忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

カフーを待ちわびて 読書感想

タイトル 「カフーを待ちわびて」(文庫版)
著者 原田マハ
文庫 346ページ
出版社 宝島社
発売日 2008年5月12日

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「カフーを待ちわびて」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

原田宗典』この名前を久しぶりに読んだ。
たしか中学時代に親友から勧められた文庫小説、ここからおじさんの趣味読書が始まっていったんじゃないかと思う。
それまで小説なんて一切見向きもしなかったのに、このエッセイは面白おかしく読めたのが不思議よ。

今回はお口直し用に購入した恋愛小説。
けっこう昔から目にしたことのあるタイトルだけど、はてさてどうなんだろうねぇ。
沖縄の離島で繰り広げられるカフーな恋愛ストーリー。
さあ飛び込むぜ!寒気から逃げ込むように飛び込んじゃうぜ(=゚ω゚)ノ(この感想は真冬の二月に書いております)


<< かるーい話のながれ >>

沖縄の与那喜島で雑貨店を営む明青。
家族はおらず、カフーという黒犬とのんびり暮らしている35歳。
近所に住むユタのおばあから「ウシラシ」を貰ったと告げられた夜、明青に一通の手紙が届いた。
差出人は幸という人物で、絵馬に書いてあったことが本当ならば自分をお嫁にもらってください、近々お尋ねしますという内容だった。

ウマい話を疑いつつも期待に胸を膨らませる明青だったが、幸は全く現れる気配がなく変わらない毎日が過ぎていく。
そしてありもしない希望を諦めるために、明青は手紙を燃やしたのだが・・・。

カフー、ウシラシ、巨大リゾート開発、デイゴの小枝、はじめまして、沖縄病、この馬鹿っ、あのこも?、いくじなし、遺言さ、嘘よ、宝物はかえしたのか、最後のお願い、とんだバカヤロー、カフーが待ってる・・・。

翌日、浜へと続く道にあるガジマルの下に彼女は立っていた。
巨大リゾート開発に向けて動きが活発になる与那喜島、そこにやって来た謎の美女。
沖縄の離島を舞台に、一枚の絵馬が繋いだ常夏恋愛物語が始まる。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///東京砂漠は人間しかいないのね///
集会後にダイビングショップを経営する庄司と明青が談笑する場面にて。
143Pより。
―――「神様がいる、って、それ面白いね」
「え、そうですか。絶対、いますって。東京にはいませんからね」―――
東京に神様はおりませんか(笑)
確かに神も仏もいない気がしてくるトウキョウ、居るのは人間達だけ。東京砂漠だなぁ。
(沖縄病の原因は神様がいるからか?まるでヒナミサワ症候群とオヤシロ様の・・・)

///悪人?善人?彼の本性に悩まされる///
おばあが急に倒れたせいで、俊一にきつく当たってしまう明青。
俊一は故郷の島を守る為だと説明して、さらに明青の母親についても語りだした。
213Pより。
―――たったいま、気づいた。俊一の言う通りだった。母を、待っていたのだ。ただ、馬鹿のように待ちわびて。―――
故郷の島を巨大リゾート施設にしようとする俊一、これだけでもうアヤシイって思っちゃう(;^ω^)
俊一の本性がどんなんなのか?良い奴or悪い奴・・・そこんとこも予想しながら楽しませてもらった。
カフーの一族に必ず吠えられるのも謎な設定だった)

///個人的涙腺ユルユルポイント///
家に帰って来るとカフーがそわそわと落ち着きがなく、鎖を外すと一目散に海岸へと走っていく。
カフーを追いかけて行き、誰もいない砂浜で明青はありえない光景を目にする。
245Pより。
―――「びっくりさせようと思って、帰って来たのに、誰も待っててくれない。カフーだけよ、カフーだけが私のことを探しに来てくれた。カフーだけが待っててくれた」―――
彼女の純粋過ぎる気持ち(思い込みが激しいタイプ?)もさることながら、カフーの健気で頼れる存在が胸にグッときた。
動物を絡めた泣きポイントには問答無用で敗北しちゃうのよおじさんは( ;∀;)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///この学校では日常茶飯事なこと?///
明青が小学生の時に上履きを隠されたことがあった。
同級生の情報提供により上履きの隠し場所へ行って、取り戻そうとする場面。
80Pより。
―――梯子を幹に立てかけて足をかけ、三段上ったところで足が滑った。梯子ごと倒れそうになるのを、俊一と渡が下から支え、なんとか留まった。俊一が梯子をしっかり押さえながら言った。
「サンダル脱げ、滑るから。一発で取って来いよ」―――
偶然にも教師たちはみんな近くにいなかったから目撃されなかったのかな?
もしくは木登り遊びなんて普段から行われているから、大人は誰も気にもしなかったのか・・・・・でも梯子まで用意してるし・・・・・でもでも、うぅ~む。

///この島では当たり前な行動?///
ウシラシがきたにも関わらず何もない毎日を過ごす明青は、一人砂浜で煙草を吸いながら子供の頃の苦い思い出に浸る。
87Pより。
―――明青は大きくため息をつくと、立ち上がって短パンの砂を払った。足元に溜まった吸殻に、足で乱暴に砂をかける。―――
えぇ!吸殻そのままですか?
他にも吸殻ポイ捨ての描写がちらほらでていたけど、沖縄の離島では普通なことなんだろか?
なかなかに衝撃的な描写だたよ(・・;)

///それでは足りないぞ、明青よ///
幸とちょっと距離が開いてしまった翌日、急に御嶽の病院に行くことになり取り乱しつつも彼女に書置きを残していく明青。
203Pより。
―――迷った末に、明青は書置きを残した。
ちょっとでかけてきます すぐ帰ります 明青
取る物も取り敢えず、それで出て来てしまった。あいまいな文言を反芻して明青は後悔した。―――
ちゃんと行先と連絡先も書いておくのが普通でしょうに、それにカフーのお世話とかも!
まあ急にあんなこと伝えられたら誰でも正しい行動なんて出来ないだろうけどさ。
明青だけに限らず、このドジッ子成分が恋愛モノに欠かせないスパイスなのだろう。


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
明青を中心とした第三者視点で語られていた。
自信のない主人公に共感しやすかったし(自信が持てない理由にも納得)、幸がやって来るまでの間も沖縄時間の日常が丁寧に書かれていて退屈せず楽しめたよ。
(飼い犬と散歩して、暇な店番して、ナカユクイして、おじさんものんびり沖縄で過ごしたい)

ウシラシがきてから幸が現れるまでの焦らし展開もおじさんは好きだね。
気になる異性を待つ時間って、ドキドキわくわくしちゃうやん(笑)

///話のオチはどうだった?///
終盤にかけての展開で、何でソコで言わないの!なんでソコを聞かないの!って思っちゃう。もしあの時ああしていたらってぶつけようのない感情が胸の内でグルグルしちゃう。あ~もぉ~悶々とする!
けれどこのじれったいような感情を愉しむのが、恋愛小説の醍醐味なんだろうなぁ~たぶん。

なるほどこーゆー終わり方なのね~。予想していたのとちょっとちがったけど悪くない気分、なんて考えながら読了後の気分に浸っている時、閃いてしまった。
最短最善策としてプロの探偵に依頼したら・・・なんて無粋なことを考えちゃうのがおじさん。
(汚れた大人になってしまったよよよ)

///まとめとして///
すべて読み終えた後、天を仰いで神様に尋ねた。
おじさんへのウシラシはいつくるのか?まだ先なのですか!?カフーを待ちわびまくりです(´;ω;`)
そしたらこの言葉が浮かんできた。
295Pより。
―――向こうから来るのを、待つばかりで。そんなことでは、いつまでたっても、汝ぁも幸せになられん―――
そのとおりだよ、おばあ。動かんとアカンのよ!でもどこへ向かってどう動けばいいのかわからない・・・って、そんなことは横に置いといて( `ー´)ノ

明青、幸、カフー、みんな一緒に暮らして幸せになって欲しいと願っちゃうお話だったわ。
中年男性が読む恋愛小説としては個人的にかなり共感しやすかったし、それ以外の部分でもじんわり楽しませてくれたから世の独身オジサンたちにオススメできる作品かと。
どうせなら真夏に海辺で読んでみたかったってことで満読感8点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

カフーを待ちわびて」は第1回『日本ラブストーリー大賞』大賞受賞作なのです!

9Pより。
―――その日の夕餉には、おばあ得意のハリセンボンを使った料理、アバサー汁が加わった。これはかなりうまかった。―――
フグの仲間だけど毒はないハリセンボンを使った汁物。
濃厚な肝を入れることによって旨みが豊かになるとか。
うむむ、骨が気になるが食べてみたい。

97Pより。
―――「沖縄の墓は、みんなそうだよ。ずーっと昔から、代々先祖がみんな入ってるんで、大きいんだよね。この辺の墓は、亀甲墓って言って・・・・・」―――
一部でこれは女性の子宮を模したもので、墓の入り口はちょうど産道に当たることになるみたい。
人は、母の胎内から生まれて死ぬとまた帰ってゆく、という「母体回帰」の思想からくるものらしい。
沖縄で昔に行われていた風葬も関係しているんだろうね、たぶん。
(しかしけっこうなスペースが必要になるお墓だな)

174~175Pより。
―――おばあは、昔このあたりの風習だった洗骨の儀式や「別れ遊び」について話をした。死者を悼み、死してなおともに遊ぼうという「別れ遊び」の風習に、幸はことのほか興味を示した。―――
若者の死の直後に若者仲間が墓に赴き、歌舞音曲をともなった通夜とか話しとかをする習俗。
幕内から死者の棺箱を出したり,その蓋を開けて死者を座らせて行われることもあったとか。

解説の345Pより。
―――小説家・エッセイストの原田宗典さんの実妹でもあります。―――
原田宗典実妹ってマジですか!ここで繋がるとはなんという巡り合わせ。
中学か高校生の頃に『スバラ式世界』とか『東京見聞録』とか読んだ覚えがある、だけど内容は全く覚えていない( ;∀;)
ちなみに原田宗典は2013年に覚醒剤取締法違反・大麻取締法違反で現行犯逮捕されたらしい。
オモシロいモノを書く人って、ぶっ飛んでるなぁ~(笑)

カフーを待ちわびて」は2009年に実写映画化されている。
予告動画を見てみたけど、主題歌になっているmoumoon 『EVERGREEN』が中々良い感じだった。
機会があれば見てみたい、ほんこん宮川大輔の演技も見てみたい(笑)


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
218Pより。
―――台風が過ぎるのを待って島に逗留していた人々だろう。日焼けした若者たち、浮き輪を持った子供たち、麦藁帽子を被った老人たち、それに、白いワンピースの、黒い犬を連れた・・・・・明青は、わが目を疑った。
大きく、大きく手を振るひとがいる。―――

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青空にグラデーションをつけたかったんだけどやり方がわからない。
次回までに調べておかなくては。
あ、船を待っていた他の老若男女たちも書き忘れた・・・・・まあ、何事も妥協は大事だよね(;^ω^)

 

EVERGREEN

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