忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「コンビニ人間」 読書感想

 

タイトル 「コンビニ人間」(キンドル版)
著者 村田沙耶香
推定ページ数 127ページ
出版社 文藝春秋
発売日 2018年9月4日

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「コンビニ人間」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

最近TV番組で変わった人や特徴的な店主を紹介するコーナーが増えた気がする。
事前に打ち合わせしたり、キャラを作ったり、紹介してもらってメリットがあったりしているんだろうけど、視聴者は好奇心の目で笑い者にして楽しんでいるんだよね。
小さい子供がいる世の親御さん達はどう思っているのかな?
(なんだかんだ言っても毎回ケタケタ笑いながら観ているおじさんが言えることじゃないけど)
今回はTVで紹介できないタイプの「変な人」が主人公のお話ですだよ。


<< かるーい話のながれ >>

小さい頃から周りと違う感性を持ってしまった古倉恵子という女性が主人公。
感情を無視した合理的判断しか出来ない性格で、そのせいでトラブルが絶えない幼少期。
しかし古倉さんはコンビニ店員アルバイトという居場所を見つけて社会に溶け込むことに成功した!

やがて月日は流れて古倉さんは36歳になり、職歴無し、十数年のアルバイト経験のみ、恋愛経験なし、恋人なし・・・。
そんな現実も古倉さんにはどこ吹く風、しかし新人アルバイトの白羽という男がやって来てから、彼女のコンビニアルバイトライフは静かに波立っていく。

蓋を開けたらまったく使えないダメ人間な白羽は、古倉さんの予想通りアルバイトをクビになってしまうのだが、二人はひょんなことから再会して互いの利害の一致から同棲をすることになるのだが・・・。
かな~り変な人の古倉さん成長ストーリー。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

なんといっても二大キャラクターが一番の魅力だろう。
まずは古倉さん。
感情を抜きにした合理的主義者の人は考え方がまるで違う。
中でも一番インパクトの残るところはここ。
妹の赤ん坊が泣きだしたのであやしに行く母親。
そんな妹と赤ん坊を横目に古倉さんは思う。
・・・静かにさせるだけなら簡単なのに、大変だなぁ・・・
ケーキを半分に切った小さいナイフをチラ見しながら( ゚Д゚)
(古倉さんや、一体どんな方法で静かにさせるんだい?ナイフとか使わないよね?)

あと印象に残った文章がある。
それはコチラ↓
位置№ 626より。
―――何かを見下している人は、特に目の形が面白くなる。そこに、反論に対する怯えや警戒、もしくは、反発してくるなら受けてたってやるぞという好戦的な光が宿っている場合もあれば、無意識に見下しているときは、優越感の混ざった恍惚とした快楽でできた液体に目玉が浸り、膜が張っている場合もある。―――
ものすごーく共感できると言うか、あぁ~うまい表現だなって思った。
特に快楽で出来た液体に浸かった目玉ってのがグッド!!
(最近おじさんもこーゆー目玉で他人を見ることが・・・・・イカイカン)

続いてもう一人の主人公と言える男、白羽だ。
コイツはとにかくダメ人間の代表と言えるくらいのダメダメ人間(笑)
誇大妄想、他人を全て見下す、借りた金は返さない、決断力ゼロ、女性をとくに貶す、古倉さんのヒモになる、などなど上げたらキリがないくらい。
意外なことにそんな白羽でも見せ場はあるのだ。
古倉さんと白羽の異常な同棲関係にショックを受けてパニックになってしまった古倉(妹)に、一芝居打って正常なカップルだと偽った場面。
結果、妹は安心して感情を落ち着けることが出来たし、古倉さんとしても白羽に助けられたのだった。
(でもすぐにそれ以上のダメっぷりを発揮してしまうのが白羽という男)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

十数年も同じコンビニでバイトしているのなら普通に社員になれば良いのに。
古倉さんくらいコンビニ仕事の出来る人なら、店長職だって任せて安心だろう。
まー持病があるからアルバイトしてるって設定だから、社員化の話が来なかったのかも知れないけどね。

コンビニバイトじゃなくても、チェーンテンの店員さんとかなら難なくこなせそうな気がするんだよね。
ご家族の方々も、↑なことを提案していたら十数年もコンビニバイトしなくて済んだかもしれないのに。
(後で確認したら、本人がコンビニ以外では無理だったって語っていたわわわ)

最後に白羽よ、後先考えずにアルバイトを辞めさせるなよ。
本当にどーしよーもない奴だなお前は(;´Д`)


<< 読み終えてどうだった? >>

とにかく社会的地位の低い「変な人」とか「変わり者」を描いた内容で、けっこう重たいストーリーになのかなって思っていたけど、そんなことはなかった。
むしろ所々でクスリと笑えたり、ゾクッとさせられたり、驚かされたりして面白かった。
短いし退屈もしないでスラスラ読めたね。

しかし古倉さん、あんた今までよく生きてこれたなぁって思うわ(笑)
あんまりにも受動的すぎるから、未練なくこの世を捨てる選択をしそうで怖いし。
まーあれだ、難しく真面目に考えるような小説じゃない!
クスクス笑ってみんな色々大変だな~って思いながら読めばそれで良いと思う!

さてさて読み終えてどうかというと・・・
白羽の言っていた縄文時代から変わっていない社会に思わず納得しそうで落ち込みそうな気分・・・・・だけど古倉さんはしっかりと自分の生きる目的を見つけ、初めて?自身の意志を貫いた。
新しく生まれた彼女を祝福したい、そんな読了感かな。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

コンビニ人間」は第155回芥川賞受賞作だよ!

位置№ 287より。
―――「それと、クレンリネス強化期間です。昼の時間は忙しいですが、それでも床、窓、ドア付近はこまめに掃除するようにしましょう。―――
飲食店になら清潔で衛生的な店舗でないと、客は商品を買わないしやって来てくれないよ。だから常に店舗は掃除しておきましょうねってことみたい。

位置№ 359より。
―――「あのさ、私けっこう同性愛の友達とかもいるしさあ、理解あるほうだから。今はアセクシャル?とかいうのもあるんだよねー」―――
無性愛とは、他人に対する性的な魅かれの少ないこと。
または性的な行為への関心や欲求が少ないか、あるいは存在しないことであるとのこと。

位置№ 1157より。
―――コンビニの奏でる、コンビニの作動する音の中を揺蕩いながら、私は明日、また働くために、目の前の餌を体に詰め込んだ。―――
「たゆたいながら」
ゆらゆらと揺れ動いて定まらない様子、もしくは気持ちが定まらずためらう。心を決めかねるっていう意味らしい。


<< 登場したモノを食べてみたコーナー >>

今回は絵じゃなくて写真です。
位置№ 1116より。
―――「らっしゃいませ、こんにちはー!本日よりからあげ棒が110円です!いかがですかー!」
出来立てのからあげ棒を並べていたトゥアンくんも、「からあげ棒、いかがデスカー!」と声を張り上げてくれた。―――

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からあげ棒と言ったら、某セブンの唐揚げ棒でしょ。
ひっさしぶりに食べてみたけど、衣はカリカリ中はジューシー柔らかでウマいじゃん。
コンビニの焼き鳥シリーズはブヨブヨしてて気持ち悪いけど、からあげ棒はアリだね。
(お腹空いてたから美味しく感じただけかも?)

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)