忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

DINER 読書感想

タイトル 「ダイナー」(文庫版)
著者 平山夢明
文庫 533ページ
出版社 ポプラ社
発売日 2012年10月5日

f:id:mitemite753kakuyo:20210328183913j:plain f:id:mitemite753kakuyo:20210328183922j:plain



この作者の作品で既に読んだもの
・「独白するユニバーサル横メルカトル」
・「メルキオールの惨劇」

<< ここ最近の思うこと >>

真っ先に浮かんだのは「パルプ・フィクション」のハンバーガーを食べるシーン。
あーーー!! もうとにかくハンバーガーが食べたい!!!
数年前に本屋でコレを見かけて「またぽっとでのイロモノ小説が出てきたわい、フンだ!」なんて思った自分を貼り倒したいくらい後悔している今日この頃。
ついに・・・・・ついに読む時が来たぞ。
道徳心の欠片もない、しかし人間味のある平山ワールドへ飛び込むのだ(゚Д゚)ノ
さあ、地獄の底にあるダイナーへ行って、極上の味に舌鼓を打とうじゃないか。


<< かるーい話のながれ >>

報酬30万円で軽リスク有りの運転手アルバイトに応募したカナコ。
もちろんマトモな仕事の訳がない。
反社会組織の金を強奪しようとして失敗したD・Dとカウボーイの仲間とみなされて、カナコは生き埋めにされて殺されそうになるが、がむしゃらな一手を打ちだし幸か不幸かカナコに買い手がついた。
彼女を買ったのはボンベロというコックだ。

地下の頑丈なドアに塞がれたダイナーにて、カナコはウェイトレスとして買われたのだった。
しかしその店は殺し屋専用のダイナーで、ボンベロという男も元凄腕の殺し屋。
壁に掛けられている8人のウェイトレスの写真、それはここで死んだ者達だと教えられる。
そしてカナコは近い将来9人目になるだろうと宣言された。

大馬鹿な子、人質、キャンティーン、キッド、瓶と女の取引、菊千代、慈善事業、デルモニコ・レギュレーション、ボイルと犬のボイル、コフィと歌姫、ダイナーの目的、完璧なスフレ、炎眉、ミコト、ゾーラ、心臓の鼓動、魔術師のオヅ、九十九九、子殺しは大罪、ブルーピッグ、無礼図、料理をしろ、ボンベロの背中、義眼、チンパンジーの小便・・・。

地獄に一番近い地下のダイナーにて繰り広げられる、生と死の闇鍋みたいなエンターテイメント。
ある日突然、非日常へと堕ちてしまったカナコ、果たして彼女は生き延びることができるのか?

<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///死体の処理方法になるほど///
323Pより。
―――「死体に重りをつけて捨てるのは素人だ。プロは魚が通れる程度の隙間のある金網に入れる。網なら潮の影響も受けにくいし、腐敗ガスが充満しても浮かび上がることもない。身は魚が綺麗に骨にしてくれるし、網がさびて壊れる頃には骨も崩れて跡形もない」―――
ほぁ~なるほどねぇ( ゚Д゚)
たしかに重りを括りつけて沈めても、ちぎれて体の一部が浮かんできたりしたらアウトだもんなぁ。
マンガの『闇金ウシジマくん』では死体を完全焼却してブロック氷にして海に捨ててたけど、真偽はわからない情報でも納得できる説明があるとグッと重みが出るよね。

///お前のソコはどうなっているんだ?///
467Pより。
―――「公共の安全と秩序を維持する厳しさが、おまえにもわかったか!」―――
カナコと同じ制服を着てあんなことしながら↑みたいなこと言ってもねぇ(笑)
しかしアレってけっこうな長さと太さがあると思うんだけど、よくもまぁ・・・。
さらにその後でカナコが言った―――「あなた、あそこは倉庫じゃないのよ」―――ってツッコミがまたウケるね。
めっちゃハラハラドキドキな場面なのに(笑)

///平山夢明ワールドには珍しいアツい展開///
今までなんとかギリギリのところで生き残ってこれたカナコだけど、今回ばかりは完全におしまいってなってしまった終盤で、こんな展開になるとは予想外だったわ。
いやでもほんのりとは期待していたし予想もしていたよ?
それなのに―――「冗談じゃないぞ!」―――ってところを読み始めたら、もうブワワって沸き上がる感情を抑えきれなくなっちゃうんだよ。
読者の期待にバッチリ答えてくれる王道展開が素晴らしかった!


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///どうしてドアが開いたのか?///
190Pから。
―――プシュッとドアが鳴るとキッドが、ふらふらしながら入ってきた。酷く疲れてい見えるのは帽子が無く、服がなんとなく皺くちゃで破れているからだった。―――
キャンティーンの入り口のドアはライフル弾でも通さない重厚で頑丈な扉になっていて、ボンベロが持っているスイッチを使わないと開閉できないようになっていたはず(たぶん)
なのになぜボンベロが留守の時にドアが開いたのか?

///九はカナコの知り合いだったの?///
433Pより。
―――「俺の知り合いに大莫迦な子っていうのがいてな、ロクな死に方しなかった。あと、水田真理。小田マリっていうのもいたな。みんな、ロクな死に方をしなかった」―――
大鋸屑として連れて来られた九が↑こう言っているけど、カナコ自身は知り合いっていう雰囲気じゃないし、やっぱり他人同士なのかな?
(もしくは九が事前にキャンティーンのことを調べ上げていたから、カマをかけてみただけ?)

///終盤のクライマックス大集合であの人も///
467Pより。
―――顔を上げた途端、私は凍りついた。
「あんた、カナコ?」
男と女が立っていた。ふたりとも忘れようにも忘れられない人間だった。―――
まさかこんなところで登場するとは( ゚Д゚)
あの状態からどうやって生き延びたのか?
どんな恐ろしいことをして生きながらえてきたのか?
その辺を詳しく知りたいわぁ。


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
今まで読んできた平山作品の中で、初めて女性が主人公のストーリー。
カナコ視点で語られる訳だからほとんどダイナーの中だけで話は進んで行く。
外の場面は最初と最後の少しだけだったね。
それなのに中だるみしないで読み進めてしまうのは流石だわ。
連作短編だからってのもあるけど、先の読めないビリビリした緊張感がおじさんを休ませてくれない。
分厚い文庫本なのにずっと集中して読んじゃった。

///話のオチはどうだった?///
まあまあ、エンタメ小説って感じだからなんとなーくこうなるよねって考えてはいた。
だけどその結末に至るまではまったく予測できない展開の連続だった。
終盤の怒涛な展開で思い出すのは映画「レオン」だけど、あそこで料理ってのは凄いチョイスね!
(読みながら頭の中では、スローモーションで銃撃料理シーンが再生されたわぁ)
そして「メルキオールの惨劇」もそうだったように、この作者が描くラストシーンはどうしてこうも、切ないような寂しいような・・・・・それなのに悪くない気分にさせてくれるのか。
(勝手な妄想だけど、エンディング曲は『Mr.Big』の『Shine』が良いかな~って思ったり )

///まとめとして///
おじさんにはどんな靴が合うのかな~?
まだまだ人生迷走中だから、タフで頑丈な靴がしっくりくる人間になりたいわぁ・・・。
ってそんなことはどうでも良くて、コイツはめちゃめちゃ面白いエンタメ小説だったよ!
グロとかホラーとかイケる人なら、間違いなく読まなきゃ損っていう一冊( `ー´)ノ

文庫版のあとがきにて、こんなことが書いてあった↓
―――読者諸氏の一時の憂さ晴らしになれれば、これに勝る幸せはない。―――
んもう、最高の憂さ晴らし小説(=゚ω゚)ノ
「面白かったぜ!ダイナー」って声に出して叫びたくなる一冊よ!
読む前から期待していたのに、読み始めたらそれ以上の興奮を与えられる小説は凄いと思うのよ!
ってことで満読感はもちろん高めな97点!!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

「ダイナー」はなんと第28回日本冒険小説協会大賞と、第13回大藪春彦賞受賞作の2つを受賞しちゃっているのです!

「ダイナーⅡ」という作品が連載されているとのこと!
完結するのはまだまだ先だろうけど、楽しみ過ぎるぅ(=゚ω゚)ノ

実写映画がありますよ・・・・・いつか見る機会があるのかな?
(マンガもあるみたい。

深夜アニメかOVAで作ってくれないかなボンベロの声は杉田で)

77Pより。
―――突然、喉が掴まれ、躰がそのまま持ち上げられた。
「ディーヴァ・ウォッカ。あれに触ったのか」―――
スコットランドシェトランド島にある、ブラックウッズ蒸留所がリリースしているウォッカ
北欧産の白樺とダイヤモンドで濾過されたウォッカだが、価値があるのはボトルの中に入っている1億2000万円ほどのダイヤモンドなのでウォッカ自体はほどほどなお値段らしい。
現在では世界第3位くらいのお値段だとか。

103Pより。
―――「メルティ・リッチです」
「ありがとう」
スキンは頷くと本を置いた。表紙にはジェームズ・フレイザー金枝篇』とあった。―――
金枝篇」はイギリスの社会人類学ジェームズ・フレイザーによって著された未開社会の神話・呪術・信仰に関する集成的研究書で完成までに40年かかっていて、全13巻にもなる大作だとか。

124Pより。
―――「店の奢りだ、遠慮するな。そこのジジイが飲んだのと同じ。エストニアスピリタスを超える酒だ。アルコール度数98。一気に飲めよ。ゲップに火がつく」―――
ソビエト時代に作られていたらしいウォッカエストニアはアルコール度数98%で、当時では世界最強度数のお酒だったみたい。
現在では製造されていないらしい。

138Pより。
―――「良いだろ。クルップKK。マグナムの弾だって装填できる。もっとも俺用にだいぶ手を加えたけどな。こいつぁ、水中でも撃てるんだぜ」―――
ネットで検索してみたけど、まったく見つからないよぉ(ノД`)・゜・。
デリンジャーよりも小型な隠し銃なのかな?

271Pより。
―――「兄弟。それは誤解だ。未だにそのような心ない噂があると聴くが、私の仕事における売上と資産は、今や祖父から引き継いだものの三倍強となっている。額の多寡だけで偉大さを推し量ることなどできぬが・・・・・。私はそうしたデマゴギーには常々心を痛めているのだよ、ファキール」―――
「でまごぎー」
相手を中傷して、悪評を招くように流す、虚偽の情報ってことらしい。

356Pより。
―――「俺は医者なんだよ」ソーハが呟いた。「産婦人科だ。それも堕胎専門だったんだ。俺は描き出すのが好きなんだよ」
「だから掻把なのね。趣味が悪い」炎眉が眉を顰めた。―――
「そうは」
治療や診断のために子宮内膜をかきとること。
または人工妊娠中絶のために、子宮内の胎児を体外に出す手術。

370Pより。
―――硬いとばかり思っていた表面は実になめらかなシュー生地だった。なかには小さなマジパンがクリームと蜂蜜のなかに埋まっていた。―――
マルチパンもしくはマジパンは、砂糖とアーモンドを挽いて練りあわせた、餡のような食感と独特の風味がある洋菓子。
スペインのトレドやラ・リオハ、ドイツのリューベックシチリアパレルモの名物として知られているらしい。

442Pより。
―――が、そこらじゅう噴火口のようになってしまった腕には適当な血管が見あたらない、女は口を大きく開けると舌を丸め、注射器を近づけると、その付け根に針を立てた。―――
ドラッグ中毒者が舌の根元に注射をするなんて方法は知らなかったからネットで調べてみたけど、そんな方法は見つからなかったなぁ。
作者が見てきたやり方なのか、誰かから聞いたやり方なのか、どちらにしても恐ろしいわね(・・;)

486Pより。
―――「なんだウッズマンじゃないか。なんでこんな骨董品を」
「ソーハという莫迦が持ち歩いていたんだ。文句を言うな」―――
コルト・ウッズマンは、アメリカの銃器メーカーであるコルト社が1915年から発売した自動拳銃。
競技用に開発された拳銃で、使用弾は威力の低い.22LR弾、装弾数は10+1発。
ウッズマンには膨大なバリエーションがあるみたい。
作中では衰弱した者でも撃てるように、電動歯ブラシと粘着テープを使って引き金を引きやすくしていたみたいだけど、一体どんなふうに組みつけたのか気になるわ。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
水平二連タイプなのか、上下二連タイプなのかわからなかったけど、おじさんは映画の「マッドマックス」が好きだから水平二連ショットガンをチョイスしたよ。
475Pより。
―――無礼図はショットガンを銃床を下げて折らせると銃身から薬莢を取り出させた。
「味わうが良い」
無礼図は銃身を漏斗代わりにディーヴァを注ぎ込み始めた。―――

f:id:mitemite753kakuyo:20210328183929j:plain

名残惜しくもシャーペン描きは今回で最後。
次回からは初の試み!
ちゃんと描けるからなぁ、描けないだろうなぁ(;'∀')

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

 
Diner ダイナー

Diner ダイナー

  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: Prime Video