忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

宇宙船ヴァニスの歌(3) 血飛沫電脳世界 読書感想

タイトル 「宇宙船ヴァニスの歌(3) 血飛沫電脳世界」(kindle版)
著者 友成純一
紙の本の長さ 243ページ
出版社 アドレナライズ
発売日 2015年9月8日



<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・「凌辱の魔界」
・「獣儀式」
・「ナイトブリード」
・「肉の儀式」
・「肉の天使」
・「獣革命」
・「女戦士・フレア伝(1) 邪神殿の少女」
・「人獣裁判」
・「宇宙船ヴァニスの歌」
・「女戦士・フレア伝(2) 絶海の黄金郷(エルドラド)」
・「宇宙船ヴァニスの歌(2) 恐怖の暗黒魔王」
・「女戦士・フレア伝(3) 虚空の要塞島(アルバロン)」
・「殺戮摩幻楼」


<< ここ最近の思うこと >>

初めて『攻殻機動隊』のマンガを読んだのは小学生の頃、家族で行った軽井沢?のペンション。そこの一室に大量のマンガが置いてあって、表紙の醸し出す雰囲気から手に取ったのが『攻殻機動隊』だった。
読んでみたら内容が全然わけわからないが、カラーページのクオリティ激高なムフフポイントに夢中になっていた気がする。
あの時からおじさんは草薙素子のような逞しくも美しい女性がタイプに・・・。
そんなピンクいセピアな思い出は置いといて、今回はヴァニス第三弾。

前回、ヒューマニズム派との激闘を潜り抜けたヴァニス一行。
タイトルからして電脳世界が関わってくるのか?
ではでは、血も涙もないノー天気ノーモラル世界に飛び込むぜ(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

辺境惑星を巡礼して労働者たちを慰安していく宇宙船ヴァニス、しかしその正体は反乱分子の動きを調査する政府勅命の調査船だった。

ヴァニスは五年に一度の地球帰還に向けて、太陽系ワープ中継ステーションの「くりはま」へ立ち寄る。
しかし地球は現在、地球統合政府成立一五〇周年に当たっており、全人類は激しく浮かれていた。
もちろん「くりはま」にもその浮かれ波は来ており、サイボーグ化した係官達は全身生身のヴァニス嬢たちにパーティーの誘いを出すのだが・・・。

十代の男の子の部屋、思考型コンピュータ、海賊になる、ダブルとツイン、あと二年生き延びてくれれば、プッツン、尊い犠牲、一太郎さん、こんにちわ、マザー、呼び声、殺しましょ、ニック様、地獄へ行け、我が世の春う、狂気の波紋、喜ばしいこと、崩壊の泡立ち、愛の力・・・。

地球ではラオ大統領の命を絶やさぬために大慌て。
ヴァニスの中では撫子が新装置を使用した「リリー暗殺計画」を実行に。
パーティーにおねまきされた娼妓たちが好奇心むき出しのサイボーグ達にあれよあれよと・・・。
電子の世界から現実世界まで、破壊と殺戮の血みどろファック満載なヴァニスの歌第三弾!


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///今回のインパクト大賞はコチラ///
二五〇歳の誕生日に補佐官たち二十人の前で演説を行うラオ大統領。
しかし突然、ラオの様子が激変してしまいパワー全開の暴走が始まってしまう。
位置№404より。
―――「おおおおおおお」
感極まった大統領はじっと立っていることもできず、そのまま全速力で床を突っ走った。つられて髭面の消化器が一揃い、旗になって踊り出る。―――
ラオの暴走に巻き込まれて人口臓器を掴みだされた補佐官の一人。
臓器を掴んだまま走り出すラオを追いかけていく補佐官だが、距離が離され少しずつ臓器のロープが長くなってしまう。
果たして補佐官は高価な臓器を無事に取り戻すことが出来るのか(; ・`д・´)

///三十までに一通り遊んでおきなさい///
民主勢力との百年以上にわたる戦争を続けていた世界主義人類は、ラオ大統領の誕生二五〇周年と地球統合政府成立一五〇周年の記念すべきこの年に浮かれまくっていた。
位置№601より。
―――今より二百年以上昔の二十世紀、人間の寿命が七、八十歳までしかなかった頃、「三十を過ぎて覚えた遊びは、深みにはまる」という諺があった。―――
この部分には納得させられましたわ。
確かに精神的財産と物質的財産を自由に使える状態で、子供のように欲望のまま行動したら・・・。
でも全部の「遊び」を子供の内に体験できる人間なんてほぼいないだろうから、結局その人自身の問題なのではなんて考えちゃったり(^^;)
(そういや『さよなら絶望先生』にも同じ話があったはず。調べてみたら128話の「恋もまたはしかなのです!」ってタイトルみたいだね)

///カワイイとコミカルの演出が多し///
記憶を失い電子世界を彷徨うラオはニック様と呼ばれる少女と出会い、どこか引き合う直感を感じた二人は行動を共にする。しばらくして、二人は激しく勃起し続けるラオのモノをどのようにして鎮めればよいのか話し合うが・・・。
位置№2269より。
―――ラオは、またポケッと考える。
「過去の生活を見るわけだから・・・・・えーと・・・・・頭でも突っこむのかな・・・・・」
「ばかあ」
ニックの顔が、ますます赤くなる。―――
なんだこの友成作品に存在しえない純情キャラクターは(笑)
あれか、電子の世界だからこんな少女が存在しててもまあいいでしょってことなのかな?
それにしてもやけにニック様が可愛く感じてしまうわ(*´▽`*)

場面変わって。
パトリシアとお蝶からパーティーの惨劇を聞かされた撫子は、これを期にリリー暗殺計画を実行してしまおうと決意する。
その方法は、撫子が開発した思考型コンピュータを使用する棺桶作戦だった。
位置№2662より。
―――パトリシアとお蝶には、一太郎さんのことなどまるで理解できない。何かとんでもないことを、撫子先輩が企てている。それを察するのみ。
「・・・・・」
二人は無言で、顔を見合わせた。お互いに、相手の顔がいささか蒼ざめているのを。確認できた。―――
極悪非道なことでも平気でやってのけるパトリシアとお蝶でも、撫子やリリー相手だと不安を隠し切れなくなるのね(笑)
キャラクター達に愛着が湧くほど酷い目に合ってほしくないと思うのは当然のこと。
でも次巻ではパトリシアとお蝶もあっさり死んじゃいそうで不安になるわいさ。
前作のメアリアンみたいにね(´;ω;`)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///なんで理想のボディにしないの?///
演説中に暴走したラオに襲われ、生身なら即死している状態になりながらも逃げていく腹ボテ補佐官。
位置№374より。
―――彼だけではなかった。この場に集まった二十人の補佐官。そのほとんど全員が百歳を超えており、身体のほとんどを新旧式のサイボーグ臓器や有機肉に置換している。―――
ほとんどの人間はどこかしらサイボーグ化している世の中で、お金持ちな補佐官がわざわざ腹ボテな見た目のサイボーグボディにしているのが謎だ。
そのほうが裕福に見えるから?
以前に読んだ『虎よ、虎よ!』でも金持ちほど手間や面倒のかかることを好むってなことが書かれていたけど、それと似たような理由かな?

///メアリアン、ワレ生きとったんか!?///
中継ステーション<くりはま>でのパーティにお呼ばれされた娼妓たちはキャッキャウキウキと少女のように沸き立っていた。撫子とリリーを除いて。
位置№672より。
―――撫子門下の三人娘、パトリシア、メアリアン、お蝶ですら、日頃は撫子の権勢を嵩に着て他の娼妓を相手にツンケン威張り散らすというのに、今回に限り、一緒になってキャアキャア言っている。―――
メアリアンが生きてる!?
彼女は前作でコワルスキーに嬲り殺しにされてしまったはず。
どういうことなんだ、まさかサイボーグとして復活したのか?それともパラレルワールド、いや時系列が違う、いやいやまさかそんな・・・・・。
どういうことなんでしょうか、友成先生・・・ひょっとしてついうっかりなんてことは(; ・`д・´)

///一体何が起こっているの?///
ラオの意識をマザーに移植させる。一か八かの作業が完了した時、地球を覆うネットワークからラオの狂気が放出されて、サイボーグ化した全人類が混乱に陥ってしまう。
機械に移植指示を命令し、二人で「こんにちわ」しているムロとレイも例外ではない。
位置№1437より。
―――「あわわ・・・・・あわわ、腕が、私の腕が、まぐろの刺身になってゆく!」
自分の腕に目を止め、ムロは悲鳴をあげた。―――
位置№3027より。
―――回線の影響を受けないのは、自然のものだけである。大地、樹、海、微生物から哺乳類までの、純粋生物・・・・・それに、生身の人体。―――
ネットワークからラオの狂気に感染して、機械部分が暴走したりするのはわかるけど、人工皮膚や内臓などが崩壊していく理由が分からなかった。
神経が繋がっている部分は影響を受けちゃうってことなのかな?
(つーかムロとレイって名前はあの有名なMSを操る作品・・・?)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
ラオの暴走による地球での騒動と中継ステーションくりはまでの騒動が同時に進行していく。
どちらかというとラオ側がメインで描かれているような気がした。
あと電子世界での出来事も語られており、サイバーパンク?っぽさというかSF感ってのが強調されていたんでないかと。

毎度おなじみの「電子版あとがき」ではなぜエロ小説で描き始めたのか?ってことと、映画批評家小川徹との出会い、彼から教えられた言葉、そして泉谷しげる沼正三中井英夫らとの遭遇などなど、今回も内容充実でたっぷり楽しませていただきました。

///話のオチはどうだった?///
一巻、二巻と比べるとちょっと大味気味な終わり方かな。
世界規模、宇宙規模の出来事が描かれるとどうしても個々の出来事の印象が薄れてしまうように感じる。やっぱりエログロ展開ってのは小規模でネチネチ行われてこそ怪しく輝くものなんじゃないかと思った。

ヴァニスシリーズにしては読み終わりの後味がスッキリしているのは、やっぱりラオとリリーのハッピーエンドなオチが効いているのかもしれない。
とはいえそれに巻き込まれた人々は酷い目にあっている訳なんだけどね(^^;)
(撫子にとっては今回もしょんぼりエンドという他ない)

///まとめとして///
民主主義は一掃された世界で、北京に大統領官邸があり、そこに住むラオが全実権を握っている世界・・・現実世界でもこの方向に進みつつあるような気がするけど、ヴァニスみたいな世界にはなってほしくないなぁ。
でも人工臓器やらサイボーグ技術はあると便利だし、助かる人もたくさんいるよね。
肉体という檻を捨てた時、人類は種として次なる進化を得られるのか?果たしてソレは命と言えるのか?
ヴァニスを読み終えた後とは思えないようなことを考えちゃったわ(笑)

さてさて、ヴァニス・シリーズも残すところあと一つだけ。
敵の親玉プレッジスミスとの決着はつくのか!?撫子の悲願は達成されるのか!?
ドクターとメアリアンは次回も登場するのか!?
まったく展開の読めない宇宙船ヴァニスはいつおじさんのところへ来てくれるのか、いややっぱり来ないで絶対酷い目に合うからってことで満読感7点!(10点満点中)
さぁ~て、次はどんな小説を読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

位置№34より。
―――その時には半年、この“夕顔”に蟄居を命ぜられたが、撫子には却って好都合だった。―――
「ちっきょ」
家の中にとじこもって外出しないこと。

位置№234より。
―――無骨だが頼もしい、戦う書記局議長=龕燈人間ラオの姿は、革命軍の勝利の象徴となり、ラオのトレード・マークの竜は、革命軍の旗印となった。―――
龕灯(がんどう)とは、江戸時代に発明された携帯用ランプの一種。
『惑星ゾルの王女』に龕燈人間というキャラがでてくるようだけど、
龕燈=龕灯ってことかな。

位置№435より。
―――赤と青の血管をグロテスクに浮きあがらせ、もはや瞬きも不可能なくらい飛び出ている。まるで、日野日出志の怪奇マンガの主人公だった。―――
日野 日出志は日本の漫画家。大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科教授。
むかし友人らと旅行に行ったとき、道中の書店で『地下室の虫地獄』を購入して読んだ覚えがある。
その後、本は宿泊施設に忘れてきちゃったような気が・・・。

位置№703より。
―――最年長のシンディが、こんな意味の言葉を、雅な上臈言葉で申し出た。―――
「じょうろう」
身分の高い女性、貴婦人、または江戸幕府の大奥の役職の一つで最も高位の女中って意味もあるとか。

位置№1671より。
―――そう、<くりはま>からヴァニスに戻るまでの二十分間、<愛宕山>で、「すわこそ大変だ」とじっとしていることもできず、二人は指令室を右に左に走りまわっていたのである。―――
「すわこそ」
「すわ」を強めていう語。
ちなみに「すわ」というのは突然の出来事に驚いて発する語。そら。さあ。あっ。

位置№2043より。
―――十字軍兵士は、模造男根をそそり立てて進軍したという。―――
十字軍によって貞操帯が普及していったなんて情報も一説としてあるけど、進軍するときに模擬男根を付けていたなんて情報は見つけられなかった。
ネットにはない文献とかに書いてあるのかな?

位置№3215より。
―――デイジー、デイジー、答えておくれ。ぼくは夢中。愛がいっぱい。派手な暮らしは出来ないが―――
「デイジー・ベル」は1892年にイギリスのシンガーソングライターのハリー・ダクレが作詞・作曲した、ポピュラーソングのスタンダードな1曲。
映画『2001年宇宙の旅』で分解され機能を喪失しつつあるコンピュータHAL 9000が歌っていたのが印象的。でもおじさんはまだこの映画を見ていない。
今、物凄く観てみたい気分だわさ(`・ω・´)

サイバーパンク」とはどんなモノなのか気になったので調べてみた。
サイバーパンク」という単語の初出は1980年代にブルース・ベスキが発表した短編小説のタイトルであり、未成年のハッカーを描いた内容だったらしい。
その後、1980年代のSF界における思想、運動、スタイルを指す新語として「サイバーパンク」が用いられ定着したとのこと。
典型的なサイバーパンク作品では、非現実性へのカウンターとしてよりリアルな現実性が意識され最も現実性を体現するモチーフとして人間や心理の描写に力点が置かれた作品が多いってことみたいだけど、SF作品なのに人間らしさに重点を置かれた内容モノってことなのかな?うーんよくわからん(´-ω-`)


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
位置№1542より。
―――その見物客を押しのけ、二人の娼妓だけが、陰茎の攻撃を巧みにかわしていた。そして、少しずつ輪の外へと逃げてゆく。力自慢のパトリシアと、知恵者のお蝶だった。―――


お蝶のチェーンってどうなってんのかなぁ。
普段は髪をまとめるのに使っているけど、有事の際には武器としても使用できるシロモノ。
普通に考えたら殺傷能力のあるチェーンなら重さも結構ありそうだけど・・・・・でも未来のチェーンだから普段は軽くて必要に応じて重くなる便利仕様に違いないってなことを考えながら描いておりました。

 

 

Daisy Bell

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