忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「墓地を見おろす家」 読書感想

「墓地を見おろす家」(文庫版)
著者 小池 真理子
文庫 330ページ
出版社 角川書店
発売日 改訂版 (1993年12月1日)

この作者の作品で既に読んだもの
・「沈黙の人」

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<<ここ最近の思うこと>>

ふと思ったのよさ。
どうしてこんなにもホラー小説やグロ小説等を求めるのだろうかって?
最近妙にホラー系にハマっているのは、一人暮らしをしていた時に怖くてなかなか読めなかった反動かと思ったけど、なんか違う。
そういえば、むかーし小学校へ登校する前だとかに、北海道から移り住んできた親戚のおじさんが動物の死体を啄むカラスを見たとか、不気味な妖怪話?だとかをよく聞かせてくれたなぁ、それが原因かも。
(昔はよくTVでホラー&ショッキングな映画とか放送してたから、子供時代からそーゆー系に慣れていたとか?)

これを書いている時にそのおじさんは肺癌で余命数日らしい。
だからなんだってことじゃないというか、なんていうか・・・・・。
親戚おじさんから語られるいろんな不気味でちょいグロなお話が、おじさんに「人生を楽しむコツ・その一」ってのを作ってくれたのかなぁ~?なんて思っている今日この頃な訳なのです。
とにかく、一生懸命生きた親戚おじさんの残りの人生が、苦しみ無く安らかに過ぎていくことを願って。


<<かるーい話の流れ>>

時代はおそらく昭和62年。
主人公の加納一家は格安で売られていた高級マンションを購入してウッキウキで引っ越してきた矢先、飼っていたピヨコが突然死してしまう。
実は一家が購入したマンションは墓地、寺、火葬場に囲まれた立地だったので格安だったのだ。
現在は入居している人も少なく、管理人を入れても数組しかいない。
まあそんなこと気にもならんわガハハっと、現実合理主義な夫の加納哲平は言い放ち、新しい暮らしは始まったのだが・・・・・。
(ちなみに加納家は哲平と美沙緒と玉緒(娘)とクッキー(雑種犬)とピヨコ(既に他界)の家族構成)

しかし奇妙な出来事が徐々に加納一家を追い詰めていく。
謎のかまいたち現象、動作不良を起こすエレベーター、テレビに映る影、不気味な地下室・・・・・。
不安になることばかり起こるマンションだから、少ない住人達もどんどん引っ越していってしまう。
現実合理主義な加納哲平もようやく引越しを決意するのだが、そこからさらに予想外の展開が始まる。

このマンションで起こる現象は一体何なのか?
墓地と寺と火葬場に囲まれた土地に原因があるのか?
果たして加納一家は無事に引越しをすることが出来るのか!?


<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーン>>

ホラー物でよくある展開が閉じ込められて外へ逃げられないって状況。
この小説でもマンションから出られなくなってしまうんだけど、誰もが考える対策がある。
ガラスとか割って出ればいいじゃんよ!!
視聴者、読者が必ず考えても登場人物達はなかなか実行しないことが多い。
だがこの小説ではちゃんとやってくれた!しかもデカい金槌を使って思い切り窓ガラスを叩き割って・・・・・でも割れない。
ガラスはどれだけ叩いても固いゴムのように、揺れるだけでまったく破壊できない。
なんとう力技を使ってくる敵(悪霊?怨霊?)なんだ、こんなやり方は初めて出会ったぜ(; ・`д・´)

出られなくなったマンションでわたわたする加納一家。
そこに引越屋が来て助かったと思う場面。
開かないガラス扉に困惑している引越屋達、しかしそのあとで短い悲鳴が聞こえたかと思ったら、彼らはいなくなったように静かになってしまった。
哲平と達二は続けてやって来る電気屋と電話局に希望を託す。
二人がマンションの屋上から観察していると、異変を知った電気屋と電話局員の自動車が一瞬まばゆい光の洪水で見えなくなったかと思ったら・・・・・・。
なんなんだコレは( ゚Д゚)
新手のスタンド使いによる攻撃か!?
一体何の仕業か分からないけれど、あまりにも力技すぎやしませんか(笑)
ホラー小説から一気にジャンルがぶっ飛んだ感じ。(でもこの超展開・・・嫌いじゃない、嫌いじゃないのよ)


<<気になった・予想外だった・悪かったところ>>

超個人的なことなんだけど、動物好きで現在犬を飼っているおじさんとしては、クッキーが酷い目に遭わないか心配で心配で落ち着いて読めませんでしたわ(>_<)
怪しい所や良くないモノを察知できる雑種犬のクッキーは、人間達が恐怖に慄いて固まっている時でも野生剥き出しで臨戦態勢バッチリ!
でも玉緒や加納夫婦には飼い犬としての癒しをしっかり与えてくれるめっちゃ出来た犬様なんですわ!

いろいろ怪奇現象が起こったりした後で、ちょいちょいバラバラに行動する加納一家と弟夫婦。
普通はあんな予測もつかない状況になったら、出来るだけまとまって動いたほうがいいと思うけど、まあ完全にパニックになっちゃっているからそういう考え方も出来ないってことか。
(よりにもよって、クッキーを忘れて行こうとしたことはイタダケナイゾ。ちゃんと気づいた玉緒ちゃんは偉い!!)

マンション内は自由に動けて屋上にも出れる状況、あくまでもマンションから出られないってことなら・・・・・屋上で何かしてはどうか!?
火を燃やして狼煙を上げるとか、ロープ的なモノ用意して一回ずつベランダとかに降りていくとか、もしくは火災報知器とか作動させては!?
なーんてこと考えちゃうのはひねくれ者の思考なのかな(笑)
でもこんなことを妄想して楽しむのもアリっしょ。


<< 読み終えてどうだった? >>

まさかこーゆー終わり方で来るとはねぇ。ホラー小説だからこそアリと言えばアリなんだけど・・・。
結末は読者さんのご想像にお任せしますってことでいいのかな(^^;)
まあなんつーか、とにかく主人公の加納一家に同情するほかないってお話だね。
玉緒やペット達に関してはなーんにも悪いことしていないのに、ただただ原因不明の災難に巻き込まれるだけだから、霊的な奴らに怒りすら覚えるわ!

当たり前なんだけど、以前読んだ「沈黙の人」とはまったく違うガチホラー小説だから、改めて小説家ってすんごいだなぁ~と再認識。

では今回の読了感で。
衝撃のラストシーンから最後のページへ。
そこには無機質な募集広告の描写が・・・。
う~む、このイヤ~な感じの終わり方が後味を悪くさせるぜ(>_<)
でも終盤からの超展開連続には驚かされたし、恐怖感も充分に味あわせていただけたから、ホラー好きなら楽しめること間違いなし!


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

39Pより。
―――ぱらぱらと目次をめくっていて、『霧笛が俺を読んでいる』というタイトルに目が止まった。赤木圭一郎。古い歌だ。―――
赤木 圭一郎は日本の映画俳優。通称、トニー。
1960年の主演映画『霧笛が俺を呼んでいる』では、同名の曲が主題歌として使用されているらしい。

61Pより。
―――栄子という女は雑駁で、その雑駁さが彼女の魅力でもあったのだが、小さな子供をあの地下室に置いたままにして目を離すとは、どう考えても美沙緒の理解を越えることだった。―――
「ざっぱく」
雑然として統一がないこと。

73Pより。
―――つい三日前、弟の達二夫婦が訪ねて来た時も、直美は墓地であることを忘れているような口調で「借景ね」と溜息をついていたものだ。―――
「しゃっけい」
日本庭園や中国庭園における造園技法のひとつ。
庭園外の山や森林などの自然物等を庭園内の風景に背景として取り込むことで、前景の庭園と背景となる借景とを一体化させて景観を形成する手法、とのこと。

75Pより。
―――運転手が窓から首を出し、いまにも飛びかかりそうな形相をして「すべた!」と怒鳴った。―――
「すべた」
不美人な女性を罵っていう語。
一説にはスペイン語「espada」に由来するらしい。

86Pより。
―――戸はぎしぎしと音をたてながら、レールの上をぎこちなくすべっていった。「安普請だな、まったく」彼は溜息をついた。―――
「やすぶしん」
安い費用で家を建てること。または、そういう粗雑なつくりの家。

111Pより。
―――「玲子さんのことと、メディテーションをして、偶然にしろエレベーターを動かした人がいることとは、話が別。そうでしょ?」―――
メディテーション
瞑想(Meditation)とは、心を静めて神に祈ったり、何かに心を集中させること、など。

151Pより。
―――哲平はジーンズのポケットに片手を突っ込みながら軽く口笛を吹いた。曲は『君の瞳に恋してる』。―――
「君の瞳に恋してる」は、フランキー・ヴァリが1967年に発表した楽曲。
作詞・作曲はボブ・クルーとボブ・ゴーディオ。
この歌は彼らの作品の中でも最もヒットした代表作の一つとなったようで。

―――学生時代、よくディスコで踊った曲だった。ずっと後になって美沙緒と見に行った映画『ディア・ハンター』の中でも使われていて、―――
ディア・ハンター』は、1978年公開のアメリカ映画。
製作はユニバーサル映画で、主演はロバート・デ・ニーロ
1960年代末期におけるベトナム戦争での過酷な体験が原因で心身共に深く傷を負った若き3人のベトナム帰還兵の生と死、彼らと仲間たちの友情を描いている。

裏表紙より。
―――「モダン・ホラー」―――
小説や映画のジャンルの一つ。
現代社会の闇や他者の不条理に由来する恐怖を描いたものを指す。
米国の小説家アイラ=レビンによる「ローズマリーの赤ちゃん」や、1970年代に米国の小説家スティーブン=キングが発表した一連の作品に代表される、とのこと。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

↑ではなくて!!
今回は珍しく挿絵がいつくか描かれていたので、そちらをチラ見せで。

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雰囲気のある挿絵が読者のハラハラ・ドキドキを一層高めてくれるぜ!