忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

宇宙船ヴァニスの歌(2) 恐怖の暗黒魔王 読書感想

タイトル 「宇宙船ヴァニスの歌(2) 恐怖の暗黒魔王」(kindle版)
著者 友成純一
文庫 186 ページ(推定ページ数)
出版社 アドレナライズ
発売日 2015年9月8日

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>
「凌辱の魔界」
「獣儀式」
「ナイトブリード」
「肉の儀式」
「肉の天使」
「獣革命」
「女戦士・フレア伝(1) 邪神殿の少女」
「人獣裁判」
「宇宙船ヴァニスの歌」
「女戦士・フレア伝(2) 絶海の黄金郷(エルドラド)」


<< ここ最近の思うこと >>

ヴァニス・・・名前の由来はアレとアレをくっ付けて出来たヴァニスだ。
前作を読んでみてなかなか面白かったので続編も購入してみたのよさ。
ピチピチの上玉娼婦達を乗せて星々を廻る娼婦宇宙船・・・・・こんなところで働けたらもうムフフなイベントが盛り沢山!!
なんて考えてるそこのアンタ、およしなさい!
男がヴァニスで働くことがどれほど辛くて危険なことなのか、読めばきっとわかるぜよ(; ・`д・´)


<< かるーい話のながれ >>

辺境惑星を巡って労働者相手に商売をする娼妓宇宙船ヴァニス。
今回やってきたのは寂れた惑星クナール。
寂れた惑星に相応しく客もまったく来やしない状況で暇をもてあます娼婦達だったが、そこへ三人組の謎めいた者達がやって来た。
彼等は娼婦の一人であるメアリアンを拘束してとんでもない要求をしてきた。
―――直径八キロの球形宇宙船、丸ごといただきたいんだよ。お願いだから、言う通りにしてくれ。手荒なことはしたくない―――

撤退命令、妖美な花火、焼却炉、惑星クナール、なんて暇なの!、リリーの御殿、赤衛兵、自然区画、御殿に監禁、内臓抜き、殺しましょ、カプセルベビー、暗黒魔王、脳波通信、生身の肉体、狂気の笑い、追っかけごっこ、女らしい浅知恵、忘れないぞ、竜神!・・・。

ヒューマニストの英雄とその戦友、そして敵対しているはずのサイボーグ兵士。
三名がヴァニスで巻き起こす騒動は、流血無しでは済むはずがない。
ノー天気娼婦と骨なし操縦士達を乗せた娼妓宇宙船に最大の危機が迫る!!


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///大戦期に活躍した悪魔の兵士、赤衛兵///
全身機械の最強兵士、弱点は脳と中枢神経だけ、大戦期に作られた世界主義側のサイボーグ兵士それが赤衛兵だ!
でもやっぱり生身の肉体に戻りたいってことで、毎回戦闘終了時には敵兵士の肉部品をちぎってもいで奪い合うお茶目な一面も(笑)
ほんとかどうかわからないけど、二、三日の間に髪から爪まで新鮮な肉体部品を用意できれば脳を移植して戻れるとか。
ヒューマニズムに囚われないのなら、クローンとかで肉体を全部作ればいいのに。わざわざ敵兵士から肉部品をかき集めるなんて手間のかかることを・・・・・・・でもそんなパッション溢れる設定がヨシ!)

///民主主義側の人間だって負けちゃいない!///
捕まえたサイボーグ兵(頭部だけ)へのリンチがエグイ!
位置№1389より。
―――外から一枚いちまい、できるだけ脳に衝撃があるよう装甲を引き剥がす。目を潰す。部品と部品の隙間に火薬を垂らし、燃焼させる。あるいは、硫酸を流しこんだり。そんな風にして、首だけの達磨さんを丁重に殺してさしあげた。
「なにしろこいつら、不死身みたいなもんだ。気絶もしない。虐め甲斐があるよな」
剥きだしになった脳髄を、フォークで穴だらけにしたり板で叩き潰したりしながら、みんなで笑い転げたもんだ。―――
剥き出しの脳へ攻撃ってのは『銃夢』に在りそうな展開・・・・・実写映画はけっこう面白かったなぁ。

///撫子さん、恋に落ちる。そして絶好のチャンスを得る!?///
位置№811より。
―――肘で小突きあう娼妓たちのなかで、撫子だけがかすかに頬を赤らめていた。
―――ちょっと、いい男じゃない、あのリーダー格の奴・・・。
ボロ毛布を被り、浮浪者然としている。が、一メートル九十近い身長で、しっかり地に足をつけて立っており、毛布の下には強靭な肉体の隠されていることが見て取れる。安穏な平和でしか知らない二十三世紀の男たちが、とうに忘れてしまった雄渾な肉体だった。―――
撫子、まさかの恋に落ちる展開!
意外にも好みのタイプは普通なんだね。
まあ世界主義中心になってしまったあの世界では、男らしい男っていうのがほとんどいないのかも。

終盤では忌々しきリリーを殺す絶好の機会に恵まれたのだが、感情に流されて調子に乗ってしまい・・・。
美しさを大切にする女性らしい嫌がらせが仇となってしまうとは・・・・・浅はかなり(笑)
そして前作に続いて今回も気絶オチ(ドラマ『トリック』の上田二郎ですか?)

///毎度おなじみ電子版あとがき///
位置№ 2980より。
―――プロパガンダは、面白くなければいけない。作りはあくまでエンタティメントで、それを見たり読んだりしている人々が、「そうだ、そうだ」とのめり込み、知らず知らずのうちに作り手のイデオロギーに染められている。そんな風に作られてこそ、プロパガンダたりうる。―――
確かにまずは観てくれないと意味がないからね。
だから中国の反日ドラマは生身の人間が素手で兵器を破壊しちゃう超展開のかな?
でもけっきょく受け取る側の資質の問題なんだよねぇ、映画もニュースも新聞も。

他にも熱いNHKのディスりとか、最後ソレで良いのかよってところとか、読みどころ満載。
相変らず楽しませてくれました。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///男性乗組員のフラストレーションが発散できない///
ヴァニスでは男性と女性は完全に隔離されていて(ドクターだけは例外)お互いを一目見ることも無い。
せっかくの娼妓宇宙船なんだから男性乗組員相手に商売すればいいのにって思っちゃう。
でも恋愛感情が生まれちゃって航行に支障をきたす恐れがあるからダメみたいなことが書かれていた。
それなら高性能ダッチワイフとか用意できないのか、SFなんだしそれくらいあるでしょうよ?
(そうすりゃ男同士で慰め合うなんてこともなくなるだろうに)

///ちょっと不用心過ぎだよドクター///
赤衛兵に同情してか生身の肉体を与えてやる為に難しい手術に集中するドクター。
しかしそこへタイミング悪く竜神がやって来て、目撃したのは変わり果てた仲間達の姿だった。
激高する竜神は必殺のブラスターを抜いてドクターを狙うが・・・。
敵がまだ居るかもしれないんだから医務室に鍵くらいかけておきなさいよ。
(でもこの展開こそがヴァニスをヴァニスたらしめているのかと)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
今回はきっとヴァニスが竜神達に乗っ取られたところで終了して、続きは次巻なんだろなぁ~って思ってたんだけどそんなことはなく、騒動の顛末までしっかり描かれていたことが嬉しい驚き(笑)

前作のように連作短編ではなく、今回は竜神達の襲撃一本の内容だった。
竜神が経験した壮絶な戦争描写から始まって、エロ有り・ギャグ有り・シリアス有り・グロもしっかり満載されている欲張り満足丼のような作品でございました。

///話のオチはどうだった?///
あのカッコ良かった竜神の最後があんな風に・・・(゚Д゚;)
映画「シャイニング」に出ていたジャックニコルソンの最後みたいに、竜神の最後が描写された部分では、ババーンって効果音が頭の中に鳴り響いたわ(笑)

民主主義VS世界主義の大きな戦いに巻き込まれていく予想もつかない終わり方に期待しちゃうね。
プレッジ・スミスという怪しげでどこか抜けてる敵ボスも出てくるし、撫子三人衆は一人欠けちゃうし、ドクターは意外な一面を見せてくれるし・・・・・やっぱりヴァニスは面白い!


///まとめとして///
くだらないのに伝わってくるエネルギーが凄いわ。
色々な場面がイメージとしてしばらく焼き付いているのよ。
店主のおじいさんとメアリアンが店の外の椅子に座って、ボーっとくつろいでる穏やかなシーンとか。
ヴァニス内で始まった百鬼夜行のような追いかけっことか。
撫子さんと竜神の濡れ場とか(*´▽`*)
もちろん他にもあんなシーンやこんなシーンが沢山あるから、深く考えずにインパクトある小説が読みたいなぁ~って思ってる人にはオススメ。

次回はヴァニスが地球に戻るらしいけど、一体どんな騒動がまき起こることやら。
予測がつかないチョコレート箱の中身みたいな物語が早くも楽しみ。
安定した満読感86点!
さぁ~て、次はなにを読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

位置№ 398より。
―――娼妓宿というのは古来、女たちが女王のごとく君臨し、客だろうと使用人だろうと男たちは彼女らにかしずくものとされている。―――
ネットで調べてもわからなかったけど、そんなイメージはあるかも。
ヴァニスに限ってはトップのリリーが世界大統領の第三婦人だからねぇ、かしずくのは当たり前だわな。
昔の娼妓宿も偉い人の愛人とか奥さんが管理していたところは女尊男卑だとしてもおかしくないか。

位置№ 468
―――床にはぶ厚いゴブラン織りの絨毯が敷きつめられ、歩く者の足音はすべて吸収してしまう。―――
ゴブラン織とはフランスのゴブラン工場で製作されたタペストリーってことらしい。
「ゴブラン」なんて名前だから日本の織り方かと思っていた。
技法は緯 (よこ) 糸に色糸を使って模様によって色を変えて織出す。糸の材質は毛と麻が主体であり,絹や金,銀糸を使うこともある・・・・・きっと柔らかくて分厚い絨毯なんだろなぁ。

位置№ 553より。
―――昔からスパイが良く使った手だな。実際、閨房ではどんな男も、無防備になる。肝心なことは言わなくても、それを匂わせちまうものだからな―――
「けいぼう」
寝室。または婦人の居間。

位置№ 716より。
―――元赤衛兵だが、残念ながらあんたのお仲間じゃない。こいつはな、世界主義から民主主義にブル転したのさ。―――
演劇用語で「ブルー転換」の略ってことらしい。
舞台上にブルーの明かりを点けた状態で、場面転換を行うこと・・・・・ヴァニスでは主義変えをしたって意味で使っているかと。
竜神は意外と演劇に詳しいのか?)

位置№ 1977より。
―――陰部と陰部を、起きあがり小法師が連結していた。いやらしく濡れ光っている。―――
起き上がり小法師福島県会津地方に古くから伝わる縁起物・郷土玩具の一つ。
何度倒しても起き上がる事から「七転八起」の精神を含有している。縁起物としての機能としては「無病息災」「家内安全」など。
お互いに小法師を挟んで押し付けて擦りつけて・・・・・って、意外と古風なモノが置いてあるヴァニスの謎(笑)

位置№ 2887より。
―――プレッジは半ばヒポコンデリーの発作を起こしつつ、空しく女体を掻きまわすばかりだった。―――
「ヒポコンデリー」
ちょっとした身体の異常を、自分で勝手に判断して気に病む精神病的症状。心気症。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回は撫子さんの大チャンス場面を描いてみた。
宇宙船の中にありそうな未来的医務室のイメージが分からないですの(ノД`)・゜・。

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位置№ 2485より。
―――撫子の少年じみた顔が、般若のように歪んだ。
「まあ、リリー、お気の毒ね。どうしたの、リリー。ねえ、どうしたの!?」撫子はリリーの顔を掴むと、揺すりはじめた。心配のあまり、病人にすがりつく、そんな風を装って。
「起きて、起きてよ、リリー。ねえ、ねえったら・・・・・ああ、やだ、死んじゃやだよお、リリー!」ベッドの上に、血を吸ってベッタリ拡がる黒髪。その黒髪を付け根のあたりで鷲掴み、ユサユサ縦に揺すったり横に振ったり。―――