忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

メドゥサ、鏡をごらん 読書感想

タイトル 「メドゥサ、鏡をごらん」(文庫版)
著者 井上夢人
文庫 496ページ
出版社 講談社
発売日 2002年8月9日

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・今回の「メドゥサ、鏡をごらん」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

いきなりだけど、ホラー映画の『キャビン』という作品が好きなんです。
ただのホラー映画じゃなくて、なんていうかギャグとか管理とかモニターとか、とにかく普通のホラー映画じゃない(笑)
その楽しめた経験に流されて、次に映画『ロッジ』というのも観た。
この映画にもハラハラドキドキさせられたなぁ~・・・・・ほんと、驚かされたよ(・・;)
一体なにがおこっとるの!?最後はどうなるんやー!?って感じで。
今回の小説を読んで久しぶりにその『ロッジ』を思い出したわ。
ではでは、はじめての井上夢人作品を読んでみまっしょい(=゚ω゚)ノ



<< かるーい話のながれ >>

作家の藤井陽造が全身をコンクリートの中に埋め込むという奇妙な自殺をした。
コンクリートの中からは小さな瓶が見つかっており、中には「メドゥサを見た」と書かれたメモが入れられていた。

陽造の娘である菜名子と、その彼氏である主人公は陽造が最後に書いていたであろう小説を探すために韮崎の自宅を訪れるが、小説は見つからない。
陽造のノートを読み解いて、自殺する前に訪れた場所へ行ってみることにした主人公だったが、その頃から彼の周辺でおかしな事が起こり始める。

奇妙な自殺、最後の原稿、あずさ、タブー、無理心中、最後の一人、信じられないような非常識な小包、根源にある故意、こんなに恐ろしい文章、みんな死んでしまえ、プライベートディスク、煙草、杉浦から電話、白髪、このファイルを消去してもよろしいですか?、菜名子・・・。

理解不能な現象と増えていく死者の数、そして明かされる悲惨な過去と恨み。
藤井陽造の残した最後の小説とは?
彼は何を求めて方々へ出向いていたのか?
自殺者達が最後に目撃したモノとは、一体何なのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///一語一句まったく同じでなければ意味がない///
小説家の作品について、データが消えてしまったのならもう一度同じものを書き直せばいいと思っていた菜名子だったが、父親にそれは出来ないと言われる場面。
47Pより。
―――あたしたちは、消えても、一度書いたんだから、また同じように書き直せばいいんじゃないかって簡単に考えてしまうけど、父に言わせるとそんなもんじゃないらしいの。一度書いたものは、二度と書けないって。同じ文章を、消えた後でもう一度書くことなんてできないんだって―――
文章の勢いだとか流れとかリズム感、それらが少しでも違っていたら別物になっちゃうんだろうね。
前回読んだ『回游人』でも同じようなこと言っていたわ。
小説なんて書いたこともないけれど、なんとな~く分かる気がする、あくまでも気がするだけ(^^;)

///またもや新手のスタンド攻撃系か!?///
陽造の行動を探り始めた主人公、しかしその頃から奇妙な現象が起こりはじめた。
一体なにが起こったんだ・・・・・なぜ会話がかみ合わない?なぜ鍵が掛かっている!?
気分はまるで第三部のポルナレフ(笑)
103Pより。
―――「そんなバカな」誰が鍵を掛けたのだ?私は、周りを見回した。赤松の林には、誰の人影もなかった。―――
訳のわからない予想外な展開にドキドキしちゃうぜ。
(なんとなくホラーっていう描写ではないから、やっぱりジョジョの雰囲気に近いかも)

///彼女の感じていた違和感になるほど///
藤井陽造の行動から何を調べていたのか解明しようとする主人公。
しかし菜名子は主人公の熱意に反してどうにも乗り気でない様子。
もちろん読者であるおじさんも主人公と同じ部分が知りたいから、菜名子に少しイライラしていたけどこの言葉を聞かされてからハッとしましたわ。
251Pより。
―――「あたしにわからないのは、あなたがやっていることなのよ。あなたは、なんのために父のしていたことを調べているの?父の最後の作品がどんなものだったのかを知るため?」
「そのつもり・・・・・なんだけど」
「前にも言ったけど、作品は原稿なのよ。取材していたものは、父の作品じゃないの。素材は、素材でしかない。そうじゃない?」―――
なるほど!
たしかに菜名子の言う通りじゃわ。
いつの間にかおじさんも目的がすり替わっちゃっていたことに驚かされたよΣ( ̄□ ̄|||


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///なぜ常に晒し続けたのか?///
不慮の事故で首から上に酷い火傷を負った女子小学生がいたんだけど、病院から退院してきた彼女を待ち受けていたのはクラスメイトからの拒絶だったっていう部分。
329Pより。
―――「残酷なもので、娘には友達がいなくなりました。おぴらにいじめられることはなかったにせよ、以前のように親しく遊んでくれる友達はいなくなりました。誰も、娘の顔を見ようとしなくなりました。眼を見て話をすることができないので、話しかけること自体、しなくなってしまったのです―――
いやいや、せめて帽子とかカツラとかマスクくらい付けさせてあげるでしょ?なんで常に火傷顔を晒してるんだ。
昔の小学校だからそれさえ許してもらえなかったのか?
(まあ、たとえマスク&帽子付けてても拒絶されたとは思うけど)
フィクションだから過激な内容にしたいってのはわかるけど、やり過ぎるとそりゃないでしょ~って感じちゃうことあるよね。

///えぇ~放置して行っちゃうんですか///
陽造の小説を見つけた主人公は菜名子が読み終わるまで待機しようとするが、途中から菜名子の様子がおかしくなってくる。
しかし主人公は彼女を残して一人で石海に出かけて行ってしまった。
(ありえない内容の電話があったから、確かめたくなったようで)
412より。
―――菜名子の言葉が気掛かりではあったものの、さらに声をかけることもはばかられて、私はその家を出て韮崎駅へ向かった。―――
明らかに彼女なんかオカシイこと言ってるよ?それでも行っちゃうのかよ(笑)って心の中でツッコミを入れたわ。
まぁ、通常の精神状態ならありえない選択だろうけど、この時はもう謎のアレに心が飲み込まれちゃっていたと思うから、こんな行動をしても仕方ないってことかな?


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
主人公の視点で語られる内容なんだけど、中盤以降にガラッとアレが変わる展開に驚かされた。
もうそこからは怒涛のナンダコレ現象の連続で、おじさんは最後まで振り回されたよ。
ただそこに到達するまでの内容に盛り上がりが少なかった気もするね。
全体のページ数もなかなかに多かったし。

///話のオチはどうだった?///
終盤付近では、もうアカン!完全に理解できなくなってきたしこのままではアレと同じ結果になってしまうじゃんか!
あぁ~~~もう、結末はどうなるのよぉぉ・・・・・・って終わっちゃった!?
あららコレで終わっちゃったよ(゚Д゚;)
全然わからない感想だけど、ホントにこんな感じなんですわわわ。

ネットで他の読者の考察とかを調べてみたけど、やはり誰もコレだ!っていう結論には至っていない感じかな。おじさんは読み終えた瞬間から自分で考察することを諦めました(;´Д`)

///まとめとして///
終盤からの想像を超えた怒涛の展開は凄く楽しめたし興奮させられちゃった。
それだけにこの締め方は、個人的に残念でならなかったよ。
(今思い返すと登場人物達の人間味もなんだか薄味に感じたような・・・)

とはいえ、楽しみ方はひとそれぞれってことで。
読了後のモヤモヤとか、なんとも言えない後味を愉しみたい方には是非ともオススメな小説だと思う!
井上夢人にブンブン振り回されてぶん投げられる感覚を愉しめ!ってな訳で満読感5点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

207Pより。
―――「ああ。ウカイはそのまま、鳥の鵜に飼う。ヤスヒロは泰然自若の奏に博士」―――
「たいぜんじじゃく」
何事にも動じず落ち着いた様子のことらしい。
「泰然」は落ち着いた状態を指す言葉で、その人の態度や姿勢に対して使われる。
「自若」は慌てない様子を指していて、何かトラブルが起こっても慌てない姿に対して使われる。

308Pより。
―――JR金町駅で京成線に乗り換え、柴又で降りる。帝釈天がすぐ近くにあるからなのだろう。お祭りでもないのに、駅前の広場には、ずらりと屋台が並んでいた。―――
「たいしゃくてん」
柴又帝釈天または帝釈天 題経寺は、東京都葛飾区柴又七丁目にある日蓮宗の寺院の通称。
帝釈天」とは本来の意味では仏教の守護神である天部の一つを指すけど、地元では題経寺の略称として用られることも多いらしい。

363Pより。
―――菜名子の声が途切れた。話の接ぎ穂を失って、私は受話器を持ち替えた。―――
「つぎほ」
接ぎ木のとき、台木に接ぐ枝など。
または、いったんとぎれた話を続けようとするときのきっかけ。

井上夢人
徳山諄一とコンビを組み、「岡嶋二人」のペンネームで1975年から7年間で4回応募し、1982年に『焦茶色のパステル』で第28回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。
その後、2人で創作活動を続けるものの1989年刊行の『クラインの壺』を境にコンビは解消され、井上は「井上夢人」のペンネームで創作活動を続けているとのこと。
あの岡島二人の内の一人だったのね~。
『焦茶色のパステル』という作品は乱歩賞も受賞している作品らしい。
いつか読んでみようかな。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
483Pより。
―――鏡の中には、やはり少女がいた。彼女は、その膜のかかった眼で私を見つめ続けていた。私は、彼女のほうに空の瓶を持ち上げて振ってみせた。笑いかけたが、少女の表情は変わらなかった。―――

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火傷とかケロイドとかどんなんだろうと思って画像検索してみようとするも、実写画像を見るのが怖すぎて結局こんなんだろうかって想像で描いてしまった。(鏡の反射光でイイカンジに隠せ隠せ!)