タイトル 「オルタード・カーボン下」(文庫版)
著者 リチャード・モーガン
文庫 456ページ
出版社 アスペクト
発売日 2010年3月27日
<<この作者の作品で既に読んだもの>>
・「オルタード・カーボン上」
<< ここ最近の思うこと >>
LGBTが声高々に叫ばれている昨今。
魂のデジタル化ができれば男性スリーブでも女性スリーブでも好きな方を選べるようになるのかな?
男女共に美しい異性に変身してみたいという願望はあるはず。
(あれれ・・・みんなもちろんあるよね?)
性別の事で悩んでいる方々もこれで万事解決!
なんてことになったらいいけど、でもスリーヴを選ぶとしても良いモノは高額になるんだろうなぁ。
上巻で女性のスリーヴに入れられて散々な目に遭わされたタケシ・コヴァッチ、下巻ではどのようなことに巻き込まれたり飛び込んだりするのか?
ではでは「オルタード・カーボン下」に向かってニードル・キャストするぜ(゚Д゚)ノ
<< かるーい話のながれ >>
強大な富を持ち数百年を生きるバンクロフトが謎の自殺をした。
そして自殺した彼自身に事件の究明を依頼された元特命外交部隊員で犯罪者のタケシ・コヴァッチ。
事件の捜査は思うように進まず、手当たり次第にツテと暴力を使って情報を集めようとする。
スリーヴの違法な解体をおこなっていた病院役員を連れ出して尋問している時、見知らぬ女が突然声をかけてきた。―――「この男はほんとに知らないんだよ、コヴァッチ。だから、あんたはただ時間を無駄にしてるのさ」―――
一目視ただけで危険な戦闘力を感じさせる謎の女は、タケシを助けにきたのだと言う。
シナモルフェステロン、人工知能、女医、レイ、差し出されたものはもらっておくことよ、ローリング・ウィルス、それが取引だ、真実を明かす鍵、屈辱ファイト、最後のピース、おまえかおれか、作戦開始、安っぽいロマンティシズム、もうクソたくさんだ、いい人生を、勝負の約束、それがこの世の真実だ、不正確なキス。
バンクロフトの自殺の真相、タケシ・コヴァッチを狙う黒幕、檻から解き放たれたカドミン、そしてすべてのことに対する責めを負わなければならないヤツ・・・。
いくつもの事実が揃って同じ方向を向き、タケシ・コヴァッチをあの場所へと導いていた。
<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>
///クールな男が激しい怒りを現す展開が好き///
これまでずっと感情の昂ぶることがなく、クールだったタケシ・コヴァッチが初めて怒りの感情をあらわにした場面。
95Pより。
―――目の下の筋肉が激しく痙攣しているのが自分でもわかった。
「殺してやる」とおれはうめいた。
「おまえの心臓を抉り出して食ってやる。ここを破壊して―――」―――
大切な人が延々に続くヴァーチャル拷問の被験者になると分かったら、そりゃあ誰でも憤怒するわ。
怒りに燃える男と、それを嘲るようにふるまう美女の悪人・・・・・この構図は熱いぜぇ。
///殺したアイツが頼りになる相棒///
もうこのキャラクターにおじさんの心は完璧に持っていかれたよ。
273Pのところなんて惚れちゃいそうになるくらいカッコイイ登場だし、197Pのところでは二人で飲む朝のコーヒーがしっとりしているし、だんだんと変化していく互いの関係が読んでいて楽しかった。
そんでもって385Pの場面ね。
実力はタケシ・コヴァッチよりも上だと思うけど、なぜにあそこでは反応が遅れたのか?
自分がとった行動を理解できていなかったから動くのが遅れたのかな?
なんにせよ、またどこかで出てきてほしいキャラクターだわ。
///やっぱり悪者はこうでなくちゃ///
エグイセリフを吐きながら動かない相手を蹴り上げる悪人。
それまでは上品ぶって余裕を見せていたからこそ、この豹変っぷりがすごく気に入りましたわ。
387Pより。
―――「このくそ野郎に何を約束された?向こう十年毎日お●んこをなめてやるとでも言われたか?」―――
悪役らしい悪役なキャラクターは絶対に必要な訳で、第二の主役とも言えるソイツが魅力的だからこそ、真の主役であるタケシ・コヴァッチが映える訳でありまして。
<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>
///どうして新しいスリーヴを事前に教えてあげないのか?///
60Pより。
―――俺の親爺は、釈放されて新しいスリーヴを着せられると、待っていた家族の脇をすり抜け、さらにおれたちの人生からも出ていってしまった。おれたちにはどれが親爺かもわからなかった。―――
保管刑を終えた人間は新しいスリーヴに入れられて娑婆に出てくる。
(金持ちは好きなの選べたりクローンスリーヴを持っていたりする)
だけど待っている出迎え人や家族にはどのスリーヴに入ったのか教えてもらえないようで、色々とトラブルになったり困惑したりするみたい。
事前に分かっちゃうとなにかマズいことでもあるのだろうか?
///おやおや~これはいわゆる「誤表記」ってヤツなのですか?///
246Pより。
―――オルテガは黙ってうなずくと、クルーザーに乗り込んだ。クルーザーはスムーズに通りを少し移動した。おれはそれが停まるところまで見届けると、オルテガの側にひざまずいた。―――
話の流れ的に、クルーザーに乗り込んだのはカドミンのはず。
10回くらい同じ部分を読み直して、こりゃ間違いだよ!って気づいたわ(笑)
(これは間違いなくキャラの名前を勘違いしてるよね?・・・・・おじさんの勘違いじゃないよね!?)
///生き物を傷つけて興奮する屑が胸糞悪い///
金と権力のある人間には、普通の人とは違うことをしてみたいと考える輩もいるようで・・・。
352Pより。
―――きみ、私はこんなルーティンにダイヤルした覚えはないぞ」
「店のおごりだ」とおれは無表情に言って、単分子の破片にとらえられた彼の顔が割れるのを見た。―――
性的嗜好の中には動物相手にムラムラする奴もいるようで、読んでいてとても嫌な気持ちになる部分もあったのよ(>_<)
でもコバッチの「店のおごり」のおかげで少しは気が晴れましたわ。
<< 読み終えてどうだった? >>
///全体の印象とか///
上巻よりも激しい展開が多くて、タケシ・コヴァッチも攻めの姿勢でアクティブに行動していったから、飽きずに最後まで楽しめたよ。
上下巻を通してだけど、馴染みのない独特な文章や作中の説明不足な単語が出てくるたびに、ちょっと悩んだり理解できないまま流しちゃうこともちらほらあった。
(読書慣れしていない時期だったら間違いなく途中で諦めていたと思う)
///話のオチはどうだった?///
バンクロフトの自殺の真相も解明されて、勧善懲悪の展開と切ない恋の別れ・・・。
押える所はしっかり押さえたボリューム満点のSFハードボイルド作品だった。
(あっと驚くようなトリックやどんでん返しはなかったけれど、中年好みな渋みはたっぷりだったよ)
///まとめとして///
魂を補完できるような未来になろうとも、自分の頭で考えない者やなんでも金で解決できると思っている者、ルールを守ろうとする者やルールを破る者、それらはけして変わることなく存在し続ける者っていうコバッチのセリフが記憶に残る。
どれだけ時代が進んでも人間は変わらないってことか。
ハードボイルド作品を読み終えた男性読者が、作品の主人公に憧れるが現実の自分と照らし合わせて似ても似つかないことにショックを受ける・・・・・その現象も時代が進めど変わらぬことだろう。
今のおじさんがまさしくその状態よ(ノД`)・゜・。
いつかタケシ・コヴァッチみたいな漢になってみたいなぁ~ってなわけで満読感90点!
さぁ~て、次はなにを読もうかな・・・。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
今回の小説は三部作のようで「ブロークン・エンジェル」・「ウォークン・フュアリーズ」の二作が続編としてあるみたい。
「ブロークン・エンジェル」は30年後のお話で、「ウォークン・フュアリーズ」はタケシ・コヴァッチの故郷であるハーランズ・ワールドでのお話みたいだね。
う~む、まずは実写ドラマかオリジナルアニメのどちらかを観てみたいかな。
上巻にチラッと話に出てきた「パッチワークマン」や「ミッキー・ノザワ」に関しての詳細が下巻で語られていたよ。
と言っても、詳細不明の単語はまだまだ沢山あったから次巻とかで語られたりするのかなぁ。
74Pより。
―――「空港」とトレップは答え、シートの上でしどけなくくつろぎ、おれの反応を見た。―――
「しどけない」
無秩序、 無造作な様子とか、つくろわない、うちとけた感じかと。
136Pより。
―――エンヴォイで授かった特殊技能も今は役立ちそうになかった。浚渫された沼の沈殿物のようにどろどろしていた。―――
「しゅんせつ」
水底をさらって土砂などを取り除くこと。
<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>
今回描いてみたのはコチラの場面。
人物の容姿描写があまりないから、ほとんど想像で描いております。
390Pより。
―――彼女は襟をつかんだ手を替えて、おれの胸を強く押しつけた。ペンチが視野に現れた。
「まずはアペリティフをどうぞ」
ペンチの先端がおれの下瞼に刺さり―――
しまった、服装はブラウスだったのか!(う~んむむ、まぁノースリーブのブラウスということでね)
改めてそのあたりを読み返していて気付いたが・・・・・今回も、もう手遅れだわよ(ノД`)・゜・。