忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。」 読書感想

「八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。」(文庫版)
著者 天沢 夏月
文庫 274ページ
出版社 KADOKAWA
発売日 2017年1月25日

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。」だけ


<<ここ最近の思うこと>>

「登場人物の『死』が重要な作品はとても難しい。慎重に作らないと物語が軽くなりやすいから」
↑てなことを学校の講師がむかし言っていた。
なるほど確かに、自分でも作ってみたりしてみたら分かる。
読者にこのキャラクターは死んでほしくないって思わせないと成り立たないよね。
今回の作品が軽いとかスカスカの内容だとかっていう訳じゃないんだけど・・・。
心の汚れた中年には、どうなのかな~(^^;)


<<かるーい話の流れ>>

高校生の頃に付き合っていた先輩彼女の透子を事故で失った成吾(大学生)が主人公。
大学生になってから一度も帰っていなかった地元に帰って、同窓会や墓参りをして透子の家に線香を上げに行くと、そこで彼女としていた交換ノートを発見する。
成吾はずっと透子の死を乗り越えられず、過去を引きずったままの自分をどうすることも出来ない現状。

思わず日記に「俺はどうしたらいい、透子。」と書いてしまう。
居眠りをして気が付くと、ノートには当時の透子からの返事が書き込まれていた。
そこで成吾は偶然ノートを拾った赤の他人ということにして、未来と過去を繋いだ交換ノートで透子とやりとりをするのだが、成吾はどうしても我慢できずに過去の改変を行おうとする。
初めての海デートを楽しみにしている透子に、海へは行かないでくれと伝える成吾。
透子は一応その警告を聞き入れてくれたのだが・・・。

過去編は透子と成吾の出会いから別れまでを描いており、現代編では未来の成吾と過去の透子が交換ノートを通して思いを交わす。
その二つの物語が混ざりながら話は喪失と再生へと向かっていく。

何故交換ノートは過去と未来を繋いだのか?
果たして透子を救うことが出来るのか?
そして高校生達の純愛ストーリーを読んで、中年のオッサンが共感&感動出来るのだろうか!?


<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーン>>

53Pより。
―――「あんたは一生でたった一人を想うことが、カッコイイことだと勘違いしてんでしょ」
「そんな幻想はさっさと捨てて、ちゃんと生きてる人間に恋しときなさい」―――
↑このセリフ、良いも悪いも含めてしっかり生きろって感じがして好きだよね。
こんなことを美人の姉がサラっと言っちゃうのがまたイイ!

成吾の姉貴が主人公よりも主人公らしい設定だった。
東京で女性雑誌の編集者をしていて、傷ついた弟の労り方も分かっているカッコイイ女性。
成吾もオトコマエな姉だと思っている。
そのせいで、主人公のウジウジ加減が一際強調されてしまい、それが良いのか悪いのか(^^;)

あとはラムネ瓶の使い方がいい味出してたし、ベタな展開だけど手紙の所は思わずグッときちゃったわ。
(人目を気にしてなんとか涙を流さないようにした・・・・・っていう程度にうるっと来た)


<<気になった・予想外だった・悪かったところ>>

透子の初代ペースメーカーをいつもポケットに入れて持ち歩いている大学生の成吾。
そのせいで飲み会にてちょっとしたいざこざを巻き起こしたりしちゃったり。
うーむ、そんなに大切なモノなら持ち歩くのはどーなのよ?
持ち歩くにしてもなんか袋とかに入れて大切に扱いなさいよ(;一_一)

最後にゲスイことを言わせていただくと。
透子を助ける為に過去の出来事をノートに書いて教える成吾。
ここでおじさんは思った・・・・・透子の性格を考慮して伝達する情報量を減らしておけば・・・。
うーむむ、ひねくれた考え方だな(笑)
もしそうしたとしても、歴史修正の謎力とかが働いて結局失敗しそうな気もするけどね。


<< 読み終えてどうだった? >>

ははぁ~なるほど、ノートが過去と繋がった理由は描かれないタイプのお話だったか。
全体を通して丁寧に作られて押えるツボはちゃんと押さえた綺麗なストーリーだったよ、うん。

読書に嵌りたてな頃の若者ならきっと泣いちゃってたと思う。
でも現在のおじさんには物足りないかな~(;^ω^)
そう思うのは歳のせいなのか、積み重なった読書経験のせいかのか?
昔なら読む小説は大抵それなりに楽しめていたのに、いつからあの感性を無くしちゃったのかな・・・。
(透子が精神的に強すぎて泣き展開がイマイチ伝わりにくかったせいもあるのか?)

読了感は・・・・・まあこんな感じだよねって終わり方でそれほど衝撃を受けることも無い内容だったかな。これはどちらかというと女性向きな作品だったか?根拠の無い勘だけど(笑)
この小説を読み終えて、自分が無くした感性のことを考えてちょいナーバス気味だわ。
「八月の終わりは世界の始まりに似ている」って書いてあったけど、おじさんも読書を続けることによっていろいろ失いながらも、たくさん新しいモノを見つけて行こうって思った。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

この作者の作品である第19回電撃小説大賞の「サマー・ランサー」を読んでみたいと思った。
爽やかそうな内容で、今のおじさんが求めているモノはスッキリ・サッパリ系な気がするから。

23Pより。
―――サイダーとラムネ、確か中身は同じだったはずだ。―――
ビー玉入りの瓶の形をしているのがラムネ、それ以外はサイダーという。
どちらも中味の違いはないようだ。
サイダーはリンゴ酒のシードル(Cidre)が語源と言われ、ラムネはレモネード(Lemonade)がなまったものと言われているとか。

72Pより。
―――ぼちぼち光化学スモッグ注意報が出そうだなとぼんやり思う。―――
光化学スモッグとは、オゾンやアルデヒドなどからなる気体成分の光化学オキシダントと、硝酸塩や硫酸塩などからなる固体成分の微粒子が混合して、周囲の見通しが低下した状態をいうらしい。
健康に影響を及ぼすことがある大気汚染の一種。
夏の熱い日の昼間に多く、特に日差しが強く風の弱い日に発生しやすいみたいね。

25Pより。
―――確かにラムネの味がするけれど、その後は炭酸の泡が波濤となってすべて洗い流していく感じだった。―――
「はとう」
大きな波っていう意味らしい。

107Pより。
―――ものすごく胡乱げな顔をされた。生田の授業が甘いことは、ウチの高校ではけっこう有名だ。―――
「うろんげ」
どうも胡散臭い様子だ、胡乱な気配がする、などを意味する語。
「胡乱」に、そういう様子・気配があることを示す「げ」がついた表現とのこと。

201Pより。
―――「パロデジュビア」その名前はスペイン語だが、確かアフリカ発祥の楽器だ。―――
レインスティックは、スペイン語で「PALO DE LLUVIA(パロデジュビア)」と言う名前で、雨の音がする棒って意味らしい。
中が空洞のサボテンに釘をいくつか刺して、その中に多数の小石を入れて線をした楽器で、傾ける度に小石が釘に引っかかりながら移動する。
それがなかなか綺麗な音を出すみたい。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

148Pより。
―――で、これが幼稚園のときに入れてもらって、小学五年のときに取り出したやつ。初代ペースメーカー」―――

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てことで、ネットでテキトーな画像を検索して書いたのがコチラ↑のペースメーカー。
作中ではいつも持ち歩いている訳だから、コードの類は外してあるんだろうけどね。