忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「アイの物語」読書感想

「アイの物語」(文庫版)
著者 山本弘
文庫 584ページ
出版社 角川書店
発売日 2009年3月25日

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<< かるーい話の流れ >>

遥か未来の地球にて人類はロボットとの戦争に敗北して、各地のコロニーにて細々と生活をしている。
主人公はそんなコロニーを旅しては旧世界の記録である映像作品や物語などを伝える伝道師のようなことをしている青年。

ある日、彼はアイビスというアンドロイドに発見されて格闘戦の末に敗北して拉致される。
連れてこられた場所は清潔で設備の整った人間用の治療施設。アイビスやロボット達が何を考えているのか分からずに困惑して警戒心バリバリの主人公に、アイビスは治療が終わるまで(足の骨折)フィクションの物語を聞かせると言う。
(生き残っている人類や主人公はロボットの語ることが全てプロパガンダだと信じているから)
語られていく人類とロボットの物語にだんだんと心を動かされていく青年。
最後の物語を聞き終えた時、青年は観念して人類とロボットの真実の歴史を教えてほしいと願う。

そして最終章「アイの物語」が始まる・・・・・・・これぞ求めていたSF小説!!
おじさんの感性に狂いは無かったよ~!買ってよかったぁ~( ̄▽ ̄)
どうしてこういうSF作品にはルイ・アームストロングの「ファット・ア・ワンダフル・ワールド」がもんのすごく合うのだろうか?


<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

もう良すぎた部分が多すぎて選び辛いけど、一番心ににグイッと来た部分を上げてみますね。

353Pの「すべての人は認知症なのです」から始まる詩音の言葉。
―――「論理的帰結です。人は正しく思考することができません。自分が何をしているのか、何をすべきなのかを、すぐに見失います。事実に反することを事実と思い込みます。他人から間違いを指摘されると攻撃的になります。しばしば被害妄想にも陥ります。これらはすべて認知症の症状です」―――

老人介護施設に研修に来たアンドロイドの詩音が教育係りの神原に対して、秘密の持論を伝えるシーン。
もうぐうの音も出ないくらいにそのとおりですとしか言えない自分が居ましたわ(;´・ω・)

同じく「詩音が来た日」から。
388Pの「瑠璃色の地球」を心込めて歌う詩音。
―――私が訪ねると、彼女はにっこり笑って答えた。「この歌は正しいです」―――
施設に来たばかりの頃は完全にスピーカーとして歌っていただけの歌が、研修の最終段階になるころにはちゃんと想いを込めた歌い方が出来るようになっていた詩音。
そんでもって、このセリフだよ。もうアンドロイド萌えですわ( *´艸`)

あとは「インターミッション7」から396Pの物語の力を主人公に説明するアイビス
―――「ええ。あれはみんなフィクションだけど、真実よりも正しい。私はそう思っている」―――
確かに残酷な現実よりも、皆が幸せになれるフィクションのほうが正しいに決まっている。
なんだか上手く言えないけど、希望を想像する力ってのが人間には大切なんだと思います!
(うーむ、イマイチ分かりやすくまとめられない。けど好きな部分なんだよ)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

あえて言うなら、「ブラック・ホール・ダイバー」のイベントホライゾンとかの説明が難しくてイマイチ理解できなかったかな(^^;)
ホールに近づくほど時間は遅くなって、外から眺めたらずーっと止まって見えたりするのはなんとなくわかるけど(ごめんホントは分からんの)重力とか引っ張る力とか観測出来ない境界線とかもぉ~わからんです。でも面白いです!

あとは「アイの物語」の虚数iを用いたAI同士の会話が理解できない(゚Д゚;)
文章として成立していないようなAI会話部分が結構描かれているからほぼ分からないまま読み進める部分もあった。
まあ人間には理解できないって作中に書いてあるんだけどね。


<< 読み終えてどうだった? >>

もうね、どの話も全部おもしろかったわ!読み進めるほどにどんどん物語(というかアイビスに引き込まれていくし、気づけば主人公に成りきって語られる話を味わっていたね。

作中で言われていた「人は感動したモノを真実だと思い込みたくなる」っていう言葉がすごく共感した。
フィクションだろうとそれが素晴らしいことなら感動するじゃん、そういう気持ちが大事なんだなぁ。

随所で目から鱗というか、アンドロイドの完璧さというか、人間の駄目さというか、人間として色々考えてしまうことばかりなんだけど、その答えも作中でしっかり描かれている。
理解できないものは退けるのではなく、ただ許容すればいいだけのこと。
それだけで世界から争いは消える。
それが「i」だ。
(屁理屈はいくらでも出てくるけど、そんなこと考えて読んでても気持ちよくないからさぁ)

読了感はもちろん大満足の大満腹。
分厚く内容量たっぷりなのに、最後まで飽きずにのめり込んだままだったな。
主人公に感情移入しやすい設定のお話で、話の構成も一話ずつに何かを感じる内容で、インターミッションになる度に主人公とアイビスの関係もだんだん変わっていくのがとても良い作りだね。

これだからSF物は止められないって言いたくなる作品だったわ(*´▽`*)
っていうかオチアイビス達の目的)も素晴らしい!!
こういうフロンティア精神があるSF物は今のところハズレ無しです。
間違いなくこの小説は正しいフィクションですだよ!!


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

紹介文にて。「千夜一夜物語
むかーしのアラビアの王様が毎晩処女を呼び寄せては明け方に首をはねていた。
見かねたある娘が進んで王様の元へ行って、お話を聞かせることに。
その語られる物語はどれも面白い内容で、王様は続きが聞きたくて娘を生かし続けた。
それは千一夜にも続いた・・・・ってのがアラビアンナイト千夜一夜物語)の物語だそうで。

327Pより。
―――扱いやすくはなったものの、入所者がおびえているのはやはり望ましいことではないわけで、痛し痒しだ―――
「いたしかゆし」
両方に同程度の良い面と悪い面があって、どちらか片方を取るのに迷ったり苦しんだりすることのたとえらしいです。

350Pより。
―――私は笑った。いくら横紙破りの伊勢崎さんでも、民放までは変えることはできまい。―――
「よこがみやぶり」
決まりを破って自分のしたい事を無理にでもすること。わがままを通すこと。そういう性質の人、など。

354Pより。
―――「『間違ってる』というのは、倫理的に間違っているという意味ですか?」―――

「りんりてき」
人として守り行うべき道とか、道徳やモラルなどのことかと。

ブラックホール・ダイバーより。
―――事象の地平面―――
「じしょうのちへいめん」
ブラックホールに近づいて行って、ある距離まで近づくとそれ以上の観測が一切できなくなる境界線。
向こうからもこちらからも何一つ情報伝達が出来なくなってしまうポイントって感じかな(;^ω^)
(気になる人は映画「インターステラー」を観てみると面白いぞい)


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

571Pより。
宇宙空間で華麗に舞う白い銀髪のレイヴン(一対の翼と白い下着のようなコスチューム)を宇宙船の窓越しに眺める青年とアイビス
翼を駆使して宇宙空間で自由に舞う姿を見てAMBACという概念を理解した青年。