忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「獣儀式」読書感想

「獣儀式」(キンドル版)
著者 友成純一
紙の本の長さ 150 ページ
出版社 アドレナライズ
出版日 2013年06月07日

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<< かるーい話の流れ >>

現代において、信仰心の無くなった人間達に愛想をつかした神様と閻魔様が自分たちの仕事を放棄して、徐々にあの世と煉獄と現世の境目が消え始めて行ったところから始まる。
死んだ亡者達を導く役目である神の使いの天使達は、愚かな人間達を見捨てて職務放棄の放浪生活。
そして勤勉で知能の低い地獄の鬼達は、ある日突然繋がった現世にやってきて戸惑うが、そこは考え方が単純な鬼さん達。
地獄と同じ仕事を黙々と人間達に行うことにした。

世界中に突然現れる鬼の軍団に対抗できず、文明はあっという間に消えて虐殺される人間、現世に肉体を得たことによって欲を知る鬼達、死しても神の職務放棄によってあの世に逝けずに死なずに苦しみ続ける亡者達。
そして一つになり始める全世界。
そんな激動の時代(っつーかこの世の終わり)を生き抜くそれぞれの人間の視点から語られる各々の物語。

いや~吉村萬一の「クチュクチュバーン」以来の衝撃作だったよ。
すんごいわコレは(`・ω・´)


<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

もう全部って言いたい!言いたいのぉ!!!
でもそれじゃあ伝わらないから、特に気に入った部分を抜粋して。
とにかく溢れる地獄描写!!

「極彩色の大地」にて。
捉えた人間達を鬼達がブロイラーする場面がすっごく恐ろしい。
戦えない老若男女が学校に逃げ込んだんだけど、鬼達は学校を入口一つだけ残して他は全部塞いで人々を閉じ込めたんだ。
そして人間達は逃走防止の為に両足を折られ床を這うことしかできない、そんな彼らのエサは殺された人間達の肉。
八月の猛暑の中、コンクリートの建物内は糞尿や体液、そして蟲達が溢れかえった汚物の粒子が満ちた教室内にて肥やされる人間達。
ここの描写が特に凄かったんだわ!(というかこんな酷い設定がカルチャーショックだった)

その話の主人公の康治は初恋人の宏美が最後に殺される瞬間を観ようと裏山から毎日観察を続ける。
(ちなみにコイツも死体イジリが大好きないじめられっ子です)
そして地獄の牢屋と化した教室内でマドンナ宏美が一方的に周りの同級生達から凌辱されて落ちていくシーンはなかなかおぞましいものがありますな(^^;)
そんな宏美の両親は、娘なんかほっといて閉じ込められた教室内で、お互いにおかしくなってその場で交尾に熱中ホビー百貨!
(生存本能が刺激されるとあちこちで乱交だらけになるようです)
最後はまともにしゃべれなくなって丸々と太った醜い宏美が鬼達に殺されてこの話はおしまい。
康治は新たな地獄の光景を求めて都会へと向かう。

もう一つは「死者の季節」にて。
現世に現れて肉体を持った鬼達があろうことか性欲も持ち始めて、そんな彼らの肉棒から溢れてくるのが濃硫酸の体液ってなもんで。
もちろんその一物と体液を注がれた女性は、身体の内部から溶かされながら抉られる地獄の苦しみを味あわされちゃうんです(゚Д゚;)

もうこの設定が凄いよね。
茶店で読みながら酷い顔をしていたと思う。
ちなみにこの小説を読んでいる時は「マリリン・マンソン」のアルバムをガンガンにウォークマンで流しながら読んでいた。
やっぱこーゆー小説はマンソンでしょ(=゚ω゚)ノ
(当然だけど、食事中に読む者では無いと後悔したよよよ)
他にもたくさん刺激的なシーンが溢れているんだけど、書くのが疲れるからこのへんで。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

うーん、個人的にあえて言うなれば我らが人間も結構エグイところあるから、何とか鬼達に対抗しようともうちょっと頑張ってほしかったかな。
いやでも、この小説にそういう余分なところはいらないか。
ちなみに鬼達やその他の妖怪達になんとか対抗している現代日本を描いた小説が同作者の「ナイトブリード」です。
一巻が出版されて中途半端なところで終わったまま、続編が出ませんな(ノД`)・゜・。

あと気になったのは、地獄から来た鬼達はもともと不死身なのかな?不死身というより凄い再生能力があるのか?
だとしたら確かに人間側はやり返す暇もなく蹂躙されちゃうかぁ。
(人間達も現代兵器で武装して迎え撃とうとしますが、瞬殺です)

それと、山神の加護を経て山中に生き残っていたセッ〇ス教祖の卑弥呼様はなんで絶頂出来ないんだろ?
村を抜け出そうとした少年に(調子に乗って69を強行中に)性器の外側を噛みちぎられたからって言っても、体の中にも神経はあるから感じることは出来ると思うけどなぁ。
(素人考えだから実際はまったくわからんけどね・・・)

しかし卑弥呼の死にざまも壮絶だったわ。
彼女の生殺し状態な煩悩が鬼達を呼び寄せてしまい、人間の生き残り達は全員蹂躙された後で教祖様は鬼二体による前後二本差しの濃硫酸プレイ!!
これなら不感症になった卑弥呼様も刺激MAXで感じまくりだったと思う(笑)


<< 読み終えてどうだった? >>

今までで読んだことない、そしてこれからも読むことの無いくらい衝撃的な小説だったなぁ。
とにかく人類が支配していた世界が突然、圧倒的な力で蹂躙されて崩壊していく様は読んでいてどんどん引き込まれていく。
一応官能SMジャンルに分類されているみたいなんだけど、SMとか生ぬるすぎるくらいほんっとうに酷い残酷描写と拷問内容の小説で、だけど何故か続きを読まずにはいられない魅力がありましたわ( ̄▽ ̄)

個人的な趣味とか嗜好とかもあるんだけど、やっぱり読者っていう絶対安全な視点から圧倒的地獄な風景を眺めるっていう状態だからこんなにも楽しめるんだと思う。
つまり平和な日本だからこんな小説を読めるってことかな。
(現実世界の紛争地域とかで読んでも楽しめないよ。つまりは残虐エンターテイメントを好きだからってそれに影響されて残虐行動をしようなんて絶対に思わないってこと!・・・・・・でも地獄みたいな人生を生きている人達は、どうなんだろねぇ)

この小説の読了感は・・・・・・そうだなぁ~、あまりにもあまりにも衝撃的な内容だったから流れ込んでくる情報が処理しきれずに脳ミソがポ~って思考停止になっちゃうわ。
終わり方としては、こんだけ無茶苦茶なストーリーだから、こーゆー終わり方にするしかないよねって感じかなぁ~(;^ω^)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

キンドル版のおまけあとがきにて、この作者の父親はかなりの変わり者だったみたいだ。
けっこう長い文章でその父親が倒れて死ぬまでを書いてあったんだけど、なかなか面白かった。
そしてこの作者、昔は文無しのアル中で今はバリ島在住しながらのんびりスキューバしながら暮らしているみたい。羨ましいなぁ。
(南国でバカンス生活も良いけど、いい加減いろいろなシリーズの続きを書いてちゃんと完結させてくれよ!!)

位置№ 931より。
―――人間が非人間へと解脱していくさまざまな様態を、もっともっと観察したくなったのだ。―――
「げだつ」
俗世間の悩みや束縛や苦しみから解放されて悟りを開くこと。または死者の霊がしがらみから解放されて成仏すること、らしい。

位置№ 931より。
―――鬼たちの拠点もあるようだし、人間の多い都会へ行くほど、地獄はますます酸鼻をきわめるだろう。―――
「さんぴ」
むごいとか、いたましいってことらしい。

位置№ 998より。
―――褐色に日焼けした手脚が宙で泳ぎ、厚手のカーテン布で作った満艦飾のビキニが激しく揺れた。―――
「まんかんしょく」
停泊中の船に万国旗などの様々な旗を付けて飾り立てること。または姿を派手に飾り立てたりすることらしい。

位置№ 2223より。
―――声にならぬ勝鬨が、猟鬼を嘲笑った。―――
「かちどき」
戦争などで勝った時にあげる雄叫びとか大声のこと。


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

毎日数人ずつ飼育小屋(学校)から連れ出されては校庭で殺される養殖人間達。
片思いのマドンナの最後を見る為に裏山から隠れて監視を続ける死体愛好家の康治。
すでにマドンナへの執着はなく、ただ事務的に最後を見届けておこうってくらいの気持ちで人間達が殺されるのを鑑賞していた。