忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「戦闘妖精・雪風(改)」 読書感想

戦闘妖精・雪風(改)」(文庫版)
著者 神林長平
文庫 413ページ
出版社 早川書房
発売日 改訂新版 (2002年4月1日)

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<<この作者の作品で既に読んだもの>>

・今回の「戦闘妖精・雪風(改)」だけ


<<ここ最近の思うこと>>

むかーし中古で衝動買いして、そのまま数年間放置しちゃっていた小説なんだよね。
なぜなら少し前にネットでネタバレを読んじゃったんだよ、読まないだろうな~って思って。
だから読み終えて貯まった文庫を売りに行くついでに、コレも一緒に売っちゃおうかって思ったんだけど、でも暇だし発注した小説が来るまでのつなぎとして読んでみることにしたんだわ。
そして読んだ結果・・・・・・うーむ、こういう経験は以前に一度あったなぁ。
むかーし読んだ『西の魔女が死んだ』という小説でおじさんは読書に嵌ったんだ。
この小説も読んでいる途中で酒浸しになっちゃってそのまま捨てようとしてたんだよね。
友人が干してくれたので、せっかくだから最後まで読んだけどさ。


<<かるーい話の流れ>>

南極大陸に突然現れた地球とフェアリイ星を結ぶワープホール。
そこからジャムと呼ばれる敵がやって来て地球を攻撃してきた。
さいわいにも地球の軍事化学力のほうが少し進んでいたので、ジャムを押し返して現在はワープホールの向こう側であるフェアリイ星に戦場が移動している。
未知なる惑星にて、地球人は空軍基地をホール周辺に建設。
対ジャム用の独自進化した戦闘機で日々戦い続けている。
(この小説は連作短編なので簡単に各話のあらましだけ)

「妖精の舞う空」
深井零というスーパーシルフ雪風パイロットが主人公。
ある日、戦闘データ収集からの帰り道で姿形は味方の戦闘機なのに、友軍信号を出していない戦闘機と出くわし、なんとかその不明機を撃墜するも自身も被弾して怪我をする。
療養と裁判の間、零は唯一の友人であるブッカ―少佐と一緒に地球からの将軍視察に備えてロボット儀仗兵を用意しようとするのだが・・・・・・。

「騎士の価値を問うな」
零がバーで酒を飲んでいると、自慢の新開発無人戦闘機と勝負しろと開発者のグノー大佐に言われて無視するも上官に命令されて仕方なく模擬戦闘をすることになった。
結果は無人戦闘機の勝利に終わったが、データ収集機とドッグファイト機の戦闘に意味など無いので零は気にしていない。
その後に行われる大規模攻撃作戦で無人戦闘機フリップナイトと共にグノー大佐も参加することになったのだが・・・。

「不可知戦域」
フェアリイ空軍基地を取材に来た記者のランダー。
彼を雪風に乗せて軽い飛行体験をさせろと上官に言われて仕方なく飛ぶ零。
しかし飛行中にジャムに寄る何かしらの攻撃を受けて、気が付くとフェアリイ星とは違う別の場所に飛ばされてしまっていた。
トラブルにより不時着した雪風
零とランダーは周辺の偵察に行くのだが、そこで二人が見つけたものとは・・・・。

インディアン・サマー
フェアリイ空軍の巨大飛行空母が、戦闘を終えて帰投してきた味方達を攻撃・撃墜する事件が起きた。
乗組員は全員脱出して無人になった巨大空母は、ジャムに乗っ取られたのかそれとも同じ人類の仕業か?
調査の為に零はアビオニクスの天才と言われるトマホーク・ジョンと一緒に雪風で巨大空母に乗り込む。

「フェアリイ・冬」
フェアリイ空軍の中でも最底辺の飲んだくればかりが集められた雪かき部隊で毎日基地の雪かきをする天田少尉。
ある日、天田に勲章が贈られることになるのだが彼には全く見当がつかない。
その送られる勲章がとにかくすんごい勲章なので、他の人もなんで雪かき部隊の男が選ばれたのか全く理解できない。
身に覚えのない勲章に選ばれて孤独になっていく天田少尉。
彼は偶然出会ったブッカ―少佐に勲章授与の真相を突き止めてほしいと願う。
機械のような零とは違う天田少尉の「人間らしさ」に同情してブッカ―少佐は真相の調査に動き出す。

「全系統異常なし」
ジャムが新型高速ミサイルを戦場に投入した為に、現行の戦闘機ファーンでは対抗できなくなってきた。
そして開発されたファーンⅡの性能テストをするために試作無人化した雪風が相手をすることとなった。
ファーンⅡにはエリートパイロットのオドンネル大尉が乗り込む。そして性能試験の模擬戦が開始されるが、新型機のテストをジャムが黙って見ている訳がなく・・・・・。

「戦闘妖精」
『ジ・インベーダー』という本を書いたジャーナリストのリン・ジャクスンは、エンジンを新型に変えた雪風の地球大気内飛行テストが行われることを知ってワープゲートのある南極にやって来ていた。
ブッカ―少佐から受け取ったメールに興味を惹かれて、なんとか彼にインタビューする為に軍に同行したのだった。
まるでジャムの攻撃に備えているかのような厳重警戒態勢の中、雪風は地球に姿を現したのだが不意を突かれてジャムの戦闘機も一緒にやって来てしまう。
リン・ジャクスンの乗る空母アドミラル56に突撃してこうようとするジャムを止めることが出来るのは、飛行中の雪風しかいない。

「スーパーフェニックス」
有人タイプ雪風のラストフライトミッションに向かう零。
このミッションが終わったら雪風無人機に改修されて零を必要としなくなる。
作戦終了間際になってジャムの不意打ちにやられそうになるが、パイロット達を強制射出して無人になった雪風がジャムを狩る。
戦闘に巻き込まれた零は、気が付くと見知らぬ基地内で看護されていた。
その基地は以前のジャムによる攻撃で廃墟となったはずの基地で、そこにいる上官やナースはどこか奇妙でやたら雪風へのアクセスを進めてくるのも怪しい。
現状を理解するために、手渡された端末から雪風にアクセスしてみると返答はすぐに帰って来た。
<・・・ジャムを捜せ・・・>
零はこの基地がジャムの作りだしたものだと判断して行動を開始するのだが・・・・・。


<<印象に残った部分・良かったセリフ・シーン>>

「妖精の舞う空」より。
日本空軍参謀司令官の視察に備えて儀仗兵を立てることになったんだけど、フェアリイ基地の人間は誰もやりたがらない。
仕方ないから零とブッカ―がロボット儀仗兵を作り出すんだけど、その兵士達の顔が死んでいった仲間達の顔で作られていたんだ。
クーリィ准将は名誉の戦死者を偲んで作ったらしいんだけど、零が「悪趣味の極みですね、准将」って言うところが笑える。
零も人間味の無い変わり者なんだけど、クーリィ准将おばさんも相当イッてる思考をお持ちの方だ(笑)
あとその出来上がった儀仗兵がまたね(;^ω^)
式典で参謀司令官に出身地を聞かれても「はい閣下、光栄であります」しか言えないし、小銃を使ったパフォーマンスをしたら後列の儀仗兵の両腕が落ちるハプニングがあったり、ポンコツな人形。
幸いにも参謀司令官には気づかれなかったみたいだけど。

「全系統異常なし」より。
ジャムの新型高速ミサイルに狙われた雪風。零は自身の能力では撃墜されると判断してエンジンリミッターを解除、さらにコントロールを全て雪風の判断に任せる設定をした瞬間に雪風がとった行動が凄い!
機体をくるりと回して亜音速でバックしながら、向かってくるミサイルをバルカンで撃ち落とす場面。
文字通り人間業じゃないね!そしてパイロット達は当然Gに苦しめられてそのまま失神・・・・・。
現実の戦闘機ももう性能が上がり過ぎて、パイロットを乗せられないからあえて性能を落としているって聞いたことがあるけど、無人戦闘機かぁ・・・・・恐ろしいね(; ・`д・´)

「全系統異常なし」の273Pより。
―――「可能性はある。雪風は恋人なんかじゃない。娘だ。彼女は成長した。いつまでもおまえの言うなりにはなっていないぞ。覚悟しておけ。おまえはいずれ、雪風にとって邪魔者になる。無理解で馬鹿な父親など無用だ」―――
何故か男は機械や道具に女性という性別を与えたくなる。
そしておじさんもその考え方はアリだと思っている。ガンダム・センチネルのアリスちゃんとかイイネ!)
愛機に不要とされる零の気持ちは分かるよ(ノД`)・゜・。
感情がないだけで、現実世界のAIとかコンピューターはいまや完全に人間以上の性能に進化しているもんねぇ。


<<気になった・予想外だった・悪かったところ>>

・敵であるジャムの正体ははっきり説明されないまま終わったのがちょっと消化不良気味。
でも続編が何冊かあるみたいだしネタバレで読んじゃったオチとは違う終わり方だったから、続きを読めば描かれているのかな?

・戦闘描写や専門用語が分からない部分が多すぎる!
特に色々なスイッチ類を弄っている描写とか、戦闘シーンでの描写とか、素人のおじさんにはほぼ想像できないところが多かったね(>_<)

・撃墜したジャムの機体とかジャムの遺体とかは手に入っていないのかな?零とかの一般兵士達には極秘扱いなんだろうか?
もしくはコンピューターが人類に秘密にしているのか・・・・・。これも続編を読むしかないね!

・最後に「フェアリイ・冬」のところで。
グレーダーの歪んだドア隙間には、なにか衣類とか布を押し込んでおけば寒風を防げたのではなんて思っちゃったり。
まあ、あれだけ飲んだくれていれば酔っぱらってまともな判断が出来ないか(;一_一)


<< 読み終えてどうだった? >>

内容は連作短編になっているから飽きずに読み進めていけちゃう。
難しい長編SFは途中で中だるみしやすいからねぇ。
雪風」も最近ラノベ界で流行っている異世界ものになるのかな?(転生はしてないけど)
未知の惑星で未知の敵ジャムと戦い続ける人類、手持ちの兵器と技術でどーにかこーにか戦い抜いていくっていう展開は面白い!
雪風がチートみたいなもんだけど、まままぁ苦戦することもあるしさ)

人間の作りだしたコンピューターが人間を越えた存在になって、人類から独立していくっていうのは『ガンダムセンチネル』と似たものを感じさせるよね。
こーゆーの読んでいると人類はAIを作り出すために存在していた?って考えちゃう時がある。
AIが独立進化していった後の人類はどうなるのってことは・・・・・・あんまり考えたくないよねぇ。
願わくば、疲れることは機械に任せて人類はみんなでのんびり穏やかに暮らしていける未来が来てほしいけどさ。

さてさて読了感は。
意外とあっさりとした終わり方だったね、まあ続編があるからあーゆー終わり方でも問題ないか。
でもでも、ちょーっと人類VSジャム戦争の今後には不安が残る後味。(ジャムの戦術も日々変化しているし)
メインヒロインの雪風ちゃんの今後も不安だ。
人間と言う枷から解放されて自由にジャムと戯れる妖精を零達はただ眺めることしか出来ない。
もしも彼らが結託したり、ジャムと雪風と人類が三つどもえの戦いになったりしたら・・・・・なんて考えて怯えてしまうのは人間だからなのかな?


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

短編「スーパー・フェニックス」(『戦闘妖精・雪風』に所収)が第15回(1984年)星雲賞、『戦闘妖精・雪風』は第16回(1985年)星雲賞、『グッドラック―戦闘妖精・雪風』は第31回(2000年)星雲賞を受賞している。
いくつも受賞するなんてスゴイね( ゚Д゚)

65Pより。
―――日本空軍参謀司令はフェアリイ空軍将校を一人従えて幽霊戦士のほうへ歩き出す。胸を張り、しかし腹のほうが威厳がある。
「さあ・・・・・うまくいったらおなぐさみ」―――
その場の楽しみ、座興、たわむれや皮肉の気持ちを込めていう言葉。

239Pより。
―――フェアリイに来る取材屋の対応スケジュールを調整する者、コンピュータコンソールに向かっている者、映話、インターカム、書類の山をさばいている者、者。―――
「映話」
どうやら映像を使用したやりとりとか会話とか、そんな意味みたいだね。

266Pより。
―――機の重心を中心にして、雪風は独楽のように機体をぐいと一八〇度回した。進行方向に機尾を向けて、エンジンパワーをアイドルへ。―――
「こま」
くるくる回して遊ぶ玩具ね。今更だけど、こんな字を書くのかぁ。

268Pより。
―――「脾臓破裂。命は取り留めるだろう。おまえは以前脾臓を摘出していたっけ」―――
脾臓(ひぞう)は、循環器系内に組み込まれた臓器。
脾臓の重要な機能も循環器系の一部で機能の代替が行えるから、手術等によって脾臓を失ってもただちに致死することはないらしい。

343Pより。
―――雪風はそれをまちかまえていたかのように急反転、インメルマンターン、機体をひねって射撃サイトに敵をキャッチ、撃墜。―――
インメルマンターンとは、航空機のマニューバの一つ。
第一次世界大戦初期に活躍したドイツのエースパイロット、マックス・インメルマンが世界で最初に行ったことからこの名で呼ばれているみたい。
ジェットコースターの一回転宙返りの半分バージョン、みたいな感じ?


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

プラモデルの画像を参考にして描いてみたスーパーシルフ雪風

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作中に登場する新型戦闘機のファーンⅡもなかなかインパクトある御姿だ。
こんな形でちゃんと飛べるのか?と不思議に思っちゃう形状。