忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

勝手にふるえてろ 読書感想

タイトル 「勝手にふるえてろ」(文庫版)
著者 綿矢りさ
文庫 218ページ
出版社 文藝春秋
発売日 2012年8月3日

f:id:mitemite753kakuyo:20211003131532j:plain f:id:mitemite753kakuyo:20211003131538j:plain


<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・今回の「勝手にふるえてろ」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

―――「どうして好きになれる相手を選べないんだろ。そうできたらいいのに」―――
っていうセリフをいつまでも覚えている。
たしか『ブギーポップは笑わない』って小説で、女子高生が言っていたセリフだったはず。
もうほんっとにコレ↑だよね~。
好きになる人を自分で選べたら少子化問題もスパッと解決しそうなのに・・・いやムリか(^^;)
てなわけで、今回の恋愛作品枠に選んだのはコチラの小説。
京都市立紫野高等学校在学中に『インストール』で第38回文藝賞受賞を受賞した作者は、当時最年少受賞とかで盛り上がっていた気がする。
若い女性作家の恋愛小説・・・・・早くも不安になる中年おじさんだが、覚悟を決めて読むぞよ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

江藤良香、26歳、経理課で働く地味な女性社員。
中学時代の同級生を片思いし続けて、恋愛経験のない26年を過ごしていた。
絶賛妄想片思い中の良香の前に、同期で営業の男が現れる。
些細なことで良香のことを気に入ったようで、片思いの男をイチ彼、同期営業の男をニ彼と位置付けてどちらにしようかと空想を膨らませる。

賞味期限がきた、そんな結婚が幸せなもんか、天然王子、甘いめまい、告白される気配、おれを見て、同窓会、アニメイト、イラスト描けるんだね、イチの幻影、ごめんなさい、勝手にふるえてろ、偽装妊娠、間違ったかも、絶滅危惧種の飼育員、私の好きなやさしさ。

好きな男か、好きになってくれた男か、良香にとっての幸せはどちらを選ぶことなのか?
恋をするから繁栄するし、恋をつづけるから途絶えてしまう。
思い込みが激しく、サブカル好きで現在は絶滅動物にハマり中の26歳ヒロインが、決断を迫られる!


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///江藤良香というキャラクター///
主人公の危なっかしい行動や思想が常に読者を楽しませてくる。
とくに面白かったところは接点のないイチと再会する為に別人を装って同窓会を開催してしまう場面。
62Pより。
―――だれだカシスサワーなんか頼んだのは、私はカシスもサワーも好きじゃないのに。自分だ。注文するときに舞い上がって目に入ったものをなにも考えず頼んだせいで、いま好きでもない赤紫色のお酒を飲み干さなきゃいけない。―――
久しぶりのイチに興奮して軽いパニックになる良香が可愛らしい。
(平田さんは無理なら来なくてもいいよって考えちゃうところも・・・・・カワイイ、かな)

続いて東京にてイチを含めた数人で鍋パーティーをしている場面。
89Pより。
―――食事の仕度ぐらい私だってできる、いましてないだけ、だからしゃもじをぬらすこともせずご飯粒をべたべたにつけて茶碗によそっている平田を好きにならないで、おねがいだから。―――
とにかく目につく女は許さない良香は、何かにつけて平田氏をディスりまくる(笑)

最後にコチラ。
いろんな状況が急に変化して、制御不能になってしまった良香の暴走思考。
129Pから130Pより。
―――ニも嫌いだ。私の処女を可愛いと思う男なんか大嫌いだ。赤いふせんの君を見つけた、君の下のふせんもぼくが取ってあげるよ、ってか。正気か。いや、落ち着こう。正気じゃないのは私だ。―――
もう下ネタのセンスがスケベオヤジ化しているじゃありませんか(笑)

///芥川賞受賞作家の読んじゃう文章///
80Pより。
―――処女とは私にとって、新品だった傘についたまま、手垢がついてぼろぼろに破れてかけてきたのにまだついてる持ち手のビニールの覆いみたいなもので、引っ剥がしたくてしょうがないけど、なんか必要な気がしてまだつけたままにしてある。―――
ははぁ~なるほどぉ。
分かる気がする、男だけど分かる気がするよコレは。
(でも最近では使用する時にすぐ取っ払っちゃう気がする。っていうか持ち手にビニールがついているような上等な傘をまず買っていないわ)

151Pより。
―――思い浮かべる人がいないのは孤独だ。現実の孤独、いまだに同棲さえせずに一人暮らしだとか、週末遊ぶ人がいないだとかに耐えられたのは、頭のなかでは一人ではなかったせいだ。―――
確かにその通りだわ。
思い浮べる異性が居ないって孤独だよ。
だったらモデルやアイドル、はたまた二次元キャラにでも入れ込めば多少でも孤独を忘れられそう・・・・・でも所詮叶わぬ恋だし、どっちも嫌だなぁ。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///知らなかった日本だけの文化///

(ページ数を忘れちゃったけど・・・↓)

―――いつのまにか致すときは鳴らすのがマナーになった音姫、おそらく日本の女子トイレでのみ起きている不思議な現象。―――
全世界の女性達に受け入れられる商品だと思っていたけど、実際はそうじゃないのか?
かる~く調べたけど、やっぱり日本以外では置いてない所が多いみたいね。
これぞカルチャーショックのデカルチャー
(治安が悪いところが多いから、盗難されたりするとか?)

///この勢いが若さなのだろうか?///
144Pより。
―――課長はいかにも忙しい人みたいにさっさと私から視線をうつして机のうえの書類をながめる。さっきまでの弱気な思考がカチリと音を立てて進路変更した。―――
いくらなんでもそこまで感情に流されちゃうもんかね?
最悪の場合、解雇されて生活できなくなっちゃうかも知れないのに。
しかし、この後先考えない行動が20代の「若さ」なのかも知れないねぇ。

///ちょっとわからなかった部分///
170Pより。
―――「また正直が出た」私はつぶやいてみたが弱々しい声だった。―――
良香はこう言っているけど、それほどニが「正直」って言葉を乱発しているとは思えなかった。
この場面を読み返してみたけど、「正直」って言葉が直前に使われてもいなかったし。
もしかしておじさんが覚えていないだけで、ニは口癖のように「正直」って言葉を使用していたのかな?
正直・・・思い出せないです(・・;)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
最初から最後まで主人公である江藤良香の視点で語られている。
話の展開よりも彼女の独特な考え方を中心に描かれているから、文学に近いのかな?
以前に読んだ『コンビニ人間』に近い印象だね。
(恋愛小説ってモノを期待して読むと、う~ん想像してたのと違うかもって感想を持つのはおじさんだけ?)

///話のオチはどうだった?///
もっと冷たい結末になりそうだなぁと思っていたけど、予想とは違って暖かい終わり方だったね。
少しこだわりの強い女性の恋愛劇を描いているだけなのに、退屈せずに時には笑えたり時には考えさせられたりしながら、最後にちょっとほっこりさせてくれる物語かな。
個人的にはとても危なっかしい二人の関係がどれだけ続くのか?どこまで深くなっていくのか?ってことが気になる。
むしろ結末以降のお話を読んでみたいと思った。
(あの後、良香が起こしたトラブルはどうやって処理したのかも気になる)

///まとめとして///
読み終わった時はなんだこの女は?って思ったけれど、読書感想を描くために何度か読み返すにつれて、江藤良香というキャラクターに愛着が湧いてきた。
派手な展開とか激しい描写がある訳じゃないのに、主人公の心理描写でこんなに楽しめるとは驚きだよ。

今思い出した、あったあったよ熱いところ。
173Pから174Pより。
―――ふりむくのは、挑戦だ。自分の愛ではなく他人の愛を信じるのは、自分への裏切りではなく、挑戦だ。―――
こんな熱い言葉で愛を表現するヒロイン、今まで読んだことなかったし(笑)
めずらしい女、それは男にとって魅力的に見えるんだろう。
(「おもしれえ女」って繰り返す無駄づかいアニメは正しかった!?)
だからおじさんも良香に愛着が湧いてきたのかなってことで、満読感87点!
さぁ~て、次はなにを読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

勝手にふるえてろ』は2017年に松岡茉優の主演で映画化映画化されてる。
予告動画を見てみたけど、意外とコメディよりな明るい雰囲気?
う~む、TVで放送されたら観てみたいなぁ。

9Pより。
―――足るを知れ、ってい言いたいのかって?ちょっと違う、足らざるを知れって言いたいの。―――
「足るを知れ」
身分相応に満足することを知るって意味かと。

25Pより。
―――「シンプソンズのバートみたいだね」 「だれ?ガイジン?」―――
シンプソンズのバート」
あまりにも協調性がなく授業の妨害をしまくるため、多動性の診断を受けて薬を処方されたり、矯正措置を施されそうになる事も多いキャラクターみたいだね。

36P~37Pより。
―――「江藤良香、二十六歳、B型、株式会社マルエイに勤めていて、顔にはたけができやすい。髪の毛は染めたことなし、アトピー体質でもあり首は年中色素沈着してる。―――
「はたけ」
円形や楕円形の、脱色したような斑点様の皮膚変化を生じる病気。
子どもの顔面に生じやすいとのこと。

勝手にふるえてろ』には文庫オリジナルの短編『仲良くしようか』も収録されている。
エッセイなのかポエムなのかよくわからないけど、おじさんにはどう楽しめばいいのか分からないお話だったよよよ(^^;)


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>


今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
134Pより。
―――家に帰ってこたつ布団に足を突っ込み、オフィス文書専用サイトでダウンロードしてプリントアウトした産前産後休暇届にボールペンで、携帯の電卓で計算した出産予定日を書き込んだら、すごくスッとした。
「できたぜ~」―――

f:id:mitemite753kakuyo:20211003131601p:plain

マンガの『蟲師』みたいなふわっとした着色をしてみたかったけど、そう簡単には出来ないのよね。
それにしてもフリーハンドでは直線が書きづらすぎる。
直線ツールとか欲しいけど、課金すれば使えるようになるのかな?
ツール内を探せばどこかにあるのかも・・・。