忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「忘れないと誓ったぼくがいた」 読書感想

「忘れないと誓ったぼくがいた」(文庫版)

著者 平山瑞穂
文庫 331ページ
出版社 新潮社
発売日 2008年7月29日

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「忘れないと誓ったぼくがいた」だけ。


<<ここ最近の思うこと>>

やってきました恋愛作品特集の第二段!
今回はどうかなぁ・・・・・中年おじさんにも共感できるような内容かなぁ。
もともとはこの感想文書き書き習慣も、むかーし読んだ小説の内容を忘れていたことがきっかけで作り始めたものなんだよね。
まさかこんなに長く続くとは自分でも思っていなかったけど(;^ω^)
「忘れる」系の作品はいろいろあるよね、「エターナルサンシャイン」とか、「レテの支流」とか、「メメント」とか。
「恋愛」×「忘れる」これは期待できるんじゃないかと!


<<かるーい話の流れ>>

「絶対に消すな」と書かれたDVC映像に写る謎の少女を主人公が眺めている場面から始まる。

メガネショップで織部という女性店員に一目ぼれする主人公の葉山タカシ。
後日、その女性店員が自分と同じ高校に通う一学年下の織部あずさだと判明。
運の良いことにタカシはあずさに誘われて学校をサボリ遊園地デートへ。
カフェで休憩中にいつの間にかあずさはいなくなっていた。

なぜ急に彼女がいなくなったのか分からずモヤモヤしたままのタカシ。
あくる日、突然あずさからディナーに誘われてそこで彼女の秘密について打ち明けられる。
理解できない現象に戸惑いながらも、あずさを消さないために様々な記録を残そうとするタカシ。

しかし人知の及ばぬ現象に対抗でき訳もなく、症状は深刻になっていく・・・。
謎のDVC映像を見終えたとき、タカシは何を思いどんな決断をするのか?


<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーン>>

200Pのところから。
あずさの存在を何とかして消させまいと意気込むタカシに対して、まるで他人事のように冷静に厳しい現実を説くあずさ。
そんな彼女の態度に怒って興奮するタカシを気遣って落ち着かせようとするあずさ。
タカシの手を取り、「私のために一生懸命になってくれて、嬉しい」と言った。
あまりの無感情な口ぶりに思わず笑いながら「棒読みだよ!」とツッコんでしまうタカシ。
とにかく問題をどーにかしようと頑張って空回りする男子と、そんな彼を冷静に優しくなだめる女子ってシチュエーションがキュンとくるのよ。
この感じ、わっかるかな~(*´▽`*)

どんでん返しって訳じゃないけれど、良い演出だったのがココだね。(ベタだけどさ(笑))
紛失したと思っていたDVCが手元に戻って来て、「知識としてのあずさ」しか覚えていないタカシが映像を観るところは鳥肌モノだったわ!
もっかい言うけど、ベタなんだけど、やっぱりグッとくるんだよねぇ~。
詳しくは言えないから、気になる方は是非読んでみるといいかと。

博士である茂木健一郎さんが小説の解説を書いているのが意外だった。
自由意思と無意識の説明とか「忘れない」を繰り返していくこととか、何気に今まで読んできた解説で、一番わかりやすくて最後までしっかり読んじゃう内容だったのがグッド。
解説とかあとがきとかって、あんまりしっかり読まないからさ(^^;)
それなりに面白ければちゃんと読むんだけどね。


<<気になった・予想外だった・悪かったところ>>

タカシはなんであずさのことを友人のヒロトに相談しないのか!?
そしてなんであずさのことを覚えている可能性がある用務員ジジイに相談をしないのか!?
こーゆー恋愛物語にありがちな非アクティブ系主人公なのでね、ガツガツズバズバいけないのはわかるけど、惚れた女のためならばどんなことでもやっちゃるっていう気合いは欲しかったなぁ。
(まあ相談しても聞いてみても、結局謎の力には抗えずに次の日にはみんな忘れちゃうんだろうけどさ)

最後まであずさが消えてしまう理由は判明しないまま、モヤモヤを残すエンディングだったのが残念。
不思議な現象には理由があったり辻褄とか合わないと、どーにもムズムズしちゃう性格なのよ(;´・ω・)
(消える理由としては、人間関係を疎かにし過ぎた罰が当たったのかもってあずさが言っていたが、うーむどうなんだろ?)


<< 読み終えてどうだった? >>

うん、さすが新潮文庫の恋愛小説。安定のクオリティを感じました。
高校生の話だから、それらしい雰囲気は良く作り込まれていたと思う。
帰国子女のことを「キコッキー」って呼んだりしていることとか、彼らが日本語と外国語の入り交ざった言葉で会話してるとか、先生達のネタ的な特徴だとかちょっとナマイキな元カノキャラとか思わず懐かしさを感じちゃう描写は上手いわ~。

最終的に主人公の成長が描かれている終わり方は、前回読んだ「八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。」と似ているかな。
というか、話の展開としてはかなり似ているわね(^^;)

読了感としては、少し不思議で綺麗な青春恋愛小説・・・・・なんだけど中年のおじさんにはもっとも~っと、苦みとか渋み成分がほしいかなって感じた。
小説にも大体の対象年齢とか書いといてもらえるとありがたいかも、なんてことを思っちゃったっス。
それにしても、こーゆー全力で没頭しちゃうような恋愛、したいよねぇ(ノД`)・゜・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

62Pより。
―――父親が今度は同じフランスのアンジェという学園都市の大学に、客員教授として呼ばれた。―――
フランス西部にあり世界遺産にも指定されているロワール渓谷がある。
名門アンジェ・カトリック大学がある大学都市でアンジェ城やサン・モーリス大聖堂などの観光スポットも充実しているみたい。

85Pより。
―――彼女はフランスにいたからフレンチ・ポップか、というとそんなことはぜんぜんなく、どっちかと言うとブリットポップにハマってるみたいだった。―――
ブリットポップまたはブリットポップ・ムーブメントは、1990年代にロンドンやマンチェスターを中心に発生したイギリスのポピュラー音楽ムーブメントのことらしい。
ブリティッシュ・インヴェイジョン、グラム・ロックパンク・ロックなど、イギリスのロック黄金期の影響を受けたバンドが多くデビューし、イギリス音楽界を盛り上げたとか。

181Pより。
―――着メロはドアーズの「ピープル・アー・ストレンジ」。ジャケット写真が気に入って買ったアルバム―――
1967年にリリースされたドアーズの曲。
歌詞を見てみたけど、結構暗い感じの曲だね。
落ち込んだり気持ちが沈んでいる人のことを歌った曲なのかな?
(疎外感や孤独感を歌った曲という見方もあるみたいね)

235Pより。
―――そいういった若さゆえの蹉跌や葛藤を経ないで大人になった人間にろくな奴はいない。―――
「さてつ」
物事がうまく進まず、しくじること。
挫折とか失敗とか。

この作者が書いた日本ファンタジーノベル大賞受賞の「ラス・マンチャス通信」を読んでみたいね。
鈴木光司氏の絶賛を浴びた異形の成長小説ってことみたいだけど、あらすじ紹介を読んでみてるとなんだか不穏なお話系?

2015年に村上虹郎早見あかりの主演でこの小説の実写映画がすでにあったのか!
これはぁ・・・・これはぁぁぁ・・・。
うん、まあ、機会があればいつか観るかね(;^ω^)


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

今回はズバッと2個描いてみた。

5Pより。
―――今、これを書いているぼくの手元には、一本のDVCテープがある。ラベルには、油性ペンで大きく「絶対消すな!!」の文字。―――

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VHSテープならわかるけど、DVCテープなんて見たことないし存在も知らなかったわ。


177Pより。
―――「これはポトスっていうんだ。おまえ、これひとつ持ってけ」―――

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原産地はソロモン諸島及び東南アジアの亜熱帯と熱帯雨林らしい。
比較的少ない光量でも生育するから室内での栽培が容易とのこと。