忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「オリエント急行殺人事件」 読書感想

オリエント急行殺人事件」(文庫版)
著者 クリスティ・アガサ(翻訳:田内志文)
文庫 368ページ
出版社 KADOKAWA
発売日 2017年11月25日

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「オリエント急行の殺人事件」だけ


<<ここ最近の思うこと>>

この小説、少し前に映画になったみたいでよくCMを目にしたんだよね。
そして地元のラジオ番組でもこの小説が紹介されていて、これは神様が「いい加減、海外有名作品を少しは読んでみなさい」と言っているのかもって考えて手を出してみた。
でもなぁ~・・・昔の推理小説で、しかも海外作品ってだけでもう目を逸らしてしまうおじさんなんだ。
ちゃんと最後まで読めるかなぁ、どうか読みやすい内容でありますように!


<<かるーい話の流れ>>

名探偵ポアロはたまたま乗った列車で友人でもあり列車会社重役でもあるブークと乗り合うのだが、途中で大雪に見舞われた列車が立ち往生してしまう。
ポアロは乗客のラチェットという悪人顔にボディーガードを頼まれたのだが、気に入らないからと断る。
翌日、ラチェットは不可解な刺殺体で発見された。

調査をしてみると、なんとラチェットは過去に残忍な児童誘拐事件を繰り返していた人極悪人だった。
ブークに頼まれて好奇心もくすぐられたポアロは事件の捜査を引き受けるが、色々な遺留品や様々な証言はグチャグチャでまったく解決の糸口は得られない。
それに乗客達が目撃した「謎の車掌」や「緋色のガウン女」の目撃情報も出てきて、一緒に調査しているコンスタンティン医者もブークも完全お手上げ状態。

でもご安心、名探偵ポアロは確かな真実と証言からじっくりと事件の全貌を考える。
そして推理を披露する時、ポアロは皆に二つの答えを考えたと伝える。
これから話すことを全て聞いてから、みんなで真実を決めようと。


<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーン>>

登場人物達がけっこう酷いこと言うのよね(笑)
けどそこが人間味あるキャラクター設定で親しみやすかった。
アメリカ人のハバード夫人が娘の写真をポアロに見せるんだけど、その娘を見たポアロの感想が「珍しいほど不細工な子供の写真」って表現しているのが笑っちゃう。
ポアロさんの感想はユーモアがあるのか毒舌なだけなのか?(ここも良く出来てるのがさすがです)

アントニオというイタリア生まれのアメリカ人男性を疑うブークもまた偏見が酷い。
アントニオを疑う根拠が「それにほら、イタリア人が使う武器と言えばナイフだし、一度どころか何度も刺すんだ」とか「それに大嘘つきだ!イタリア人は、まったく虫が好かんよ」ってところでまたしても呆れた笑いがでるわ。
なんだろう、当時はイタリアマフィアの影響が凄かったせいなのか?

↓この人もなかなかだったね。
ポアロに言われて集めた証言から事件の真実を推理をしてみる場面にて、ブークは言わずもがな、コンスタンティンという医者までもが推理からかけ離れて奥さんのことを考え出し最終的に「やや卑猥な空想」までしちゃうとは(笑)
ストレスが溜まっていたのだろうか?まあこんな状況じゃあ空想に耽るのも仕方ないよねぇ。
一番まともそうな人だと思っていただけに、そのギャップが面白いよ。

261Pの場面にて。
取り敢えず思いついた推理で事件を解決させようとするブーク。
それに対してポアロはまだ真相は分からないと言う。
やけに慎重だなとブークに言われたポアロが返した言葉が印象に残った。
―――「人は一歩ずつ前に進むべきなのですよ。」―――
なるほど、急がば回れってやつかと。
おじさんも忙しいとすぐに結論を急いじゃうからねぇ、これからはこの言葉を思い出して、じっくり考えてから結論を出すように心がけたい。


<<気になった・予想外だった・悪かったところ>>

91Pの焦げた紙片を金網で挟んでアルコールランプで炙ったら文字が浮き出て来たって部分が謎だ。
黒く焦げた部分に文字が浮かんできたってことなのかな?

いろんな部分でフランス語のフリガナがついているんだけど、これは必要なのかね?
雰囲気を出す為の演出とかかな。

なんで一等客室には隣室への扉が付いているんだろ?
避難用って訳じゃないよね、二部屋を借り切って使うとかする人もいるとか、とにかくお金持ち用の部屋であることは間違いなしかと。
っていうか現在のオリエント・エクスプレスでもこの仕様なのか!
画像を見る限り、豪華でヨーロピアンな隠れ部屋って雰囲気がイイね。


<< 読み終えてどうだった? >>

話が良い感じの長さで区切られているし、続きが気になる区切り方だからトントン読めちゃった。
推理小説としては・・・・・どーなんだろうねぇ、正直終盤のネタ明かし場面まであまり盛り上がりは無かった感じかな。
でもだからこそ最後があれだけ印象的だったのかもしれない。

お騒がせお母ちゃんことハバート夫人の告白シーンで、偶然にも店内BGMで「アメイジング・グレイス」が流れてきた時は、思わずうるっときちゃったよ。
当たり前なんだけど、しっかり作られている小説だねぇ。

さてさてまとめとして。
無駄をそぎ落としたお堅い推理小説なのにキャラクター達が魅力的で面白いから、読んでいて楽しめたし心に残る事件内容だった。
読了感としては・・・。
読み応え良し、満足感良し、オチを知らない人なら衝撃の結末ってのがバッチリ味わえるよ。
デイジー・アームストロングという人物がどれほど愛されていたのか・・・。
ひしひしと読者に伝わってくる悲しいお話だった(ノД`)・゜・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

129Pより。
―――アスピリンの瓶が一本、便秘薬として使うグラウバー塩がひと包み、鮮やかな緑色をしたセルロイドのペパーミント入りチューブが一本―――
ヨハン・ルドルフ・グラウバーは、ドイツ-オランダの薬剤師で化学者。
1625年に硫酸ナトリウムを発見したため、これを「グラウバー塩」とも呼ぶようになったらしい。

158より。
―――「十三番だ。ふたりでトランプを出して、ピケットをしていたのさ。―――
ピケットとは2人用のトランプゲームで、ジャンル的にはトリックテイキング。
フランス語では「ピケ」という発音になり、こちらで呼ばれることも多いとのこと。
(うーむ、ルールを調べてもさっぱりわからん)

165Pより。
―――英国王室の勅許を受けたイギリスの船舶会社―――
「ちょっきょ」
天皇の許可。勅命(天皇の命令)による許可ってことみたい。

171Pより。
―――「ちょうどスターリンの五カ年計画は完全に失敗に終わりそうだね、などと話しているときに匂いがしたからさ。―――
五か年計画とは、一般的には政府及び地方自治体、あるいは各企業・事業団体が経済運営や事業計画について、5年の期間で達成すべき目標とその手法について定めた長期的な計画の事。
世界恐慌の時にソビエト連邦はこの政策を行い、世界恐慌から逃れることができたとのこと。

193より。
―――冷静で狡猾、そして慎重な頭脳の持ち主の痕跡が、この犯行には見えています。アングロサクソン的な頭脳の痕跡がね。」―――
アングロ・サクソン人は、5世紀頃、現在のドイツ北岸からグレートブリテン島南部に侵入してきたアングル人、ジュート人、サクソン人のゲルマン系の3つの部族の総称、らしい。

272Pより。
―――「我らが旧友、ユークリッドの原理でいう不合理というやつですね」―――
アレクサンドリアのエウクレイデス(英語: Euclid(ユークリッド))は、古代ギリシアの数学者、天文学者とされるようで。
数学史上最も重要な著作の1つ『原論』ユークリッド原論)の著者で、「幾何学の父」と称されるとか。

40Pより。
―――「ご覧なさいな、こんな変なお釣りまでよこして、ディナールとかいったかしらね。まるでごみ屑の山だわ。―――
ディナールは、アラブ地域などの多くの国で使われている通貨。
アラビア語では「ディーナール」と発音されていて、これは以下の各国で使われているが、それぞれ独自で発行されているため価値はそれぞれ異なるとのこと。
↑なんだろね、通貨としての価値が低いからお釣りが沢山だったってことで、「ごみ屑の山」って言っているのかな?


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

10Pより。
―――「セント・ソフィア寺院は必見ですよ」デュボスク中尉は、自身一度も訪れたことのない寺院の名を口にした。―――

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今回は「セント・ソフィア寺院」を描いてみた。
トルコに旅行する人なら必ず訪れるのが、イスタンブルの 聖ソフィア大聖堂って言われるほどとか。
現在は博物館として開放されているのかな?
なんにせよ・・・建物の風景画って、難しいんだなぁ(;^ω^)