タイトル 「宇宙船ヴァニスの歌(4) 戦闘娼妓伝」(kindle版)
著者 友成純一
紙のページ数 243P
出版社 アドレナライズ
発売日 2015年9月8日
<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・「凌辱の魔界」
・「獣儀式」
・「ナイトブリード」
・「肉の儀式」
・「肉の天使」
・「獣革命」
・「女戦士・フレア伝(1) 邪神殿の少女」
・「人獣裁判」
・「宇宙船ヴァニスの歌」
・「女戦士・フレア伝(2) 絶海の黄金郷(エルドラド)」
・「宇宙船ヴァニスの歌(2) 恐怖の暗黒魔王」
・「女戦士・フレア伝(3) 虚空の要塞島(アルバロン)」
・「殺戮摩幻楼」
・「宇宙船ヴァニスの歌(3) 血飛沫電脳世界」
・「暗黒細胞」
・「女戦士・フレア伝(4) 殺戮の魔大陸(ブニイプス)」
<< ここ最近の思うこと >>
この小説を読み終える場所として、しばらく行ってなかった喫茶店を選んだのよ。
ランチしてコーヒー飲みながら読んでいると、なにやらレジが動かなくなったようで店員があたふたし始めた。店員はアルバイトの女子二人しかいないようで、レジが開かない&動かないので会計も出来ず苦肉の策として店員らの財布からお釣りなどを支払って凌いでいた。
やがて非番?の女性店員が駆け付けて来たがレジは動かず。
続いて非番?の男性店員も駆け付けたが、レジは治らず。
その間にアルバイトの子は店長へ電話を続けているが、何故かまったく繋がらないようで。
休日ともあって客足は途絶えず、アルバイト店員らのお釣り財源がなくなる前に新規客をストップする強硬策をとるのだが、この先一体どうなってしまうのだろうか?
読書しつつもこの出来事の結末が知りたくなってしまったおじさんは長期戦の構えに移行。
そんな中で読み続けたのが今回の小説。
ヴァニス・シリーズもこれで最後。
前回の話の終わりを振り返ると、ギリギリで今作による完結ENDも無理ではない気がする。
でもきっとムリだろなぁ~、いやいやキッチリ終わりの可能性も微レ存、とにかく期待は禁物よぉ。
そんなことを悩みながら、血も涙もないお笑いSF娼妓の世界へ最後のダイブじゃ~い(=゚ω゚)ノ
ちなみにレジトラブルの結末は最後に書いておくね。
<< かるーい話のながれ >>
世界政府の密偵娼妓船ヴァニス号は、ザハル太陽系のヴラド星域に駐留していた。
そこは開拓労働者が集められた場所で、過酷な環境と辺境の地域ということもあって反政府ゲリラが勢力を拡大させつつあるという情報から、ヴァニスが派遣されたのだった。
着陸艇兼娼妓施設で各地の惑星に降り立ち、現地労働者の客から情報を収集する娼妓たち。
一年の歳月を費やしゲリラの隠れ家を掴んだ撫子たちは、戦闘に特化した娼妓部隊を率いて殲滅作戦を開始する。
撤退だ、民主主義の魔王、幸福にしてあげる、ゲリラのスパイなんだ、ひどく残忍な笑い、庭園、徳子、餌じゃものな、肉の花、小悪魔、自己憐憫の涙、戦いのプロ、花のエキス、死を怖がらぬ獣、愛を確かめ合おう、性愛の正しいあり方、グリーン・ドア・スペシャル、お仕置きをしてやる、地獄の花、惑星ウルマチ、発散、豪快な高笑い。
一方、砂と熱の惑星ザハルでは奇妙な噂が流れていた。
一切の植物は自生しない大地に花畑があるという内容で、退屈を持て余した一人の娼妓が真相を確かめに行くのだが、それは民主主義派の親玉プレッジ・スミスの恐るべき罠だった・・・。
敵同士の愛と憎しみが交差して、歪んだ性欲の蔓草がヴァニスに狂気の花を咲かせる。
<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>
///民主主義からの恐ろしい刺客///
花の強力な芳香に満たされた愛宕山の船内にて、花咲じじいは目についた部屋に入ると中にいた客と娼妓に近づいていく。二人は行為の最中だったが、意識は朦朧としており動きは酷く怠慢なものだった。
位置№1180より。
―――「さあて、お前さん。お前さんは、どんなお花が似合うかな?黄色い花、赤地に水玉模様の花、赤黄黒のまだら縞の花・・・・・どんなお花が、お似合いかな・・・・・」―――
暴力とは一切無縁のような小さい爺さんは、とても美しい花々をどこにでも咲かせることが出来る。
なんてメルヘンな存在、お花を愛でる人に悪人なんていない、様々な花が咲き乱れる民主主義サイコー!
そんな甘い話はヴァニスにありません。うっかり気を許してしまうと必殺の「南京玉すだれ」でパックリされちゃうぞ。
いろんなタイプの敵が送り込まれてくるのって、なんだかんだで面白いよね。
///まばゆい言葉に注意しよう///
惑星ククヮンのゲリラ潜伏要塞の司令部「墓場」にて。
侵入してきた戦闘娼妓たちの動向を監視する部下から、撫子を発見したとの報告を受けた竜神。
過去の屈辱からくる怨みに顔をゆがめながら、どうやって仕返しをしようかとあれこれ妄想する。
位置№2191より。
―――読者諸兄よ、ヒューマニスト、並びに啓蒙を名目に活動する者に、気を付けるべし。連中は、諸君を奴隷のごとく従わせたいだけだ。もし逆らうと—————、 ―――
声を大にして明るい未来と甘い言葉を語る人間には気を付けろって、それ政治家じゃないっすか(笑)
金を出来るだけ支払わずに労働させようとする企業のやりがい搾取にも気を付けましょう。
でもどーゆー人物だったら安心できるんだよ?って聞かれると答えに詰まっちゃう。
結局のところ、人間はみんなほぼ同じどんぐりの背比べなんだし、AIによる統治もありなんじゃないって思う今日この頃。
(こんなこと考えるなんて、おじさんも徐々に世界主義へ染まりつつあるのか?)
///なんて醜いミュージカルなんだ///
罠にかかり意識不明となったパトリシアとお蝶は生け捕りにされて司令部の「墓場」に運び込まれた。
長年男っ気しかなかったゲリラたちは娼妓の素晴らしい肉体に欲情して手を出そうとするが、慎重な者達もいて手を出す・出さないの言い合いが始まってしまう。
位置№2296より。
―――「笑止、笑止!何を小心な。それは考え過ぎだぜ、御同僚。仕掛けなんか、あるものか。あるか、あらぬか、ハメてみよう。さあ、ハメてみよう」
十人は、頭を振り。
「なりませぬ、それはなりませぬ。一物腐って、落ちるや知れぬ。舌が痺れて、溶けるや知れぬ。あるいは体内、爆弾ありて、突くと同時に爆ぜるや知れぬ」
五人が並び、起立した一物を振りふり、花一匁目をはじめた。―――
こいつぁ、なんて汚いミュージカルなんだ(笑)
シリアスな場面でもコメディ感を一掃できないのがヴァニスの旨味。この部分は読んでいて思わずニヤリとしてしまったわ。
ちなみにどっち派に就く?と聞かれたら・・・・・ハメ派についちゃうかもなぁ。
それにしてもお蝶とパトリシアはめちゃくちゃ悪運が強いね、実力も凄いけどシリーズ通して一度も悲惨な目に会ってないもんな。作者に愛されてるんだろうか?(一方、メアリアンは・・・・・)
<< 気になった・謎だった・合わなかった部分 >>
///これがヴァニス界隈での精鋭///
撫子をリーダーとして徳子、八重衣、式部、少納言の五人は山中の坑道迷宮を進みゲリラの潜伏基地を目指している。
部下や娼妓たちの憧れである撫子と一緒に行動できるとはしゃぐ式部と少納言は、ここぞとばかりに撫子の体に密着し甘え続けていた。
位置№1650より。
―――「ちょっと、あんた達、離れて」
撫子は、式部と少納言をもぎ離しにかかった。しかし二人は、鍛えられた筋肉に目一杯力を込め、撫子の腕を掴んだまま。
突然、廃坑の奥から、凄まじい怒声が響いてきた。―――
作戦行動中なのに私情に流されまくる戦闘娼妓たちは、本当に戦闘のプロなのか?でもそれを言ったらゲリラ側だって抜けてる面が多々ある訳だし、ヴァニス界隈ではこれが普通なんだろう。
後先なんて考えず今この瞬間を楽しむ。これこそがヴァニスの概念、じゃないかと個人的に思いまする。
///この設定はどうなったんだろう?///
花咲じじいを大奥へ招き入れたリリーは自身の素晴らしい閃きをドクターにたしなめられてしまい、腹いせにドクターを部屋から追い出してしまう。
考えなしで感情のみの選択ばかりするリリーに対し、ドクターの憤懣が爆発する。
位置№1873~1882より。
―――ドクターは、ドアが閉まると、無人の殺伐とした通廊で怒号した。
「くそおっ、女め!女め、オンナめ、おんなめ!どうして女ってのは、こう身勝手で我儘でご都合主義で、己のことしか考えられないんだ・・・・・女はみんな、恥知らずのクズだ死んでしまえっ!!」
セラミックのドアを、蹴飛ばした。力を込め過ぎて生爪を剥がしかけ、ピョンピョン宙を跳ねた。―――
おやおや?これはどうなってんだろう。
過去作の『宇宙船ヴァニスの歌(2) 恐怖の暗黒魔王』で、ドクターはリリーと同じ特注の全身サイボーグだったって書かれていたと思うけど、その時は全身焼けただれても平気だったはずなのに今作では生爪で飛び跳ねてる?
オールリセットされた世界なのか、サイボーグでも痛覚はあるのか、どっちなんだろうね。
///謎の展開に答えはあるのか?///
「墓場」に侵入してきた撫子の部隊が戦闘の爆発によって生き埋めになったとの報告を受けた竜神。
憎らしかった相手があっさりと死んでしまったことにより、撫子と過ごした記憶が竜神の心を駆け巡る。
位置№2225より。
―――竜神は竜神で、撫子に思いを馳せていた。かつて、ヴァニスで交わした愛。その愛を信じていたのに、しかし裏切られ、文字通りの八つ裂きにされた。どうして死なずに、無事にプレッジの下に戻って来れたのか、自分でも不思議でならなかった。―――
前作と前々作で死んでいるメアリアンが普通に生きている不思議。
『宇宙船ヴァニスの歌(2) 恐怖の暗黒魔王』で酷い目に会って殺された竜神やコワルスキーも普通に生きている不思議。
それに竜神にいたっては自身が死ぬまでの記憶も持ち合わせているようで、これは一体どういうこと?
友成先生はちゃんと考えておられるのか?お気楽エンタメ小説と見せかけて実は驚きの設定が!?それともただノリと勢いで書いてしまったのか。
果たして真相は・・・(; ・`д・´)
<< 読み終えてどうだった? >>
///全体の印象とか///
これまでのシリーズ通り場面がころころ変わる三人称視点で語られている。
今回は作者の個人的思想がいつもより多くいろいろ語られていた気がする。その内容がまた酷いんだけど思わずニヤリとしてしまうモノだから、この巻はコメディな印象が強めだったよ。
エロ・グロ・ギャグとなんでもありのヴァニス・シリーズはB級映画とか好きな人には嵌るかもね。
各惑星での場面、ヴァニスでの場面、撫子たちの場面、竜神たちの場面と、次々に入れ替わりながら話が進んでいくのに、分かりにくくならなかったのが不思議よ。
おそらく場面も話の内容も全然違うし、キャラクターの個性がそれぞれ全く違うから混乱しなかったんじゃないかと思う。
個人的にはこれまでのシリーズ中で一番楽しめた巻だったわ。
///話のオチはどうだった?///
竜神らVS撫子らによる惑星ククヮンでの戦いと、花咲じじいのヴァニス襲来事案はキッチリ決着した。
そして最後にプレッジ・スミスが撫子達に宣戦布告して、まさに俺たちの戦いはこれからだっていうENDだたよ。
ヴァニス・シリーズ全部を読んできた読者としては、特にこれといって意外性のない結末だね。
でも別に残念とかガッカリとそーゆー感情は無いのよ、だってコレはヴァニスだから(笑)
物語を読んでいる数時間だけ、ハチャメチャを楽しめればもう充分なのよ。
それにしても皆さん気になるのは死者復活の展開。
前作にしろ今作にしろ、一体どーゆーことだったのか?それはあとがきにてしっかり語られていたから気になる人は暇つぶしに読んでみるとヨロシアルヨ。
いろいろ変わるメアリアンの髪色についても語られているよ(笑)
おじさんはネタを理解してから、何かに似てるなぁ~と考えてみたら海外コメディドラマの「レッド・ドワーフ号」みたいだわって思いついた。(あれ、コレ前にも語ったかな?)
///まとめとして///
やっぱダメだったかぁ~(´Д`)
フレア伝は無理だったけどヴァニスならなんとか無理矢理に完結してくれるんじゃないかと期待していたけど、やっぱりアカンかったかぁ~。
友成先生のシリーズ物で完結している作品ってあるのかね?今のところ全部ぶつ切りエンドのシリーズばっかりなんだけど(^^;)
全く予測できないヴァニスだからこそ、結末が知りたかったわ。
位置№2081より。
―――いずれ、雑役婦を主人公に据えたエピソードも記すつもりなので、その節はよろしく。―――
↑こんなことを語っていたけど、その巻でなんとかまとめて完結編にして出してくれないかな、ムリかな、無理だろなぁ~。
最後に今回の電子版あとがき。
本編以上にぶっ飛んでいる人生を送ってこられた作者さん(笑)
アルコールによってどんな日常を送って来たのか、アルコールにてどんなことをやらかしたのか、その辺を詳しく語られていたけど、ほんと無事に生活しているのが不思議なくらい酷い(^^;)
しかも未だに飲む時もある、のかな?これならまだ内臓にガタがきて飲むと死ぬってなったほうが良かったのかもね。(いやでもやっぱり内臓壊れるのも嫌だなぁ)
おじさんの人生は現在アルコール無しではやってられないけど、摂取する場合のルールはしっかり守ろう気を付けよう!改めて骨身に染みる満読感、頂きました。(本編とカンケーない感想になっちゃった)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
位置№351より。
―――末成りは、オルグに熱心だった。熱心な余り、ヴァニスの娼妓パトリシアまで、仲間に加えようとした。―――
オルグとは主に左派系団体・政党が組織拡大のため、組織拡充などのために上部機関から現地派遣されて労働者・学生など大衆に対する宣伝・勧誘活動で構成員にしようとする行為。
もしくはその勧誘者のこと。
以前にも調べたような気もするけど、薄っすらとしか覚えていなかったからもう一度調べてみた。
位置№748から758より。
―――「おい、揚巻を出せ、揚巻を。おれは、あの揚巻の引き締まった肉体を抱きたくて、ここに来たんだぞ。揚巻がいなければ、わざわざ休暇を取って、何しに来たんだか判りゃしない」―――
揚巻とは、昔の子供の髪型の一種。振分け髪を左右の耳の上で丸く結い上げたもので、前からは二本の角(つの)のように見えるらしい。
ほあ~すごい髪型やねぇ、セットするのが大変そうだけどそのへんは未来の技術でちゃちゃっと出来ちゃうのか、それとも雑用婦たちが担当するのかな?
位置№769より。
―――「やい、女将を出せ、女将を。おらの八重衣をどこへ隠しただ。誰か、身受けしただか?許さねえ、許さねえぞ、八重ちゃんは、おらの女だど。―――
八重衣(やえごろも)は地歌の曲。
石川勾当により三味線の曲として作曲され、後に八重崎検校により箏の手付けがされた。
地歌のなかでも複雑な構成と技巧をこらした風格のある大曲とされている、らしい。
どういうネーミングセンスなのか気になるね(笑)
しかしここでまた箏が出てくるとは、前回の『蝮の舌』に引っ張られた奇妙な偶然味を感じるぞい。
位置№1061より。
―――グロテスクな眺めだった。フリーメーソンの魔力を総結集し、民主主義の滅び去った後も百年以上、生き永らえている。―――
フリーメイソンは16世紀後半から17世紀初頭に判然としない起源から起きた友愛結社。
多様な形で全世界に存在し、会員数は600万人を超えるとか。
ちなみに「フリーメイソン」とは厳密には各個人会員のことを指しているようで、団体として名称は国によって違っているみたい。
あの都市伝説系芸人は元気にやっているのだろうか・・・。
位置№1481より。
―――仁王立ちし、腕を拡げ、ひんがら目をして見栄を切った。
真ん中の二人が、「んまあ」、胸の前で掌を合わせ、うっとりと揚巻の立ち姿を眺めた。―――
ひんがら目とは意識的に寄り目にしていること、とのこと。
位置№3223より。
―――十五年も前になるだろうか、ポルトガルの商業都市ポルトで開催されるファンタ、ファンタスポルトでのこと。ポルトはポルトワインで有名である。―――
ポートワインはポルトガル生まれの甘くて強いお酒。かつてポルトガル第2の都市ポルトから出荷されたためこの名が付けられたらしい。
普通のワインよりもアルコールが高く甘いポートワインは、マデイラ、シェリーと並び、世界3大酒精強化ワインと呼ばれているようで。
うーむむ、飲んでみたいねぇ~(*´Д`)
位置№3265より。
―――高級リゾートは、私のビザのスポンサーだった。私の失踪は、仕事の面ばかりでなく、イミグレーションに対しても大問題である。―――
イミグレーションとは、移住すること、移民、入国審査、出入国管理カウンターという意味らしい。
<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>
なんだかんだで気づいたら撫子軍団を全員描くことになった。
意識してなかったけどちょい不思議な偶然味を勝手に感じて嬉しくなっちゃってる中年男性がここに(笑)
怪物のような労働者とトランジスタ・グラマーなメアリアンが初対面する場面で、お互いに「オ・・・・・オ・・・・・オ、オ」と驚きながら声を合わせるところも気に入っていたけど、今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
位置№649より。
―――「花だ、お花畑だあ」
振り上げた掌で、邪魔になる頭巾をはね除けていた。
卵型の愛らしい顔と、金髪のカールした長い髪が覗いた。ぽってりした唇が、嬉しそうに開いていた。
「ほんとに花がある・・・・・ザハルに、こんな近いところにお花畑があったなんて、どうしてあたい、今まで気が付かなかったんだろう!」―――
忘れるところだった、レジトラブルの結末について。
いよいよ昨日の売上金からお釣りを用意するしかいという状況になった時、ずっとレジをいじり続けていた非番男性が修復に成功したようで、レジの引き出しが開く音が聞こえてきた。
ヴァニスを全て読み終えて珈琲も飲み干していたおじさんは、すぐに席を立ち復帰レジ会計第一号の客として店を後にした。
今まで何年も通っていたけど、久しぶりに来店したこの日にこんな場面に偶然出くわすとは、運がいいのか悪いのか。この巡り合わせでロトも一等当たってくれよぉ!