忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

キネマの神様 読書感想

タイトル 「キネマの神様」(文庫版)
著者 原田マハ
文庫 331ページ
出版社 文藝春秋
発売日 2011年5月10日

 




<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・「カフーを待ちわびて」


<< ここ最近の思うこと >>

「カクテルの名前でしりとりしよか」
スクリュードライバー
「ば、ば・・・ばっ馬刺しソーダ!」
「そんなカクテルないよね?」
「あります」
「え、あるの?クーポン使える?」
ホットペッパーのCMは好きだったなぁ、中でもこのしりとり編が大好きなのよ。
昔はいろんな映画のシーンを使って次々と新作CMを作っていたけど、ここ数年見なくなった。
ホットペッパー業界もあまりCMにお金を使えなくなったのか?でもアレはそれほどお金がかかったCMとも思えないけど、素人が考えたところで実際は高コストかも知れないね。

そんなこんなで今回選んだ小説はコチラ。
以前に読んだ『カフーを待ちわびて』の雰囲気が気に入って購入してみた。
小説好きである前に映画好きでもあるおじさんなので、この作品はいつか読まなきゃイカンぞと思っていた。しかし邦画に対する良くないイメージが邪魔をして今まで避けていたのよ。
でも原田マハが書いたんだから騙されたと思って読んでみっかってなわけで。
ではでは、数々の名画に囲まれた神様の世界へ飛び込むぜ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

39歳独身女性の歩は会社に辞表を出したタイミングで父親が心臓手術のため入院した知らせを聞く。
マンションの管理人をしている両親の仕事を一時的に引き継いで、歩は今後の人生を考え始めるのだが、悪い知らせがさらに届いて父親の借金が発覚してしまう。
ギャンブル依存症の父親を治すために、もう一つの趣味である映画に没頭させようとする歩と母だったが、なかなか上手くいはいかない。
同時に自身の職探しも始める歩だがある日、身に覚えのない会社から電話がかかってくる。
きっかけは歩が気まぐれに書いて管理人日誌に挟んでおいた映画の感想文だった。

テアトル銀幕、この世に映画がある限り、ひとりぼっちで、相談会、俺の夢をどうしてくれる、映友会、編集長息子担当、キネマの神様、祈り、英語版、悪い癖、嵐の予感、夢みたいな話、少しでも花のあるうちに、返事をください、ローズ・バット、感謝祭、最後の願い事、私の人生最良の映画、題名の前に・・・。

チラシ裏に書いた感想によってキネマの神様が誕生し、映画を愛する人々に様々な幸せが訪れる。
やがてそこへ集う人々の願いが一つになった時、奇跡が起こった・・・。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///歩の映画感想///
管理人代行最終日。歩は管理人日誌に最後の報告を書き終えて、ふと思い立ち最近見た映画の感想をチラシの裏に書き始めた。
68Pより。
―――幸福な映画を観た。「ニュー・シネマ・パラダイス」という名画だ。―――
なによこの感想は!
わかりやすくて共感しちゃう。
ニュー・シネマ・パラダイス』は一度しか観たことないのに、語られた場面がくっきりと蘇ってくる。
そして名画座をお祭りのような場所と説く文章・・・深く頷くほどに納得!
こんな風に言われたら一度は名画座で観てみたいって思ってしまうこと間違いなしだよ(`・ω・´)

///ゴウの映画感想///
出来上がったテストページをウェブ上で確認してみる歩。
記念すべき第一回目の報告は彼女も大好きな映画だった。
163Pより。
―――本日、市ヶ谷のテアトル銀幕で観た映画、「フィールド・オブ・ドリームス」に、小生、心底痺れました。―――
1,2年前にふと思い立って観た映画がまさしく『フィールド・オブ・ドリームス』だったおじさんは、この感想を読んだときに奇跡のようなめぐり合わせを感じた。
(おおげさだけど、読書中ってこうなっちゃうよね)
そして映画を観た者ならそのシーンを思い出し、あぁ~確かにそうだわって納得してしまうゴウの感想内容が素晴らしいんよ。
父と息子のキャッチボールかぁ、なんだか胸がキューッと締め付けられるようなエモ味が広がる。
(ちなみにおじさんはスポーツ観戦を一切見ない。だけど野球モノの作品は好きなんだなぁ)

///奇跡の瞬間///
ローズ・バッドからの返信が途絶えてしばらくたったある日の午後、清音からの電話を受けた歩。
今すぐCMMのネットライブを観てほしいと興奮気味に話す清音。
270Pより。
―――『そうです。「ラリー・キンダ」。誰が出てると思います?』
意外にも的中したようだ。しかし、なにをそんなに興奮しているのか。冗談ついでに、もうひと言、言ってみた。―――
まるで名作映画の山場みたいな展開だよ。
ぱぁっと胸に喜びと驚きが広がる瞬間を小説で味わったのは初めてかも。
まさか全世界の映画好きを巻き込んで物語が広がっていくなんて、読む前には思っていなかったから驚いたわ。予想を上回る展開って盛り上がるよね(´▽`)
この後もさらに喜怒哀楽の物語がアナタを待ち受けてるからドキワクしながら読むがヨロシ!


<< 気になった・謎だった・合わなかった部分 >>

///大企業はコレがスタンダードなん?///
父親の借金を打ち明けられた歩はその金額が自分の退職金と同じ額だと知り、会社員の頃を思い返す。
25Pより。
―――自分なくしてはこのプロジェクトは進まないのだから、何を気にすることがあろうか、と高をくくっていたのだ。
ことの重大さに気づいたときには、遅かった。―――
社内に悪い噂が流れたとして、それをほっておいたからっていきなり飛ばされたりするのかね?
巨大プロジェクトを引っ張っていく人材なんだし、処罰を下される前に真偽のほどを確認する場でも設けるのが普通だと思うけど。
まぁ、歩を引きずり下ろしたい者達がよほど上手に工作したんだろうねきっと(^^;)

///その映画の名は///
仕事であるアニメ映画のプレス試写会に行った歩は、何の予備知識もなくその映画を観てみるが・・・。
108Pより。
―――半信半疑で観始めたそのアニメ映画に、私はあっというまに異次元へ連れ去られてしまった。大げさでなく手に汗を握りながら、これくるかも、この監督くるかも、と自分の声が頭の中にこだまする。―――
歩が気に入って、バーブ馬場までもが観に来るアニメ映画かぁ、気になるね。
いきなり大ヒットしそうなアニメ映画で、それまで世間では無名だった髭面のアニメ監督。
みんなご存じのあの作品なのかな~?

///昔の映画館はキケン?///
あとがきを片桐はいりが書いているんだけど、そのなかでも特に気になった部分。
330Pより。
―――このあたりの事情は拙著にも記しましたが、男性主体の名画座で安全に映画を観るために、私は父親の背広を着て劇場にもぐりこんで、そのせいでよく女子トイレでトラブルを起こしました。―――
昔の名画座では女性の一人客がいたらそりゃあもうあんなことやこんなこと・・・っていうのが当たり前にあったのか?
昭和の時代に暗い閉じた空間で防音もしっかりしてるとなりゃ、セクハラも犯罪もあっておかしくないわなぁ。女性一人では映画も観に行けない時代だったのね、ジェンダー問題をもっと解消していかんとアカン(`・ω・´)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
最初から最後まで歩の視点で語られる作り。
浜田マハの文章ってわかりやすいし共感しやすいわ。とくに111Pのところで、希望に溢れる新生活のことを「ずっと待ってた映画がもうすぐ始まる」って表現する部分、ここは読んでいてうっとりした。
これぞまさしく平易に書くことができるってやつなんじゃないかと、つまり天才のソレってことなんじゃないかと!(詳しくは『美濃牛』に書かれております)

とにかく全編を通していろんな映画のタイトルが出てくるこの小説。
物語に関わってくる映画の詳細は本編でも語られているからご安心を。
でもあらかじめ知っていたほうがより一層楽しめることは間違いなしだわね。
(おじさんも観てみたい映画が一気に増えてしまったよ)

///話のオチはどうだった?///
暖かい、ほんとうに暖かい優しさいっぱいのエンディングが素晴らしいよ!
もう心の中ではスタンディングオベーションしちゃってたわ。
読んでいて映画のように映像が浮かんでは流れていくことってよくあるけど、同時に音楽まで聞こえてくる小説はなかなかないでしょ。
それに作中で小さく描写されている歩の恋愛展開もキュンとさせてくれるのが嬉しいアクセント(*´▽`*)

キネマの神様ってタイトルなんだから、最後は何かしら超常現象的な奇跡が起こるんじゃないかと予想していたけど、そーゆー展開はないね。
だけど登場人物達による決断と行動によって、奇跡のような凄いことは起こった。
これって人間自体が奇跡の源なんじゃないかと、興奮したせいでらしくないことを考えたり(^^;)
お涙頂戴系は苦手なおじさんだけど、悲しみではない純粋な感動で涙が出てくる場面がいくつもあった。
こんなに贅沢な小説は他にはないでしょうに。

///まとめとして///
思い返せば小さい頃から映画が好きだったなぁ、そんで大人になってから小説も好きになったなぁ。
そのおかげでこの小説をこんなに楽しむことが出来たのが嬉しい。
作中で重点的に語られている映画を偶然にも鑑賞していたことに、なにかしらの運命的なモノを感じてさらに嬉しさが倍増しているおじさん。
解説を書いた片桐はいりがこんなことを記されていた。
331Pより。
―――好きなものの手を放しさえしなければ、こんな素敵なこともある。―――
まったくもってその通りでございますですハイ(´▽`)

以前の勤め先の上司がよく名古屋のミニシアターにレイトショー鑑賞へ行っていると聞いたことがある。
一人きりで睡眠時間を削ってまでよく行くなぁ、家でレンタルを観ても一緒でしょって思っていた。
だけどこの小説を読んで、すぐに映画館へ行きたくなっちゃった。
できればミニシアターとか名画座っていう場所へ、もちろん一人ぼっちでねって訳で今回も暖かさに満ち溢れた満読感をたっぷりと頂きました。
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

『キネマの神様』は2021年に実写映画化されているけど、原作小説とはかなり内容が変更されているみたいで。ま~ね~、あのワールドワイドな物語を実写でやるのは難しいだろうて。
それに原作通りにやるなら間違いなく志村けんじゃないとアカンわ。
読んでいて最初から最後までずっと志村けんの声で脳内再生されてたくらいはまり役だったし。
残念だわ(´;ω;`)

15Pより。
―――適度に痩せて顔色もいい。山っ気全開で、ふてぶてしい感じさえする。―――
「やまっけ」
投機や冒険を好む気質。または、万一の幸運をねらって思いきって物事をしようとする心、とのこと。

29Pより。
―――ドライブインシアターカウチポテト族、ホームシアターなど、映画を取り巻く環境は確かに変化しつつある。―――
カウチポテト族とは、長椅子に横たわってポテトチップスを食べながらテレビやビデオを見て過ごすライフスタイル、またはそのような生活を好む人を表現したアメリカのスラングってことみたい。

37Pより。
―――そのうちに学校で喜劇王バスター・キートンの真似をし始めて、友だちのあいだで大人気になった。―――
バスター・キートン(1895年 - 1966年)は、アメリカの喜劇俳優、映画監督、脚本家で、チャールズ・チャップリンハロルド・ロイドと並び「世界の三大喜劇王」と呼ばれる。
喜怒哀楽を表情に出さない「偉大なる無表情」を一切崩さずに行う、体を張ったアクションとギャグが最大の特徴らしい。

89Pより。
―――谷岡ヤスジと言われてむっとする私も私だが、ミノムシ男も「鼻血ブー」を知っているとなると結構な年寄りじゃないか。―――
谷岡 ヤスジ(1942年 - 1999年)は、日本の漫画家で愛媛県宇和島市出身。赤塚不二夫と並ぶ日本のギャグ漫画界の巨匠と言われる。
1970年、講談社の『週刊少年マガジン』に連載した『ヤスジのメッタメタガキ道講座』で大ブレイクして、作品の中の「アサー!」「鼻血ブー」は流行語となったとのこと。

95Pより。
―――元祖ワーキング・マザーとして八面六臂の活躍の末、病身の父が引退したのを機に、四十歳で社長に就任した。―――
「はちめんろっぴ」
ひとりで多方面にわたる、または何人分もの、働きをしてのけること。

227Pより。
―――確かに、父のブログはいまや値千金だ。―――
「あたいせんきん」
きわめて大きな価値、意義をもつこと。「千金」とは千枚の金子を指し、転じて莫大な価値を意味するってことらしい。

289Pより。
―――とぼけた調子で、愛情と感動、ときには諧謔をこめて、映画を論じる。―――
「かいぎゃく」
面白い気のきいた冗談。しゃれ。ユーモア。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
304Pより。
―――父はしばらく、もごもごと言いにくそうにしていたが、突然デスクに両手を突いて頭を下げた。
「お願いですっ、編集長どの!私に、お金を貸してくださいっ」―――


老人の禿げた頭部はどんなんなのか?そう思っていた矢先、スーパーでレジ待ち並びをしていたら前にいる老人が禿げあがっているじゃないか。
今までの人生で他人の禿げあがった頭部をまじまじと見ることなんてしなかったけど、これは絵を描く為だからと自分に言い聞かせてじっと見つめてみた結果・・・。
遠目にはつるつるに見えても、実は薄っすら毛が残っていることに気づきました。
ありがとう、名も知らぬご老人。