忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「肉の天使」読書感想

「肉の天使」(キンドル版)
著者 友成純一
出版社 アドレナライズ
紙のページ数 267P
発売日 2014年8月12日

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<< かるーい話の流れ >>

大都市の中にぽっかり空いた土地の中に、超無法地帯の街「戸久呂町」がある。
まともな人間は誰もいない、何百円で体を売る女達、家もなく欲情した文無し男は動物と性交するのが当たり前で、殺しも日常にありふれているこの街は五人の幹部と呼ばれる男女達によって支配されている。

そんな地獄の街にやって来たのは美麗と名乗る極上ボディーの絶世な美女!
ムチムチのナイスバディ―を煽情的なパッツパツ衣服で着飾った美麗は、祭りという名の乱交大会が行われている戸久呂町にやって来てブラブラと夜の会場を散策する。

この美麗と名乗る女は、実は数年前に5人の幹部達に姉を拷問によって殺されて、自身も瀕死の重傷を負わされゴミ捨て場に捨てられた美樹という戸久呂町の女だった。
地獄の底から地獄の入り口に舞い戻った美麗は全身整形による美女の色気と、格闘術と武器扱いの技術を身につけて、幹部達に復讐する為に戻って来たのだ。

祭りが終わった後、幹部達は金で釣った女を事務所に連れてきて無茶苦茶にする。
かつて同じ場所で凌辱された美麗は、今宵のその瞬間を狙っているのだ。
こうして戸久呂町の地獄の一夜が開幕する。
果たして美麗は見事復讐をやり遂げることが出来るのだろうかぁぁぁ!!!


<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

全身整形で別人になった美麗(美樹)これでもかってくらいに美しくセクシーな描写がすごく良かった。
やっぱりSMポルノに一応ジャンル分けされているから?それだけに女性を魅力的に描写する技術は上手いな~って思うよ。
っていうか、この作者の小説はほとんどが女性を凌辱する内容だから獲物は魅力的であるほど燃える!
だから美女の描写技術が上手いのも当たり前か。

続いては幹部達のハリボテ用心棒のガチムチ巨人で黒人のジャンボ!
別に悪いことしていないし、どちらかというと知能が足りないだけで性格は良さそうな気がするんだけど、彼の扱いが最後の最後まで酷過ぎるのが笑えるレベルだった。
幹部唯一の女性である市子(かなり太った醜い変態)の毛髪責めは、男性ならば必ず読んでいて内股になってしまう描写ですわわわ。
しかしジャンボは最後の最後まで頑丈な男だったなぁ~(;´・ω・)

あと印象に残ったのは、この作者の作品では初めてかもしれない善人がいたこと。
戸久呂町で唯一のヤブ医者、ズタボロの美樹を助ける為に街の外の医者に助けを懇願するなんて、めちゃめちゃ良い人じゃん。
なんか下心とかあったのかな?


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

気になったところのまず一つ目!
どう考えてもあの程度の幹部達とその子分達だけでは、街の外のヤクザとその他の組織に戸久呂町を乗っ取られるの間違いなしと思うんだけど・・・。
ままま、そういう邪推はこの小説に必要ないっつーことで(;^ω^)

気になったところ二つ目!!
幹部の一人で最年少の美少年、花村がなんかすごい能力を持っていたことに驚いたね。
まあ能力と言っても完全に全てを諦めて五感の全てを遮断するってことなんだけど、この能力のおかげで美麗の拷問にも特に反応を表さないまま死んでいった。
っていうか腹を裂かれる前に既に意識して命を絶っていたのかな?

あとは悪かったというか、インパクト強すぎなところ(笑)
この小説ではジャンボ×岩田(幹部の中年男)で濃密なゲイ描写がたっぷり描かれています。
その気が無い男性が読むと結構・・・いやかなりエグイので注意したほうが良いと思う。
勿論おじさんも読んでいて中々にキツかったですはい(>_<)


<< 読み終えてどうだった? >>

「肉の天使」は今まで読んできた友成純一の作品にしては珍しく、女主人公が悪者男女に残酷な復讐をするお話で、不条理に女性が酷い目に遭うだけの作品よりは、まだ胸糞悪くならなかったね。

それに友成作品にしては珍しく、美樹の復讐劇を最後まで書ききっているのが純粋に嬉しかったですわ。
また「肉の儀式」みたいに途中でぶつ切りエンドかなーって、途中まで不安な思いをしながら読んでいたけど杞憂で終わって良かった良かった(^_^)

読了感は復讐を終えた美麗と同じで真っ白に燃え尽きたって感じかな。
よく「復讐は何も生まない」って言うけど、嫌な過去に対して一段落付けることはできるよね。
そう考えると・・・・・やっぱり悪者がみんな残酷に死んでいったから結構スッキリした感じ。
(いやでも、最終的に美樹は市子化したのか?ミイラ取りがミイラに・・・みたいな?)
ちなみにこの小説で一番読んでいてキツかった場面は、美樹の姉である悦子が幹部達のお遊びで石詰めされたシーンでしたわ・・・(/ω\)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

あとがきの位置№2381より。
バリでの生活費は日本の十分の一から五分の一で済むようで。
日本円で月に十万円強の収入があればバリのサヌール(大都会)では相当な高収入だっていうことらしい。
寒い季節も無いし・・・・・・・バリ、いいなぁ(*´Д`)

あとがきの位置№2480より。
監督や作家がそういう表現をする背景にはどんな事情があるのかを読んで解析する。
そんな表現が生まれた社会的な背景や歴史的な事情を読み取る。
それが「裏目読み」っていうことらしい。
作者がお世話になった「小川徹」という人物の評論方法だそうで。
うーむ、おじさんには到底無理な技術だわわ。
(小川 徹(1923年2月25日-1991年2月10日)は、日本の映画・文芸評論家らしい詳しくはwikiで)

あとがきの位置№2554より。
―――「人にはそれぞれ、与えられた場がある。その、現実に与えられた場で、精一杯に自分を発揮してこそ、自分の世界を作っていける。与えられた場を利用し、それを自分自身の場に変えられたら、そこはもう君の世界だ・・・・・誰でも、どんな書き手でも、そうやって自分の居場所を作っていくんだよ。」―――
小川氏のこの言葉を聞いて、作者はペンネームを使うことを止めたらしい。
読んでいて、なんだかグッとくるものがあったんだよ。
(マンガの「バガボンド」でもなんか似たようなこと言っていたかも?)

位置№311より。
―――小沼が困ったように言った。石女(うまずめ)の本当の意味を知らないのだ。―――
子を生めない女性のことを言うみたい。
(作中では石みたいに頑丈な女っていう意味だと勘違いされていた)

位置№1051より。
―――呻吟のリズムが、激しくなった。目を剥き、歯茎まで露出している。唇のまわりに、黄色味がかったゲロがこびりついていた。―――
苦しんでうめくこと、らしい。


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

クライマックスの美麗突入シーンから。

建物の天井からガラスを突き破って飛び降りてくる美麗。
仰向けに吊るされたジャンボの上に飛び降りて、その反動でまた跳躍して地面に着地する。
パンティ一枚の体は全身返り血で汚れており、顔には沼田から切り取った皮のデスマスクを被り、サバイバルナイフを持った美しい復讐者。
後ろではジャンボと岩田が地面に倒れていて、市子は投げ放たれたサバイバルナイフで胸を刺されて段ボールに倒れている。
飛び降りてきた者にガバメントで銃撃した後、物陰に隠れて息をひそめる花村。