タイトル 「QJKJQ」(文庫版)
著者 佐藤究
文庫 400ページ
出版社 講談社
発売日 2018年9月14日
この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「QJKJQ」だけ
<< ここ最近の思うこと >>
第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作の「紗央里ちゃんの家」っていう小説を昔読んだのよ。
祖父母の家に行った主人公の男の子が家の中で人の体の一部を発見して、そこから死体探しが始まるんだけど祖父母はなんだか変だし、従妹の紗央里ちゃんは姿が見えないし・・・って感じのお話。
正直、読み終えての感想は『大賞受賞作の期待×微妙感』でガッカリかなと(・・;)
今回の小説からもあらすじを読んだら同じような雰囲気を感じるような、感じないような。
いやでもコレは乱歩賞受賞作なんだ、きっと大丈夫なはず。
頼むぞ乱歩賞!!
てなわけで読んだのはコチラ(=゚ω゚)ノ
<< かるーい話のながれ >>
17歳の市野亞里亞は殺人鬼一家の末っ子。
会社員の父親と美人な母親、そしてヒキコモリの兄と一緒に暮らしている。
自宅には殺人専用部屋があり、兄は噛みついて、母は撲殺で、父親は抜血で獲物を殺す。
亞里亞は自身で作った鹿の角のスタッグナイフを使って、ナンパしてきた男を殺したり。
ある日、市野家でありえないことが起こった。
朝食を家族四人揃って食べたのだ。
今までは学生の亞里亞と会社員の父親だけだったのに。
その時を境に市野家の日常は崩れていく。
兄の部屋を訪れた亞里亞は切り刻まれた兄の死体を発見するが、ソレは目を離した隙に綺麗さっぱり消え去ってしまった。
次の日には母親が行方不明になった。
犯人はどこからきてどこへ消えた?
いや、まさか父親が・・・?
そして亞里亞は家族全員が最後に揃ったテーブルの天井に、隠しカメラが付けられているのを発見した。
住民票、十三年前、相模原、新聞、児童ポルノ、匿名組合、殺人予告、パン切り包丁・・・。
家出をした亞里亞を待ち受ける「地獄の季節」は、彼女に何をもたらすのか。
三日後、亞里亞は父親の待つ自宅に帰って来た。
全てを明らかにする為に。
<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>
///父のスタイル(殺人方法)はとってもエレガント(優雅)なの///
真面目で有能な住宅販売員で、友達のいない娘とトランプ遊びをしてくれたり、二人でかくれんぼをしてくれる亞里亞の優しい父親の桐清。
彼が人を殺す方法、それは拘束した相手の血液を電動ポンプで抜きつつ、流れ出る血を相手に飲ませて死ぬまでその様子を観察するっていう・・・これはなかなかにインパクトあるね。
この殺し方が後々にああやって繋がってくるとはねぇ・・・・・ダムナティオ・メモリアエだわ。
///今回のベスト・ヤベー・キャラは鳩ポンです///
いつも公園でハトにポップコーンを与えている地味なOLのオネーサン。
でも亞里亞ちゃんは知っている。
オネーサンは何らかの方法で毎回鳩を一匹だけ殺しているのを・・・。
(後に亞里亞ちゃんが鳩ポンと命名)
プチ家出した亞里亞ちゃんが仮の宿としてオネーサンの家に泊めてもらう場面で、鳩殺しが如何に魅力的な行為なのか語るんだけど、何が起きたのか分からず死んでいく鳩の様子をうっとり瞳を潤ませながら話す鳩ポンは完全に現代社会が生み出した闇に染まっちゃっているぞ(・・;)
それに対する亞里亞ちゃんの返答「すごいね。自然界だね」もちょっとずれてるけど(笑)
///リアリティを感じさせる会話がドキドキさせてくれる///
273Pより。
―――民営企業の力を借りる。もはや企業の協力なしには、宇宙開発にも殺人にも取りくめない時代の幕開けだ。リベラリズムが国家を担うようになったのさ。―――
企業が国家よりも力を持つようになってきた現代・・・・・ってなことを「攻殻機動隊」で言っていたような気がするし、まだまだ実績はないけどホリエモンもロケット打ち上げを頑張ってるよね。
規模の大きな設定をふわっと語って誤魔化すのではなく、現実にそうなっている事柄と絡めて説明してくれるのが有り難い。
やっぱり陰謀論とか背後から操る組織とか、そーゆー設定は好きなのよ。
<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>
///アレの中身はかんしゃく玉ってこと?///
小さな衝撃で破裂する火薬って、かんしゃく玉を使ったってことなのかな?
でもそれくらいの衝撃で爆ぜたりするのかと・・・。
それにほんの少量でそこまで威力が出るとは思えないけど、まあ特殊な火薬を使ったんだろうなぁ。
///亞里亞があそこを選んだ理由は特に無し?///
暇な不良少女を装ってナンパして来た男の車に乗る亞里亞、二人がやって来たのは人気のない林道。
出来立てのスタッグナイフを使って罠にかかった獲物を仕留めた亞里亞は一人で帰っていく。
気になったのはどうして亞里亞はあそこを選んだのかってこと。
特に理由はないんだろうけど、ならもう少し帰りやすい場所にすればよかったのにと思った。
(家に着くのが深夜十二時すぎになるような所は遠いでしょうて)
<< 読み終えてどうだった? >>
この小説はイイヨ!!!
最初から最後までどっぷりハマってしまったわ!!
黄金と恐怖の72時間、国家には窓がない、カインのしるし・・・謎なセリフと予測不明な展開がおじさんの好奇心をそそりまくりで、視界がどんどん紙と文字しか映らなくなってくるぜよ。
物語の最後、これも良かったわぁ。
酷いストーリーであればあるほど、優しくキレイな終わり方が心に残るのよ。
最後のエピローグ。
おじさんには分かりにくかったけど、あれは人を殺しちゃいけないよっていう教育だったのかな?
伝わりにくい上にラテン語で言っても・・・でもちゃんと伝わっていたのが静かな感動だよ。
娘の人生を思って当たり前の教育をする。
それは間違いなく、「標準的な人間」がすることだわ。
この作品は家族愛の物語なんだと感じた!
個人的にめっちゃ好きな小説としてランクインされた今回の「QJKJQ」は、なんと満読感97点!!
こーゆー小説との出会いがあるから、読書は飽きないんだよねぇ(*´▽`*)
さぁ~て、次はどれを読もうかなっと・・・。
<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>
「QJKJQ」は第62回江戸川乱歩賞受賞作品!
93Pより。
―――まるで映画だ、とのちに話題となった場面に、映像は差しかかる。到着した埼玉県警特殊部隊RATSが、動き回る標的を仕留める為に、二人乗りバイクで工程を走っている。―――
「RATS(ラッツ)」
埼玉県警察機動戦術部隊RATSは、埼玉県警察の銃器対策部隊。
RATSはRiot And Tactics Squadの頭字語らしい。
対テロ作戦や銃器を所持した凶悪犯罪者への対処にあたる銃器対策部隊として、機動隊第1中隊第3小隊に所属していて、装備面では他都道府県の一般的な銃器対策部隊とは一線を画し、遥かにレベルの高い訓練を取り入れているとか。
全く知らんかったわ、こんな部隊があったなんて・・・( ゚Д゚)
240Pより。
―――「湿った科学者?」
「脳の研究者は自分たちをそう呼ぶのさ。脳という本物の湿った器官に触れるからだ、とね。逆に乾いた科学者とは、彼らにとっては精神分析医なんかのことだ。いわく、脳を無視して理論だけを語るからだ。学者のもめごとは、まあいい。ようするに、これからするのは、脳の話さ」―――
↑ネットで調べてみたけど、「湿った科学者」っていう単語は見かけなかったなぁ。
脳以外でも体の内側の器官は大概湿っているよね?
こういう呼び方は脳科学者だけなんだろか?(完全なフィクションである可能性も・・・ね)
305Pより。
―――「必要なのはIDと、少しのお金だけ・・・・・と言っても笑わないか。十七なら当然だ。いつか『ライムライト』を観る機会もあるさ」―――
チャールズ・チャップリン監督の1952年製作のアメリカ映画。
名言集で「必要なのは、勇気と、想像力と、そして、少しのお金だけさ。」というセリフがある。
これをもじって言ったのかと。
372Pより。
―――ゆったりした風に熱が満ちてきて、なかなか沈まない夕日が、いくつもの色合いで西の空を染める頃、大好きなアレサ・フランクリンのCDをかけながら、母はわたしを呼ぶ。―――
アレサ・フランクリン、アメリカ合衆国出身の女性ソウル歌手。
2018年8月16日に膵臓がんのため、ミシガン州デトロイトの自邸で死去。
映画「ブルース・ブラザーズ」に出演してたんだ、さすが有名歌手!
聞いたことある名曲がいくつかありそうな予感。
佐藤究の「Ank: a mirroring ape」という小説、これがめちゃめちゃ面白そう!
今回の「QJKJQ」もめっちゃ良かったから、次作も購入するっきゃないわさ(=゚ω゚)ノ
<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>
今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
真夜中の暗い部屋の中には、刃物を持つ血で汚れた男と、床に倒れて死んでいる血まみれの女。
突然、部屋に突入して来た黒ずくめの特殊部隊。
強力なフラッシュライトで男を照らして、力ずくで拘束しようとする。
徽章のない部隊はおそらく警察関係者ではなく、すぐに男を行動不能にすると外へ運び出していく。