忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「共生虫」 読書感想

タイトル 「共生虫」(文庫版)
著者 村上龍
文庫 320ページ
出版社 講談社
発売日 2003年3月14日

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この作者の作品で既に読んだもの
・「フィジーの小人」

<< ここ最近の思うこと >>

世界大戦の時に使われたマスタードガスっていう毒ガス兵器がある。
毒ガスって言っても所詮はマスタードでしょ?
熊撃退とか護身用の催涙ガス程度なんでしょ、それって強いの?
そう思っていた時期がおじさんにもありました・・・。
前回の「フィジーの小人」がイマイチだったから今回の小説には期待したいね。
「共生虫」っていう謎の虫がテーマっぽいから、エイリアン的なホラー系なのかなぁ( ̄▽ ̄)


<< かるーい話のながれ >>

幼い頃に祖父の遺体から出てきた謎の虫に取りつかれた?ウエハラという青年が主人公。
現在ヒキコモリで一人暮らしの御身分です。
坂上という美女ニュースキャスターに惚れた彼は、ネットを通じて坂上のファンサイトに昔見た虫のことを書き込んだ。(あわよくば坂上さんとお近づきになれるかもって下心で)
その書き込みを見たインターバイオなる謎の組織が、謎の虫のことを共生虫だとウエハラに伝える。
(共生虫は選ばれし者にのみ取りついて、共生虫を宿す者は殺人だって許されるんだよ的なことを吹き込まれる)

共生虫を知る共通の知り合いが出来て大胆になったウエハラは見知らぬ女を殺そうとするのだが、何故かその女から何某かの感銘を受けてネットの世界をサーフィンする。
やがてウエハラはネットのオカルト話で知ったボウクウゴウと呼ばれるモノに興味を持ち始める。

ある日、ウエハラの父親がもう死にそうだってことで母親と兄が強制連行しにくる。
実家に連れていかれたウエハラはあまりの不快感に腹を立ててバットでスイング暴行&逃走した。
現実世界でも大変なのにネットの世界でもトラブルが起こり始める。
インターバイオの元メンバーからは「あのグループは悪質なイタズラ集団だから気を付けて」と忠告されたり、インターバイオからは悪意に満ちたメールが送られて来たり、真実の分からないままウエハラは件の防空壕へ憧れて、ついに冒険の旅に出る。

そしてそれらしい場所を見つけて、防空壕らしき穴の中に入ってみた彼は恐ろしい体験をした。
その後、防空壕での原因を突き止めたウエハラは、好奇心の解消とトラブルの解決のために、ミリタリーショップへと向かう。

防空壕の中でウエハラが見つけたモノとは一体?
インターバイオとサガミスグル、彼らはウエハラにとって敵なのか味方なのか?
そして一番気になる共生虫の正体とはなんなのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

インターバイオの正体は悪質なイタズラグループなのだというメールがウエハラに届いて、真実は一体何なのか分からなくって来たところは現実にありそうな手口だな~って思った。
っていうかひきこもりや孤独な人間だったら間違いなく操られちゃうだろ。
架空請求やニセ電話詐欺に通ずるモノを感じるぞい(; ・`д・´)

続いて印象に残った言葉を。
183Pより。
―――誇りを持つことが大事だが、それよりももっと大事なことがあって、それは誇りを持っていることを誰にも言ってはいけないということだ。―――
ウエハラが防空壕を捜しにきた瑞窪公園内で、風景画を描いていた老人の言葉。
なんか分かるような気がする。
あくまでも気がするってだけなんだけど(;^ω^)

ウエハラが防空壕を見つけてから、どんどん先が気になる展開になって安心した(笑)
それまでがダラダラグズグズの展開だったから、最後までこの感じで終わるのかと不安だったから。
(いやでもまてよ・・・謎の女性宅へ訪問とか、バットスイング暴行とかあったわなぁ)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

全体を通してなんだけど、基本的に風景描写がやたら多いね。
特に防空壕の探索部分や公園でくつろぐ人々の描写が長く感じたわ。
村上龍の作品って昔からこんなふうだったかな?
五分後の世界」はそれほど苦にはならなかったと思うんだけど。

ウエハラに呼びつけられてやって来たインターバイオの三人組。
あいつらは結局なにしに来たのかなって思った。
ほんとにただウエハラが老人を殺す場面を観る為だけにやってきたんだろうか?
(リアルで会うなんて不用心だな・・・・・みんな腕に覚えがあったんだろか?)

インターバイオのハナダが差し出したお見積書、これの裏面に書かれていた手記は真実なのか、それともウエハラを混乱させる為の造り話なのか分からないのが歯がゆい。
まあ、たぶんその真偽はどうでも良くて結局まともそうなこと言っていたハナダも、誇大妄想に取りつかれたオカシイ人物ってことを伝えたかっただけなのかも知れないけど。


<< 読み終えてどうだった? >>

これが・・・インターネット文学小説なのかぁ。
なんにせよおじさんが期待していた内容とはちょっと、ねぇ(;^ω^)
謎のやる気モードになったウエハラが、大冒険の末に赤玉筒とか黄玉筒を手に入れて、気に入らない連中を処理してココからどんどん面白くなるぞって所で終わってしまったのが残念だったよ。
(まま、前回の「フィジーの小人」も似たような感じの終わり方だから耐性はついてたけどね)

2019年に読んでもそ~れほどドンってくる感じはないんだけど、まだネット事情が表に出ていない20年前に出版されて、その当時から未来を予測した衝撃的な内容だったから話題になったのかな?
(映画「羊たちの沈黙的」も公開当時は衝撃的なストーリーだったから人気になったようだけど、それと似たようなことなのかね・・・・・ちょと違うかな?)

そんな訳でありまして、まとめとするならば・・・・・。
エキサイティングなエンタメ好きで、内容を浅~~~くしか考えられないおじさんとしては、今回の小説はちょい低めの満読感70点です!


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

今回の「共生虫」は第36回(2000年) 谷崎潤一郎賞受賞した作品。
「共生虫ドットコム」っていう謎の本も出ている。
読者から届いた声とか、いろんな有名人との対談、作者の論説などが詰まった内容。
共生虫ファンの方なら今すぐ買うっきゃないっしょや(=゚ω゚)ノ

17Pより。
―――脅かしているわけではありません。事実、なんです。ファッショ的だと思わないで下さいね。―――
イタリアのファシスト党から転じてファシズムな傾向を持った団体とか人物とか運動って意味らしい。
全体主義的とか国家主義的独裁ってことが「ファシズム」ってことみたい。

197Pより。
―――知ってるか。フランス空挺部隊アルジェリアでやったすばらしい拷問だ。―――
作中では男性器に電極を付けて通電させる拷問って書いてあるけど、ネットで検索した限りではそーゆー方法で行ったのかは分からなかった。
ただ拷問自体はしっかりやっていたみたいだね。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

今回は謎の女性の家にあった『ムビオラ』という機械を描いてみた。
35㎜フィルムの映写機とのことだけど、一体どうやって使うのだろうか?
つーかなぜにこんな機械が個人の家にあったのか・・・謎だね。

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292Pより。
―――耳鳴りに似た音は、あの女が回していたムビオラという機械の音にそっくりだった。―――

 

共生虫 (講談社文庫)

共生虫 (講談社文庫)

  • 作者:村上 龍
  • 発売日: 2003/03/14
  • メディア: 文庫
 
共生虫ドットコム

共生虫ドットコム

  • 作者:村上 龍
  • 発売日: 2000/09/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)