忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「ナイトブリード」読書感想

著者 友成純一
文庫 237ページ
出版社 角川春樹事務所
発売日 2000年11月


<< かるーい話のながれ >>

謎の地震が起こってから、日本中に様々な魑魅魍魎が溢れてきた現代で、それでも人々は逞しく普通の生活をしている毎日。
(もちろん妖怪達は人を殺しまくりますが、人間も慣れて日常を過ごしたり戦ったりしている)

化物にも異教徒にも過激な対応姿勢をとる鉄十字教団、その中でも特に過激な行動をする部隊に就いているレイ(綺麗でピチピチな十代女子)と弟の正臣(通り魔に憑かれやすい体質)は、熱狂的信者の母親に流されるまま日本全国で布教活動をしている。

ある日、敵対する黎明教団の本拠地である福岡にて鉄十字教団の大規模集会の警備にあたるレイと正臣。
そこで黎明教団の仕向けた妖怪達の襲撃を受ける。
さらにかねてより鉄十字教団を潰す&福岡を支配したいと考えている政府機関派遣の鬼殺し部隊も加わって大乱闘殺戮祭り。
戦いの中でレイと正臣は別れ離れになってしまうが、そんなことはお構いなしに第二回目の集会に駆り出されるレイ。
機関銃で手足を吹き飛ばれながらもぴんぴんしている正臣は、鬼殺し部隊に捕まって妖怪と人間のハイブリッドを研究している施設に連れていかれてしまう。

第二回目の大集会ではさらに過激な大虐殺が起こってさあ大変ってところで第一部完!
うーん続きが気になるぅ!ってところで終わっちゃうから堪らない(>_<)


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

なんだか妙に印象に残っているシーンは39Pの妖怪豆腐小僧
江戸時代の小僧的な格好をして人々に豆腐をくばるが、その豆腐を食べると全身からカビが生えてくるっていう厄介な妖怪。
そいつが公園で人間に豆腐を配ろうとするんだけど、みんな豆腐小僧だって分かっているから誰も受け取らない。
その光景を眺めていた人間の呪術屋が豆腐小僧をからかうと、悔しがって泣きながらさらに頑張って豆腐を配ろうとするシーン。
妖怪なのに普通の人間っぽく悔し泣きするのかよ(笑)
この小説では人間はほとんど妖怪達にいいようにやられてばっかだから、人間のささやかな仕返しって感じでちょっとざまあみろな的ところが好き。

あとは終盤の牛鬼が暴れ回る場面。
人間を鋭い足で串刺しにして、巨大な体で潰して磨り潰して、さらに糸を張り巡らせて無数の子供牛鬼の餌にする。
(糸に捕まって動けない人間は生きたまま無数の子牛鬼に内部を齧られます)
牛鬼からみた人間は、葉っぱの裏に付いた大量のアブラムシを見つけた時の嫌悪感があるようで、だからとにかく殺して磨り潰したくなるみたいだ。
さすが牛鬼さんマジで恐ろしいわ(;゚Д゚)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

悪いところは間違いなくここだ!
この小説は2000年に出版されていまだ続編の出版が無い!
まさかこのまま終了ってことなのか!?
続き気になるんで早く書いてくれませんかねぇ。
いろいろ伏線まき散らしていいところで急に終わっちゃって・・・もうたまらんよぉ(;´・ω・)
(まぁ、もう諦めてるけどねぇ~)


<< 読み終えてどうだった? >>

設定は「獣儀式」とほとんど同じだけど、「獣儀式」とは違う進み方をした世界の話だから(徐々に日本だけ妖怪達が出現してきた)人間も対応順応する時間があったし、小説の内容としては人間達の思惑や対立が主体になっている。
こういうのは未曽有の災害?に日本がどういう対応をしていくのかっていう説明が面白かったね。

友成純一お家芸であるグロ描写は序盤あんまりグッと来ない感じだな~って思っていたけど、中盤から徐々に盛り上がってきて終盤の牛鬼登場の場面では素晴らしい描写をしてくれたわ。
そこんところはやはり安心と信頼のクオリティ(笑)
(まあ獣儀式を読んだ後だと、よほどのインパクトある内容じゃないと物足りなくなっちゃうけどね)
そのかわりエロ方面はほぼ無かったかな。
レイちゃんの黒いレザーミニスカートからすらりと伸びる艶やかな脚が、男性読者の妄想を掻き立てる。

ココが唯一のサービスポイントかと!

ではでは読了感なんだけどぉ・・・・・こ~んな中途半端な終わり方だから読み終わってからかな~りモヤモヤしちゃうんじゃあ( `ー´)ノ
サクサク読めて面白くて予測もつかない展開だから、余計に続きが気になってんのに!


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど>>

福岡が外国勢力から一番狙われている場所ってことに驚いた。
(昔から大陸との交流が盛んで、外国との出会いや別れが福岡を作って来た。悪く言えば異国との関係に甘いってことらしい)
最近の金塊持ち運び事件も福岡空港だったし、確かに政府としては強固な警備体制を福岡に置きたくなると思う。

58Pより。
―――例のポンコチを持っている隊員が―――
拳骨で殴る意味から「大きなハンマー」を意味するようにもなり、自動車をハンマーで解体することから老朽化した自動車を「ポンコツ車」と呼ぶようになったとか。

116Pより。
―――有力なアジテータ―――
扇動者とか攪拌機って意味もあるみたい。

117Pより。
―――教団に引き込もうとオルグを展開したが―――
「オルガナイザー」の略語みたい。
組織を拡大するために人々に宣伝したり、人材を勧誘することとか人とかって意味。

175Pより。
―――本当はその場から一気呵成に爆走したいのを―――
「いっきかせい
文章や詩をいっきにに作り上げること。または物事を中断せずに、一気に片付けてしまうことらしい。



<< 挿絵で見たい場面や物など >>

もう書いたけど、やっぱココだね!

228Pの牛鬼の行進シーン。
沢山の人や自動車で混雑している福岡の黒門橋にて。
ずらっと並ぶ自動車を踏みつぶして行進しながら、逃げ惑う人々を殺しまくる牛鬼と小牛鬼達。
渋滞のせいでその光景を離れたところから眺めることしか出来ない鬼殺し部隊の武装装甲車。