タイトル 「フィジーの小人」(文庫版)
著者 村上龍
文庫 413ページ
出版社 講談社
発売日 1996年04月
この作者の作品で既に読んだもの(このブログを書き始めてからね)
・今回の「フィジーの小人」だけ
<<ここ最近の思うこと>>
この小説を読む前に「スリービルボード」っていう映画を観たんだけど、それにも小人の役者が出てた。
ただの偶然なんだけど、何かを感じてしまう今日この頃。
にしても村上龍の作品は久しぶりに読むな~。
ずっと昔に読んだ「五分後の世界」とか「半島を出よ」とかのミリタリーモノは面白かったけど、今回の作品はどうなんだろう。
うろ覚えだけど、「限りなく透明に近いブルー」はイマイチだった記憶があるような無いような(;^ω^)
<<かるーい話のながれ>>
主人公はフィジーでショー芸人をしている小人(38歳 98センチ)のワヌーバ。
フットボールの試合で一躍人気を経て、地元でけっこうなお金持ち暮らしをしている。
ある日、旅行者の中国人女性に誘われて彼女のホテルに行くと、ワヌーバにマッサージをしたいと言う。
中国人女性から「お前はハムだ」と罵られながら強く踏まれたワヌーバは未知の快楽に目覚めてしまう。
その日から人目が気になったり己の姿を恥と感じるようになったり、不眠症にまでなった彼は紹介された医者に行ってみた。そこで偶然ワヌーバの祖父を受け持った医者と知り合う。
その医者から祖父の手記を貰ってつらつら読みつつ、成金ぽいカナダ人オバサンと知り合って中国人女性以上の快楽を与えられたワヌーバは、完全にマゾ快楽に覚醒してしまった。
マゾ欲求に囚われたワヌーバはフィジーを飛び出してカナダ人女性を捜すため初海外へ飛び立つ。
カナダでは我慢できずに飛び入りしたSMショーにて、ゲイとレズの美男美女パフォーマーと知り合う。
そのツテで探している女性っぽい人物(クロアドウ市の市長シンビア・タッカー)に会いに行くことに。
クロアドウはパルプ工場で生計を立てている異様な街だった。
日中はずっと黄色いガスに覆われて、人々は外を歩くには特徴的なガスマスクをしており、住民達はほぼ全員がパルプ工場関係の仕事に就いていた。
有毒廃棄物のせいで奇形児が頻繁に生まれるが、女市長はカリスマ的人気を得ており噂では兵器や軍隊まで持っているとか・・・・・。
欲望と快楽に身を任せたまま流されてきたワヌーバを待ち受ける結末は果たして!?
<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど>>
カナダ女性との初めての夜。
あの場面の描写は凄く印象に残っているわ。
特にデグスでワヌーバをグルグル巻きにして台所に転がし、その上から様々な飲食物をぶちまけていく描写がきっちり描かれているのがなんとも凄い。
そうやってハム状態?にしたワヌーバをほっといて、リビングで見せつけるように自慰行為をする女。
ワヌーバさん至福のひと時(笑)
カナダのクロアドウという街で、捉えられたヒッピーのリンダが見せられた一枚の写真。
そこにはまるでインク瓶みたいなった仲間の姿が映っていた。
手足が短く縮んで皮膚がボコボコに膨れ上がり、体中の血管がテレビ中継のケーブルみたいに太くなって顔は恐怖の表情のまま凍り付いたようになっている人物。
女性市長シンビア・タッカーはリンダの仲間に一体何をしたのか?
気になりますねぇ(; ・`д・´)
最後にコチラ。
167より。
―――「あんな辛い運命の子が立派に生きているのを見ると感動してしまうのです・・・・・」
嘘だ。そんなものに感動はしない。自らの中にある母なる殺意を確認して安心するだけなのだ。―――
なんでかとても印象に残る文章だった。
生きるだけで精いっぱいなくらいの様々な障害を持つ子供達を見ることによって、誰もが幼い頃に保護者から感じていた「殺意の含まれた母性」を思い出し、その懐かしさに感動しているってことのかな?
うーむ、村上文学・・・・・理解できないけれど何故か気になる。
<<気になった・予想外だった・悪かったところ>>
結末がねぇ、ちょっと残念だったな。
個人的には最終的にどうなったのか知りたい人だからさ。
まあでもあれが最終的な結末だよって言われたら、それもアリかぁって気もしてくる。
(もう終盤はワヌーバとリンダの妄想の連続で無茶苦茶だったし)
クロアドウという街は現実として存在していたのか、ワヌーバの妄想なのか、カナダに来てクロアドウに入ってからはあまりにも現実世界からかけ離れた設定ばかりだったから、ファンタジーを読んでいるような気分になっちゃうことも。
(もうちょい現実的な内容のストーリーかと思っていたんだけど、この展開は予想外だったなぁ)
<<読み終えてどうだった?>>
う~むむ、真面目にしっかり読み込むと頭が痛くなってくるような文章だった。
合間合間に語られる祖父の手記も精神病患者の妄想ファンタジーストーリーだったし。
全体的に面白いのか?と聞かれたら・・・・・・ちょっと返答に困るけれど、非現実的で怪しく残酷な世界観はもの凄く伝わって来た。そこに関してはさすが村上龍って感じかと。
読了感はもう異常者の妄想はコリゴリだぁって思ったけど、ワヌーバとリンダのその後がちょっと気になる終わり方で憎いわ。
欲望に全てを捧げて女王の元にやって来たワヌーバは、満足しているのか後悔しているのか。
まあとにかく、後味はあんまり良くない作品だったね。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
7Pより。
―――私は混血児だ。イギリスの商人とフィジーの洗濯女との間に生まれた。―――
とにかく洗濯(おそらく手洗いで)を一日中する職業の女性だと思われる。
あまり良い職業とは言えないようで、罰として高貴な女性を洗濯女にしたこともあるとか。
21Pより。
―――祖母の葬式の日だった。私の母親の姉である。彼女はオウム病で死んだ。―――
オウム病とはクラミジアの一種である、オウム病クラミジアの感染によって生ずる人獣共通感染症。
クラミジア病と呼ばれることもあり、かつてミヤガワネラ病と呼ばれていたこともあったらしい。
126Pより。
―――「ホモのペニスは怖くないの、ソフィスティケイトされてるから」と、イヴ。―――
「ソフィスティケイト(sophisticated)」
洗練された、高性能な、凝った、インテリ向き、などなど。
とにかく洒落てワンランク上的なって意味っぽい。
232Pより。
―――男を見ると不浄の血のかたまりを作るアルチザンだと脅迫的に思うようになりました、―――
「アルチザン」
フランス語で「職人」という意味らしい。
324Pより。
―――我々は「BBRI」のものだ、とプジョーの中で男達は名乗った、あたしは恐ろしさで口もきけなかった―――
「BBRI」はネットで意味を探してみたけど見つからなかったよ。
作中では架空のテロ組織って意味で使われているのかな?
331Pより。
―――「待って、あたしが好きなのは、ストリンドベリイよ」―――
ヨハン・アウグスト・ストリンドベリは、スウェーデンの劇作家または小説家。
ユーアン・オーグスト・ストリンドバーリィと呼ばれることも。
1849年1月22日に生まれて、1912年5月14日に死亡した。
400Pより。
―――確かに私はおかしかった。私の意識は構文でものを考えていたのだ。―――
プログラミングだとかの文法とか書式のことらしい。
ちゃんと組み立てられた文でないと間違いになってしまうらしいが、いったいどういうことなんだ?
おかしくなり始めたワヌーバの言葉は理解しがたいねぇ(^^;)
<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>
今回はスクスクの旅の仲間であるニャンゴラ・キャットを描いてみた。
描いてみたけど、ニャンコの顔は難しい(;´Д`)
84Pより。
―――『僕はイギリス人によって改良を加えられる前の、アンゴラ猫です』―――
ターキッシュアンゴラは、トルコの山岳地帯における自然発生種の猫の一品種。
エレガントな外観と繊細なコートを持ち、敏捷で愛情深い中型の猫。
アンゴラはトルコ共和国の首都アンカラの古い呼び名とのこと。