忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「二階の王」 読書感想

「二階の王」(kindle版)
著者 名梁 和泉
紙の本の長さ 385 ページ
出版社 KADOKAWA
発売日 2017年9月25日

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<< かるーい話のながれ >>

デパートの文房具店でアルバイトをしている朋子は、同じデパートで働いているメガネ屋の加東(イケメン)と何の前触れもなくいい雰囲気になってウキウキハッピーな気分。
だが朋子には秘密にしていることがある。
実家で部屋に引き篭もっている兄の存在だ。
家族にヒキニートの兄が居ると知られたら、愛しの加東になんて思われることやら・・・。
最近は兄の部屋から不快な悪臭がしてくるし、アルバイトの将来の展望は明るいとは言えないし、いろいろと大変そうな毎日を送っている主人公の朋子。(おそらくなかなか可愛らしい外見っぽい)

一方、同じデパートで「ニート枠採用」になった冴えない気弱な青年の掛井。
バックヤードで物流の振り分けバイトをしながら、いつも鬱陶しい先輩にいじめられる日々を送る。
そんな掛井には特殊能力があり、悪魔に洗脳された人間?【悪果】を見つける能力があるのだ。
そして掛井の他にも悪果を見つける能力者達がいて、彼らは団結して街中をパトロールして悪果の増減を観察しているのだった。

かつて砂原という人物の書いた「侵攻者の探索」という本には、空に予兆が現れた後にこの世を滅ぼす王【悪因】が受肉して現代に現れる。
そして悪果を増やしていき、世界は滅びるというようなことが書かれていた。

果たして朋子の恋の行方は?
掛井達は世界を救えるのか?
引き篭もりの兄は部屋を出ることができるのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

まずは位置№ 2780より。
大学内にて澪と掛井が悪果の集団に襲われそうになるんだけど、その中には掛井のバイト仲間でもある松木(逞しい青年だが掛井のような弱い男が嫌い)も悪果となって立ちはだかっていた。
でもってもう捕まって謎の腫瘍を植え付けられちゃうって時に、化け物の顔をした松木が二人を守るように悪果集団に立ち向かった!?
ついに精神力で悪果に打ち勝つ人間が現れたのか!
なんだかんだ言って性根は腐っていなかったのか松井!!
そう思って良いキャラじゃんってなったんだけどね。
うん、なりかけたんだけどねぇ・・・真相は読んでのお楽しみってことで。

次は位置№ 138より。
引き篭もりの兄が部屋を出る時に毎回とある音楽を響かせて、これからちょっと移動するから誰も近寄らないでね~って注意を家族に対して促しているみたいなんだけど、その曲がローリング・ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』なんだ。
聞いてみるとおじさんがかつてやっていた「COD ブラックオプス」で流れていた曲やん!
ベトナム戦争時代に作られた曲かな?)
メロディとしてはやけに陽気な音楽を選択したもんだな(笑)
この曲はおじさんも大好きだから、結構あのお方と気が合うかも?


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

ジャンルはホラーになっているんだけど、恐怖というより不気味って感じが強かったかなぁ。
読んでいてゾクゾク怖くなるホラーではない感じ。
にしても毎回思うんだけど、悪魔や悪霊が悪さをするお話で神様サイドはなんにも助けてくれない設定が多いのよね。(最終的に信仰心で勝つっていう系は多いけど)

そんでもって気になる所。
終盤のアノ場面にて、何故昔に死んだ同級生の戸山友里恵が現れたのか?
考えてみたけどおじさんには分からなかった(ノД`)・゜・。

あともうひとつ。
でもこれはちょっとネタバレになっちゃうから知りたい人は反転して読んでね↓
王が受肉したのは生身の肉体にってことだよね・・・・・けっきょく誰の肉体に入ったんだろ?
気になる御方はさっそく読んでみればヨロシ↑


<< 読み終えてどうだった? >>

現代社会に予言通りのことが起こってこの世の破滅がはじまっていく。
こういう設定はワクワクして好きだから楽しめた。
(ちょっと思い出したのは『エンド・オブ・デイズ』っていうシュワちゃんの映画。まあまあ好き)
個人的には主人公である朋子と掛井にもうちょっと頑張って活躍してもらいたかったかな~。
ほとんど本人達はただ起こる出来事に流されるままだったから。
(あ、でもラストは活躍してたしカッコイイ場面もあったわ)

この小説はグロイ描写も無いし、難しい描写や説明もほとんどない。
だからホラーやスプラッタ苦手な人でもストレスなくスラスラ読んじゃえると思うよ。
あまり小説を読まない人にもすごくオススメな一冊だと思う。
(おじさんはもうちょいコアでディープで汚いのが好きかな)

でも最後にはしっかりどんでん返しもあったし、王を巡る結末もしっかり描かれつつ、な~んか怪しいラストもあって物語は終焉した。
読了感としては引きこもりの方々の気持ちに共感しつつも、もっと勇気出してやるときゃやっちまえよ!って勝手に思ったりした。
(他人事だから強気な考えを持てるんだよねぇ~。明日は我が身だぞ!王様ですら引きこもる世の中だからな)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

「二階の王」は第22回日本ホラー小説大賞(優秀賞)受賞作なのだ。

位置№ 1911より。
―――この次、トラブルを起こせば馘首もありうる。―――
「かくしゅ」
雇い主が使用人を辞めさせること、解雇や免職など。

位置№ 2612より。
―――市販本でも砂原岳彦の文章は晦渋でまわりくどく、分かりやすいとは言いがたかった。―――
「かいじゅう」
言葉や文章がむずかしく意味がわかりにくいこと、らしい。

位置№ 1471より。
―――相貌失認、って知ってますか。他人の顔の見分けがつかなくなる病気。ブラッド・ピットがカミングアウトして話題になりましたね。―――
「そうぼうしつにん」
脳障害による失認の一種で、顔を見てもその表情の識別が出来ず、誰の顔か解らず、個人の識別が出来なくなる症状ってことみたい。
↑ネットで調べたら確かにブラピも自己申告しているね。

位置№ 1430より。
―――心霊治療、ってフィリピンやなんかでやるやつですよね。豚の内臓を仕込んでおいて幹部を摘出しました、とか。―――
他にもブラジル、メキシコ、タイとかで有名らしいね。(マンガ『スプリガン』にも使い手がいたなぁ)
個人的にはやっぱりトリックのような気がするけど・・・(;^ω^)
たまたま病気が治っちゃった人の声だけが大きく響いているだけでさ。

位置№ 1310より。
―――ゴダールの「ワン・プラス・ワン」って映画があって、ローリング・ストーンズがこの曲を録音してるところを延々と撮ってるんだけど」―――
1968年に製作・公開されたジャン=リュック・ゴダール監督によるイギリスのドキュメンタリー映画
ザ・ローリング・ストーンズのスタジオでのレコーディングについてのドキュメンタリーと、社会運動にかかわるドキュメンタリーめいたフィクション部分が交差する内容みたいだね。

位置№ 1294より。
―――「だから『悪魔を憐れむ歌』じゃ意味が通らないんだよ」―――
邦題「悪魔を憐れむ歌」の訳には否定的意見もあるようで。
当時、洋楽の日本語タイトルは安易に付けられるケースが多く、レコード会社の担当や親しいファンクラブの人間などが思いつきで決める場合もあったらしい。
本曲もその例に当たると思われていて、「悪魔に賛同する歌」っていう邦題のほうが近いみたい。
↑なるほど。たしかに『Sympathy for the Devil』だからね。
それにしてもwikiでこの曲を調べてみたらすっごく長い説明や逸話が沢山あるのねΣ(・ω・ノ)ノ!

位置№ 2556より。
―――『ギミ―・シェルター』を唄うミック・ジャガーの裏声が癇に障り、僕はヘッドフォンを引きむしった。―――
「ギミー・シェルター」(Gimme Shelter)は、ローリング・ストーンズの楽曲。
作詞・作曲はミック・ジャガーキース・リチャーズ
1969年のアルバム『レット・イット・ブリード』に収録されている曲とのこと。
なるほど、作者の名梁さんはローリング・ストーンズが大好きなんだろなぁ(笑)

位置№ 4366より。
―――「キシュに舞い戻ったのかもしれない」―――
キシュは、古代メソポタミアの都市、もしくはそこに起こった国家。
現代名はテル・アル・ウハイミルで、イラク共和国バービル県内のバビロン遺跡の東12kmに位置する。
20世紀初頭の発掘によって宮殿跡やジッグラト、墓、書記学校の跡が発見されている。
古代メソポタミア時代の初期において特殊な意味合いをもっていたらしいけど、特殊な意味合いとは?


<< 登場した地域・道具・姿・形などの気になった画像 >>

クライマックスな場面にて。
右手の肘から先が黄色い角質で覆われて、三本の歪曲した鉤爪と向かい合う一本の爪、つまり猛禽の下肢になってしまった朋子。
極限状態で部分的に悪果の力を得た朋子さんが周りの悪果達を引き裂いて薙ぎ払うシーン。
心まで侵食されそうになった朋子様は「おいで。引き裂いてやる。」と心の中でつぶやく。
うん、なかなか熱くてカッコイイ場面だったよ。
(でもやっぱりこれ、ホラーっていうよりデビルマン?)