忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

オーディション 読書感想

タイトル 「オーディション」(文庫版)
著者 村上 龍
文庫 236ページ 
出版社 幻冬舎
発売日 1997年12月1日

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この作者の作品で既に読んだもの
・「フィジーの小人」
・「共生虫」
・「オーディション」

<< ここ最近の思うこと >>

グロい、コワい映画として知られている「オーディション」を一度は観てみたいと思っていたおじさん。
だけどレンタルがどこも扱っていなくて、それから何年も月日が過ぎてしまった。
最近になって、ふと思いついたんだ。
原作読めばいいじゃん(*‘∀‘)(気づくのが遅すぎだわな)
てなわけで早速アマゾンでポチって届いたコチラ。
今までの村上龍作品とは少し嗜好が変わった気がするストーリーだけど、どうなんだろうね?
映画の評判通りの恐ろしい展開を期待して、いざ読んでみるっぺよ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

最愛の妻に先立たれて失意のどん底にいた夫の青山。
彼は仕事に打ち込むことで気力を回復させ、一人息子との関係も良好な日々を送っていた。
ある日、息子から言われた「再婚したら?」の言葉がきっかけで、青山は友人の協力による女優オーディションを開催し、そこから再婚相手を見つける計画を考える。
青山はそのオーディションで一人の女性に一目惚れして、2人はデートを重ねて距離を縮めていく。
しかしその女性には怪しい経歴がいくつか有り、友人からの忠告も青山には届かない。
2人が結ばれた時、女性の愛は爆発して暴走を開始した。

潰れる映画のオーディション、ストイックな警戒心と大人の想像力、FMラジオ「明後日のヒロイン」、山中湖の古くて小さなホテル、傷だけで成立する顔、山崎麻美、邦楽二課の芝田、車椅子の青年、所在不明の家族、告白、不思議な子、2人きりの伊豆旅行、わたしだけよ、睡眠薬、両足先の無い男、消えた女、ハットピン、フルボリューム、嘘つき・・・。

愛と憎しみは表裏一体。
果たして青山は暴走する愛情から逃げ延びることが出来るのか?



<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///映画「ランボー」の感想に共感///
青山が息子と二人で旅行に行ったホテルにて、ランボー三本立て鑑賞をした場面。
41Pより。
―――「何だよ、これはひどいよ、馬にまたがって突撃して攻撃用ヘリにかなうわけないじゃないか、これは観る人をバカにしてるよ、三国志ジンギス・カンじゃないんだからさ」―――
ランボー1には感動した重彦も続編には不満足だったようで、おじさんも同じ感想だ。
(でも乗馬しながら火炎瓶を受け取るシーンはちょっとカッコ良かったよ

///今回も舌の根元に注射が///
200Pより。
―――「からだは死ぬけど、神経だけを起こすからね、痛みとか苦しみが何十倍になるようにね、だから少しだけ眠んなさい」
山崎麻美はプラスチック製の注射器の針を青山の舌の根元に刺した。―――
これの前に読んだ「ダイナー」でも舌の根元に薬物を注射する描写があったけど、そのほうが効果的?
なんにしても想像しただけで痛みを感じそうな絵面だなぁ(>_<)

///起死回生の行動が痛そう///
218より。
―――痛みとショックで気を失いそうになり、頭を強く振ってそれに抵抗した時、わけのわからない静けさが意識に満ちて、女を蹴り落とせ、という指示が届いた。―――
真っ先に思い出したのは『愚地独歩VSドリアン』だね。
まさかこの小説であの場面を連想するとは思っていなかったわ(;^ω^)
(しかしハットピンというモノがネットで検索しても見つからない・・・・・他の人のレビューをみてみたけどみんな見つけられないようで、どうやら架空の道具っぽいのかも)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>


///マラソンと日本国民の考え方///
13~14Pより。
――― 一つのマラソンレースに参加する選手全員が同じモチベーションで走っているのだ、昔はそう思ってテレビを見ていた。今は違う。当たり前のことだが、それぞれが違う動機の下に走っているのだ。この国に生まれた人間がそれを本当に認めるのはかなり辛いことだろう。―――
働くことが幸せだと思っている人もいれば、嫌々働いている人もいるっていう事実を認めることが辛いってことなのかな?
(バブル時代よりもっと昔の高度経済成長期?ではみんな同じモチベーションで働くことが当たり前だったってこと?)

///名前もない、だけど訳知りな青年キャラ///
84~85P
―――青年は母親らしい人と談笑しながら僅かに振り向く形で山崎麻美の顔を見た。その瞬間、青年の笑顔が凍りつき、彼は車椅子から立ち上がりそうになった。―――
この青年も過去の被害者なのか?
命は助けられたってことなのか?
なんで警察に被害届を出さなかったのか?
分からないことだらけですたい(;´Д`)

///ギャングが・・・・・///
いつものだけど、動物が酷い目にあうのは読んでいて辛い。
マジで辛い、読まずに済むなら読み飛ばしたいくらいに苦手だわぁ(>_<)



<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
内容のほとんどが大人の恋愛モノで、恐怖の展開は最後に爆発って感じ。(全体の5分の1くらい)
間にちらほらと不穏な雰囲気を出してくる場面があるけれど、正直ちょっと退屈してしまう所はあった。
恐ろしい展開がところどころに詰まった物語を期待していると、肩透かしになってしまうかも。

///話のオチはどうだった?///
読み終えて最初に思ったことは、「あれれ!!これでおしまいなの?」っていう驚き。
せめてエピローグ的なのが欲しかったなぁ。
山崎麻美の過去の詳細が一切わからないまま終わってしまったのも残念だね。
今までの被害者エピソードとか知りたかったのに。
(でもここまでブツ切りENDだと続編がありそうな気もしてくるな・・・・・死んではいないみたいだし)

///まとめとして///
ちょっと退屈してしまう恋愛部分が長かったけど、山崎が本性をさらけ出して暴れ回る終盤は手に汗握るくらい緊張感アリアリで、どっぷり本の世界に引きずり込まれたわ!
その場面を味わう為に読んでみる価値は十分にアリかと。

男女の恋愛部分に共感できなかったおじさんでも何故か心に残った言葉はあった。
235Pの解説より。
―――成熟した大人どうしの関係が、長年にわたって続くためには、一方が他方の子どもになろうという野心が、意識的、意志的に排除されていなければならない。だから、こうした二人は、2人ともどこか寂しい。それで良いのであって、大人とは、寂しさと共存して生きられる人のことである。―――
成熟した大人に、なりたいような、なりたくないような・・・。

ではでは最後に。
あとがきにて作者は山崎麻美というキャラクターが可愛いと言えない世の中になったと語っていた。
トラウマを抱えた若者が増えすぎた世の中が一番の恐怖ということなのかな・・・。
てなわけで、男女の恋愛で修羅場とか喧嘩とか怖い思いをした人が読んだら、かなり共感して恐怖感をゾクゾク煽られちゃうかもね!
(残念ながらおじさんにはまだそーゆー深い恋愛経験が無いけど(ノД`)・゜・。)
満読感はちょっと低めの80点!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。



<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

三池監督で実写映画化されているよ!
2000年の第29回ロッテルダム国際映画祭の上映では記録的な人数の途中退出者を出して、映画を観た一人の女性客が三池に「悪魔!」と激怒して詰め寄ったという一幕があったらしいよ。
ほかにも、2001年アイルランドのダブリンでアイルランド映画協会員限定で無修正版が上映された際には、会員の何人かがショックで倒れて、そのうち一人が病院に運ばれる事態が起きたとか。

12Pより。
―――昔、東京オリンピックアベベ・ビキラを見た頃はマラソンは何かの象徴だった。―――
アベベ・ビキラ」
エチオピア出身の長距離走選手。
オリンピックのマラソン種目で史上初の2大会連続優勝を果たし、2個の金メダルを獲得した。
「はだしのアベベ」という言葉が懐かしい。

14Pより。
―――歩いて数分のところにある輸入食料品専門のスーパーマーケットで、フランスの卵と鴨の肉のロースト、それにスモークサーモンとシャンピニオンを買ってきた。―――
シャンピニオン
フランス語でマッシュルームという意味らしい。
そっくりな形に作られたパンのこともシャンピニオンと呼ぶみたいだね。

17Pより。
―――その夜は赤坂のホテルのバーを吉川が指定してきた。ハープの生演奏が入っているスノッブなバーだ。―――
スノッブ
上品ぶったり教養ありげに振舞ったりすること、他には鼻持ちならない人、という意味らしい。

22Pより。
―――「声楽とかピアニストとかバレリーナだろ?いくらお前でも大変だぞ、オナシスとかでないと面倒見きれんだろう」―――
「オナシス」
おそらくギリシアの海運王のことかと。
歌手 M.カラスとの恋愛や、ケネディ大統領夫人ジャクリーンとの結婚が話題になったみたい。

30Pより。
―――要するにコンペティティブにならざるを得ないんだよ、女には競争心が少ない、競争心のある女は不幸でなくてはいけないんだ、―――
「コンペティティブ」
競争によって決まること、もしくは競争力がある、ということ。

133Pより。
―――「東中野に、少し変わった和食の店があるんだ、元芸者さんがやっててね、江戸の廓料理を出すんだけど、たまにはそういうのもいいかなと思って」―――
「くるわ」
遊郭が集まっている地帯
青山によると江戸時代に廓で出された料理、または街道にある宿場で出された料理で、京都で生まれた懐石よりも親しみやすくて粋な料理とのこと。
このあと語られる懐石料理に対する青山の解釈がまたなかなか面白いのよ。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
217Pより。
―――「もうちょっと、こっちを向きなよ、足がなくなるところを見たいでしょ?」
銀色の細い金属の紐が左の足首に巻きつけられ、山崎麻美はじっと青山の目を覗き込んで、いっきにリングを左右に引いた。―――

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ついにアイパッドを手に入れたぞい。
線を描くだけでも物凄く違和感があるし、塗りつぶしもわからんし、レイヤーもどんなふうに分ければよいのか・・・・・え~い悩んでいてもしょうがない!
とにかく数万円分の利用はしないと勿体ないからがんばるぞい(/・ω・)/

 

オーディション (幻冬舎文庫)

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  • 作者:村上 龍
  • 発売日: 1997/12/01
  • メディア: 文庫
 
オーディション [DVD]

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  • 発売日: 2000/11/24
  • メディア: DVD