忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

殺人勤務医 読書感想

タイトル 「殺人勤務医」(文庫版)
著者 大石圭
文庫 302ページ
出版社 角川書店
発売日 2002年3月1日

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「殺人勤務医」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

専門学生だったころに授業の一環で『サイダーハウスルール』という映画を観た。
もう内容はほとんど覚えてなかったから、インターネットで調べて懐かしい気持ちになったり。
(つーかシャーリーズセロンが出演していたのかよ!? 今更ながら驚いたわ)
中絶や堕胎・・・・・良い面もあれば悪い面もある訳で。
今回はホラー小説枠で購入したコチラを読んでみたよ。
色々な方法で苦しめられるってことは映画『ソウ』みたいな感じなのかな?
ドキドキしながら、いざページを捲らん(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

若くてイケメンで実力も評判も良い中絶専門医の古河亮。
彼は『湘南マタニティ・クリニック』の新館に勤務しており、3年間で1000件を超える中絶手術をしながらも、周囲の人たちからは人格者として好かれていた。

古河亮にはもう一つの顔がある。
死に値する行為をした人間を拉致監禁して、じっくりいたぶってから殺す殺人者でもあった。
今まさに12人目の被害者である女性が、地下の監禁部屋で嘆きの声を漏らし続けている。

何か食べさせて、ストリキーネ、法的に認められた大量殺人者、運が悪かったんです、絶対に許さない、バナナの皮、ポルシェ356、母体保護法、儀式の始まりだ、今夜の試練、ブラッド、アクリル板、ヤン、かつてのヤンの飼い主、テンチュウダ、ライフワーク、多胎妊娠、あの人、決してそれを望むまい、許せなくなった、いいものをお見せしますよ、ナチュラル・ボーン・キラー・・・。

中絶することをできるだけやめさせようと説得する医師、小さな子供や動物を救う青年、そして独自の判断で次々と私刑を与えていく殺人者・・・。
相反する顔を持ちながら殺人を繰り返す人生、その先には何があるのか?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///連続殺人者が語る純粋な正論///
主人公の古河亮が考える、死刑に値する罪を語る場面。
この考え方には共感するモノがあるわ。
生物への虐待とか、無駄に苦しめる行為とか、そーゆーのは本当に辛いし悲しいのよ。
そんなことをする奴には相応の罰が下って欲しい!
もちろん、殺人はいけないことだと思っておりますハイ(;^ω^)
60Pより。
―――男が人間を殺したのだったら、それはどうでもいい。人間は人間の法律に守られているのだから、僕の知ったことではない。だが、池のコイを殺すのは許せなかった。そういう弱くて、何の抵抗手段も持たず、何の法律にも守られていないものに当たるというのは―――人間を殺すより遥かに悪いことのような気がした。
弱い者が、自分よりさらに弱い者を虐げるというのは、なぜだか、とてつもなく罪なことのように感じられた。―――

///許せない動物虐待からの救いと報い///
作中でお世話を放置された飼い犬が登場して、古河亮はその様子を見て心を痛める。
そして嵐が吹き荒れる夜、亮は居ても立っても居られなくなり行動を起こした。
フィクションだけど声を大にして言いたい、犬を救ってくれてありがとう!!
(ホラーとか残酷系小説にしては珍しく、しっかり救済される展開に少し驚いた)
そして虐待者への仕打ちにスカッとしてしまうの当然の感情でしょう。
あ、殺人はいけないことだと思っておりますよハイ(;^ω^)

///一番嫌な方法はやっぱりこれかなぁ・・・///
児童虐待をしていた者を散々しばきあげて、次の計画の為に早々に始末しようと考える亮。
そして思いついたのがアクリル板を使った殺し方・・・。
おじさんはこれ系の苦痛は本当に嫌なのよ、読んでいて自分も息苦しくなってきちゃうもん。
そーゆー意味で、もっとも印象に残った殺人方法だったね。
194Pより。
―――妊婦を殺したことは一度もない。どんな方法がいいだろう?しばらくその場で考える。
それから、前に一度やった方法を取ることに決める。その時に使った道具が、まだガレージの片隅に立て掛けてあるはずだ。―――


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///なぜ相談所に連絡しないのか?///
通勤途中にあるアパートでよく見かける児童虐待に心を痛める亮。
早く児童相談所に通報したらいいのにって思っちゃう。(もしかして既に何度もしてるのかな?)
近所の人達もずっと我関せずの態度なのだろうか?
でもそれが現状だから虐待死がなくならないのかなぁ(´;ω;`)
64Pより。
―――アパートのベランダを見上げ、僕は堅く拳を握り締める。けれど僕には、どうすることもできない。―――

///バナナの皮は重要アイテム!?///
絶食刑の女性が永眠する瞬間に立ち会うため、野暮用の入ってしまった亮は彼女にバナナを一本与えた。
なんやかんやでその後の処理をしている時に、バナナの皮がどこにもないことに気づく。
92Pより。
―――バナナの皮はどこにもない。トイレに流したのだろうか?それとも、女が皮まで食べてしまったのだろうか?―――
後々にこのアイテムが原因で、予期せぬ事態が引き起こされるって思ったけど・・・。
(ほんとにどこにいってしまったのかねぇ)

///不用心すぎる大胆な行動と悪運///
標的を拉致する場合もけっこうその場の勢いでやってしまう亮。(一応周りの確認はしている)
死体を運ぶ時も、道中で突発的な検問でもしていたら絶体絶命のピンチだろうに。
94Pより。
―――目的地はすぐそこの茅ヶ崎のヨットハーバーだが、こんな気持ちのいい晩に、そんなに短いドライブではもったいない気がする。
「ちょっと遠出でもしてみようか?」
助手席に座った女の死体に言う。―――
逮捕されることを本人はあまり気にしていないのかな?
それにしても、誰にも目撃されずなんども犯行を成功させているとは悪運が強すぎる。
何某かの神様の加護があるんじゃないの?と思っちゃうほどに。


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
最初から最後まで古河亮の視点で語られる。
中絶医師の亮と殺人者である亮の場面がトントン変わって描かれているから飽きないね。
場面の間に語られる、堕胎や中絶の歴史の小話も読者の気持ちを盛り上げてくれる。
ただ内容としては古河亮の日常をお話にしただけって感じだから、ストーリー展開がどんどん盛り上がっていく系ではないなぁ~って思った。

///話のオチはどうだった?///
小さな手掛かりを頼りに亮へと迫る警察、手に汗握る捜査官との攻防、そしてどんでん返しなクライマックス・・・・・なんて展開はない。
おじさんの予想していたバッドエンドではなかったから安心したけど、じゃあハッピーエンドなのか?って聞かれると・・・・・違うかなぁ、と言うほかない(;^ω^)
これ以上の幸せを望まないと語る亮の「せめてもの願い」が叶うことをおじさんも願っている。

///まとめとして///
命を救って命を消し去る、これがほんとのダークヒーローってやつじゃない?違うかな?
(じわじわ苦しめる行為がヒーロー的じゃないって思うけど、悪人をスパッと楽に死なせるのはなんか違う気もするし)
でも待てよ、作中で最後に行った殺人は完璧に許されるものじゃないよな。
そこんとこ考慮してみると、やっぱりヒーローとは言えないか(・・;)

あとがきの302Pより。
―――僕たちは誰も、ほんの一瞬、ここにいる。そしてすぐに、いなくなる。―――
この言葉を絶望的に感じるか、救いとして感じるか・・・・・う~んむぅぅぅモヤモヤする。
もっと軽くてエンタメなストーリーを期待していたけど、まぁたまにはこーゆー話もアリだわね。
読み終わった小説の内容を悶々と悩んじゃうのは良作の証拠ってことで、満読感7点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

37Pより。
―――僕はキュレットという、スプーンのような形をした金属製の医療器具を手に取る。胎児を母体と決別させるため、その先端を少女の膣口に差し込む。―――
「キュレット」
掻把法で使用する道具。
金属製の細長い器具を子宮口から入れて、正常の子宮内膜を傷つけないように注意しながら子宮内の妊娠組織を全体的にかき出す方法。術中は強い疼痛が生じるので静脈麻酔で眠らせて手術を行うらしい。
形状の違うタイプが歯医者でも使用されているみたいだね。

66Pより。
―――アメリカでは人工妊娠中絶手術に携わる医師や医療スタッフ、ボランティアなどが、狂信的な中絶反対派によって狙撃され、死亡したり重傷を負ったりするという事件が相次いでいる。―――
銃を撃ってきたり、施設を爆破しようとしたり、中絶医師の子供にはボディーガードを配備したり、命を救うってスローガンを持って医師やその家族の命を奪いに来るのか・・・。
ここまで過激なのはごく一部なんだろうけど、印象悪くなるよねぇ。

154Pより。
―――僕はピンクのリボンが掛かった細長い小箱を開く。中には太い万年筆が入っている。
ペリカンですね。嬉しいな」―――
ペリカンはスイスに本社を置く文房具、オフィス用品メーカーで、のブランドはドイツに起源があるとか。
商標のモチーフとなったペリカンの親子像は、ヨーロッパでは古来より母性愛の象徴とされていて、またギュンター・ワーグナー家の家紋でもあったらしい。

198Pより。
―――台風一過の街を、ラジオから流れるメンデルスゾーンをききながらゆっくりと走る。―――
フェリックス・メンデルスゾーン(1809年 ― 1847年)は、ドイツ・ロマン派の作曲家、指揮者、ピアニスト、オルガニスト
ユダヤ人の家系であったメンデルスゾーン家は謂れなき迫害を受けることが多くて正当に評価されていなかったらしいけど、最近では再評価の機運も高まりを見せているらしい。

204Pより。
―――犬の新しい名前が決まった。ヤン。お気に入りのコンダクターであるヤン・コックから付けた。―――
指揮者のヤン・コックという人物が見つからない。
ヤン・パスカルとかヤン・クレンツ、または江戸時代の出島オランダ商館長ヤン・コック・ブロンホフなる人物は出てくるんだけど、コンダクターのヤン・コックが見つかりません( ;∀;)
作者の創作した人物なのかな?


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
234Pより。
―――「もう諦めたほうがいい。そのほうが楽になりますよ」ベッドに横になったまま僕は言う。
「あなたが生きているうちは、僕はどんなことがあっても、そのロープはほどきませんから」だが、男は僕の言葉にまったく反応しない。腎臓は今ではまったく機能していないのだろう。2時間ほど前に取り替えた尿バッグには、新たな尿は溜まっていない。―――

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と殺風景の絵を描くにあたってどんな感じなのか調べるのに苦労した。
実写の画像は怖くて見れない・・・・・イラストで紹介しているところを見つけたので助かったわ。
食用になる動物や作業されている方々に深く感謝致します。

メンデルスゾーン:交響曲全集

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