忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「人獣裁判」 読書感想

タイトル 「人獣裁判」(キンドル版)
著者 友成純一
文庫 244ページ
出版社 アドレナライズ
発売日 2014年3月11日

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この作者の作品で既に読んだもの
「凌辱の魔界」
「獣儀式」
「ナイトブリード」
「肉の儀式」
「肉の天使」
「獣革命」
「女戦士・フレア伝(1) 邪神殿の少女」


<< ここ最近の思うこと >>

娯楽が多いってとても良いことだよね~。
現代は平和的に楽しめるモノが沢山あるからありがたやありがたや。
昔は楽しめることが少ないから、公開処刑さえ興業の一つになるらしい。
いやもうメインイベンドと言ってもいいくらい。
この小説を読んでみて、なるほどそいう言われたらそうかもしれないなって思った。
現在のネット界隈にて過激な投稿動画が爆発的に拡散するのは、古代の剣闘士による決闘を観て興奮する人達と現代人の感性がほとんど変わってないってことなのかなぁ・・・。
(↑とか書いてるおじさんも話題になった動画はやっぱり見ちゃうんだけどさ)


<< かるーい話のながれ >>

一人の男が広場で公開処刑されている。
その光景を食い入るように見つめて興奮している男は、次々と行われる拷問に酔いしれながら自身の半生を思い出していく。
そして公開処刑はクライマックスの八裂き刑が始まり、それを見つめる男は勿論のこと観衆達も興奮に沸き立ち始めた。

主人公はドナティアンという少年で、将来はあの有名なサド侯爵になる人物。
幼い頃は叔父のサド神父一家(変態家族)の元で過ごして、珍妙な好奇心を持ちながらも純粋な初恋を経験したり、壮絶な失恋を経験したりして平和に(嘘である)すくすくとに過ごした。

中学生になってからはこれまた珍妙な家庭教師アンブレ師の元で伸び伸び過ごし、寄宿舎に入ってからは学友達とつるんで破戒同盟なる組織を作り、学校内にて町娘を拷問して殺したり、口封じで仲間を拷問して殺したりしていた。
しかしそこは子供のやること。
すぐに教師達に見つかってしまい・・・。

他人の血と苦痛で彩られたドナティアンの欲望は留まることを知らずどんどん加速していくのだった。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

位置№372より。
―――叔父の言う想像力云ぬんはなるほどと思う。陰茎に直接加えられる刺激だけを求める限り、性行為は子孫の産出と言う、単なる生産活動にすぎない。そして生産活動に過ぎぬ以上、限度を超えると飽きがくる。だが快楽を追及する者、それも〝禁欲的〟なまでに快楽を探求する者は、この限度をこえたところから始めなければならない。そこにこそ、想像力の余地があるのだ。―――
幼いドナティアンの初恋相手を彼の目の前で凌辱しながら自説を説くサド叔父さん。
行為に没頭するのではなく観ている状況を自分に置き換えて想像する。
そうすればより圧倒的な快楽と興奮の世界へ飛び込むことが出来る!!
って考えで合っているのかな(^^;)
なんにせよ、なかなか印象に残る説教だったからさ。

今回もいろいろなグロ・ショッキング・シーンが満載だったけど、一番記憶に残るのはコレかなぁ。
人間の精神だけを殺して生きる機械を作りだそうとしている外科医のマージュ。
その方法とは高さ1メートルくらいでしゃがみ込むこともできない程の面積しかない檻の中に男を入れて、そのまま放置するというやり方。
両腕を後ろに縛られた状態で、ずっと中腰のまま五年間そのままの男は、すでに意思というモノが無くなったかのように見える。
マージュは5年でこの成果だから、10年後には完全に精神を殺せるかも知れないと嬉々として語る。
想像するだけで死にたくなるわなぁ(;´Д`)
(口封じの為の同志拷問にて行われた連続クサビ落下刑も中々にエグかったよ!)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

所々でいろんな人が現代にしかないモノを想像していたり、アンブレ師にいたっては二十世紀の世界へトリップしてきたとか言い出して未来のことを含めた演説をしだす。
そのへんが最初の内は気になって集中できなかったりしたけれど、その内にまあ友成さんの小説だしそれくらいはフツーなのかなって流せるようになった(笑)
(悩んだり考えたりしても無意味!感じることが大切・・・多分(^^;))

第九章の破戒同盟・教理編がものすごくアレだった!
破戒同盟に入れるために持病発作状態のアンブレ師を部屋に招いて勧誘するドナティアン達。
そこでアンブレ師が宇宙についての持論を長々と演説するんだけど、それが知らない言葉ばかりが羅列した無茶苦茶な内容だからまったく理解できない。
知識や教養のある人ならいろいろ理解できて楽しめるのかもしれないけど、おじさんにはまったく頭に入ってこずただただ苦痛な章だったわ(-_-)zzz
(この作者の小説で初めて眠気を感じたわ)


<< 読み終えてどうだった? >>

なんか今回はちゃんとした小説っぽい内容だった(笑)
グロ展開も満載なんだけど今回は頭のイカレた人々にスポットが当たっていたかと。
視線パワーを怖がる男、ガラス人間だと思い込む男、人間を非人間に改造しようとする男、主人公ドナティアンは確かにイカれてるけどその人生の中で出会う人や起こる出来事に翻弄されていくのが今までの作品と違って新鮮味を感じたね。

キンドル版は付録の「拷問あるいは残酷トレイニング」やおなじみの「電子版あとがき」など入っていてちょっとお得感があるよ。これが意外と面白いし。
(『電子版あとがき』にて二丁目で出会った愉快な人々のお話も楽しかったけど、『拷問あるいは残酷トレイニング』もなかなか読みやすくて面白い。ラマ教がコワいわぁ・・・)

さてさて読了感は・・・
相変らずな荒唐無稽なグロ小説、だけど出てきた拷問や処刑は実際に行われてきたモノ。
今は平和な時代だけど、もう少し先の未来でこの社会が崩壊したら・・・?
そして現代の地球でも拷問や処刑はいたるところで・・・(/ω\)
「残酷なことに耐性をつけろ」って作者の言葉が心に残る読了感かと。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

位置№18より。
―――男は、名をダミアンという。なぜ公開処刑に処せられたのか?国王ルイ十五世を暗殺しようとしたのである。大罪だ。―――
wikiで探してみたら本当に起こった出来事だったのねΣ(・□・;)
この小説に書かれていたとおり、ダミアンはやつ裂きの刑で処刑されてたみたい。
いや~まったく知らなかったわ。

位置№95より。
―――パリのコンデ館で、コンデ公爵のバカ息子と一緒に育てられ、何不自由なく育ったのだ。―――
現在は美術館になっているみたいだね。
展示品の貸し出しを一切やっていないみたいで、コンデ美術館に行かないとお目にかかれない品物が沢山あるとか。
フランスかぁ・・・・・遠いなぁ(;^ω^)

位置№454より。
―――ド・ラ・メトリという医者が「人間機械論」という不信心な本を書いた。―――
ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリーはフランスの哲学者であり医師でもある。
啓蒙期フランスの代表的な唯物論者とのこと。
37歳の時に著した『人間機械論』は霊魂の存在を否定し、デカルトの動物機械説を人間にも適用し機械論的な生命観を提唱したってことらしいけど、分からんわぁ(;^ω^)

位置№509より。
―――シャラントンの医者どもや、バスチーユの典獄たちは、それを俺の変態性欲の証拠だと言う。―――
「てんごく」
刑務所とか牢獄の監守みたいな人のことらしいです。

位置№607より。
―――「せんないこと、三人とも・・・」節くれだった指が赤児の首にかかった。―――
「せんないこと」
しても無駄なこと、しかたがない、どうしようもいって意味らしい。

位置№1006より。
―――アンブレ師は、一人、滔々とこんな錯乱した言葉を並べたてる。―――
「とうとう」
スラスラと喋る様子、勢いよく、よどみなく語っている様子みたいな。

位置№1811より。
―――校規に反したとか自涜の罪を犯したとか、たあいもないことだけが発覚し、―――
「じとくのつみ」
手淫とか自慰行為のことらしい。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

今回は二つ描いてみた。
まずは本作でも様々なことに使用された万能拷問道具のヤットコ。
挟んだり潰したり引きちぎったり・・・・・想像するだけで縮み上がってしまいます(>_<)

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もう一つは若き日のサド神父が変装した偽アヌビス神
牙を剥き出しで耳まで避けた口、脂肪っぽく光る剛毛に覆われた頭部。
毛を全て剃った鉛色の肌で指先には鋭い爪が付いている。
美しい母親と幼い子供しかいない家に忍び込んで、神を偽り悪行の限りを尽くす。

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人獣裁判

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