忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

ホルモー六景 読書感想

タイトル 「ホルモー六景」(文庫版)
著者 万城目 学
文庫 320ページ
出版社 KADOKAWA
発売日 2010年11月25日

 



<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・「鴨川ホルモー


<< ここ最近の思うこと >>

数年前に『鴨川ホルモー』を購入して届いたらあらビックリ!なんか違うと思ったらこれ続編じゃん!
誰にも向けようがない怒りに任せて、読まずに売ってしまおうかと思ったけどなんだかんだでとっておいたこの小説。
「一期一会、本との出会いを大切に」って言っているラジオDJもいる訳だし、これも何かの縁ってことで購入から数年たった今、ついに読む時が来たんだよ。

鴨川ホルモー』を読み終えて、さらに京都旅行も経たおじさんはホルモーを楽しむ準備万全!
ではでは、知る人ぞ知る小オニ達の合戦競技が繰り返される京都へ、いざ飛び込むどすえ~(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

「鴨川(小)ホルモー」
京都産業大学玄武組の「二人静」と呼ばれる二人、彰子と定子はホルモー合戦でも屈指の強さだった。
しかし誰もが圧勝するだろうと確信していた京大青龍会との戦いにおいて、京都産業大学玄武組は見事に惨敗してしまう。
その原因は「二人静」の関係が崩れたことだった。
彰子と定子はホルモーとは関係なく、二人だけで揉め事の決着をつけるべく決闘の約束をするのだが・・・。(そういや前作の最後で泳いでたよなぁ)

「ローマ風の休日」
高校生の「僕」がアルバイトとして働いているイタリア料理店に新しいアルバイトが入った。
大人しそうで口数も少なく、野暮ったい眼鏡と髪型の女子大生。名前は楠木ふみと言う。
接客業には向いていなさそうな彼女だったが、意外な一面を持っておりバイト仲間からも信頼されるようになっていった。
そして「僕」自身も、楠木ふみという人物に興味を持つようになっていく・・・。

「もっちゃん」
阿部の学友であるもっちゃんは武骨な見た目と裏腹に、とても繊細な心の持ち主だった。
ある日、阿部はもっちゃんから好きな人が出来たと告げられる。
毎朝電車で見かける女学生に一目惚れしたもっちゃんは、勢いで変わった告白をしてしまうのだが、それは見事に失敗してしまう。落ち込むもっちゃんを励ます阿部は、もう一度ちゃんと気持ちを伝える為に恋文を書こうと提案するのだが・・・。

同志社大学黄竜陣」
一年間の浪人生活を経て、希望していた同志社大学に入学した山吹巴。
憧れた先生の授業を受けるべくその大学に入ったのに、タイミングが悪く一度も先生の講義を受けられないまま退職してしまうことを知った。
居ても立っても居られなくなった巴は、ノープランで先生に会いに行くことにしたのだが、ひょんなことから頼まれごとをされて書庫へと向かう。
そこで巴は妙な木箱を見つけ、中身を確認してみると黄色い浴衣と古い手紙を見つける。
手紙の一枚目には「horumo-」と書かれていた・・・。

「丸の内サミット」
大手アパレルに勤める直子は先輩の酒井に誘われて合コン行くことに。
相手は大学の同級生である本田とその後輩社員である榊原。
会場は丸の内ビルにある飲食店で落ち合う四人だったが、彼らにはある繋がりがあった。
そして食事が終わり二組に分かれて帰宅しようとしたとき、ソレが現れた。見たこともない光景に驚く直子と榊原だったが、現象の出所を見つける為にソレを辿っていくのだが・・・。

「長持の恋」
大学生の珠実は貧乏学生生活を改善すべく料理旅館の中居としてアルバイトをすることに。
ある時、旅館の蔵へ入った珠実は年代物の長持を見つける。
長持ちの中には小ぶりな木の板が一枚だけ入っており、「なべ丸」とだけ書かれていた。
謎の衝動に突き動かされ、珠実はその裏側に「おたま」とペンで記入してしまう。
翌日、長持の板を確認した珠実は驚く。
木の板に昨日にはなかった文章が書かれていたから・・・。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///怒りの魔改造がセンスいい///
定子との勝負を待ち構えている彰子。その視線の先に現れたのは奇妙な形の影だった。
鴨川をゆっくりと流れてきたソレは一緒にいる一条にも見えており、困惑の声を上げさせた。
49Pより。
―――「何だあれ?」そのとき、急に発せられた甲高い一条の声に、思わず定子は振り返った。
一条が指さす先に目を凝らすと、確かに川面を横切って、ゆっくりとこちらに向かってくる物影がある。―――
まさかアレがあんなモノになろうとは(笑)
つかどんだけ技術力高い女子大生だよ、そしてそれだけの技術と知識がありながら、なぜバッテリーの詰めが甘いのか?まあそこが残念女子大生らしくてアリなんだけどさ。

///言葉のセンスがぼんちゃんの魅力///
「僕」とぼんちゃん、初めてのデートで立ち寄った噂の井戸にて。
「僕」の悪ふざけによってまんまと騙されたぼんちゃんがとったリアクションがコレ。
89Pより。
―――彼女は口元を両手で押さえると、「んぐわ」と妙な声を上げ、へなへなと腰から砕けて、地面に座りこんでしまった。―――
思わず声に出して言ってみたくなる妙な声だよコレ、んぐわぁ~(+o+)
バイトの先輩だけど年下な「僕」のことを、少年と呼ぶセンスも素晴らしいですわ。

///チョンマゲの和み///
『ホルモー六景』の中で色々な場面に登場して語られるチョンマゲ描写が読者を楽しませてくれること間違いなし。
鴨川ホルモー』では高村がチョンマゲになっても、ホルモー競技の方がインパクト強かったからそれほど気にならなかったけど、今回の小説では日常でいきなり登場してくるから衝撃度高かったわ(笑)
そして最後のあの使い方も良いじゃない。
感動と笑いのダブルパンチでおじさんはノックアウトされたよ。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///継承されるのは行事だけ?///
鴨川ホルモー初戦にて、定子と彰子の息の合った合わせ技が炸裂!!
龍大フェニックスの軍勢を圧倒した。
33Pより。
―――旋盤の動きに着想を得たこの戦術を、彰子は回って回って回って回る「夢想花アタッキング」と名づけた。―――
長年の戦いにて、二人静みたいな技とか戦術とか沢山生み出されたと思うんだけど、それらは伝承されていかないのかな?
公平を期す為に新人たちには基本的なことしか伝授しない規則になっているのだろうか?
所詮は大学生のスポーツと言ってしまってはアレだけど、勝ちにこだわるのが人間だろうし。

///気になる小さな疑問///
上京して間もない榊原康が抱いたエスカレーターに関する素朴な疑問。
215Pより。
―――いったい西と東のエスカレーターの立ち位置の切れ目はどこにあるのだろう、やはり名古屋あたりで、ここから西は右寄り、東は左寄りといった境界があるのだろうか―――
世の中には変なことを調べる人々がいるようで。
ネットでちょっと検索してみたらしっかりページがありましたわ。
まさかこんな結果だっとは・・・・・情報化社会の恩恵をひしひしと感じましたよ。

///ほんとうに何だったの?///
合コンの帰り道で、直子と康があり得ないモノを目撃してしまう場面。
231Pより。
―――「何だ―――あれ」
直子と同じ方向を見上げたまま、康は完全に動きを停止させた。
二人の視線の先に、黒い「何か」がふらふらと浮遊していた。―――
結局あの現象はなんだったの?関東特有のルールみたいなモノなんだろうか?
それほど深く考えるようなことではないんだろうけど、何の説明もなしで終わっちゃうと読者としては悶々としてしまう訳でありまして(-_-;)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
各話によって数人の視点で語られていたり、一人だけの視点から語られていたりする作り。
どの話も学生、もしくは新社会人という年齢の若者が主人公なので中年読者のおじさんは「青春だはぁ~」って思いつつ、共感する場面はちょいと少な目だったかも。

あとホルモー合戦の描写は「鴨川(小)ホルモー」以外ほぼなしだったね。
若者たちの日常がメインで、そこにホルモーに関するあれこれが絡んでいるって感じだった。

///話のオチはどうだった?///
一番好きなのはやっぱり「長持の恋」だね~(*´▽`*)
おじさんとは年の離れ過ぎた大学生の恋愛話なのに、最後には心の中で「やったねたまちゃん!」と叫んじゃうくらい爽やかで温かい終わり方が素晴らしいよ。

それとは別に、「同志社大学黄竜陣」と「丸の内サミット」はホルモー世界の広がりを妄想させる終わり方だったけど、個人的にはちょっと物足りなさがあったかな。
いつか上記ふたつの話が活かされる続編とか、執筆されたりするのだろうか・・・。

///まとめとして///
最後に記載されていた有栖川有栖の解説「瑞々しい青春ホラ小説」というのを読んで、この小説をどのように捉えたら良いのだろうかっていうモヤモヤがスッキリ解消された。
さすが超有名な有栖川有栖さんだね。
最後の造語もニヤリとさせて頂きました(´▽`)

鴨川ホルモー』を売却してから今回の小説を読み始めたおじさんだが、これだけは言える。
これから読むという読者は、前作を手元に置いて読むべし!
そのほうがもっと『ホルモー六景』を楽しめること間違いなしってことで、満読感6点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

11Pより。
―――そんなの関係ないだろ、と不貞腐れた顔でイモを頬張る高村に「コンチキチン」と口ずさんで、俺はトレーを手に立ち上がった。―――
「コンチキチン」というのは「祇園囃子」の俗称でもあるらしい。
 それと「コンチキチン」という音は、金属製の「たらい」のような形をした鉦を「鉦すり」というバチのような道具で打った時の音だそうで。

46Pより。
―――映画の後、祇園の鍵善に行った。半透明の幅広なくずきりを黒蜜につけて、ちゅるるとすすった。―――
「鍵善良房」の創業は江戸の享保年間。
『くずきり』はできたてが命とのこと。
時間が経つと白濁し、食感も「腰抜け」になってしまうので、写真撮る暇などありません!
早めにお召し上がりを。

85Pより。
―――彼女の言うところによると、祇園の南のあたりに、閻魔大王のいる冥土につながっていると古くより言い伝えられる井戸があるらしい。―――
六道の辻という石碑が立つ六道珍皇寺
そこにある「冥土通いの井戸」は、「死の六道」と呼ばれるあの世への入り口という言い伝えがあるようで。

123Pより。
―――「ジョン・キーツだよ。二十五歳の若さでこの世を去った、英国を代表するロマン派の詩人だ」―――
ジョン・キーツ(1795年―1821年)はイギリスのロマン主義の詩人。
外科医と薬剤師の資格を取るけれど、医学生のころから詩作に傾倒しはじめていったらしい。

130Pより。
―――兎に角、俺にとって何よりも大事なあの存在が、何ということか本の目次に、そのまま漢字一文字の題名として記されていたのだ。―――
「鼻」は芥川龍之介による初期の短編小説。
芥川龍之介出世作であり「人の幸福をねたみ、不幸を笑う」と言う人間の心理を捉えた作品で、この小説で夏目漱石から絶賛されたとのこと。

149Pより。
―――「スガ氏から昨日、渡してもらったんだよ。少し大きいんだよな、これ。しかも、ナフタレンの匂いがひどい」―――
衣服についた防虫剤の臭いは、防虫剤に含まれるナフタレンやしょうのう、パラジクロルベンゼンといった成分によるものらしい。 こういった成分は揮発性なので、風を当てれば臭いが取れやすくなるぽい。

225Pより。
―――何せ大学時代、ことあるごとに人々の話題の俎上に載り、その優劣を比較され続けた二人である。―――
「そじょう」とは、まないたの上という意味らしい。

ホルモー六景をより楽しむために聞いておきたい曲はこの二つ。
有名な曲だからみんな知ってるかな?
おじさんはさだまさしの「檸檬」って曲は聞いたことなかったわ。

檸檬

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<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>


今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
50Pより。
―――定子は展開させていたオニたちをすぐさま足元に呼び寄せた。「装備」の鬼語を発すると、オニたちは一斉に武器を襤褸の内側より取り出した。―――


参考のために映画版のオニを調べてみたところ、アッチのは顔っぽい作りになってるのね。
おじさんは原作に忠実に(顔タイプはめんどくさいから)巾着タイプのオニで描いてみた。
オニ達は弓とか投石などの飛び道具攻撃は出来ないのかな・・・描いててちょっと気になっぐああいっぎうえぇッ!!!