忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「ベルゼブブ」 読書感想

タイトル 「ベルゼブブ」(新書版)

著者 田中啓文
新書 505ページ
出版社  徳間書店
発売日 2001年11月

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「ベルゼブブ」だけ


<< ここ最近の思うこと >>

友成さん以外の作品でグロ系な小説を読んでみたいな~ってことで見つけたのが今回の小説。
届いた物を見て思った。
かなり分厚い・・・・・しかもめっちゃ安いし、中古っぽいし、これは読破するまでに色々な苦痛(退屈と後悔)を伴いそうな気がするような。
過去の経験とホラー小説に対する偏見からそんなことを思ってしばらく読むのを避けていたんだけど、美味しくなさそうなものは早い内に食べておけ精神からついにページを捲る時が来た。
はてさて、読み終わるのはいつになることやら(;´Д`)


<< かるーい話のながれ >>

考古学の大学教授で不幸満載の辛い人生真っ只中な初老の蛭川が、発掘中の遺跡から壺を発掘して謎の声に誘われるままソレを開封してしまう。

ところかわって日本の女子高生で虫嫌いの瀬美という少女が、毎度夢の中に現れる人物「宙馬」にメロメロに犯されて身に覚えのない妊娠をしてしまう。
彼女はアイドルグループの一人「ショウ」と秘密に付き合っていて体の関係もあるのだが、計算してみると相手はショウではない。
そしてショウ以外とは誰とも関係を持っていなかった。

瀬美が妊娠してから日本では謎の殺戮事件が何件も起こるようになっていき、瀬美とショウもその事件に巻き込まれていく。
事件現場で偶然出会ったメンチョローという汚い浮浪者の老人から今現在起こっている事件の原因を教えてもらう二人。
遥か昔に封じ込められたナニカの封印が解かれて、軍団を率いて神に戦いを挑もうとしているらしく、もし神が負けてしまったら人間の世界は終わりを迎えるとのこと。
隠れキリシタンのメンチョローは神の声に従って、事件を未然に防ごうとしている)

メンチョローの活躍虚しく、地獄のような事件は起こり続けてしまい更には瀬美の脳に腫瘍が見つかって余命僅かと診断されてしまう。
そして芸能活動も上手くいかず悪魔崇拝の気があるショウは、心の弱みに付け入られて彼女である瀬美を生贄に捧げようとする・・・。

身に覚えのない妊娠から生まれてくる子供の正体は?
瀬美と子供の運命はどうなるのか?
神とメンチョローは悪魔に勝つことが出来るのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

赤ん坊に入り込んだ悪魔と、それを祓いに来た教会公認のエクソシスト達が戦う場面にて。
マンションの一室にどこからかゾロゾロと沸いてきた虫達が、卑猥なマークやあっかんべーをして●●●を屹立させた磔のキリスト像を描き出したりして、エクソシスト達を挑発する。
このしょうもない悪戯に思わず読んでいて笑いが噴出しそうになった。
(むかし「裸の銃を持つ男」って映画で似たような場面を観たせいかな。あの時は確か屋上の男性彫刻像のアレが上向きになっちゃうってギャグだった?)

隠れキリシタンで神からの神託とご加護の力を持つ薄汚い浮浪者の老人メンチョロー。
彼は悪魔との激しい戦いの末、緊急リペア―バージョンと最終決戦仕様になるまで体を酷使して瀬美とこの世界を守る正義のヒーローだ。
最後の戦いにて、圧倒的に凶悪な敵を前にしながらテレビカメラ越しの瀬美に向けて人差し指と親指で作ったⅤサインを送るメンチョローのところは、読んでいてゾクゾクするくらい熱い場面だったぜ。

最初の内は主人公の瀬美ちゃんがかなり捻くれたしょーもない女子高生って感じだったんだけど、その原因が昆虫研究家で昆虫熱愛性癖の両親が原因だったのが納得。
こんなイカレタ両親にあんなことやこんなことされたらそりゃ虫恐怖症にもなるし、精神もいろいろ病んでくるよ。
娘の目に稀少昆虫の卵を植え付けさせようとする外道具合がインパクト強すぎる屑親達だ。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

謎なのは瀬美という女子高生の見た目がイマイチピンと来ない。
丸顔でショートヘア、太い眉に吊り上がった目と大きな口で、時には男の子に間違われてしまうほど容姿。体つきは華奢で胸は高1にしては大きい方らしい。(本人の感想では)
だけど彼女を診察した医者の男性は瀬美のことをちょっとイイ女だと思ったようで・・・。
妊娠してから雰囲気とか人相とかが変わったのかな?
脳腫瘍で余命僅かというのもあって、同情心から魅力的に見えたとか?

地下の虫研究室から危険な毒虫達が外に出て行きそうになったので、瀬美は地下室のガス栓を解放して100円ライターを着火させたまま放置して二階にある自身の部屋へ逃げたんだけど、気になる点が二つ。
100円ライターってずっと着火して放置できるもんなのかな?
昔のライターならそういうことが出来たとか?
あとガス栓開けて火が付いたら大爆発とかしないのだろうか?
二階にいたから彼女は助かったんだろうけど、ちょっと気になった(^^;)

個人的には動物が酷い目に遭うことが苦手なおじさん。
本書の中でも猫とか犬とかが酷い目に遭う描写がしっかりありましたわ。
読んでいてしんどいくなる時がありましたわわ(´;ω;`)


<< 読み終えてどうだった? >>

ひやぁ~、予想に反してめっちゃ面白かったわ~(≧▽≦)
とにかくグロイ!!全編とおしてまんべんなくグロイ描写が溢れてた。
一番嫌だなぁ~って思ったのは、無数のハチの巣を体に作られる幼稚園児の場面。
もう生理的嫌悪感はんぱないっす(/ω\)

ただグロイだけじゃなくて、読者を引き込む展開もしっかり組み込まれているね。
宙馬の正体とかゴク・マゴクの意味とか、壺の中から解き放たれたモノの正体とか順々に解明されていくのがよく出来ていて飽きずにどんどん読み進んじゃう。
そんでもって最後は予想外なモンスターパニックムービーさながらの大迫力展開が素晴らしい!!

さらにさらに、ここまで大きく広げたお話をちゃんとオチとエピローグまで描いて綺麗に終わらせたことに感動したよ。
神様だから出来るエンディングだね。
虫達よ、永遠の別れだ。

読了感は意外にもハッピーエンドだったから気分は良い?
いやちょっと待てよ、瀬美にとっては全てを失ったバッドエンドってことじゃ・・・。
しかも悪魔も神も人間のことなんて大して気にもしていないってことだし・・・・・考え込むとなんだか得体の知れない不安が浮かんでくる読了感かな。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

190Pより。
―――可奈子がステージに前に着いたときはすでに立錐の余地も無いほどの人だったが、―――
(りっすい)
錐をを立てるほどの余裕もないくらい、人とか物が密集していることらしい。

221Pより。
―――老人は、両眼から涙を澎湃と流して叫んだ。―――
(ほうはい)
水が勢いよくぶつかって波打ったり飛沫があがる様、物事が勢いよく盛り上がったりすることかな。

290Pより。
―――チェルノブイリっていうのは、『苦よもぎ』っていう意味なんだ」―――
チョルノブイリはニガヨモギとともに、原発事故で有名なチェルノブイリウクライナ語ではチョルノブイリ)周辺で自生し、その地の地名になっている。
ウクライナ(もしくはロシア語)でニガヨモギチェルノブイリ」などと言われることがあるらしいけど、確かな情報ではないみたい。
うーん・・・・・まあフィクション小説だから、面白く解釈しても問題ないかと。

403Pより。
―――驟雨のように降ってくるおびただしい邪念に全身を突き刺されながら、司祭は自分の無力を感じていた。―――
(しゅうう)
急に降り出してすぐ止む雨とかにわか雨とかって意味らしい。

458Pより。
―――害虫、毒虫、悪虫と古代から疎んじられ、蛇蝎のごとき扱いを受けて来た虫たちに、じぶんたちの悲惨な運命を重ね合わせたとしても不思議はないだろう。―――
(だかつ)
へびとかさそりを表す言葉で、人がものすごく忌み嫌うものの例えとのこと。

486Pより。
―――メンチョローはカメラに向かって、いや、瀬美に向かってか、右手の親指と人差し指を立てた。Vサインのつもりだろうか。蟷螂の斧という言葉がこれほど似合う光景もなかった。―――
(とうろうのおの)
弱者が強者に挑むこと。勝てる見込みのない抵抗のたとえとのこと。


<< 登場したモノを描いてみたコーナー >>

今回は遮光器土偶を描いてみた。
こんなにしっかり眺めたのは学校の教科書以来だよ。
うーむ、見ようによっては昆虫・・・ハエに見えなくもない?

15Pより。
―――でかい、球形の頭部に、三本の突起。巨大な、サングラスをかけたような目。口に当たる部分には、丸い穴が鵜が穿たれているだけ。短い手足や胴体には、細かい縄目模様が施されている。いわゆる遮光器土偶というやつだ。―――

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ちなみに・・・。
↓コチラは描こうとしたけどあまりにもゾクゾクして断念した生物。
255Pより。
―――(昆虫の直接の祖先と言い切れる生物の化石は見つかっていないんだ・・・)(南アメリカのジャングルに棲むペリパトゥスっていうカギムシがそうだという説もあるけどね・・・)―――
この虫の見た目は・・・・・・足元に居たら鳥肌が立ちそうになるビジュアル。
興味のある方は画像検索してみると楽しめるかも(; ・`д・´)