忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「神狩り」 読書感想

 

タイトル 「神狩り」(文庫版)
著者 山田正紀
文庫 310ページ
出版社 早川書房
発売日 2010年4月5日

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「神狩り」だけ


<< ここ最近の思うこと >>


「暇を持て余した・・・」
「神々の・・・」
『・・・遊び・・・』
昔に放送されてたあらびき団っていう番組でよく観てたなぁ~。
人間界に来た神たちのしょーもない遊びに笑っちゃうのよね。
人間観察っていうのは神々にとって飽きることのない暇つぶしになっているのかな?
ってなわけで、今回はこのSF小説を読んでみた~よ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

ある日、地中で発見された文字のような模様。
これはきっと神が扱う文字に違いないってことで調査し始めた天才の島津。

謎の組織に拉致されて解読作業に没頭したり、謎の華僑グループに仲間入りして解読作業に没頭したり、神秘の力を使う超能力者と相対したりで解読は中々進まない。
神らしき何者かの妨害もあったりで周りの人間はどんどん死んでいく。

やがて孤立して解読作業も出来なくなってしまった島津だが、かつての仲間が有名な霊能力者達を集めているという情報を得て、真偽を確かめる為にある場所へと向かう。

そこで知らされる驚愕の情報と一筋の希望。
果たして古代文字を解読することが出来るのか?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

主人公の島津というキャラクターに良い味がある。
26Pより。
―――だから、ぼくが気絶してしまったからといって、臆病者呼ばわりは許さない。誰にも、だ。―――
落盤崩壊して閉じ込められた地下の空間で、突然目の前に光り輝く外国人が現れたら誰でも驚いて気絶しちゃうわな(笑)
(マーティーの「誰にも腰抜けなんて言わせない」ってのを思い出した)

40Pより。
―――「元気かね。相棒」とぼくは鏡のなかの顔に話しかけ、ウィンクして見せた。なかなか魅力的なフェイスじゃないか。―――
自慢の連想コンピューターを使用して古代文字を翻訳しようとするも、まったく成果の出ない毎日で憔悴しきっている島津。
参っちゃっている時って、自分に話しかける時とか、皆あるよねぇ(;^ω^)
お堅い秀才かと思ったらなかなかどうして、味のある主人公なのがイイね。
生意気で捻くれた性格だからボッチなのか、ボッチだから生意気で捻くれたのか、なんにせよ天才ってキャラクターは孤独が合うのかな。(「レフトハンド」の主人公に似ているかも)

色々イタズラしてくる神をどうにかできれば、人間はもう少しマシな生き物になれると言う理亜と、神が居ようが居まいが人間は変わらずダメなままだと言う島津。
137Pより。
―――「賭けをしようか・・・・・私は、人間が変わり得る、という方にチップを置くわ。島津さんは、≪神≫をどうこうしても、人間は変わりようがない、という方に賭けるのよ」―――
男心をくすぐるのが上手い理亜と、見事に乗せられてやる気スイッチが入っちゃうのが彼らしい。
こーゆー静かに何かを決意するシーンって、カッコイイよね~。

全てを失って打ちひしがれている島津を癒す理亜の魂、この場面もなかなかグッときた。
258Pより。
―――新生・・・・・そう、結局、この世で女だけが、男を真に生まれ変わらせることができのかもしれない。―――
やっぱり人間は独りぼっちで戦い続けることなんてできないのよ。
(おじさんも美女に癒されたい!んでもってシャキッと生まれ変わってビシッとしたオトナになりたい!)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

ふりがながない漢字が多かったなぁ。
馴染み無い漢字が色々あったから、ちょいと飛ばし読みしちゃう部分も。
(ままま、ひと言ふた言飛ばしても全然問題ないんだけどね)

連想コンピューターの説明が難しかったわぁ。
80万語を収録している翻訳コンピューターなんだけど、見たことも無い言葉を入力すればソレが80万の言語からどの意味と一番似ているのかを判断して翻訳してくる・・・・・これだけの説明ならまだ分かりやすい。
けれど話が進むにつれて古代文字がまったく解読できない状況が続いていく中、どうして翻訳が進まないのかをいろいろ説明してくれているんだけど、それが分かるような分からんような(;´Д`)
(ほんとはさっぱり理解できなかったんだけどね)

神様の目的がイマイチ分からない。
自分の正体がばれるような古代文字を各所に出現させて、それが解読されそうになると邪魔をして、さらに特定の目的は絶対達成できないように何度も邪魔をして、人間達にそのことを察知されて・・・・・。
あれかな、ギリギリのスリルを味わいたいってことなのかな?
(あるいは神様が人類共通の敵を演じて、全人類を次の段階へ進化させようとしてくれてるとか?)


<< 読み終えてどうだった? >>

えぇ!・・・・・ここで終わりΣ(・□・;)
人類がソコに行ったらどうなるってのよ?
古代文字も神も一体全体なんだったのよさ!?
思い返せば何も分からないまま読了してしまったわ。

神様のイタズラで勃発した白人黒人市街紛争があったり、大学立て籠もり闘争があったり、科学の力で神秘に挑む設定だとか、ワクワクするモノが沢山あったのに・・・・・この終わり方はなぁ。
文字通りの「俺達の戦いはこれからだEND」

まま、とにかくまとめとして。
退屈にはならず最後まで読めたしアメリカもロシアも全人類が協力して、神様が邪魔してくる目標に向かって頑張るぞーってなった終盤は物凄く好奇心をくすぐられる展開だったしぃ。
それだけにモヤモヤがガッツリ残ってしまったので満読感は80点かな!


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

今回の「神狩り」は(第6回星雲賞日本短編部門を受賞しているのね。
なんと続編で「神狩り2 リッパー」という作品があるみたい。
うーむむ、気になるけど今回と同じような終わり方だったら嫌だなぁ。

32Pより。
―――「それに、君個人の評判のこともある。研究室での君のあだ名を知ってるかね?暴君(タイラント)だよ」―――
言わずと知れたバイオハザードの敵キャラ。
まさかこの小説を読んでいて「タイラント」の意味を初めて知ることになるとは・・・。

42Pより。
―――二ヵ月めに入った時、サンスクリット語を音素より下の単位に分解し、その単位を≪古代文字≫の方にランダムに当てはめてみてはどうか、とふと思いついた。―――
ウィキペディアで「音素」の項目を読んでみたけれど、まったく理解できませんでした(笑)

77Pより。
―――ぼくは、今、拷問の現場を目撃しているのだった。鞭も鳴らず、血の匂いもしないが、これで心理的拷問というのはなかなか効果的なのだ。『ペンタゴン白書』にそう書いてある。―――
ネットで検索してみたけど、ちょっとそれらしいページは見つからなかった。
どんなやり方なのか気になるけどね。
(昔見た映画では、大音量で子供向け音楽を敵捕虜に延々と聞かせるってなことをしていたなぁ)

178Pより。
―――対岸を黒く塗りつぶして、重工業コンビナート群の巨大な影がそびえている。フレアスタックの吐き出す真紅の炎が、遠眼にもめらめらと毒々しかった。―――
原油採掘施設、ガス処理施設、製油所とかで出る余剰ガスを無害化するために焼却した際に出る炎。
工場の煙突から時たま上がる炎とか火柱のことかな。

183Pより。
―――奥の、理亜が眠っているはずの小部屋から、ビリー・ホリデイのラブソングがボリュームいっぱいにながれてくるのだ。―――
アメリカの女性ジャズ歌手
人種差別や薬物依存症、アルコール依存症との闘いなどの壮絶な人生を送ったみたい。
「奇妙な果実」という曲は木に吊るされた黒人のことを歌っているっていう話をどこかで聞いたことがあるけど、この人が歌っていたのか。
2003年の「Qの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第12位に選出されたくらい凄い歌手。

196Pより。
―――だが、理亜とはこれが最後になるのだ。アンチクライマックスはあきらめるにしても、せめて優しい言葉の一つくらいは欲しかった。―――
尻すぼみな結末とか、盛り上がらないまま終わることかな。

237Pより。
―――ペーブメントには、秋の燗熟した陽光が白く照っていた。―――
舗装された道路とか、石が敷き詰められた道ってことらしい。

280Pより。
―――<神さま、どうして私をおつくりになったのですか?・・・・・>という言葉で終わる詩がある。自分の容貌の醜さを嘆く猿が、その詩の主題になっている。

―――ここフロリダ州オレンジ・タウンでは、その詩が採用されたために、総ての教科書がボイコットされるという騒ぎがまき起こった。―――
神を疑うことを教えるなんてもってのことだ!ってことで子供たちの父兄などが怒ったみたい。
それがオレンジ・タウンという街なのだって書いてあったけど、ネットでそのことを調べてみてもそれらしいページや記事は見つけられなかったよぉ。
社会科の教員さんとかが知り合いに居たら気楽に聞けるのに。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

今回はコチラの2枚を描いてみた。
9Pより。
―――それは、薊でなければならなかった。この海岸に根をおろすことのできる植物は、ひごたいさいこ属の薊しかないのである。―――
この薊の描写は何だったんだろう?
作中でそれほど深く関わっているとも思えなかったような(・・;)

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159Pより。
―――無表情にうなずいて、宗は顔を前方に戻した。ダッシュボードの下に手をやって、拳銃をとりだす。ブローニングだった。―――
ブローニングと言ったら、ハイパワーでしょうよ。

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神狩り (ハヤカワ文庫JA)

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The Ultimate Collection

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