で既に読んだもの
・「風の日にララバイ」
・「遠い国からきた少年」
<< ここ最近の思うこと >>
忘れもしないシリーズ第一作目のタイトルは「彼女はたぶん、魔法を使う」だった。
あれからもう何年たったのか・・・。
まだ読書初心者だったおじさんが、友人に勧められてとりあえず読んでみた作品。
読み終えての感想は「どーなのこれ?イマイチしっくりこないじゃ~ん」だったのに、気がつけばシリーズ全て購入て(笑)
『永遠の38歳 柚木草平の事件簿』シリーズを、遂に載せる時が来たぜ!!
さぁ~て、今回の美女達はどんなんかな~っと(*‘∀‘)
<< かるーい話のながれ >>
元警視庁捜査一課の警部補で現在はフリーライターの柚木草平(妻と娘は別居中)
娘との旅行費を稼ぐために月間EYEs編集者の小高直海に仕事とお金の打診をしたところ、二年前に起こった強姦魔による女子高生殺人事件の調査を提案された。
特に引っかかることのないような事件だが、当時被害者女子高生と仲の良かったベトナム人留学生が、最近になって捜査している刑事に脅されて震え上がっているらしく、安心させてやってほしいとか。
渋谷にある東南アジアからの留学生支援ボランティア組織に、その人留学生は通っているらしい。
そこで柚木草平は待ち受ける美女達に翻弄されつつも、二年前の事件を少しずつ紐解いていく。
冬休みに奄美大島へ、二年前の大森女子高生殺人事件、PSE、ミス警視庁に選ばれた美人刑事、マリファナ、対韓工作、日本初の女性警視総監、大麻草と預金通帳、里山明依と焼き鳥、利きチチャ、深夜のベタの死闘、グエン・バン・タイン、敵前逃亡は許しません、秋山川での事故、小さい紙包み、六千万円ほど、芦田かほりの殺害犯人、メモリの映像、卑怯者・・・。
永遠の38歳、柚木草平が事件と金と美女に翻弄される青春推理小説。
―――『美女からの調査依頼に心は浮き立ち、事件の顛末は俺を哀しくさせる。』―――
帯に書いてある↑の言葉が、染みるねぇ・・・。
<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>
///柚木草平の独特な言い回しを味わえ///
17Pより。
―――雨と人生に辟易はしても部屋へ帰ればシャワーから湯が出て冷蔵庫にはビールがあって、それに退屈という名の自由が待っている。―――
退屈を感じることが出来るってことは、それだけ自由な時間があるってことなのかぁ。
歳を重ねたからこそ、無為に時間を過ごす喜びがわかる・・・・・渋いねぇ。
///吉島冴子の魅力溢れる表現に共感///
133Pより。
―――かるくマティーニをすすり、きれいな首をみせつけるように、冴子が少し顎をあげる。その目をほそめた感じが俺を揶揄しているようでもあり、慈しんでくれるようでもあり、自然に俺は、泣き虫で甘えん坊だった少年時代を思い出す。―――
コレは分かる気がする!
自分にとってタマラナイ美女を見る時って、無条件に白旗上げて甘えたくなっちゃうよね!
(あれ・・・ならない?・・・おじさんだけ?)
小高直海によって持ち込まれたPCのメールアドレスをonnatarashi@に設定するお茶目なところもまたイイね!
///今回はクロスオーバー出演がそこかしこに///
136Pより。
―――店のドアがあいて、背の高い女が顔をのぞかせ、そのまま初老男のとなりへ向かう。安物のスーツに無骨なショルダーバックをかけているが、スタイルはいい。前にも一、二度、この<クロコダイル>で見かけたことがあったか。―――
出ました!「風町サエ・シリーズ」から主人公の風町サエさん!
それに女性刑事の吹石夕子という人物は「枯れ葉色グッドバイ」という作品から。(コレは読んだよ)
枝沢柑奈という人物は「風景を見る犬」という作品から。(コレはまだ読んでな~い)
さらにさらに。
324Pの柚木に義理を感じて秩父のワインを送ってくれる人物というのは、過去シリーズの「探偵は今夜も憂鬱」に収録されている「雨の憂鬱」って話に繋がっているとか。(コレは読んだけど忘れちゃった)
とりあえずファンとしては、「風景を見る犬」を読むっきゃないわな(=゚ω゚)ノ
<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>
///悩める美少女高校生の山代美早が読めない///
お金持ちで美人の母親を持つ絶世の美少女、山代美早という高校生。
数々の美女に出会って来た柚木でさえタジタジになってしまう美早の言動と行動におじさんクギヅケ!
・酔っぱらって夜遅くに柚木の部屋へやって来て、そのまま寝てしまう。
・柚木に自身の母親と結婚して家族になりましょう、などと突然迫って来る。
・「わたし、ファザコンなんでしょうかね」と柚木に聞いてくる。
・柚木の部屋の洗濯機を漁ってアレを見つける。
とにかく予測できない美少女が宙ぶらりんで終わっちゃったから、ちょっと消化不良気味だね~。
(でもでも、なにやら次回作にも登場するようなしないような・・・)
///柑奈さん、なぜアナタは下着を置いていくのですか!?///
PSE理事であり、柚木の担当編集者である小高直海の友人でもある枝沢柑奈(もちろん美女)
彼女は作中で柚木と遊びな関係になるのだが、何故か彼の部屋に自身の下着(下半身)を置いていく。
そのせいで柚木がハラハラドキドキする場面が何度かあるのは良しとして。
なぜそんなことをするのか?マーキングなのか!?
いつだって美女に振り回される柚木、おじさんも美女に振り回されたい(ノД`)・゜・。
<< 読み終えてどうだった? >>
///全体の印象とか///
柚木による喫煙描写と飲酒描写がたっぷりで、煙草はもう大丈夫だけど酒がね・・・。
いたるところでビールやら洋酒やら口にするから思わずおじさんも飲みたくなっちゃう(;^ω^)
それにしても今回は美女&美少女増し増しな内容だったなぁ。
個人的に「柚木草平シリーズ」はキャラクターと捻くれた中年の語りが一番のウリだと思うのよね。
だから大衆向け小説ではない、ような気がする(笑)
(でも数冊読んだらいつの間にかヤミツキになっちゃうかもよ?おじさんがそうなったみたいに)
///話のオチはどうだった?///
酒とつまみを貪る吹石夕子刑事から捜査の報告を聞いた柚木。
疲労から彼女が眠った後、一人で監視カメラのデータを確認していて、事件の真相に気づく。
真実を確信したのはおそらく柚木一人だけ・・・・・いつものように哀しい気持ちにさせる。
野川亜矢子の純粋で正直な『少女の時間』がもっと早くに終わっていたら、こんな事件は起きなかったのかも・・・。
「ほんと、厄ばっかり」ってセリフが染みるわ(ノД`)・゜・。
読了後のしんみり感?哀愁?切ない感じ?そーゆーのがイイと感じるようになったのは、歳のせいなのか人生経験のせいなのか、はたまた諦めることに慣れたせいなのか。
だがしかし!
落ちそうな気持を救ってくれるラストが有り難い。
シリーズ第一作目「彼女はたぶん魔法を使う」を彷彿させるエンディングが、おじさんの気持ちを温めてくれた(´▽`)
///まとめとして///
小学生らしさからどんどんかけ離れていく可奈子の言動。
小高直海ほのぼのローンにまで縋りつく草平の懐具合。
政界進出に意欲を燃やしはじめている?知子。
冴子との関係もこれでおしまいになってしまうのか?
金も美女も現れては消えていく人生に流されるまま、柚木草平とクロコダイルの武藤がいつか夜明けのコーヒーを二人で飲む朝がきてしまうのか!?
次回作は「うしろから歩いてくる微笑」というタイトルだ(=゚ω゚)ノ
今回も柚木草平ワールドをたっぷり堪能できたので満読感90点!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
9Pより。
―――だからといってケータイの事実を知子に知られたら、朝昼夜の区別もなくあの舌鋒に追いまわされる。―――
「ぜっぽう」
言葉のほこ先、または鋭いものの言い方のこと。
14Pより。
―――「リザンテラはラン科の花でね。本当に地下で花を咲かせるの。これまではオーストラリアにしかないと思われていたけど、奄美大島でも見つかったの。―――
「りざんてら」
芋のような太い茎と150もの小さな花が密生した花茎を持つこの花。
深いものだと地下30センチもの深さにその姿の一切を隠し、地中の菌類や樹木から栄養を吸収しているとか。
花とは思えないような姿ですな。
ネットで検索したところ、奄美大島で発見されたっていう話は見つからなかった( ;∀;)
36Pより。
―――文化村通りをはさんだ北側は松濤で、路地を二十メートルほど入ったあたりにある山代ビル意外に間口の広い四階建て。―――
「しょとう」
渋谷区の南西部に位置して町域内の多くは住宅地として利用される。
東京都心を代表する高級住宅地の一つとしても知られている。
「松濤」はかつてこの地に茶園「松濤園」があったことに因み、茶園の名が町名となった珍しい例とか。
87Pより。
―――「草平ちゃん、チチャって知ってるの?」
「いや」
「トウモロコシの噛み酒よ」―――
「チチャ」
南米ペルーで良く飲まれているお酒。
原則として発酵を止める作業をしないので賞味期間はきわめて短いみたい。
飲み頃になってから1週間もすると舌を刺すくらい酸っぱくなってしまうってことらしい。
176Pより。
―――そのわりにはずいぶんラーメン屋の多い町で元祖ナントカだの青竹打ちカントカだの、いたるところにラーメン屋の看板が出ている。―――
佐野市ホームページにも紹介される佐野らーめん。
全国的にも有名な佐野市のご当地ラーメンで、佐野市の美味しい水を利用した澄んだスープ、麺に適した良質の小麦、青竹打ちによる製麺技法が独自の味とコクを引き出るとか。
佐野市らーめんマップを見てみたけど、確かに多いね(;^ω^)
190Pより。
―――そこから<マダムと奇人と殺人と>というフランス映画を選択し、グラスに氷を落としたとき、部屋のチャイムが鳴る。―――
97分の映画で舞台はベルギーのブリュッセル。
“美大生連続殺人事件”の捜査に乗り出したレオン警視のお話。(なかなかに個性的な内容みたいね)
へえ~草平さんはこーゆー映画が好きなのか。
(このあと突然やって来た意外な美女が、また面白い展開にしてくれる)
256Pより。
―――「ジャガ芋って数奇な運命なのよね。青木昆陽もサツマ芋ではなくてジャガ芋を普及させていれば、東北の飢饉は防げたし江戸幕府も倒れなかったと思うわ」―――
江戸時代中期の幕臣御家人、書物奉行、儒学者、蘭学者。
サツマイモの普及を図り、甘藷先生(かんしょせんせい)と呼ばれていたらしい。
おじさんも美人学者の柑奈さんとお食事したい!
じゃなくて、当時ジャガ芋って日本にあったのかな?
258Pより。
―――俺にはどうでもいいことだが、柑奈の解説も、もしかしたら学術的に高邁なのか。口調にも表情にも力みがなく、茶飲み話のように淡々と専門知識を披露する。―――
「こうまい」
志が高い、他の人達よりぬきんでているということ、らしい。
291Pより。
―――カマボコの生ウニ和えがなかなか乙な味で、この次は醤油の代わりに梅干しにしてみようと思ったとき、部屋のチャイムが鳴る。―――
これはお手軽そうだし今度作ってみようかな。にしても生ウニ常備とは、ええもん肴にしてるなぁ。
(このあと突然やって来た意外な美女が、またまた予想外な話を持ってくる)
319Pより。
―――「サムサというウズベキスタン料理をご馳走するわ」
「ウズベキスタン料理?」
「去年ちょっと行ってきたのよ。イスラム教徒の国なのに、みんなワインを飲むの。可笑しいでしょう」―――
ミートパイみたいな料理。
サムサはウズベキスタン料理で、三角形の形のものもあれば丸い形のものもあり、中身は肉やカボチャなど。(隠し味で生地の中にウォッカを入れたりもするとか)
<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>
今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
159Pから始まるプチ修羅場をチョイスしたぜ。
(女性のヘアスタイルバリエーションを増やす鍛錬が必要だなぁ・・・)
捜査情報を共有する為に柚木の部屋にやって来た吹石夕子刑事と、記事が正式な依頼になったことを報告に来た小高直海が鉢合わせになる場面。
無言で睨み合ってからの口喧嘩になってしまう二人に、タジタジになってしまう柚木。
2人の言葉の応酬がまた読んでいてオモシロくってさぁ(笑)