忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

○○○○○○○○殺人事件 読書感想

タイトル 「○○○○○○○○殺人事件」(文庫版)
著者 早坂吝
文庫 268ページ
出版社 講談社
発売日 2017年4月14日

 



<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「○○○○○○○○殺人事件」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

南の島の楽園と言ったら『ザ・ビーチ』という映画を思い出す。
タイタニック』で一世を風靡したディカプリオが100本以上のオファーを断ってまで出演した映画らしく、日本でもすごく宣伝されていた気がする。
しかし上映されてからはあまり話題にならず消えて行った気もする。
それから10年後くらいにダニー・ボイル監督にハマったおじさんは『ザ・ビーチ』を初めて観てみたんだけど、めっちゃ良かったのよ!
アドベンチャーと楽園と不穏と恐怖、そして最後の儚くも爽やかなエンディングと曲・・・。
島への旅行へ行く時は前日とかに見ると気分上々になるかも(゚∀゚)

この映画と今回の小説が似ているのか?って聞かれると、似ている!とは言えないんだなぁ。
シチュエーション的には・・・・・ほぼ無人の島ってとこは似てるか。
インパクトある奇抜なタイトルで有名なこの小説。
ちょっとエチいギャルの表紙に誘われて素早く購入した。
さてさて、異例の猛暑になった22年の6月!初めての早坂吝アイランドへ飛び込むには絶好の季節。
窮屈な現実社会を抜け出し、本当の自分を曝け出せる楽園へいざ行かんとす(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

公務員の沖はアウトドアが趣味で、毎年同じ嗜好を持つ者同士が集まりとある島へ旅行に行くのが恒例化していた。
その島は黒沼という夫婦二人だけが住む個人所有の場所で、豊かで美しい自然を満喫しながらトロピカルな黒沼邸でのんびり過ごせる楽園だった。
この年の八月も変わらぬ顔ぶれで集合したのだが、一人だけ初顔の参加者がいた。
メンバーの一人である成瀬が連れてきた若い女性は上木らいちと名乗る。
成瀬の勝手な行動に抗議するメンバーもいたが、道中の船旅で打ち解けて仲間に受け入れられながら、一行は黒沼夫婦が待つ再従兄弟島へ向かう。

再従兄弟島、生々しい少女、犯人X 、僕の夏は終わった、喘ぎ声、ヘアヌード写真、白昼の仮面、南国モード、フラッシュ、人生初のクローズドサークルか、白い糸のような傷、神の視点、コン、美しい、脅迫、そういう契約、解決編、アウトドア派、冷たい声、最後の密室、心が欲しかった、うってつけのフレーズ、楽園追放、血のように赤い髪・・・。

島に到着してから非日常のバカンスを堪能する沖たちだったが、翌日にメンバーの内二人とクルーザーが消えてしまっていた。一時的に閉ざされた島となってしまった中、今度は他殺体が発見された。
疑心暗鬼に駆られる沖たちは、果たして無事に島から脱出することができるのか?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///よっしゃ!一丁やったろやないかい///
皆を乗せたおがさわら丸が時間通りに出向した後、本編に関係のある挿話が始まる。
竹芝客船ターミナルで発見された絞殺体を巡って、警視庁捜査一課の藍川警部補は悩んでいた。
43Pより。
―――章題が伏せられたこの章はタイトル当てという形式に慣れるための練習問題だ。―――
読者を飽きさせない&楽しませるナイスな作りだね。
短い練習問題程度なら当てれそうだって気持ちになるし、外れても本編のほうを当ててやるからなっていう悔しさが生まれるし。
それに内容もしっかり面白さが練り込まれているからなお良しだよ。(なぜあんなの握ってたのか?とか)
おじさんの結果はもちろん・・・当てられなかったよ(´-ω-`)

///生きてるのか、死んでるのか///
遺体の身元を割り当てた藍川警部補は被害者の住所へ出向く。
そこは被害者が経営していた質屋で、シャッターには筆字の張り紙が付いていた。
53Pより。
―――「いいよなあ、人間こういう風に生きなきゃなあ」
中浦は死にましたよ」同行した部下がツッコんでくる。
「俺たちだって働き続けなきゃいけない限り死んでいるようなもんさ・・・」―――
藍川警部補と部下のやり取りに思わずクスリとさせられる。
それにしても、ほんと中浦氏のような毎日が羨ましいよ。サラリーマンなんてやらずに済むならやらないほうがいい!悠々自適に自営業が一番だわ。
あぁ、また死んでいるような平日が始まる・・・。

///背筋も凍るような犯人の行動///
名探偵が犯人を指名して、そのトリックを言い当てる場面。
261Pより。
―――だが一箇所だけ決定的に違う点がある。それは―――。―――
この先の部分は読んでいて思わず尻の穴がキュンと締まるほどの衝撃を受けたわ。
まさかそこまでやるとはねぇ・・・それに色んなやり方があるんやねぇ(´゚д゚`)
例えおじさんが犯人だとしても、ようやらんわこんなこと。

最後に本編ではないけど、解説を摩耶雄嵩さんが書いているのね。
以前に読んだ『隻眼の少女』からは想像できないくらい気さくで笑える文章だったのが意外だった。
どうやら早坂吝とは京都大学推理小説研究会の先輩後輩な関係だったようで。
仲の良さが伺える解説に読了後の気分は上々だよ。


<< 気になった・謎だった・合わなかった部分 >>

///この感じ、思わずゾクゾクしてしまう///
船を乗り継ぎ丸一日以上かけてやってきた自分達だけの南国の孤島。
自分が今どこにいるのかを実感した時、沖の中で何かが目覚めた。
113Pより。
―――南国モード発動。俺、参上。さようなら僕。―――
沖が初めてモードチェンジした部分を読んだ時、おじさんは共感性羞恥のような感覚に襲われた。
(301Pからの「早坂吝」という作家がそのまま話題に出てくる展開にも少し冷汗が・・・年だなぁ)
これが俗にいう「イタい」というヤツなんだろうか、ていうか「イタい」自体もう死語では?
そんな沖の変化も慣れれば軽く流せるし、行動力ありまくりでちょっとカッコよかったりした。

///どこまで書くのがフェアなんだろうね?///
これはネタバレになる内容なので、未読の方は読まないほうがよろしいかと。
既に既読の方、もしくはネタバレ構わんという方だけ反転してどうぞ。

100Pより。
―――事前情報は得ていただろうが、無理もない。重紀さんは普段通りの格好をしていたが、初めて見る者の目には異様に映るはずだ。―――

らいちが重紀を見て驚いたのは仮面以外にも理由がある、つーか仮面以外の理由のが大きいでしょうに。
だけどそこを書かずにただ仮面だけに驚いたように記述するのはどーなのよ?
これはフェアプレイの精神に反するんじゃないんかー!?ってな具合に負け犬の遠吠えをしてしまった。
まあ、理由を書いたら完全なネタバレになっちゃうから、書けなかったんだろうけどさ。

///ちょっと油断しすぎでしょ///
事件から一年後、沖たちは約束通り再従兄弟島へと戻ってきた。
しかしそこはもう黒沼夫妻の所有する土地ではなく、現在は国が管理しているのだった。
307Pより。
―――「君たちねー、ここ国有地だよ!そこに看板あるでしょ!」―――
上陸前に島をぐるりと周回してみるとか、誰か来たらすぐにわかる場所に陣取るとか、いろいろ策は考えなかったのかな?国有地の無人島に無断で侵入すること自体が既に問題行動なのに、あまりにも無防備すぎるのでは・・・なんて思っちゃった。
自由に生きるってのは、色んなリスクが付いてきちゃうんだねぇ(´-ω-`)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
基本は沖の視点から語られるんだけど、作者からの挑戦状があったり、プチ練習問題コーナーがあったり、はたまた神の視点からの語りがあったりと、読者を飽きさせない工夫が盛り込まれているから推理小説初心者読者にも安心な一冊になっている。
それにタイトル当てのヒントがかなり大胆に説明されているから、思わずおじさんもやる気がみなぎってその気になっちゃった。

全体的にライトな雰囲気だったからメインのトリック&謎解きも軽~いもんかなぁと思っていたら、カッチカチな寸法でツルツルに磨き上げられた一級品だったので思わず首を垂れました。
それなのに取り扱うネタは下で下世話なモノが多く、個人的にとても楽しめたね。
今後もこの路線を貫いてくれるのかなぁ(´▽`)

///話のオチはどうだった?///
えぇ、もうね、今回も当然に犯人も当てられなかったしタイトルもズバリ当てられなかったですだよ。
(思い付きはしたけど、確信が持てなかった・・・っていう言い訳はしておこう)
終盤にて、犯人も事件も不可解な出来事もすべてまるっと解明解決されるからモヤモヤもなくスカッと終われた。って書きたいけれど、一番気になる謎は何も解き明かされずに最後のページを迎えてしまう。

南の楽園と窮屈な現実、みんなが所属しているのは現実の方で、楽園で得た喜びは持ち出し不可な訳で、少し切ない終わり方が胸にキュッときてしまう。
だけど不意に頭の中に流れてきた『ザ・ビーチ』のエンディング曲がおじさんの切なさを爽やかに洗い流してくれたから後味は悪くなかったのよ。
(個人的に終わりの雰囲気が両作とも似ていると、おじさんの感性が判断したのかも知れない)

///まとめとして///
軽そうな雰囲気に油断して舐めてかかっていたら、最後に強烈なモノを何発も浴びてノックダウン。
これはもう作中に登場した「彼女」そのものみたいな小説だたよ。
K・Oされてから目を覚ました時、おじさんは迷いのない動作で今作の続編をネット検索していた。
もっと「彼女」のことを知りたい!という欲望に駆られて・・・ってこれじゃまるで沖じゃないか(笑)

自由気ままに生きている女性が一番魅力的って言っていたのはマンガ『マスターキートン』だったはず。
誰もがそうありたいと願うけど、そんなふうに生きられる人間はほとんどいない。
だからこそつかみどころがなく好き勝手やってる「彼女」や、この小説に魅力を感じるのかも。
な~んて知った風な感想を書いたけど、本心ではタイトルを最後の最後まで当てられなかった悔しさをビンビンに感じているのだ(ノД`)・゜・。
ほろ苦いけどまた欲しくなる満読感、頂きました。
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

『○○○○○○○○殺人事件』は2014年第50回メフィスト賞受賞作なのであります!

56Pより。
―――慌てて振り返ると、三毛猫だった。三毛猫は黒、白、赤の三色の毛を持つから三毛猫という。―――
ウィキペディアによると一般的に白・茶色・黒の3色で短毛の日本猫って書かれている。
人によっては茶色の部分を赤色と表現することもありえるってことか。
ちなみに日本の第一次南極観測隊では、民間人から贈られた三毛猫も一緒に昭和基地に行ったとか。

61Pより。
―――やれ『レインボーブリッジを封鎖せよ』はレインボーブリッジで撮影した映画ではないだの、やれフジテレビの球体展望室の愛称は「はちまた」だの・・・・・。―――
フジテレビ25階にあるお台場のシンボル、球体展望室「はちたま」はイベント時には球体の窓に巨大スクリーンが出現するとか。
昔はテレビのチャンネルはフジテレビばっかり見てたのに、今ではまったく見なくなったなぁ~。

107Pより。
―――「小笠原名物の島寿司と海亀料理を用意しているので、心行くまで食べるといい」―――
3~5月の漁期に捕獲されたウミガメの肉は、さっぱりとした赤身は刺身や寿司で、クセの強い臓器などは煮込みで食べるのが一般的とのこと。
海亀の寿司は食べてみたいなぁ、海亀のモツ鍋は・・・一人じゃムリっぽいかも(笑)

115Pより。
―――「ご機嫌よう!」
久闊を序すと、法子がわっと駆け寄ってきた。―――
「きゅうかつをじょする」
久しぶりのあいさつをする。または無沙汰をわびるという意味のようで。

158Pより。
―――この冷静な考察をしたのは意外にもビッチだった。岡目八目というやつか。―――
「おかめはちもく」
三者には、当事者よりもかえって物事の真相や得失がよくわかるという意味。
囲碁から出た語とのこと。

278Pより。
―――「へえ・・・・・二人とも四角四面なこと言うんですね」
らいちは目を細めて俺の方を見る。―――
「しかくしめん」
生真面目で面白おもしろみに欠けること。または考え方や態度などがまじめすぎて、堅苦しいこと。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
エロカワな美少女がイラストされた表紙を期待していたのに、届いた文庫の表紙は文字だけだと!?
ノベル版だけあのイラストだったのか、くうぅぅ~チクショウ(ノД`)・゜・。
好きなヴァージョンの表紙を選べるサービスとかあったら良かったのになぁ。
コストがかかりまくりだから難しいだろうなぁ。
(女体を描いていてふと思った。ビーチクのクオリティが低い・・・・・もっと精進せねば)


233Pより。
―――「そりゃお前・・・・・」
男として一度寝た女は守らないとな。なんてこと、気恥ずかしくて絶対言えない。
俺は口を閉ざして俯いたが、らいちは挑発的な上目遣いで見上げてきた。
「そりゃお前・・・・・の続きは何ですか?ん?」
結局、二人でシャワーを浴びた。―――

 

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