忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「老人と宇宙」 読書感想

「老人と宇宙」(文庫版)
著者 ジョン・スコルジー
文庫 431ページ
出版社 早川書房
発売日 2007年2月1日

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<< ここ最近の思うこと >>

近い内に新しい職場へ赴くおじさんの気持ちはまさしく初陣へ出撃する新兵そのもの。
現在は不安いっぱいな気持ちをお酒で紛らわすために、晩酌をして過ごしている今日この時間( ;´Д`)
こんな時はもっと過酷な状況を想像してみよう。
そうすれば自分の状況はまだマシだって思えるようになるはずなんだい!
てなわけで今回はこの小説を読んでみたよ~。


<< かるーい話のながれ >>

75歳以上から入隊可能なコロニー防衛軍というのが存在している未来の世界。
若い肉体が手に入る代償として遠い惑星での兵役とか、二度と地球に帰れないとか、色々アヤシイ規則がある。(兵役が終わればどこかの惑星で入植民になってそこのコロニーに住むことが出来るようだ)

主人公はジョン・ペリー。
愛する奥さんは急病で先立ってしまい、一人になった彼は75歳の誕生日に防衛軍に入隊した。
そして老人達を乗せた宇宙船は地球を離れ、その道中の船内で新しくて若く強靭な肉体を手に入れて、新兵訓練地がある惑星へ向かう。
そこからは良くある軍隊物語と同じで、訓練地でしごかれる日々、初めての対エイリアンの戦場、兵士としての日々、とんでもない敗退とリベンジといった感じでストーリーは進んで行く。

二度と同じ宇宙には変えれないスキップ航行とか、予期せぬ妻との再会とか、超ハイテク・テクノロジーを持つプレデターみたいな奴らとか、好奇心をそそるSF内容がおじさんの心をときめかせるぜ。


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

精神年齢75歳以上の美男美女ばかりで行われるセックスパーティーも印象が強いけど(;^ω^)
やはり戦争モノらしい場面を。

ジョンと同期入隊して一時的に恋人でもあったマギーと言う女性兵士。
彼女は戦闘中に宇宙空間に投げ出され、救援も期待できず酸素の残量も尽きかけた時に自殺を選択した。
敵の戦艦に向けてロケット弾を撃ち、その反動を推進力にして眼下の惑星テンペランスに落ちていくんだけど、その時にジセイの句を読んで流れ星になった場面。
(その句と死に様を最後にジョンや他の同期達に送信して絶命した)
熱い死に様だよねぇ。
他にも戦死した同期は数人いたけど、どれもあっけなく死んだり酷い死に様だったりでやるせない(´-ω-`)

続いて印象に残った部分で。
ララエィ族というエイリアンがいる。
彼らはコーラルという惑星を侵略して、そこにいた地球の入植民達を全員食用に解体しちゃうんだ。
そればかりかララエィ族のセレブとかも呼んで一流のシェフが人間をどう調理するのが最も美味しく頂けるか?っていうTV放送まで流しちゃうのがとてもインパクト強しだった!
相手はエイリアンだし当然そうゆうのも出てくるよね、人類も色んな肉の調理番組をやっている訳だし。
当然CDF軍は激おこプンプン丸で占領されたコーラル奪還に向かうのだが・・・・・まさかあんなことになるなんて・・・。

最後はこのキャラクター!
謎に包まれた最強戦闘集団の通称「ゴースト部隊」その隊員の一人ジェーン・セーガン。
六歳にして優秀な指揮官だけど、ジョンにとっては命の恩人であり特別な女性でもある。
感情に流されやすい部分もあったり、寝ている相手をつついて起こすなどなど、愛らしいキャラクターなんですわ(*´ω`)
(表紙に描かれいているムチムチ美女がジェーンなのかな?)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

ジャンルはSFだけど、メインは軍隊&戦争モノだからソレ系が好きな人、興味ある人じゃないとあんまり楽しめないかも。
内容も主人公のジョンがダイナミックな活躍をしたっていう訳でもないし。
とにかく一兵士として戦争に参加したってだけなストーリーで・・・・・次回からはもっと主人公的活躍をするのかな?

あと疑問に思ったことなんだけど、あれだけ高度なテクノロジーがありふれたCDF軍なら超強力な兵器とかあるのが当たり前だと思うんだけど、その辺はどうなんだろ?
わざわざ白兵戦をする理由が何かあるのかな?
(『宇宙の戦士』にはパワードスーツがあったようにね)


<< 読み終えてどうだった? >>

なんだかんだで言ったところで、SFミリタリー作品はおもしろいんだよね~(=゚ω゚)ノ
シリーズ物の小説で、次もすぐに読んでみたいって思った作品は初めてかも(あ、粘膜シリーズがあったわ)

老人のみが許される軍隊ってのが面白いね。
たとえ肉体が人類とはかけ離れて子孫も残せないとしても、人類の未来を守ろうとする精神が老人だからこそ育まれて備わっているってのがなんだかじ~んと来たよ。
おじさんだったらどうかなぁ、片道切符でも老いた肉体からチェンジしたいって思うようになるのかな?
でもそのかわりに未知のエイリアン達と戦うなんてのは絶対無理だから、今のところはナシの方向で。
(いやでも寝たきり要介護老人になるよりかは、いやでもでも・・・・・うにゃむにゃむぅぅぅ)

結末はハッピーエンドだけど次回はさらに過酷な戦場がありそうなワクワク感を醸しつつ、おじさんに多少なりとも新天地に飛び込む活力を与えてくれたような気のする読了感。
色んなエグさもありつつ、戦闘やSF要素が美味いことミックスされてて面白かった!
それに海外小説なのに読みやすかったから大満足だったよ!


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

「老人と宇宙」は2006年のジョン・W・キャンベル賞受賞作なのだ!

214Pより。
―――贖いという単語が何度もくりかえされるあいだ、ワトスンの頭のかけらは涙のようなしずくとなってコンス―の胸部を流れ落ちていた―――
「あがない」
贖いは賠償の古語で一般には罪を償う、もしくはそれと同じことを行うという意味らしい。

184Pより。
―――海兵隊ライフル信条だけはまともだ。一部を紹介してやろう―――
「ライフルしんじょう」
海兵隊信条はウィリアム・H・ルーパテス准将によって1942年3月14日に定められたらしい。
戦争映画とかでよく聞いたことあるかな。
映画「フルメタル・ジャケット」でもみんなで叫んでいたような気がする。

191Pより。
―――人間との友好よりも人間をハンバーガーにすることを望むような世界では、神人同型論なんてものは通用しないんだ―――

「しんじんどうけい」
宗教上の擬人観のひとつで、信仰の対象である神に人間の持っている形姿・性質を備えさせる考え方。
例えば古代ギリシャの神が、人間と同様に喜怒哀楽の感情を持つとされたことなど、ってことらしい。

327Pより。
―――ジェシーもわたしも、タキオンがなんなのかを知っていたら、もっと興奮できるんだけどね―――
タキオンは超光速で動くと仮定されている粒子のこと。
現在においても存在は確認されていなくて、語源はギリシャ語の「ταχύς(速い)」に由来するとか。
SF作品中で超光速通信の手段として用いられたり、疑似科学の世界でタキオングッズとして「製品化」されたりしているみたいだね。(どんなグッズなんだか)

370Pより。
―――グッドールは、上向きにさっとナイフを突き出して、コンス―のキチン質の脚を一本切り取った―――

「きちんしつ」
節足動物甲殻類の外骨格すなわち外皮、軟体動物の殻皮の表面といった多くの無脊椎動物の体表を覆うクチクラや、キノコなど菌類の細胞壁などに含まれるムコ多糖。
キチンとキトサンの総称とのこと。
蟹とかエビの外皮のことみたいだね。

361Pより。
―――あのストロベリー・ルバーブパイを食べると、天にものぼる心地になったものだ―――
ストロベリーとピンクのセロリみたいな野菜のルバーブを使ったパイらしいね。
けっこう酸味がありそうだけど、アメリカだし味付けはやっぱり激甘なのかな?


<< 登場したモノ・道具・姿・形などの気になった画像 >>

老後の趣味を増やす為に絵の練習を兼ねて、今回から描いたモノを載せていこうかと・・・(^^;)
表紙の画像より。
CDF軍が標準仕様にしているMP-35歩兵用ライフル。
↑このライフルってカタチ的に見てもイギリス軍のL85だよね。
作者かデザイナーがこのライフル好きなのかな?
てなわけで今回は実在するL85をカキカキしてみた。
先端部分を交換すればグレネードを発射できるようにもなるのだ。

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「二階の王」 読書感想

「二階の王」(kindle版)
著者 名梁 和泉
紙の本の長さ 385 ページ
出版社 KADOKAWA
発売日 2017年9月25日

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<< かるーい話のながれ >>

デパートの文房具店でアルバイトをしている朋子は、同じデパートで働いているメガネ屋の加東(イケメン)と何の前触れもなくいい雰囲気になってウキウキハッピーな気分。
だが朋子には秘密にしていることがある。
実家で部屋に引き篭もっている兄の存在だ。
家族にヒキニートの兄が居ると知られたら、愛しの加東になんて思われることやら・・・。
最近は兄の部屋から不快な悪臭がしてくるし、アルバイトの将来の展望は明るいとは言えないし、いろいろと大変そうな毎日を送っている主人公の朋子。(おそらくなかなか可愛らしい外見っぽい)

一方、同じデパートで「ニート枠採用」になった冴えない気弱な青年の掛井。
バックヤードで物流の振り分けバイトをしながら、いつも鬱陶しい先輩にいじめられる日々を送る。
そんな掛井には特殊能力があり、悪魔に洗脳された人間?【悪果】を見つける能力があるのだ。
そして掛井の他にも悪果を見つける能力者達がいて、彼らは団結して街中をパトロールして悪果の増減を観察しているのだった。

かつて砂原という人物の書いた「侵攻者の探索」という本には、空に予兆が現れた後にこの世を滅ぼす王【悪因】が受肉して現代に現れる。
そして悪果を増やしていき、世界は滅びるというようなことが書かれていた。

果たして朋子の恋の行方は?
掛井達は世界を救えるのか?
引き篭もりの兄は部屋を出ることができるのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

まずは位置№ 2780より。
大学内にて澪と掛井が悪果の集団に襲われそうになるんだけど、その中には掛井のバイト仲間でもある松木(逞しい青年だが掛井のような弱い男が嫌い)も悪果となって立ちはだかっていた。
でもってもう捕まって謎の腫瘍を植え付けられちゃうって時に、化け物の顔をした松木が二人を守るように悪果集団に立ち向かった!?
ついに精神力で悪果に打ち勝つ人間が現れたのか!
なんだかんだ言って性根は腐っていなかったのか松井!!
そう思って良いキャラじゃんってなったんだけどね。
うん、なりかけたんだけどねぇ・・・真相は読んでのお楽しみってことで。

次は位置№ 138より。
引き篭もりの兄が部屋を出る時に毎回とある音楽を響かせて、これからちょっと移動するから誰も近寄らないでね~って注意を家族に対して促しているみたいなんだけど、その曲がローリング・ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』なんだ。
聞いてみるとおじさんがかつてやっていた「COD ブラックオプス」で流れていた曲やん!
ベトナム戦争時代に作られた曲かな?)
メロディとしてはやけに陽気な音楽を選択したもんだな(笑)
この曲はおじさんも大好きだから、結構あのお方と気が合うかも?


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

ジャンルはホラーになっているんだけど、恐怖というより不気味って感じが強かったかなぁ。
読んでいてゾクゾク怖くなるホラーではない感じ。
にしても毎回思うんだけど、悪魔や悪霊が悪さをするお話で神様サイドはなんにも助けてくれない設定が多いのよね。(最終的に信仰心で勝つっていう系は多いけど)

そんでもって気になる所。
終盤のアノ場面にて、何故昔に死んだ同級生の戸山友里恵が現れたのか?
考えてみたけどおじさんには分からなかった(ノД`)・゜・。

あともうひとつ。
でもこれはちょっとネタバレになっちゃうから知りたい人は反転して読んでね↓
王が受肉したのは生身の肉体にってことだよね・・・・・けっきょく誰の肉体に入ったんだろ?
気になる御方はさっそく読んでみればヨロシ↑


<< 読み終えてどうだった? >>

現代社会に予言通りのことが起こってこの世の破滅がはじまっていく。
こういう設定はワクワクして好きだから楽しめた。
(ちょっと思い出したのは『エンド・オブ・デイズ』っていうシュワちゃんの映画。まあまあ好き)
個人的には主人公である朋子と掛井にもうちょっと頑張って活躍してもらいたかったかな~。
ほとんど本人達はただ起こる出来事に流されるままだったから。
(あ、でもラストは活躍してたしカッコイイ場面もあったわ)

この小説はグロイ描写も無いし、難しい描写や説明もほとんどない。
だからホラーやスプラッタ苦手な人でもストレスなくスラスラ読んじゃえると思うよ。
あまり小説を読まない人にもすごくオススメな一冊だと思う。
(おじさんはもうちょいコアでディープで汚いのが好きかな)

でも最後にはしっかりどんでん返しもあったし、王を巡る結末もしっかり描かれつつ、な~んか怪しいラストもあって物語は終焉した。
読了感としては引きこもりの方々の気持ちに共感しつつも、もっと勇気出してやるときゃやっちまえよ!って勝手に思ったりした。
(他人事だから強気な考えを持てるんだよねぇ~。明日は我が身だぞ!王様ですら引きこもる世の中だからな)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

「二階の王」は第22回日本ホラー小説大賞(優秀賞)受賞作なのだ。

位置№ 1911より。
―――この次、トラブルを起こせば馘首もありうる。―――
「かくしゅ」
雇い主が使用人を辞めさせること、解雇や免職など。

位置№ 2612より。
―――市販本でも砂原岳彦の文章は晦渋でまわりくどく、分かりやすいとは言いがたかった。―――
「かいじゅう」
言葉や文章がむずかしく意味がわかりにくいこと、らしい。

位置№ 1471より。
―――相貌失認、って知ってますか。他人の顔の見分けがつかなくなる病気。ブラッド・ピットがカミングアウトして話題になりましたね。―――
「そうぼうしつにん」
脳障害による失認の一種で、顔を見てもその表情の識別が出来ず、誰の顔か解らず、個人の識別が出来なくなる症状ってことみたい。
↑ネットで調べたら確かにブラピも自己申告しているね。

位置№ 1430より。
―――心霊治療、ってフィリピンやなんかでやるやつですよね。豚の内臓を仕込んでおいて幹部を摘出しました、とか。―――
他にもブラジル、メキシコ、タイとかで有名らしいね。(マンガ『スプリガン』にも使い手がいたなぁ)
個人的にはやっぱりトリックのような気がするけど・・・(;^ω^)
たまたま病気が治っちゃった人の声だけが大きく響いているだけでさ。

位置№ 1310より。
―――ゴダールの「ワン・プラス・ワン」って映画があって、ローリング・ストーンズがこの曲を録音してるところを延々と撮ってるんだけど」―――
1968年に製作・公開されたジャン=リュック・ゴダール監督によるイギリスのドキュメンタリー映画
ザ・ローリング・ストーンズのスタジオでのレコーディングについてのドキュメンタリーと、社会運動にかかわるドキュメンタリーめいたフィクション部分が交差する内容みたいだね。

位置№ 1294より。
―――「だから『悪魔を憐れむ歌』じゃ意味が通らないんだよ」―――
邦題「悪魔を憐れむ歌」の訳には否定的意見もあるようで。
当時、洋楽の日本語タイトルは安易に付けられるケースが多く、レコード会社の担当や親しいファンクラブの人間などが思いつきで決める場合もあったらしい。
本曲もその例に当たると思われていて、「悪魔に賛同する歌」っていう邦題のほうが近いみたい。
↑なるほど。たしかに『Sympathy for the Devil』だからね。
それにしてもwikiでこの曲を調べてみたらすっごく長い説明や逸話が沢山あるのねΣ(・ω・ノ)ノ!

位置№ 2556より。
―――『ギミ―・シェルター』を唄うミック・ジャガーの裏声が癇に障り、僕はヘッドフォンを引きむしった。―――
「ギミー・シェルター」(Gimme Shelter)は、ローリング・ストーンズの楽曲。
作詞・作曲はミック・ジャガーキース・リチャーズ
1969年のアルバム『レット・イット・ブリード』に収録されている曲とのこと。
なるほど、作者の名梁さんはローリング・ストーンズが大好きなんだろなぁ(笑)

位置№ 4366より。
―――「キシュに舞い戻ったのかもしれない」―――
キシュは、古代メソポタミアの都市、もしくはそこに起こった国家。
現代名はテル・アル・ウハイミルで、イラク共和国バービル県内のバビロン遺跡の東12kmに位置する。
20世紀初頭の発掘によって宮殿跡やジッグラト、墓、書記学校の跡が発見されている。
古代メソポタミア時代の初期において特殊な意味合いをもっていたらしいけど、特殊な意味合いとは?


<< 登場した地域・道具・姿・形などの気になった画像 >>

クライマックスな場面にて。
右手の肘から先が黄色い角質で覆われて、三本の歪曲した鉤爪と向かい合う一本の爪、つまり猛禽の下肢になってしまった朋子。
極限状態で部分的に悪果の力を得た朋子さんが周りの悪果達を引き裂いて薙ぎ払うシーン。
心まで侵食されそうになった朋子様は「おいで。引き裂いてやる。」と心の中でつぶやく。
うん、なかなか熱くてカッコイイ場面だったよ。
(でもやっぱりこれ、ホラーっていうよりデビルマン?)

「復活の日」 読書感想

復活の日」(文庫版)
著者 小松左京
文庫 452ページ
出版社 角川春樹事務所
発売日 1998年1月1日


<< かるーい話のながれ >>

舞台は1970年代の地球。
イギリスの極秘細菌兵器研究所から持ち出された細菌兵器サンプルが、不運な事故により極寒真冬のアルプス山中で大気中に飛散してしまう。
数か月後、世界中で変異したインフルエンザウイルスが大流行。
致死率はどんどん上がってバタバタと人や動物が倒れていく。
しかし感染者を殺している原因は、インフルエンザと同時に流行していた例の細菌兵器ウィルスだった。

爆発的な増殖力と抹殺能力を巧妙に隠し持つこのウィルスは、数年前に宇宙空間から採取された微生物を元に作りだされた凶悪な細菌兵器だ。
だがそのことを知る者は数少なく、色々な偶然からその情報にたどり着けず、研究開発関係者も次々とぽっくり死んでしまう。

誰も原因を掴めないまま、水中以外の生物は死滅していき、(蛇とか虫は大丈夫みたい)最終的に生き残った人類は南極観測基地にいた一万人だけになってしまう。
残された者達は南極でなんとか生き抜いていこうとしていた矢先、人類が自分達で作り上げた憎悪によって自身を滅ぼす危機に襲われる。
果たして残された人類に復活の日はやって来るのだろうか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

まずはコチラ。
南極昭和基地の無線に届いた、ニューメキシコ山中にいる五歳の少年からの救難無線。
しかしそれを聞いた辰野と住吉は救難無線に応えてはいけないと分かっている故に葛藤するシーンが印象に残った。
もし生き残っている感染者達が無線を聞いたら、南極なら助かると思って押し寄せてくるだろう。
そうなったら人類は完全に絶滅してしまうんだよね。
家族もペットもみんな死んでしまった家でただ一人救助を求める五歳児、だが誰も返事を返してはくれない世界になってしまったことを悟ったその子供は・・・。
おじさんに子供はいないんだけれど、こういうのは心にずしっと来ちゃうんだよ(ノД`)・゜・。
無線を聞いていた辰野と住吉は返事を返そうとする者と、応答してはいけないという者で取っ組み合いの喧嘩になっちゃうんだ。
助けを求める者をただ何もせず放っておくしかないって状況は、辛いよね。

続いてコチラ。
ヘルシンキ大学の文明史担当ユージン・スミルノフ教授」による最後のラジオ放送の場面。
結局何が言いたいのかあんまり良くわからなかったけど、軽くまとめるなら・・・。
人類はここまで知性を持って文明を築いてきたんだから、その知性を持って哲学的精神も発展させて相互理解していく努力をもっとしていくべきだった・・・的なことを言いたかったんじゃないかと。
ホントに細かいこと覚えてないし、言っていることも難しくて理解できないことが多かったんだけど、この教授が最後に語る魂の叫びに作者の激情を感じて打ち震えましたわ(´-ω-`)
(映画「インディペンデンス・デイ」の大統領演説シーンみたいな感じの熱意?が伝わってきた)

最後にコチラ。
このセリフも記憶に残る、というか笑える場面の無い作品だからこーゆー言葉がやけに面白く感じる。
400Pより。
―――セックスが人生の重大事みたいに考えるのは、小説家の迷蒙ですよ―――
決死隊として出発する前夜。
特別に接触を許された女性なんだから、おじさんなら何も考えずにルパンダイブで飛びつきます(笑)
しかしこれは作者の自虐ネタなのかな?
あぁ、でも南極生き残りの男達は女性達のことをずっと「ママ」とか「おふくろ」って呼ぶことになっているから、やっぱり最後は親孝行したかったっていう気持ちのが強かったのかもしれないね。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

MM-88細菌やインフルエンザ・ウィルスの仕組みとかの説明が本当に難しかったわ!
ミクソウィルスである新型インフルエンザ・ウィルスにMM-88が感染、ソレが生きている細胞に入るとMM-88が自殺細胞化する核酸を出して感染者を殺す。
感染者が死亡して細胞が活動を停止するとMM-88は溶解して消える?だっけ?
うーむ、おじさんの頭ではこんくらいが限界です(;^ω^)

続いてコチラ。
最終的に南極にいて生き残った一万人。
その中で女性は15人しかいなかったんだけど、その人数で人類はこれから数をふやしていけるのか?
男女比が逆転していたら簡単に増やせそうだけど、女性が少ないと負担も大きいだろうなぁ。
この状況で思い出すのは映画「博士の異常な愛情」の場面だ。
ハーレム計画を語るストレンジラブ博士の言葉に流されて、甘い妄想の世界に入ってしまうお歴々方。

最後にコチラ。
一応この小説は人類が衰退していく様をじっくり書いてあるお話なんですわ。
だから人類が知恵と勇気と努力で未知のウィルスに打ち勝っていく様を描いたサクセス・ストーリーじゃないからご注意を。
(医学関係者の方が読んだらどんな感想を語るのか、ちょっと気になったり・・・)


<< 読み終えてどうだった? >>

なんだか海外の翻訳SF小説を読んでるみたいな気分だったかなワールド・ウォーZの影響かも)
パニック災害物の映画と違って世界中の一人一人の視点で生物が絶滅していく様を描かれているから、とんでもないことが地球規模で起こっているっていう緊迫感が読んでいてすごく伝わって来たよ。


作中で語られていたところで、新聞やメディアで目にする何百、何千、何万人の死者報道を流し見ていて、ふと周りを見てみると病人だらけに。
自分もいつからか軽い咳が出ている。
そして気がつくと自分も死者数字の中にいるんだってことに気づかされる文章がゾクっときた。
細菌兵器って怖いよぉ。目に見えないし気付けないから余計怖い(; ・`д・´)
ちょうどインフルの流行る季節に読んでいたから物語に浸りやすかったのかもね(笑)

おじさんは昔から宿題を最終日ギリギリまでやらなかったけど、んでけっきょく出来なかったけど、人類も絶滅の縁に立たされないと協力し合うことが出来ないのかねぇ。
でも何度も幾つも大きな戦争や病気や災害があったのに未だに理想社会になれないのは悲しいことだよ(ノД`)・゜・。
この小説内の人類には明るい未来を創る理性があると祈りたいわ。
読了感は長くて難しい言葉連発の物語をよくぞ最後まで読み切ったぞ!っていう、やり遂げた感で一杯だ。(夏休みの宿題も頑張って終わらせていたら、こんなに気持ち良い気分になれたのかなぁ)

ちなみにふと考えたんだけど、「復活の日」ってのはひょっとして人類自身がもう一度「最初の状態」からやり直す意味だったのかな?
以前の世界よりも、もう少しマシな世界を作っていく始まりの日ってことだったのかもね。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

20Pより。
―――諦めの熱い皮膚の下に、もはや燠ほどのぬくみも感ぜられぬようになったと思われた、あの懊悩だった。―――
「おうのう」
悩み悶えるっていう意味らしい。

294Pより。
―――治安などと――つまり従容として死ねという意味ですか?―――
「しょうよう」
ゆったり落ち着いている、または急いでいても慌てたりしないことかと。

326Pより。
―――私が学者として、知識人として、根源的に怯懦であったことに対する罰にほかなりません・・・―――
「きょうだ」
臆病で気の弱いこと、らしい。

116Pより。
―――中国は朝鮮事変の時、アメリカ空軍によって細菌兵器の攻撃をうけた。―――
英国や旧ソ連などの科学者からなる国際科学委員会は1952年に、朝鮮戦争アメリカは日本軍の731部隊のデータをもとに細菌戦を実施したって言っているらしい。
歴史家のキャサリン・ウエザースビーはこれを北朝鮮ソ連、中国が捏造したプロパガンダだって言ったみたいだけど、中嶋啓明(ジャーナリスト)は実際に旧日本軍のデータに基づく細菌戦が行われたと主張しているようで。
うーむ、あくまでも個人的な感想だけど・・・・・どさくさに紛れてやっていたに一票。

127Pより。
―――1957年、アメリカ東部のノースカロライナ州上空で、訓練飛行中のB47爆撃機から、あやまって、水爆が投下されてしまったことがあった。―――
パロマレス米軍機墜落事故。
1961年ゴールズボロ空軍機事故。
1958年3月11日、サウスカロライナ州上空を飛行中のB-47から原爆が落下した事故。
あわや大惨事っていう爆弾落下事故がけっこう頻繁に起こってますやん。
こんなの怖すぎるわ(゚Д゚;)
やっぱりどんだけ安全設計しても人間が扱う限り事故は起きてしまうんやねぇ。

135Pより。
―――CIAの中東支部は、つんぼ桟敷だった。―――
江戸時代の劇場で、正面2階桟敷の最後方の席。
舞台から遠くて役者のせりふがよく通らないらしい。
あとは関係者でありながら情報や事情などを知らされていない状態ってことかと。

405Pより。
―――コバルト60を線源にしたガンマ線照射はたびたびやってきたが、大したものはえられなかった。―――
コバルト60!これはまさか映画「博士の異常な愛情」で紹介されていた元素かな?
って思ったけど、映画に出てきた元素は「コバルト・ソリウムG」という半減期93年の放射性元素でした(;^ω^)


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

263Pに描かれていた「アウシュビッツ作戦」または「バナナ作戦」が凄い光景だ。
ガスマスクを付けた自衛隊員達がそこら中に転がっている死体をブルドーザーで集めて山にしたら、ガソリンなどをかけて火炎放射器で燃やし尽くす風景。
もはや丁重に扱うだけの人員も行政もままならなくたった末期状態の日本の日常。
あちこちから新興宗教に縋りつく人々が唱える読経が聞こえる中、死体がどんどん掻き集められては次々に焼かれていく梅雨の東京。