忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「十角館の殺人」 読書感想

タイトル 「十角館の殺人」(新装改訂版)
著者 綾辻行人
文庫 512ページ
出版社 講談社
発売日 2007年10月16日

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この作者の作品で既に読んだもの
・「殺人鬼」
・「殺人鬼Ⅱ」


<< ここ最近の思うこと >>

遂にこの時が来たよ!!
ミステリ小説界で何度も目にしたタイトルを読む時が(`・ω・´)
最後の一文で驚かされる系はいろいろ読んだなぁ。
イニシエーション・ラブ」とか「殺戮に至る病」とか。
さてさて今回はどんな驚きが待っているのか、おらワクワクしてきたぞぉ~。
誰が犯人なのかネタ明かし部分を読む前に当てちゃうぞ~!
まぁ、絶対無理だと思うけどぉ。


<< かるーい話のながれ >>

送迎用の漁船に乗って、大学のミステリ研究会数人が半年前に殺人事件のあった角島にやって来たところから始まる。
角島では建築家の中村青司が所有する屋敷で殺人事件が起こっており、屋敷自体も全焼して青司と妻、そして手伝いも含めて全員が死亡していた。
犯人は現在も行方不明になっている庭師の可能性が高いという噂も。

彼らはそんな事件の起こった島に建てられた十角館にて一週間過ごす計画だった。
雰囲気を楽しむ為に島からの移動手段は用意せず、連絡手段も一切持ち込まないという徹底ぶり。
十角館にて初めての夜を過ごした翌日、テーブルの上に「犯人」「探偵」「被害者」などと書かれた数枚のプレートが置かれていて動揺するメンバー達だったが、おそらくメンバーの誰かが悪戯で用意したのだと判断した。
そしてその翌日、メンバーの一人のドアに「被害者」のプレートが貼り付けられているのを発見して、部屋の中に踏み込むのだが・・・。

時を同じく本土にて、角島に行かなかったミステリ研究会員の元に死者である中村青司から手紙が届く。
内容は青司の一人娘である中村千歳はミステリ研究会に殺されたのだ、というもの。
手紙は島に行ったメンバーの家にも届いているようで、好奇心につられた会員の一人は独自に調査を進めるのだが・・・。

島では犯人の予測もたたないまま、次々と被害者が増えていく。
本土では中村青司の知られざる過去が暴かれていく。
果たして犯人は一体誰なのか?
角島から生きて帰れるのは誰なのか?
おじさんは今回も最後の一文でビックリさせられてしまうのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

序盤にて、謎のプレートが知らない内に用意されていて不安になるミステリ研究会員達にポウが自身の仮説を説明する。
(研究会員達は有名ミステリ小説家の名前でそれぞれを呼び合っている)
これはあくまでも誰かのイタズラで、ゲームとして楽しむ程度のこと。
例えば飲んだ珈琲に塩が入っていたらその人は「毒殺」されたということで被害者1になる。こんな感じで被害者になる前に犯人を見つけるって感じの。
↑これはある環境下でルールを守ってプレイしたら中々に面白い遊びになる予感。
最近話題になった脱出ゲーム系でありそうだし、ちょっとやってみたいかも。
(もちろんリアルガチな事件はナシで)

あとこの小説は最初の始まり方と最後の終わり方、これが凄く良かった。
冒頭の犯人の決意と葛藤から始まって、結末に下された審判は物言わぬ千歳の言葉・・・。
切なさの残る終わり方って記憶に残るんだよねぇ(´;ω;`)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

中村千歳が死んだ真相がわからなかったのが不満かな。
ミステリ研究会の歓迎会で急性アルコール中毒によって死んでしまったんだけど、それは会員達のウェ~イで煽られた結果なのか、ただ単に自身が飲み過ぎただけなのか?
まあそこんとこがわからないからこそ、このやるせない味が出せるのかも知れないけど。

本土にて、中村青司の弟である中村紅二郎の友人の島田という人物。
彼は何者なんだろう?
大胆な発想で隠された真実をズバッと解き明かす才能はまさしく名探偵役だ。
最後に語られなかった島田の妄想は、はたして真実に達していたのか気になるね。
(調べたらその後の作品にも探偵役として登場するみたいだわ)


<< 読み終えてどうだった? >>

う~んむむ、今回も見事に騙されたぁ(;^ω^)
ストーリー展開よりも推理とかトリックが好きな人向けかな?
人間心理とかキャラクターが味気ないって訳じゃないけど、やっぱり技術力萌え(?)な人のほうが楽しめる一冊なのかなって思った。

つまりそう!
推理小説なんだからソコを楽しまないとな(=゚ω゚)ノ
各方面で紹介されていたように十角館での惨劇後、新聞朝刊の事件記事を読んだら思わずページをペララララって捲り戻すのは必至だ!
そして込み上げる悔しさ。
こんなん絶対まともな人間には不可能だろって思っていたのに、犯人はオカルト系とか変なパワーとか無しでしっかり犯行をやり遂げていたなんて・・・。
「不連続殺人事件」の時も思ったけど、ほんと御見事としか言えませんわ。
(終盤に犯人による犯行振り返り語りがあるから、おじさんでもちゃんと理解できる安心設計)

んでは、読了感へと・・・。
推理好きなら犯人の見事な計画を楽しんで、人情好きなら犯人の葛藤を楽しんで、とにかく小説が苦手じゃないって人なら読まないと損だよって言える一冊だ。
先にも書いたけど、おじさんは特にラストシーンがグッと胸を突いたから、満読感たっぷりの90点!
(満腹感の読書バージョンで『満読感』って言葉を創作。今回から入れていこうかと)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

旧版解説に鮎川哲也さんの解説が書いてある。
この内容がなかなか耳に痛いことが書いてあったりしてね(笑)
469Pより。
―――またプロの評論家のあいだでは、昔から、七分けなして三分褒めろといわれていると聞く。「ぶっ叩き」専門の素人批評家諸君にしても、あたたかい血が流れている「人間」である以上、このことが解らぬとはいわせない。―――
もちろんおじさんはプロでもないし評論家でもない。
今はただ楽しめたらそれで良し!ってスタンスだけど、読書感想歴が増えるにつれて批判することが増えてきちゃうのかな・・・?
気を付けよう。

十角館の殺人」って発売当時はバッシングが強かったのかな?
ちらちらっと調べてみたら新しい世代が作ったミステリ推理小説に対して、古い世代の方々が文句を垂れていただけみたいだね。
まあ、出る杭は打たれると言うか、どこにでもあることかと。
(個人的には凝ったトリックとかよりもキャラクターの魅力がある小説のほうが好きかな)


15Pより。
―――うちの研究会でさえ、必ずしもみんなが知的だとは限らないもの。中にはやまいだれ付きの奴もいる―――
やまいだれ」
精神的に問題があったりする人のことなんじゃないかと。
日頃からいろいろ突っ掛かってくるカーに対してエラリイが皮肉を言ったって場面だね。

108Pより。
―――色褪せた木々に囲まれて、ひっそりと時間を見つめる幾体もの磨崖仏たち。―――
「まがいぶつ」
自然の中にある大きな岩石などを削って作られた仏像。
作中では国東の磨崖仏が話に出てくる。

210Pより。
―――ルルウの持ってきたラジカセから流れ出す声はやがて、かまびすしい女性のディスクジョッキーに切り替わった。―――
「かまびすしい」
かましいとか、騒がしいっていう意味らしい。

224Pより。
―――ただ、アトロピンやニコチンだと散瞳が見られるはずなんだが、それはなかった。―――
「さんどう」
眩しい光に照らされても瞳孔が大きく広がったままの状態。

422Pより。
―――なのに彼らは、危険の予感など毫も抱かず、お手頃な冒険気分に浸っていた。―――
「ごうもいだかず」
少しも抱かず、まったく抱かずって意味みたいね。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

今回はヤマハXT250を描いてみた。
バイクなんて描いたのは初めてだけど、タイヤを描くのが難しいっすね(>_<)
プラモとかないかな~って思って探してみたけど、めちゃめちゃ古いモノしかないみたいだね。

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291Pより。
―――「やっぱりお前か。どこかで見たバイクだと思ったんだ。250CCのオフロードに乗ってる奴なんて、うちのアパートにはいないからな」路肩に駐めてある、ところどころ泥で汚れたバイク―――ヤマハXT250―――を見やった。―――