忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「想師」 読書感想

「想師 上・下巻」(キンドル版)

著者 狂気太郎
紙の本の長さ 125ページ(上巻) 136 ページ(下巻)
出版社 キリック
発売日 2012年1月1日

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「想師」だけ


<<ここ最近の思うこと>>

ちょっと前に孤独になる人についての四コマみたいなのをネットで見た。
人づきあいが苦手な性格だから自分から孤独に向かってしまう。
そしてだんだんと異性や他人を憎むようになるらしい。
またまたちょっと前に、友人達と観た映画でも「一番よくないのは孤独でいること」と女医が言っていたのを覚えている。
この小説を読んで、どれほどの孤独による絶望も他人の暖かさには敵わないんじゃないのかと思ったよ。
独りぼっちは寂しいからねぇ(ノД`)・゜・。


<<かるーい話の流れ>>

世界の視方を変えることによって様々なことを知ることができ、さらにその異世界内で行動することによって現実世界で奇跡を起こすことができる者を想師と呼ぶ。
主人公は想師の草薙という成年で、力量の計り知れない師匠や弟子、謎の仕事仲介人や天使のような彼女に囲まれてリア充な暮らしぶり。
想師の力を使って超常現象を起こしたり、時には悪人を殺したりして生計を立てている。

上巻では地上げヤクザ達に娘を凌辱されて殺された父親の依頼を受けて、草薙がヤクザ達を殺す仕事の話と、意識不明の女子高生を助けたことがきっかけで謎の術者ユウラシキとの戦いまでが描かれている。

下巻では噴火した火山の活動停止依頼から始まって、奪われた超凶悪殺人ウィルスの奪取&師匠をも凌駕する想師クキトウジンとの人類存亡を賭けた戦いが描かれている。

読み始めてみたら↑に書いた以上にエンタメ成分増し増しのデカ盛りで、熱読しちゃった(*´▽`*)


<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーン>>

今回はイイねシーンが盛りだくさんだったから箇条書きで簡単に。

・まずは草薙が自宅に置いてるサボテンの「キンコウマル」というキャラクターが面白い。
サボテンのくせに生意気な口をきいて(想師などにだけ聞こえる?)ビールを要求したり、謎の忠告をしたり、最後の最後で窮地になった草薙達を必殺の攻撃で助けたり、他にもいろいろな秘密がありそうなキャラクターだわ。

・ちょいちょい出てくる霊能力者タレントが毎回いろんな所で散々な目に遭うのが笑える。
まあ主に草薙の邪魔になるようなことばかりしているから自業自得っちゃそうなんだけどね。

・想師が力を使い過ぎて、現実の肉体がだんだんと想像上の化物に変わってしまう設定は面白い。
人々が想像する力がUMAなど架空の生物を作り出してきたって話はよく聞くから、あ~こうして怪物達は生み出されてきたのかぁって納得できる。

・全人類の存亡を賭けた九鬼と草薙の最終決戦を前にして、死者のカバリストであるゲールが用意した面会シーンが熱い!
草薙の人生で縁のあった死者達を集めてそれぞれ会話をする場面なんだけど、こーゆー溜めの展開が戦いを熱くさせるし読者も共感しやすくなるから良いよね~。
特に草薙に魂を救われた少女がお礼を言う場面は目頭が熱くなりそうになる(ノД`)・゜・。

・最後にシッキーっていうキャラクター。
コイツは本当に意外な形で関わってきたな・・・・・まさかあんな奴がこんなことになるなんてねぇ。
キンコウマルと同じで憎めない奴だよ(笑)
それにしてもあの小汚い人形で「シッキー」って、元ネタは某有名ホラー映画の「チャッキー」か?


<<気になった・予想外だった・悪かったところ>>

・ユウラシキを倒すために既に死んだ術者へ話を聞きに行く場面。
ここでの説明展開がけっこう長かくて分かり辛かったかな。
基本的にはカバリストであるゲールと草薙の会話で、カバラ術と想師の技の説明が相互に交わされるんだけどこれが中々に・・・(^^;)
ちょっとだけ眠気に流されそうになっちゃったわ。

・この小説は設定が設定だけに、ご都合主義も甚だしいって展開が多々あるんだけどファンタジーとかも似たような感じだからねぇ。
でもそーゆー系がキライって人にはあんまり楽しめないかも。
おじさんもご都合ファンタジーとかはあまり好きじゃないけど、この小説は超展開とキャラクターが面白いから楽しめたのよ。

・グロ系でオススメされていたから読んでみたんだけど、予想していたよりもグロさエグさは薄口だったかな。(WEB版ではもっと激しい描写らしい)
死体はいっぱい出るし暴力描写もあってグロイんだけど後に残る感じはしなくてさっぱりしている。
大抵は術とかで治せるからって設定があるから?


<< 読み終えてどうだった? >>

まさかあの近江さんがΣ(・□・;)
ユウラシキ、予想外の号泣!
な、なんてしぶとい奴なんだ!!
などなど、いや~~~楽しく読ませてもらったわ!

とんとん話が進む度に戦いの規模が大きくなっていく作りもおじさんの感情を盛り上げてくれる。
こーゆー胸を熱くさせてくれるお話はファンタジーだろうがなんだろうが大好きだね。
(ある意味「想師」もファンタジー作品だよね?現実世界と異世界のハリポタ的な)
基本的にサクサク読んじゃえる文章だから、まるでマンガを読んでいるような感覚だったけどライトノベルに近いのかな?

さてさて読了感は・・・。
バンバン人が殺されちゃったし、草薙は親しい人物とも別れがあったりしたけれど、最後はしっかりハッピーエンドでとてもスッキリな終わり方だったから大満足!
でも文章もお話の造りもちょーっと大味な感じがするから、エンタメ好きな人は楽しめるけど濃い口?が好きな読書人には物足りないかも知れない。
おじさんは十分に満足させてもらったけど、思い返すと「とにかく楽しく読めた」で終わりなんだよね。
でもエンタメ作品なんだからそれが一番重要じゃん。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

上巻:位置№ 203より。
―――カバリストがアストラル界を歩くには照応性と自らの経験を用いるが―――
「かばりすと」
カバラカバラーとは、ユダヤ教の伝統に基づいた創造論、終末論、メシア論を伴う神秘主義思想である。独特の宇宙観を持っていることから、しばしば仏教の神秘思想である密教との類似性を指摘されることがある、らしい。

「アストラル界」
アストラル体の存在する世界はアストラル界と呼ばれているようで、これを霊界や幽界とする説もあれば、現実とほとんど同じに見える世界であるとする説もあるとか。

上巻:位置№ 2005より。
―――自分が殺してきた大勢の人々の、怨差の声を聞くのが怖いのではないかと。―――
「えんさ」
うらみ嘆くこと。

―――実はこのところ私は、九鬼のゲヴラーの部分、つまり火星に照応する破壊の力ですが、そこへ少しずつ干渉しているのですよ。―――
「ゲヴラー」
セフィロトの樹を構成する10個のセフィラの一つ。
一般名称は「剛毅」。
対応する数字は「5」。
力・戦い・勇気・残酷・破壊など、力や攻撃的なことをあらわす。
対応する惑星は「火星」。

下巻:位置№ 42より。
―――当初の爆発はプリニー式で、巻き上がった噴煙が成層圏まで達していたそうです。―――
プリニー式噴火は噴煙柱を形成する激しい噴火で、噴煙は成層圏まで達し大量の火山灰やスコリアなどを放出して火砕流を伴うこともあるらしい。
ポンペイを廃虚と化した噴火の情景がローマの博物学者ガイウス・プリニウス(大)と甥のプリニウス(小)によって書き残されていることから、プリニー式噴火といわれるようで。

下巻:位置№ 108より。
―――完全な闇から淡い闇へと変わる過程で、世界から析出するように身体感覚が戻って来た。―――
「せきしゅつ」
液状の物質から結晶または固体状成分が分離して出てくること。

下巻:位置№ 336より。
―――だが、バイクを駆る永次の背中は、凄愴な孤独を映していた。―――
「せいそう」
・悲しみいたむこと。もしくは非常にいたましい様子。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

上巻:位置№ 300より。
―――俺の腕は、鉤爪の生えた、分厚くゴツゴツした皮膚で覆われた代物に変わっていた。西洋にはガーゴイルという石像の魔物がいるが、それに近い。もうちょっとまともな姿にならないものか。―――

 

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てことで今回は想念世界にいる草薙の変異した姿であるガーゴイルを書いてみた。
基本的には「怪物の形をした雨どい」ってことらしく、聖堂などにあるガーゴイルには訪れた人々の罪を吐き出しているってな意匠も込められているとか。
他にも、悪霊の侵入を防ぐ「魔除け」としての意味があるみたいで。