忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「機龍警察 自爆条項 上」 読書感想

タイトル 「機龍警察 自爆条項 上」(文庫版)
著者 月村 了衛
文庫 384ページ
出版社 早川書房
発売日 2017年7月6日

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この作者の作品で既に読んだもの
・「機龍警察」


<< ここ最近の思うこと >>

IRAを初めて知ったのがマンガの「マスターキートン」だったなぁ。
それから映画「ジャッカル」でも出てきたのを覚えてるよ。
テロリストになる人間って怒りや悲しみや復讐心があるから志願するんだと思っていた。
けれどこの小説を読んでから他に違う理由もあるのかもって気持ちになった。
自分の人生に未来や希望が見つけられない人間。
そんな人達が生きる為には誇りを持つしかない、だから何者かになりたくてテロ組織に入る。
↑こんなこと考えたのよ。
(実際に海外の若者達がISISに志願して入隊する問題がちらほらあったよね)
自分の人生をイデオロギーの為に使うって考え方は眩しく見えると思うけど、その先にあるのは大量殺人だからねぇ・・・。
なんてことを真剣に考えちゃうくらい熱量のあるこの作品!
今回は上下巻に分かれてるから、早く下巻が読みたくてしょうがないよ。


<< かるーい話のながれ >>

機甲兵装というパワードスーツのような兵器が戦車と同じくらいに存在している現代社会。
警察組織の新人や外部から集めた人員、そして謎に包まれた最新機甲兵装の機龍兵を保持している警視庁特捜部という組織が、凶悪な機龍兵犯罪に立ち向かっていく話。
武器密輸の密告を受けて刑事達が港に行くと、一人の外国人青年が突然サブマシンガンを乱射。
複数の刑事や船員が青年に殺されて、最後に彼は自身の顔面を連射して自殺した。
積み荷の中からは二体の機龍兵が見つかり、その後の捜査によって複数の機甲兵装が日本国内に持ち込まれたらしいとの情報が入る。

時を同じくして、特捜部の機龍兵『バンシー』の搭乗員であるライザ・ラードナーの元にIRFメンバーの通称『詩人』と呼ばれる男がやって来た。
アイルランドでライザをIRFに勧誘した男は、近い内に日本へやって来るイギリスの要人を暗殺する計画と、ついでに裏切り者のライザを処刑しにやって来たのだと告げる。

突然の捜査打ち切りや関係各所からの横槍に屈せず、搦め手を駆使して捜査を続ける特捜部。
詩人との再会で、自身の過去を振り返るライザ。
警察組織内から孤立して味方もほぼいない警視庁特捜部は、IRFによる要人暗殺計画を防ぐことが出来るのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///よくある場面でも、書き手が一流ならこんなに違う///
ライザが部屋に帰ってくると、IRFのキリアン・クイン(詩人)が出迎えた。
予想外の人物の登場に驚きつつも、すぐに銃口を向けるライザ。
だが、彼女はすでに墓守と猟師と踊り子によって完全包囲されていた。
↑おじさんが書いてもまったくなんにも伝わらないんだけど、ココは夢中に読んじゃったわ。
次の瞬間にはもう撃たれるような緊張感がビシビシ伝わってくるんだね。
なによりも前作で敵達(傭兵)を一人で無双したライザがこんな簡単に詰まれた状況になるなんて( ゚Д゚)
マンガやラノベではよくある場面だけど、この小説ほどゾクゾクさせてくれる描写は今までなかったぞ。

///ライザの愛機バンシーの活躍を堪能せよ///
思わぬところからもたらされた情報を信じて、強行突入することになった特捜部。
突入には空からの奇襲が一番でしょってことで1号装備がライザのバンシーに取り付けられた。
骨枠状のフレームから液体素材を出して羽にするのだが、雨では使用できない仕様。
基本的には滑空なのかな?
でもハイテクでSFな感じがたまらないし、微妙に使えない設定も好き(笑)
ラストの墓守VS処刑人のビリビリした戦いも括目せずにはいられない!


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///キモノの武器は基本使い捨て?///
機龍兵が扱う銃器って人間用の銃を使用してるのよね。
腕に固定して取り付けたり、マニピュレーターで握ったりして。
んで今まで読んできて思ったんだけど、弾切れになった銃器を装填する場面が描かれていなかったと思う、たぶんなかった気がするんだけど・・・。
弾切れや使えなくなった銃はポイ捨てしたり鈍器として使用したりで、リロードの概念は基本的に無いのかも知れない?(そのうちそこんとこも描かれると思うけどね)
あと機龍兵装専用の銃器とか作らないのかな?

///何が原因で装甲が切り裂かれたのか///
終盤でのバンシー対デュラハンの戦いにて。
必殺の鉄槍突きを下から繰り出すデュラハン、それを凌いで上から蹴り落とし攻撃をしたバンシー。
デュラハンは鉄槍の付いた腕が弾け飛び、ボディーアーマーも切り裂かれてしまった。
↑これってどうしてデュラハンのボディーが裂けたのか分からなかった。
蹴り飛ばされた鉄槍が回転して切り裂いたのか、バンシーの爪先装甲が切りつけたのか?


<< 読み終えてどうだった? >>

上巻ということでわりかし静かな展開だった。
警察小説らしく68Pの電話慰問だけで状況を悟る所、328Pの警察官僚対民間企業の水面下の戦い、などなど組織間での争いと捜査が内容の半分。
もう半分はライザがどうしてIRFに入ったのかっていう過去の話が半分。
機龍兵の活躍は少な目だけど、まだ上巻だから焦ることは無いぞい。

タレコミ情報からテロリストが潜伏している場所へSATと特捜部が合同で突入作戦を実行するって感じで上巻は終了。
でもここで全滅しちゃうような連中ではないIRF。
要人暗殺計画を実行するだけの装備も人員もまだ残っている。
フォン・コーポレーションとIRAの間に何があったのか?
IRAと一緒に殺されていたアジア人男性(ポケットに名刺だけ入っていた)の正体と、前作から引き続き存在を表し始めた謎の敵。
次巻はIRAになったライザの話も描かれるだろう。
そして組織を抜けた理由も語られるんだろうけど、きっと辛い過去なんだろうなぁ。
もうすでに悲しい気持ちになりかけております´;ω;`)

ではではまとめとして・・・。
フォンの第一秘書であるクワンが姿に伝えた情報、キリアン・クインには第三の目的があるとは、一体?
捜査で得た証言「树枝娃娃」(『シュウチーワワ』直訳で『木の枝の人形』)という謎のキーワード。
今回の事件とこの言葉に何か繋がりはあるのか?
イギリス要人のサザーランド来日までもう時間がない!
物語は各所でグツグツと煮立ち始めているが、一斉噴火するのは次巻かなってことで満読感84点。
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・って下巻を読むに決まってるわ(^^ゞ


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

67Pより。
―――警察プロパーではない、他省庁出身者。そんな人物が現場を掌握するのは通常ではあり得ない。しかし沖津旬一郎はそれをやってのけた。―――
ある分野の専門家、精通した~、という意味とか。
あとは正社員とか、生え抜き社員って意味みたい。

98Pより。
―――元外務省の沖津は言うまでもなく、世界中の外交関係者が容易に想像できる苦衷である。―――
「くちゅう」
苦しむ心の内っていう意味みたい。

105Pより。
―――口調もまた変わっていない。茫洋として本心を決してつかませない。その韜晦は神の目をも欺こう。―――
「とうかい」
自分の才能・地位などを隠して分からないようにすること。
または、姿を隠すこと。行くえをくらますこと、らしい。

161Pより。
―――その後父はガレージに引き上げて、台所にあるのと同じ椅子に腰を下ろし、一人でブッシュミルズ飲る。つまみも話し相手もなしにちびちびと飲る。―――
1608年創業とも言われる、現在操業中のアイリッシュウイスキー蒸溜所の中では最古の歴史を誇る蒸溜所のアイリッシュウィスキー。
アサヒ飲料が取り扱い販売しているみたいね。

209Pより。
―――そして自分にブライアンを知ってもらいたかった。そんな形で彼の存在を示唆したかった。含羞の想いの、それがメイヴらしい友への打ち明け方だったのだ。―――
「がんしゅう」
はじらうこと。恥ずかしいと思う気持ち、かと。

217Pより。
―――夕食はチキンにポテト、熟したトマトに熟し切っていないトマト。それにソーダパン。―――
膨張剤としてイースト菌の代わりに炭酸水素ナトリウム(重曹)を使ったクイックブレッドの一種。
アイルランドでは小麦粉として薄力粉が用いられ、グルテンの多いパンに比べてケーキに近い食感を持つらしい。

244Pより。
―――こいつらは何か小遣い稼ぎのネタが出るまでやめないだろう。怒りを覚える。庶民の生活を斟酌する気などもとよりない、それが警察の末端のありさまだ。―――
「しんしゃく」
いろいろと見計らって手加減すること、相手の事情をくんでやること。って意味らしい。

318Pより。
―――父の想念、父の微笑。卓見、警句、そして少々の箴言。それらが密やかな含羞とともに行間で息づいている。―――
「しんげん」
戒めの言葉、教訓みたいな意味の短い言葉、あとは格言っていう意味とか。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>


今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
遂に機龍警察がコミカライズするらしい!!
嬉しいけど機甲兵装のデザインが決まってしまうことに一抹の不安が・・・。
とりあえず、この機甲兵装はおじさんが勝手に妄想で描いたデザインだから(;^ω^)

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365Pの対決。
深夜の工場に突入した3体の機龍兵。
逃げるデュラハンを追いかけるライザの機龍兵バンシー、しかし相手のデュラハンはかなりの手練れ。
アグリメント・モードを使用して何とか追いつき、一気に飛びかかるバンシー。
しかしデュラハンは飛びかかって来るのを予測していて、武器を装備した腕を突き上げてくる。
雨が降る中、二体の激突音が響く。

 

機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上 (ハヤカワ文庫JA)