忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「アラビアの夜の種族Ⅰ」 読書感想

 

タイトル 「アラビアの夜の種族Ⅰ」(文庫版)
著者 古川日出男
文庫 277ページ
出版社 角川書店
発売日 2006年7月1日

f:id:mitemite753kakuyo:20200718191330j:plain f:id:mitemite753kakuyo:20200718191337j:plain


この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「アラビアの夜の種族Ⅰ」だけ
(読書感想を書き始める以前に「ベルカ、吠えないのか?」は読んだよ)


<< ここ最近の思うこと >>

この感想を書いている時、世間では実写映画の「アラジン」が話題になっていた。
ネットの方ではこの映画のジーニー役で盛り上がっているみたい。
何故なら映像を見る限り、精霊のジーニーがただの青いウィルスミスじゃないかってことで。
おじさんも画像を見てみたけど、う~むむ・・・・・これは確かに色違いスミス(笑)
ってそんなことはどうでもいいから、今回は友人に勧められたこの小説です!


<< かるーい話のながれ >>

ヒジュラ暦1213年のエジプトが舞台。
主人公は謎の多い有能奴隷のアイユーブという青年。
その有能さからナポレオンがエジプトに侵攻してくることを知ったアイユーブは、戦争になれば間違いなく圧倒的武力で敗北することになるであろうと主人に報告する。
どうしたものかと悩む主人に、アイユーブはある秘策を打ち明ける。
それは読み始めればどんな人間でも夢中にさせてしまう本を、ナポレオンに献上するという策だった。
早速その本を制作することになり、本の内容を知る謎の美女ズームルッドの口から語られる物語。
日没から日の出までの間は話を聞いて、日中に一気に書き上げていく。
第一巻はアーダムと蛇のジンニーアの物語。

遥か昔に帝国があって、その大王の息子の一人にアーダムという醜い者がいた。
その醜さから常に疎まれていたアーダムは、帝国が長年かけても屈服できなかった謎の小国ゾハルの攻略を100人程度の部隊でやってのけると言って出陣して行く。
策略と妖術を駆使してゾハルの市民となり国教に入信したアーダムは、地下の祭儀場へと降りて行きそこでゾハル国民が崇める神ジンニーアと対面する。
しかし怪しげな術によってアーダムは正体がバレてしまう・・・。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

まず最初は182Pのところ。
地下の儀式場にて老婆の魔術師が、碧眼の死体を気に入ってその眼球を取り出し、自身の目玉と交換しちゃうシーンがビックリポイント。
しかもそれを行うことによって目玉の持ち主が死ぬ少し前の光景を視れる特典付き。
(映画「ロボコップ」でも似たような能力があったような気が・・・・・)

アーダムが建設させた自動生贄製造迷宮なる阿房宮が恐ろしい(; ・`д・´)
邪神様の力は生贄の量によって変わってしまうのだが、いちいち儀式をしたり生贄を選んだりするのは面倒臭い。
ならば地下神殿と地上の間に迷宮を作って、罠を沢山仕掛ければいいじゃんか!
ってことで作られたのが阿房宮
永遠に増改築されまくる迷宮には財宝があるらしいって噂に流されて、欲にかられた人間がどんどん入っていっては死んでいく。
さらにはその雰囲気に誘われて魔物まで住み着いてしまい、ダークソウルも真っ青な超難易度迷宮。
(たま~に運と感の良い悪者が財宝を持ち帰って出てくるのが集客のコツ)

224Pの部分が裏山けしからん。
悪の帝王が妖力を高める為に禁欲なんて・・・・・女体を知らないアーダムに同情したけど、その後の羨ましい展開にチクショウだコノヤロウ!!
(さらに眠気を紛らわす為に毎晩美人で若い処女を入れ代わり立ち代わり・・・・・けしからん!!)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>


ジンニーアが様々な美女に憑依して、アーダムととにかくヤリまくったりしたけどどうしても妊娠できなかったことで、アーダムの子種に問題ありってのが分かった部分。
それこそ魔術を使って簡単に妊娠させることとか出来なかったのだろうか?
(↑と書いたけど、昔話だから細かいことは気にしちゃいけないよね)

アーダムがある決心をして不眠の誓いを立てるんだけど、どう考えても人間は数日眠らないと死んじゃうよね?その辺は魔術とかで回復&強化しているんだろうか?
(↑と書いたけど、昔話だから細かいことは気にしちゃいけないよね~)

良くも悪くもおとぎ話で展開がめっちゃ早い。
盛り上がる山場が沢山出てくるけど、すぐに次の山場が押し寄せてくるから余韻を味わう暇もない。
面白い展開の波にのまれのまれて、もう文字を追うことだけで精一杯になっちゃうよ。


<< 読み終えてどうだった? >>

いやもうとにかく壮大な物語だわ!
時代ファンタジー小説でここまで引き込まれたのは初めてかも知れない。
これが噂の千夜一夜物語!!って思ったら、オマージュ的な作品だったのね。

本書ではアーダムの物語が一つ終わっただけで、ナポレオンが迫っているアイユーブ達の運命がどうなるのかはまだわからない状態だから、これは先が気になっちゃうでしょうよ。
ズームルッドから毎夜毎夜に語られる物語はアイユーブ達だけでなく、おじさんの好奇心もガッチリつかんでどんどんアラビアンな世界に引き込んでいく。
(一番気になるのは褐色美人のズームルッド様を一度お目にかかりたいっ)

ではでは最後に。
どちらかというと苦手ジャンルの海外時代ファンタジーなのに、思った以上で楽しめたのは真実。
でも三部作の第一部ってことで真の結末にはまだほど遠く、スッキリしたって言えない部分もあるから満読感は83点ってところかと。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

「アラビアの夜の種族Ⅰ」は第23回(2002年) 日本SF大賞受賞作。
(このストーリーでSF大賞を受賞したのか・・・SFとは何ぞ?)

11Pより。
―――マムルークには同性愛的な嗜好があったともいい、両者の紐帯にはあるいはこれも作用した。―――
「じゅうたい」
二つを結び付けること、両者の関係ってことかな。

27Pより。
―――信を置いた側近、アイユーブの助言を聞き容れて、アイユーブの企画するままに奇妙な仏埃の宴はつづけられたのである。―――
「ふつあい」
うーむ、わからん(笑)

97より。
―――「故郷にもどっても、むなしさに打擲されるばかりでしょう。むしろ、このゾハルにのこりたいと思います。―――
「ちょうちゃく」
殴ったりぶつかったりすることらしいから、むなしさに打ちひしがれるってことかな。

120Pより。
―――こうした記録の手段にかけては並ぶ者のいない泰斗であった。みごとに、ひとことも漏らさず、写しとっていた。―――
「たいと」
人々からすごーいって思われる権威者とか、その道のプロってことかと。

177Pより。
―――一瞬、侏儒のような女が視界に入り―――
「ひきうど」
ネットで調べたら「しゅじゅ」って読むみたいなこと書かれていたけど、独特な読み仮名がついているね。
こびととか、極端に背が低い人ってことらしい。

200Pより。
―――ゾハルの駱駝軍団はすべてアーダムの供奉のようなもの。だれがこの大王に近寄れましょうか?―――
「ぐぶ」
アーダムのお供に加わった人、つまり家来になったようなものってことかと。

249Pより。
―――苦痛を抑えつけます。誘惑を絶ち切ります。アーダムの内側には燃えさかる瞋恚のほむらがあり、―――
「しんに」
自分の思い通りにならないことに対する怒りとか憎しみとか、修行者が中々消すことの出来ない感情の一つってこと、かな?


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

今回はゾハルの民が信仰している蛇神像を描いてみた。
色々なところで見たことのあるような造形になってしまうのが悲しい。
自身の想像力の無さを怨むほかなしだわわ(ノД`)・゜・。

f:id:mitemite753kakuyo:20200718191345j:plain

172Pより。
―――無数の乳房を垂らした胸もとと、女性の顔面と、ぬめりぬめりと楚りたった蛇身。ふた股に岐れた尾でありながら二本の下肢である下半身。―――
(ドロップキックをしてくる邪神じゃありませんの!!)

 

アラビアの夜の種族 I (角川文庫)

アラビアの夜の種族 I (角川文庫)

 
邪神ちゃんドロップキック(1) (メテオCOMICS)

邪神ちゃんドロップキック(1) (メテオCOMICS)