タイトル 「鴨川ホルモー」(文庫版)
著者 万城目学
文庫 299ページ
出版社 角川グループパブリッシング
発売日 2009年2月25日
この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「鴨川ホルモー」だけ
<< ここ最近の思うこと >>
小説まとめ購入の時に恋愛系をいくつか仕入れ用と思って「鴨川ホルモー」をポチったら、「ホルモー六景」っていう似て非なる小説が届いたんですよ~( ;∀;)
なーにー!?
やっちまったなぁ!!じゃなくてぇ・・・。
なんか押し間違えて「鴨川ホルモー」の続編を注文しちゃってたわ、チックショー(゚Д゚)ノ
仕方ないので、改めて注文し直したのよ。
ず~っと前に映画化して話題になっていたけど内容はさっぱりわからないから気になっていたんだ。
「ホルモー」という謎のワードには、ちゃんと恋愛成分が配合されているのか・・・?
ではさっそく読んでみよう(=゚ω゚)ノ
<< かるーい話のながれ >>
浪人して念願の京大生になった主人公の阿部は、怪しい勧誘に誘われて京大青龍会の歓迎会へ行くことに。(飯代節約目的)
そこで芽生えたよこしまな気持ちに流されて、あれよあれよという間に入会してしまう。
活動目的不明の京大青龍会。
それは謎の生物?を指揮して合戦をする「ホルモー」という競技を、四つの大学対抗で行う団体だった。
なんだかゆる~い感じの競技かと思っていたら、敗者や違反者には予想外の出来事が・・・。
個性豊かな学友との生活やホルモー試合を通して、阿倍の京大生活一年目はめまぐるしく過ぎていく。
ホルモー、宵山協定の解除、レナウン娘、オニ、レーズン、処女ホルモー、第十七項、黒いオニ、鴨川十七条ホルモー、本物のペナルティ・・・。
残念帰国子女の高村は、念願のアイデンティティーを獲得できるのか?
謎めいた読めない女、凡ちゃんの本心は如何に?
阿倍が一目惚れした「鼻」への想いは、果たして成就するのだろうか!?
<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>
「鴨川ホルモー」といったらキャラクターなしでは語れない!
特に気に入っている二人を紹介しちゃおう。
///ロサンゼルスからの帰国子女で阿部の親友?でもある高村///
一般的な日本の若者とズレている感性を持ったこの男が面白い。
中でも高村のファッションセンスを的確に表現したこの文章がお気に入り。
37Pより。
―――きょうび日本のどこに、ドジャースNOMOのTシャツを堂々と着ている十八歳がいるか。もちろん裾はズボンのなか、ベルトは相変わらず革の黒。"リズム感ゼロの黒人"と同じ種類の悲哀を、"おしゃれ感ゼロの帰国子女"というフレーズは醸し出していた。―――
リズム感ゼロの黒人て表現がちょっとツボに入った(笑)
続いて高村のおっちょこちょいな性格がわかるこちらも良かった。
166Pより。
―――高村から借りた、彼がこの国の歴史だと勘違いして買ってしまった『三国志』に読み耽った。―――
まあ、帰国子女だし日本では『三国志』のマンガがすごく人気だから勘違いしてしまうことも・・・。
いやいや、やっぱそれはないだろ~(笑)
(ちなみにおじさんはマンガの『三国志』を読んだことがない・・・kindleとかで安く手に入れたい)
中盤にて予想外の変貌を遂げる高村も面白かったよ。
157Pより。
―――「その人が大事だと思っていたものが奪われる、でも大丈夫」まさにスガ氏の言っていたとおりだった。そうだろう。大丈夫なのだろう。得々とゴキゲンな心境を吐露する、高村の横顔を見たら一目瞭然だ。―――
敗者のホルモーを受けたのに、さらにアレを奪われてしまうとは( ゚Д゚)
でも本人が気に入っているようだし、気持ちがスッキリできたのならオッケーだよね。
この設定になるほどなぁ~って思った。
///謎多き女学生『凡ちゃん』こと楠木ふみ///
阿部と同じ京都大学1年生でホルモー仲間の楠木ふみ。
大木凡人のような黒縁メガネをかけて、大木凡人のようなヘアースタイルの無口な女子大生。
彼女も個性的なキャラクターだったねぇ~。
86Pより。
―――「黙れ、阿部」突然、楠木ふみの口から鋭い声が発せられた。金縛りにあったかのように動きを停止した俺の脇をすり抜け、彼女はさっさと自転車を引き出すと、一瞥もくれぬまま、夜の百万編界隈へと漕ぎだしていった。―――
なかなか詳しく説明してくれないホルモーに関して、楠木ふみの鋭い質問が先輩方を怯ませた。
そのことを素晴らしかったと褒める阿部に対してこの返答。
お約束な展開を期待しつつも、「黙れ、阿部」ってセリフはちょっとヒドイ(笑)
あとココね!
247Pの凡ちゃんの無言の抗議が愛らしかったのよ!
詳しく書くとネタバレになっちゃうから書かないけど、おじさんの心がキュンとなる感で満たされた。
いやなんとなく分かってはいたよ、それでもイイ場面だった(*´▽`*)
<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>
///なぜホルモーという単語なのか?///
作者の思いつきで「ホルモー」という単語が選ばれただけなのか、それとも単語に古の意味が込められているのか・・・・・その辺は続編に描かれていることを期待しよう。
(力の限り叫ばないとあんなことになるってワケだから、何がしか意味がありそうだけどねぇ)
///龍大フェニックス第四百九十九代会長の立花美伽というキャラクター///
わざわざフルネームで紹介されている割に出番もセリフもほとんどない。
なのにきっちり紹介されているってことは、これも続編でいろいろ活躍するってことなのかな?
(チーム名を反対を押し切ってまで変更した女性会長・・・これは主要キャラの一人に間違いない!)
///凡ちゃんはどのへんに一目惚れしたのか?///
実は凡ちゃん、色恋沙汰に無関心って感じの女子大生だけどしっかり一目惚れした相手がいた!
気になるのはそいつのどこが気に入ったのかっていうのが知りたかった。
今思い返しても、彼は根は良さそうな奴だけど見た目に関してはいかにも平凡って印象だし。
阿部は早良涼子の鼻に惚れたってことだけど、凡ちゃんは果たしてどこが気に入ったのか気になるわ~。
<< 読み終えてどうだった? >>
///全体の印象とか///
これは青春恋愛小説であって、恋愛青春小説ではないかな~って感じだった。
阿部を中心とした個性強烈なキャラクター達との大学生活がメインで、「ホルモー」競技についてはけっこうあっさり進んで行くね(まあ合戦ごっこでワイワイ楽しむってのがモットーみたいだし)
だからスポ根モノみたいに試合とかで熱くさせてくれる展開ってのはあんまりなかったかなぁ。
(でもある人物の才能でどん底から一気に上り詰めていくのは良かったわ)
///話のオチはどうだった?///
いろいろあったけど爽やかなハッピーエンドを迎えてくれたから良かった(´▽`)
第十七条を発議してきた人物とホルモーの名前が偶然にもって部分が、ちょっとゾクッとさせてくれるのも良いスパイス!
ただホルモーが原因で京都の都に危機が迫る!みたいな大騒ぎ展開にならなかったのがちょっと残念。
(背表紙の紹介文を読んだ感じだと、予想外のいろいろハチャメチャなことが起こりそうって気がしてたんだけど、期待し過ぎてしまったかな)
///まとめとして///
なんだかんだで羨ましいじゃねえか阿部コノヤロー(゚Д゚)ノ
それに高村までも・・・・・大学生活エンジョイしやがって!
ままま、それはおいといて(笑)
ずっと昔から気になっていた作品だったから読む機会ができて良かったわ。
あと読み終わってから実写の映画版も見てみたいって思った小説は初めてかも。
だがしかし、恋愛小説の枠で購入した訳でぇ、その方面で評価するならば・・・・・ちょ~っとトキメキ成分が足りなかったかな~って感じだよ。
でもでもそれを差し引いても珍妙愉快な京大ホルモーを楽しめたから、満読感80点ってことで!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
「鴨川ホルモー」は第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作!
36Pより。
―――ベッドの手前のこたつ机には、実家から送られてきたばかりのヨックモックの缶が置かれていた。いち早くその存在に気づいた高村は、「おおっ、シガレットだ。僕、これ大好きなんだよね」と甲高い声を上げた。―――
「ヨックモック」
コンビニとかスーパーでよく売っているお菓子かと思ったら、ちゃんとしたブランド御菓子だったのか。
バターの香りとか濃厚なんだろうなぁ~と思って今度買ってみようかと思ったけど、けっこういいお値段するのね。
1969年から続く銘菓、食べてみたい(´▽`)
50Pより。
―――ダメだ。鼻はダメだ!善とコモンセンスに支えられた、"白い俺"が必死で叫んでいた。―――
「コモンセンス」
常識とか良識って意味みたいだね。
あとはT ・ペイン著、1776年一月発行の「アメリカ独立革命の書」として知られる小冊子もあるとか。
160Pより。
―――夜になってようやくベッドから抜け出し、近所のスーパーで大量の食糧を買いこんでから、部屋に戻った。その翌日より、"物忌み"と称し、俺が無期限の引きこもりに突入したことは言うまでもない。―――
「ものいみ」
祭りのため、もしくは災いから免れるため、一定期間食事や行動を慎んで不浄を避けて、家内にこもることをいうらしい。
現在でも各地の社寺などで行われているところがあるとか。
170Pより。
―――俺に必要なのはまさに知行合一の精神、いや「俺に必要なのはまさに知行合一の精神」などとほざく前にさっさと一歩足を踏み出す、さっさと踏み出せ、それでもって悶死してしまえ、さあさあさあさあ―――
「ちぎょうごういつ」
中国の明のときに、王陽明がおこした学問である陽明学の命題のひとつ。
知識と行為は一体であり、本当の知は実践を伴わなければならないということらしい。
227Pより。
―――鳥居をくぐり、さらさらと流れる瀬見の小川を渡ると、河合神社が見えた。『方丈記』で有名な鴨長明は、この神社の神官の家に生まれた。―――
「ほうじょうき」
鴨長明による鎌倉時代の随筆。
日本中世文学の代表的な随筆とされ『徒然草』『枕草子』とならぶ「古典日本三大随筆」に数えられてるとか。
254Pより。
―――「違うよ。これは五行相克の相関図に由来するんだ」隣から高村が、すぐさま賢しらに知識をひけらかしてきた。―――
「ごぎょうそうこく」
古代中国に端を発する自然哲学の思想で、万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなる説らしい。
5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えが根底に存在するとか。
256Pより。
―――だが―――俺の心に芽生えた寛恕の気持ちと、これからの勝負はまったくの別物だった。俺は楠木ふみのため、今日の勝利を誓った。―――
「かんじょ」
度量が広く思いやりの深いこと、あやまちなどをとがめずに広い心で許すことって意味らしい。
<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>
今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
オニを自在に操って戯れる楠木ふみが愛らしい場面だね。
(なんと、今気づいたら橋と行列を描いてなかった!まぁそんな細かいのどうせ描けないけどね~)
291Pより。
―――襤褸をはためかせ、"絞り"をふるふるさせながら、オニは気持ちよさそうに放物線を描き川面に消えていく。楠木ふみの手の動きに合わせ、再び一斉に舞い上がったオニたちの向こうに、御園橋を上賀茂神社に進む巡行の列が見えた。―――