忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

トーキョー下町ゴールドクラッシュ! 読書感想

 

タイトル 「トーキョー下町ゴールドクラッシュ!」(文庫版)
著者 角埜杞真
文庫 326ページ
出版社 KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
発売日 2016年2月25日

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「トーキョー下町ゴールドクラッシュ!」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

以前、元上司からオススメされた『女神の見えざる手』という映画を観た。
これがなかなかに面白かったんだ。
巨大な敵、卑劣な手段に対して負けない挫けない女性ってカッコイイよね~(*´▽`*)
今回の小説は↑に近いモノを感じるかも。
全くと言っていいほど知る機会のなかった株取引がメインのお話なのかな?
理解できるかわからないけど、迷っていてもしょうがない。
大金が飛び交うトレーダーの世界に飛び込むぜ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

凄腕女性トレーダーの橘立花は身に覚えのないナニカをやらかして、唐突に会社を解雇されてしまう。
原因調査の前に腹ごしらえをしようと人形町を歩いていると、ふとしたキッカケで一樹という青年と出会い、彼に誘われるまま紫苑亭という小さな洋食屋に案内される。
そこで出会う下町の人々は、トレーダーの世界とは真逆の考え方を持っていた。

後に遭遇した不穏な出来事がきっかけで紫苑亭に居候することになった立花は、用心棒役の一樹と共に解雇の原因と犯人の捜査を開始するが、元顧客の佐久間社長から伝えられた宣言が立花を窮地に追い込む。

仕掛けは完了、退職勧告、紫苑亭、もうひとつの依頼、十年に及ぶ粉飾決算、居候第二号、信用と名誉に対する賠償、仕組まれた値下がり、殺し屋だよ、隅田川で死体、黒幕、メディリーク、転職者、TOB、正式な株券じゃない、私の勝ちだ、独りじゃない・・・。

定められた期限内に犯人を見つけるのが先か、命を奪われるのが先か、それとも億単位の借金か・・・。
下町人情溢れる人形町と金が全ての証券社会、二つの間で橘立花の復讐劇が始まった。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///崖っぷちに追い詰められる最悪の状況///
自分を貶めた犯人を捜そうとした矢先、元顧客である佐久間社長から電話がかかってくる。
告げられた内容は立花を慌てさせるのに十分過ぎるものだった。
127Pより。
―――『それができなかったら・・・・・言わなくても、キミならわかるよね?』
もちろん、わかる。佐久間社長がどうするつもりでいるのか。立花には、聞かずともわかった。―――
破滅までのタイムリミットが刻まれる、尻に火がついた熱い展開! 一気に面白くなってきた場面だね!
(個人的に佐久間社長の声は声優の安原義人が似合うと思った)

///株式理解力ゼロな読者でも安心///
トレーダーが主人公で株取引がポイントになる物語だから、当然その辺の事が作中で語られる。
けれどご安心を。
まったく知識のないおじさんでも理解して楽しめるように描かれているから。
敵対的買収ポイズンピル民間放送局の買収工作、ホワイトナイト、などなど株取引ならではの単語が出てくるたびにリアリティ感を高めてくれるから面白い。
むしろ株関係に興味が沸いてくるかもね、少し前の現実でも大戸屋買収騒動とかあったわけだし。
(そういや、けっこう昔に映画『ハゲタカ』ってのもあった気がする)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///そうは言っても、当然リスクがあるんでしょう?///
紫苑亭にて、投資に対して良いイメージを持っていない常連の老人達に対し、立花が如何に投資というモノが良いことなのか説明する場面。
65Pより。
―――「違う!投資っていうのはリスクヘッジのためにするものだから、お金がないひとほど賢く投資するべき」
「だからよぉ、その『賢く』ってのが曲者なんだってよぉ。素人には、なにが賢くてなにが賢くないのかなんて、わかんないじゃないか」
「そんなに難しいものじゃない。いい?投資っていうのは未来予測だし、未来は数字で読める。自分の読み次第でいくらだって稼げるんだから、こんなにたのしいことはないじゃない」―――
金がないほど賢く投資するべきか・・・・・でもそれが誰にでも出来るのなら苦労はしないよねぇ。
失敗したらお金が減る訳なんだし、でもちょっとだけ試してみたい気持ちも無い訳ではないわけで(笑)

///この主人公、どういう神経をしてるんだ?///
自分を嵌めた犯人を捜し始めてから、幾度も襲撃されて命の危険を体感しているのに折れない立花。
むしろさらに闘志を燃やして挑む姿勢を崩さない。
154P~155Pより。
―――「やってくれるじゃないの。この私を狙うなんて、百年早いわ!」命のかかった勝負、上等だ。受けて立とうじゃないか。
さあ、面白くなってきたよ!―――
歩いてきた人の隙がなさすぎる姿に反応するとか、目の前で刺されそうになっても面白いと思っちゃう精神面とか、どう考えても普通じゃないでしょ(笑)
橘立花・・・この女、一体どんな人生を送ってきたんだ?

///実はけっこう性格悪い系?///
元同僚である間宮が冤罪に巻き込まれて、無実を証明するために仕方なく立花を呼ぶ場面。
187より。
―――どうしてだろう、反射的にカメラのシャッターを切っていた。映っているのは、間宮の後ろ姿だ。肩を組んでラブホテルに入っていくところ。―――
同僚の珍しい場面を見つけてしまったからって、わざわざ写真に撮るかね?
無自覚の悪人系なのか、それとも危険予知のカンで撮ったのか、相変わらず底の知れない主人公。


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
「三人称視点」の俯瞰(神の視点)で語られる内容。
久しぶりにこの視点の小説を読んだせいか、最初の内はちょっと違和感があった。
いつも読む小説と違って、ホラー・エロ・グロとは全く対極に位置する内容だったけど、視点がコロコロ変わるおかげか全然退屈しないで読めてしまった。(株ビジネス&下町人情というミスマッチな組み合わせもイイね)

ライトノベルでは初めて読むタイプの物語だったけど、普段から電撃文庫を愛読している読者達には受けるのだろうか・・・・・う~むむ(;^ω^)

///話のオチはどうだった?///
突然無職になり下町の人々と知り合う状況の変化によって、立花自身も少しずつ変化していった。
だからこそ299Pの言葉に納得だよ。
一冊でキレイにまとまっていて、後味もスッキリで良かったわ。
(個人的には金融の黒い部分をもっと出しているほうが好きかも、でもライトノベルならこれで十分じゃないかと)

とは言え一樹の人生とか、立花のキャラクラ―設定とか、立花の旦那さんのこととか、いろいろと気になる部分が残ってしまったのがちょっとモヤっとしてしまう。

///まとめとして///
老若男女、全ての読者が気軽に楽しんで読める小説だと思う。
こーゆー小説こそまさしく『ライトノベル』ってモノじゃないかな。
たまにはキレイな勧善懲悪物語を読んで、心をリフレッシュさせようじゃないの。
謎多き女の橘立花、彼女の新しい日常の物語をちょっと読んでみたいかも。
ってな訳で満読感7点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

トーキョー下町ゴールドクラッシュ!」は第22回電撃小説大賞受賞作!

44Pより。
―――サンダルの上に乗っていたDVDを拾い上げてタイトルを一瞥すると、『Like Crazy』。ベタベタの恋愛映画らしいことが窺える。―――
『今日、キミに会えたら』(Like Crazy)は、ドレイク・ドレマス監督の2011年のアメリカ合衆国の恋愛ドラマ映画で、2011年にサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞した。
日本では劇場未公開だけどDVDが2013年5月10日に発売されたみたい。


72Pより。
―――「残念ながら、詳細はまだお話しできないんですがね。シンチレーターの樹脂部分に大きな改良を行っているところだ、とでも言っておきましょうか。―――
シンチレータはX線やガンマ線などの放射線が当たると、そのエネルギーを吸収して目に見える光を発する物質とのこと。
主にX線CTなどの医療機器、分析機器、放射線を用いた非破壊検査装置、放射線漏洩検査装置などに用いられているようで。

115Pより。
―――程よく引き締まった細身の体躯に、スーツの襟元から覗くデコルテにもシミひとつなく。肌の張りといい髪の艶といい、二十代の後半だと言っても通用しそうだ。―――
デコルテとは襟ぐりの大きく開いたドレスのこと。もしくは、そのようなドレスを着用した際に肌が露出する部分のこと。

248Pより。
―――たしか、偽造や改ざん防止のためにチェックライターとかいう専用の機械が使われていたはずだ。―――
企業において小切ってや領収書、手形を作成するときに金額を記載するために使用する機械のことをチェックライターと呼ぶ。
金額が刻み込まれたように紙に印字される為、印刷後の金額の変更ができず、改ざんの防止にもなるらしい。

269Pより。
―――そうして、レンタルオフィスでは電話などの什器もセットになって貸し出されていることが多いから、撤収しようと思ったら短期間で退去できる。―――
什器(じゅうき)とは、仏教の什物(じゅうもつ)に由来し、寺で宗徒が使う器具、日用品、生活用品を指すみたいで、1つや2つなどではなく10を単位として数えなければならないほどたくさんで雑多であることから、中国の宋代に禅宗寺院内で使われはじめた語が一般化していったとのこと。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
152Pより。
―――咄嗟に立花は身を引き、と同時に、一樹の襟首を引っ掴んで投げ飛ばした。遅れてきた一樹が立花に肩を並べるのと、すれ違いざまに男の手元でキラリとなにかが光ったのは、ほとんど同じタイミングだったと思う。間一髪。―――

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立花のおかげで命拾いした一樹だったが、彼のシャツはお腹の辺りでスッパリと切れて、うっすらと血が滲んでいた・・・・・・ってシャツですか!?
しまった・・・まままあ、パーカーの下にシャツを着ていたってことにしちゃおう(;^ω^)