忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

ミサイルマン 読書感想

タイトル 「ミサイルマン」(文庫版)
著者 平山夢明
文庫 349ページ
出版社 光文社
発売日 2010年2月9日

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・「独白するユニバーサル横メルカトル」
・「メルキオールの惨劇」
・「ダイナー」


<< ここ最近の思うこと >>

突然だけど、「ミサイルマン」と言えば何を思い浮かべるだろうか?
ハイロウズ」の歌だったり、お笑いコンビの「ミサイルマン」だったり、おじさんの場合はソフィアの曲を真っ先に思いついたんだけどあの曲は「ミサイル」だったようで。
(でも歌詞では「ミサイルマン」と言っているし)
でもでも、次からは平山夢明の小説だ!って答えちゃう。
ワクワクしかない短編集第二弾!
期待しちゃっても大丈夫、間違いなくその期待を超えてくれる小説だから。
いざ、いざいざ、魂を鷲掴みされちゃう世界に飛び込むぜ~(=゚ω゚)ノ
(なんか食わせろ なんか食わせろ なんか食わせろ~~~!!)


<< かるーい話のながれ >>

「テロルの創世」
バグと呼ばれる殺人鬼が神出鬼没している街。
そこに住むミカゲは学校で特講というモノを受ける。それは十歳になった子供達がみな受ける抗議で、クラスメイト全員がこの世界の成り立ちと、自分達の存在理由を教えられたのだった。
現実味の無い話を真剣に考えることよりも、ミカゲ達にとっては夜の祭りと花火大会のほうが重要だ。
ミカゲ、シメジ、ミチル、ちかこの四人は秘密の特等席で花火を見物するが、そこで恐ろしいモノと出くわしてしまい・・・。
小説『わたしを離さないで』とか映画『アス』を連想しちゃう内容のお話だった。
(飴屋の災難が笑えるんだけど、とろとろの飴はその後しっかり落とせたのだろうか?)

「ネックサッカーブルース」
幼い頃の火傷によって酷く醜い顔になってしまった男。
「あんたみたいに醜い男を好きな美人がいる」という言葉に誘われて、小さなスナックを訪れた。
そこに居たのはブルーという絶世の美女。
彼女は言う「ただは厭なの」 「血が欲しいの」と。
男の血を気に入ったブルーと蜜月を過ごすが、幸せな時は長く続かない。
アイツがやって来たのだ・・・。
あの有名な童話オチか(笑)
おじさんもブルーに「ヒャッホゥ」されてドンッっと毛穴をドン開きしたい(*´ω`)

「けだもの」
自身の死を願う老人はその手伝いを息子のテオに頼むのだが、毎回実行されることはなかった。
何度目かの処刑中断の時、テオは娘が殺されたと打ち明ける。
手掛かりの無い事件で進展は望めず、さらにテオに疑いの目を向けられる始末。
憔悴しきった姿を見兼ねて、老人は自身の処刑を条件に犯人捜しを手伝うことを約束した。
老人の持つ異能の力で犯人を見つけようとするのだが・・・。
珍しくも勧善懲悪系なお話だったね。
ニコライ・ダルチムスキー・・・・・って誰よ?
調べたら1977年の映画『テレフォン』に出てくるキャラクターっぽいね。
電話だからこのネーミングチョイスなのか?

「枷」
女性の死の瞬間に発現する超常現象の結果を収集するのが生きがいの男。
子持ちの女と婚姻関係のない夫婦生活をして、普段は役者の仕事をして、条件に合った標的が現れたら攫って嬲り殺す。
男はある日、自身の演じるキャラクターについて演出家に問われる。
「この男は最愛の人を拷問できると思うかい?」
そして思いもよらないビッグハプニングが起こってしまった・・・。
死の瞬間に現れる奇跡・・・・・映画『マーターズ』を感じるぞい(; ・`д・´)
それにしてもコレクターが自身に付ける枷の話になるほどだわ。
皆も際限なく収集しないよう、無意識に設定したりしてるのかな?

「それでもおまえは俺のハニー」
何の価値もない飲んだくれポンコツ男は、突然現れた美女に誘われて一軒家に住まわせてもらう。
衣食住の世話をしてもらうヒモになった男。
彼を養っている美女は耳が聞こえなかったが、なぜか家にはそこら中に黒電話が設置してあった。
まるで無数の虫のように存在している黒電話について彼は問う。
美女は答えた。
聞こえる人には聞こえない電話を待っているのだと・・・。
箸休め的な恋愛系のお話だったね。
でもそこは平山小説、「下痢のポタージュ」「トーストに塗った糞」「腐ったマン臭」などなどおよそ恋愛物語とは思えない単語がずらずらと(笑)

「或る彼岸の接近」
リストラされた主人公はなんとかタクシー会社に再就職して妻と息子を養っている。
節約のために一軒家へと移り住もうとする。
不動産屋に紹介された一軒家は運良く格安で好条件な一軒家だったが、それには理由があった。
庭の一角にトタンで仕切られた部分があって、そこは誰のものかわからない墓があるのだと言う。
そこだけは家主の土地でもないので構うことはできないのだが、放置してもらって良いとのことだった。
それくらいなら問題ないだろうと納得して移り住んだ一家だったが、ある日から妻の行動や言動がおかしなものになっていく・・・。
辛うじてバッドエンドではなかったけど、ハッピーエンドでもないわなぁ。
本当に災難としか言えないわ。
(この主人公はホラー映画とか見たことないのかな?よくありそうな展開だったけど。カーナビも無い時代の話だからまだ一般的ではなかったとか?)

ミサイルマン
ツヨシとシゲは定期的に女を拉致してきては殺すという鬱憤晴らしにハマっていた。
ある日、シゲは以前殺した女に財布を盗まれたままだったことをツヨシに伝える。
それだけならば放っておいても良いのだが、死体を埋めた場所が心霊スポットになってしまい、その周辺で被害者の皮も見つかってニュースで話題になってしまっていたのだった。
埋めた遺体を発見される前にシゲの財布を取り返さなければならない。
2人はすぐに遺体を掘り返しに行くのだが、腐りかけた遺体の状態は凄まじく、そして恐ろしい罠が仕掛けられていた・・・。
自動販売機の新規営業方法がリアルにありそうって思えちゃう。(あの社長も良いキャラクターだったなぁ)
それにピカチューって(笑)
表題作になるに相応しい面白さの物語だったよ。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///まさに死を願うほどの絶望///
「ネックサッカーブルース」より。
欲望のままに突き進んだ主人公に訪れる最悪の状況にガクブル(゚Д゚;)
85Pより。
―――「どこまでおめでたい奴なんだ。おまえが行くのは便所のなかに決まってるだろう。明日の夜には下水管を旅してるはずだ。意識を持ちながらな・・・・・」―――
下水管の中を意識を持ったまま旅するって、どーゆーことよ!?
しかも肉塊になった状態でってことだよね・・・・・いや、もう肉塊でもない状態なのか。
想像もできないし、想像もしたくない、でも面白かった!

///世知辛い親子の会話になぜかほっこり///
「枷」より。
地下鉄にて偶然居合わせた血縁関係のない父と娘の会話。
165Pより。
―――「わたしは・・・・・」一瞬、顔を曇らせるがあなたを見上げて
「おとうさんと一緒なら帰る」
「好きにしろ」
「暗いね・・・・・なんか」
「面白いことなぞあるものか。生きてるんだぞ」
「ほんとだよ。ほんとだね」
あなたたちはそのままやってきた電車に乗り込むと並んでつり革に掴まった―――
家に帰らなくなった不良女子学生と連続殺人鬼の義理父、そんでもってこの短い会話で伝わってくるやるせない感情が乾いた心に染みこむ平山夢明節なわけですよ(←おじさんの個人的感想です)
そしてこの後、ちょっと和んだと思ったらあんなことになるなんて(゚Д゚;)

///個人的ベストグロテスクシーンはコチラ///
ミサイルマン」より。
醜く太った女を殺して埋めたのだが、ある理由からもう一度その死体を掘り返すことになった場面。
310Pより。
―――おれとシゲはさっきからヘドを撒いていた場所へジャンプすると並んでもどした。二人とも口を開けてもケェェという音がでるだけで煙も立たなかった。
「辛いよ、ツヨシさん。俺、本当につらいよ」
「死人ってのは無敵だなぁ」―――
吐かずにはいられない臭気、腐肉から作られる液体溜まり、死体から溢れる害虫の群れ・・・。
今まで読んできた平山作品の中でも屈指のレベルな描写だったね。
間違いなく酷い表情で読んでいたと思う、出先で読まなくて本当に良かったわ(笑)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///鼓膜という器官について///
「それでもおまえは俺のハニー」より。
鼓膜を突き破って騒音をシャットダウンした主人公だったが、その後も聴力は回復していないようで。
210Pより。
―――いまだに唇が読めないので筆談なのが玉に瑕だが耳のことはさほど気になりゃしない。―――
自作耳栓をもうちょっと工夫していたら大分マシになったのではないかと思う。
(経験上ティッシュではまったく役に立ちません)
むかし読んだマンガ『ろくでなしブルース』に鼓膜は破れてもまた再生するって書いてあったような気がしたけど、どうなんだろ?再生するにはけっこう時間がかかるのかな?

///わかる人にはわかるのでしょうか?///
ミサイルマン」より。
殺した女の首を切り落として、その顔をいじくりまわして遊んでいたツヨシとシゲ。
2人はいじくっていた女の顔が誰かに似ていることに気づく。
286Pより。
―――オンナの顔は海外進出だとか言っては外人チンポばかり追っかけている嘘泣きオバサン歌手にソックリだった。
「こんな顔のババア歌手いたな」―――
海外進出・・・嘘なきオバサン歌手・・・だれなんだろ?
ネットで調べても、もちろんでてくるワケがない(笑)
(でもそれっぽい人はなんとなく・・・・・いやいや、まさかね~)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
7話ある短篇のすべてが男性主人公の視点から語られていた。
だから『独白するユニバーサル横メルカトル』と比べると、カラフルな印象は少ないかも。
その代わりという訳ではないと思うけど、今回は人間だけでなく怪物や悪霊関係の話も入っていた。
そのせいで雰囲気が崩れるかと思いきや、まったくそんなことはなく平山ワールドは完璧なクオリティーで仕上がっていたよ。

///話のオチはどうだった?///
とりあえず表題作の「ミサイルマン」のオチ感想を。
相変らず不思議な気分にさせてくれるね、内容なんて血も涙もないクズばかりのお話なのに読み終わりの後味は悪くない。
友情だけが光っていたよ・・・・・ってそんなしんみりと考えるようなもんじゃねぇ!
ハイロウズの曲を聴け!聞けばわかるさ!ノリと勢いが大切なのよ人生って(゚Д゚)ノ
(尖った頭で久しぶりにセガサターン星人を思い出しましたわ)

どうしようもない生き物の人間達、そんな彼らが見捨てることのできない魅力を醸し出す瞬間がある。
その一瞬を見事に描いてある短編集だったんじゃないかと思った。
(マンガ『闇金ウシジマくん』に近いモノがあるっぽい?)

///まとめとして///
ハズレ無しの短編集が読みたいだぁ?だったら平山夢明しかないっしょ!
普段から短編集を読まないおじさんだけど、この作家の作品ならばどんどん読んじゃうって決めちゃいましたわ。
こんなに強烈な作品ばかり書いちゃう平山夢明って人は、一体どんな人生を送ってきたのか?どんな作品を観てきたのか、おじさん気になります!

期待を裏切らない見世物小屋、恐ろしいモノを読みたい知りたい大人はどうぞ寄っといで、見ておいで。
今回も恐怖と興奮の魅力にがっしり心を掴まれてしまったので満読感9点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

40Pより。
―――二人とも六十近い。もう無理かもしれん。癈疾の噂が出ていた。―――
「はいしつ」
身体障害を伴う回復不能の病、とのこと。

64Pより。
―――「ひどく醜いわ。ジャコメッティの下手なパロディね」―――
アルベルト・ジャコメッティはスイスの彫刻家で絵画や版画の作品も多い。
もっともよく知られている作品群は、大戦後に作られた、針金のように極端に細く、長く引き伸ばされた人物彫刻みたい。
なるほどこれはかなりのスレンダーな人物彫刻だね。巨神兵を連想してしまうシルエットだわ)

91Pより。
―――丁度、麓への道を下りてくる杣がいたので山ほどの肉を毟ってやろうと牙を立てたが、彼奴めの力のほうが強く叶わず。―――
「そま」
古代・中世の日本で国家・権門が所有した山林。
上記の杣において働いている人のことをそまびと、とまとり、などと呼んだようで、近世・近代の日本では転じて林業従事者一般の意味で用いられるようになったとか。

138Pより。
―――「先生は是非、あなたに今回の芝居の主役級の役をお願いしたいと仰ってるのです。『悪霊』のピョートル役が先生の脳裏に灼きついて離れないそうでして・・・・・」―――
『悪霊』は、フョードル・ドストエフスキーの長編小説。
無政府主義無神論ニヒリズム、信仰、社会主義革命、ナロードニキなどをテーマにもつ深遠な作品でピョートル・ステパノヴィチ・ヴェルホーヴェンスキーのモデルはモデルは、革命家のセルゲイ・ネチャーエフとのこと。

174Pより。
―――「注射の跡。女は頭に打つの。目立たないから。舌や膝裏も使うけれど。シャブ中とかは顕現しないのかしら」―――
真偽のほどは不明だけど、妙にリアリティがあるように感じるぞい(; ・`д・´)

282Pより。
―――給料日にはナイタイを買い、何かの弾みで商売を忘れて俺に惚れそうなオンナを見つけると予約し、並んで、チンポをシゴイて貰い、金を払った。―――
Naitai magazine (ナイタイマガジン) は風俗情報誌みたいね。
1988年設立のナイタイ出版にて作られていたけど出版不況から売り上げは落ち込み、債権者に破産を申し立てられたらしい。

287Pより。
―――「あんな風に整形し過ぎると死相に近づくんですよ。あるじゃないですかピーリングとかって、顔の薄皮、薬品で溶かして剥がしたりするのが。化粧でごまかしても皺だの顔の癖だのを消せば段々、表情はなくなっちまいますからね。―――
ケミカルピーリングとは薬剤を使用して創傷の治癒に従って皮膚再生を促す施術、術式のこと。
美容や治療を目的として、酸性の薬剤を皮膚の表面に塗布し、新陳代謝の悪くなった角質層の結合を緩めることで自然に剥がす治療法みたいね。
美への探求心たるや凄まじいわ。

292Pより。
―――「私があんたらの頃は殴られ、イビられながら死ぬ思いで仕事をしましたよ。それに比べあんたらはオンバヒガサで極楽浄土ですよ」
週に焼肉を五日は食うという社長は近寄ると便所芳香剤なみに炭火とニンニクの臭いが盛大にした。―――
「オンバヒガサ」
乳母日傘は幼児に乳母をつけたり、強い日に当たらぬように傘を差しかけたりすること。
子供が大事に育てられることにいうらしい。

317Pより。
―――シゲはそれから、ドラキュラを完全に滅ぼすには、‶とねりこの杭‶で胸を突き刺した上で首を切断しなければならないんだと力説した。―――
トネリコ(梣)は キク亜綱- ゴマノハグサ目- モクセイ科に分類される落葉樹であるトネリコ属中の、日本列島を原産地とする1種。
「戸に塗る木」という言葉が訛って「トネリコ」と呼ばれるようになったとか。
ドラキュラに打ち込む杭となる木は主にトネリコ、ビャクシン、クロウメモドキ、セイヨウサンザシ等が使われるほか、ロシアではポプラが用いられることもあるとか。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
ピアスに光のエフェクトを入れようと思ったんだけど、全然それっぽく描けない。
もっと暗い画面じゃないと輝いて見えないのか、ただ技術がないだけなのか・・・・・技術だな(笑)
(ちなみにピアスとイヤリングの違いってわっかるかな~?おじさんはこの年になって初めて知りましたわ)

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165Pより。
―――「おとうさん・・・疲れすぎ」マリコは甘えるように体をぶつけてくるが目は叱られないか顔色を窺っているようなところがある。
「ねえ。シェークスピアって、おかしいよね」あなたは無言でいる。
マリコは隣の客が読んでいる本を盗み読みするとあなたの耳元で囁いた。―――

ミサイルマン

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ミサイル

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