忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

鴨川ホルモー 読書感想

 

タイトル 「鴨川ホルモー」(文庫版)
著者 万城目学
文庫 299ページ
出版社 角川グループパブリッシング
発売日 2009年2月25日

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この作者の作品で既に読んだもの
・今回の「鴨川ホルモー」だけ

<< ここ最近の思うこと >>

小説まとめ購入の時に恋愛系をいくつか仕入れ用と思って「鴨川ホルモー」をポチったら、「ホルモー六景」っていう似て非なる小説が届いたんですよ~( ;∀;)
なーにー!?
やっちまったなぁ!!じゃなくてぇ・・・。
なんか押し間違えて「鴨川ホルモー」の続編を注文しちゃってたわ、チックショー(゚Д゚)ノ
仕方ないので、改めて注文し直したのよ。
ず~っと前に映画化して話題になっていたけど内容はさっぱりわからないから気になっていたんだ。
「ホルモー」という謎のワードには、ちゃんと恋愛成分が配合されているのか・・・?
ではさっそく読んでみよう(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

浪人して念願の京大生になった主人公の阿部は、怪しい勧誘に誘われて京大青龍会の歓迎会へ行くことに。(飯代節約目的)
そこで芽生えたよこしまな気持ちに流されて、あれよあれよという間に入会してしまう。
活動目的不明の京大青龍会。
それは謎の生物?を指揮して合戦をする「ホルモー」という競技を、四つの大学対抗で行う団体だった。
なんだかゆる~い感じの競技かと思っていたら、敗者や違反者には予想外の出来事が・・・。
個性豊かな学友との生活やホルモー試合を通して、阿倍の京大生活一年目はめまぐるしく過ぎていく。

ホルモー、宵山協定の解除、レナウン娘、オニ、レーズン、処女ホルモー、第十七項、黒いオニ、鴨川十七条ホルモー、本物のペナルティ・・・。

残念帰国子女の高村は、念願のアイデンティティーを獲得できるのか?
謎めいた読めない女、凡ちゃんの本心は如何に?
阿倍が一目惚れした「鼻」への想いは、果たして成就するのだろうか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

鴨川ホルモー」といったらキャラクターなしでは語れない!
特に気に入っている二人を紹介しちゃおう。

///ロサンゼルスからの帰国子女で阿部の親友?でもある高村///
一般的な日本の若者とズレている感性を持ったこの男が面白い。
中でも高村のファッションセンスを的確に表現したこの文章がお気に入り。
37Pより。
―――きょうび日本のどこに、ドジャースNOMOのTシャツを堂々と着ている十八歳がいるか。もちろん裾はズボンのなか、ベルトは相変わらず革の黒。"リズム感ゼロの黒人"と同じ種類の悲哀を、"おしゃれ感ゼロの帰国子女"というフレーズは醸し出していた。―――
リズム感ゼロの黒人て表現がちょっとツボに入った(笑)

続いて高村のおっちょこちょいな性格がわかるこちらも良かった。
166Pより。
―――高村から借りた、彼がこの国の歴史だと勘違いして買ってしまった『三国志』に読み耽った。―――
まあ、帰国子女だし日本では『三国志』のマンガがすごく人気だから勘違いしてしまうことも・・・。
いやいや、やっぱそれはないだろ~(笑)
(ちなみにおじさんはマンガの『三国志』を読んだことがない・・・kindleとかで安く手に入れたい)

中盤にて予想外の変貌を遂げる高村も面白かったよ。
157Pより。
―――「その人が大事だと思っていたものが奪われる、でも大丈夫」まさにスガ氏の言っていたとおりだった。そうだろう。大丈夫なのだろう。得々とゴキゲンな心境を吐露する、高村の横顔を見たら一目瞭然だ。―――
敗者のホルモーを受けたのに、さらにアレを奪われてしまうとは( ゚Д゚)
でも本人が気に入っているようだし、気持ちがスッキリできたのならオッケーだよね。
この設定になるほどなぁ~って思った。

///謎多き女学生『凡ちゃん』こと楠木ふみ///
阿部と同じ京都大学1年生でホルモー仲間の楠木ふみ。
大木凡人のような黒縁メガネをかけて、大木凡人のようなヘアースタイルの無口な女子大生。
彼女も個性的なキャラクターだったねぇ~。

86Pより。
―――「黙れ、阿部」突然、楠木ふみの口から鋭い声が発せられた。金縛りにあったかのように動きを停止した俺の脇をすり抜け、彼女はさっさと自転車を引き出すと、一瞥もくれぬまま、夜の百万編界隈へと漕ぎだしていった。―――
なかなか詳しく説明してくれないホルモーに関して、楠木ふみの鋭い質問が先輩方を怯ませた。
そのことを素晴らしかったと褒める阿部に対してこの返答。
お約束な展開を期待しつつも、「黙れ、阿部」ってセリフはちょっとヒドイ(笑)

あとココね!
247Pの凡ちゃんの無言の抗議が愛らしかったのよ!
詳しく書くとネタバレになっちゃうから書かないけど、おじさんの心がキュンとなる感で満たされた。
いやなんとなく分かってはいたよ、それでもイイ場面だった(*´▽`*)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///なぜホルモーという単語なのか?///
作者の思いつきで「ホルモー」という単語が選ばれただけなのか、それとも単語に古の意味が込められているのか・・・・・その辺は続編に描かれていることを期待しよう。
(力の限り叫ばないとあんなことになるってワケだから、何がしか意味がありそうだけどねぇ)

///龍大フェニックス第四百九十九代会長の立花美伽というキャラクター///
わざわざフルネームで紹介されている割に出番もセリフもほとんどない。
なのにきっちり紹介されているってことは、これも続編でいろいろ活躍するってことなのかな?
(チーム名を反対を押し切ってまで変更した女性会長・・・これは主要キャラの一人に間違いない!)

///凡ちゃんはどのへんに一目惚れしたのか?///
実は凡ちゃん、色恋沙汰に無関心って感じの女子大生だけどしっかり一目惚れした相手がいた!
気になるのはそいつのどこが気に入ったのかっていうのが知りたかった。
今思い返しても、彼は根は良さそうな奴だけど見た目に関してはいかにも平凡って印象だし。
阿部は早良涼子の鼻に惚れたってことだけど、凡ちゃんは果たしてどこが気に入ったのか気になるわ~。


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
これは青春恋愛小説であって、恋愛青春小説ではないかな~って感じだった。
阿部を中心とした個性強烈なキャラクター達との大学生活がメインで、「ホルモー」競技についてはけっこうあっさり進んで行くね(まあ合戦ごっこでワイワイ楽しむってのがモットーみたいだし)
だからスポ根モノみたいに試合とかで熱くさせてくれる展開ってのはあんまりなかったかなぁ。
(でもある人物の才能でどん底から一気に上り詰めていくのは良かったわ)

///話のオチはどうだった?///
いろいろあったけど爽やかなハッピーエンドを迎えてくれたから良かった(´▽`)
第十七条を発議してきた人物とホルモーの名前が偶然にもって部分が、ちょっとゾクッとさせてくれるのも良いスパイス!
ただホルモーが原因で京都の都に危機が迫る!みたいな大騒ぎ展開にならなかったのがちょっと残念。
(背表紙の紹介文を読んだ感じだと、予想外のいろいろハチャメチャなことが起こりそうって気がしてたんだけど、期待し過ぎてしまったかな)

///まとめとして///
なんだかんだで羨ましいじゃねえか阿部コノヤロー(゚Д゚)ノ
それに高村までも・・・・・大学生活エンジョイしやがって!
ままま、それはおいといて(笑)
ずっと昔から気になっていた作品だったから読む機会ができて良かったわ。
あと読み終わってから実写の映画版も見てみたいって思った小説は初めてかも。
だがしかし、恋愛小説の枠で購入した訳でぇ、その方面で評価するならば・・・・・ちょ~っとトキメキ成分が足りなかったかな~って感じだよ。
でもでもそれを差し引いても珍妙愉快な京大ホルモーを楽しめたから、満読感80点ってことで!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

鴨川ホルモー」は第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作!

36Pより。
―――ベッドの手前のこたつ机には、実家から送られてきたばかりのヨックモックの缶が置かれていた。いち早くその存在に気づいた高村は、「おおっ、シガレットだ。僕、これ大好きなんだよね」と甲高い声を上げた。―――
「ヨックモック」
コンビニとかスーパーでよく売っているお菓子かと思ったら、ちゃんとしたブランド御菓子だったのか。
バターの香りとか濃厚なんだろうなぁ~と思って今度買ってみようかと思ったけど、けっこういいお値段するのね。
1969年から続く銘菓、食べてみたい(´▽`)

50Pより。
―――ダメだ。鼻はダメだ!善とコモンセンスに支えられた、"白い俺"が必死で叫んでいた。―――
「コモンセンス」
常識とか良識って意味みたいだね。
あとはT ・ペイン著、1776年一月発行の「アメリカ独立革命の書」として知られる小冊子もあるとか。

160Pより。
―――夜になってようやくベッドから抜け出し、近所のスーパーで大量の食糧を買いこんでから、部屋に戻った。その翌日より、"物忌み"と称し、俺が無期限の引きこもりに突入したことは言うまでもない。―――
「ものいみ」
祭りのため、もしくは災いから免れるため、一定期間食事や行動を慎んで不浄を避けて、家内にこもることをいうらしい。
現在でも各地の社寺などで行われているところがあるとか。

170Pより。
―――俺に必要なのはまさに知行合一の精神、いや「俺に必要なのはまさに知行合一の精神」などとほざく前にさっさと一歩足を踏み出す、さっさと踏み出せ、それでもって悶死してしまえ、さあさあさあさあ―――
「ちぎょうごういつ」
中国の明のときに、王陽明がおこした学問である陽明学の命題のひとつ。
知識と行為は一体であり、本当の知は実践を伴わなければならないということらしい。

227Pより。
―――鳥居をくぐり、さらさらと流れる瀬見の小川を渡ると、河合神社が見えた。『方丈記』で有名な鴨長明は、この神社の神官の家に生まれた。―――
「ほうじょうき」
鴨長明による鎌倉時代の随筆。
日本中世文学の代表的な随筆とされ『徒然草』『枕草子』とならぶ「古典日本三大随筆」に数えられてるとか。

254Pより。
―――「違うよ。これは五行相克の相関図に由来するんだ」隣から高村が、すぐさま賢しらに知識をひけらかしてきた。―――
ごぎょうそうこく」
古代中国に端を発する自然哲学の思想で、万物は火・水・木・金・土の5種類の元素からなる説らしい。
5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えが根底に存在するとか。

256Pより。
―――だが―――俺の心に芽生えた寛恕の気持ちと、これからの勝負はまったくの別物だった。俺は楠木ふみのため、今日の勝利を誓った。―――
「かんじょ」
度量が広く思いやりの深いこと、あやまちなどをとがめずに広い心で許すことって意味らしい。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
オニを自在に操って戯れる楠木ふみが愛らしい場面だね。
(なんと、今気づいたら橋と行列を描いてなかった!まぁそんな細かいのどうせ描けないけどね~)

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291Pより。
―――襤褸をはためかせ、"絞り"をふるふるさせながら、オニは気持ちよさそうに放物線を描き川面に消えていく。楠木ふみの手の動きに合わせ、再び一斉に舞い上がったオニたちの向こうに、御園橋を上賀茂神社に進む巡行の列が見えた。―――

 

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  • 発売日: 2009/10/07
  • メディア: DVD
 

 

野性の証明 読書感想

タイトル 「野性の証明」(文庫版)
著者 森村誠一
文庫 510ページ
出版社 角川書店
発売日 2015年2月25日

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この作者の作品で既に読んだもの
・「人間の証明

<< ここ最近の思うこと >>

草原を重厚な車体を震わせて進む戦車。
それに随伴する表情の見えない武装した自衛隊員達。
そして少女を背負ったまま、彼らに向かって行く高倉健・・・。
YouTubeで映画の予告を観て、何だこの好奇心くすぐりまくりな映像は!?ってことで購入した。
昔の角川映画は勢いがあってエネルギッシュだから派手だなぁ~。
森村誠一の作品でこーゆーエンタメなのは想像できないけど、とにかく読まないと気が済まない。
それじゃあ森村ワールドに飛び込んでみよう(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

保険の外交員に転職した味沢は羽代市にて心機一転の人生を送るべく仕事に励んでいた。
味沢は養子受け入れした頼子という少女と一緒に暮らしている。
彼女は岩手県の山村で起きた大量殺人事件の唯一の生き残りだった。
(頼子は数日間、犯人と行動を共にしていたらしいが、その時の記憶を思い出すことが出来ない状態)

同じく山村の大量殺人事件で、姉を殺された越智朋子との仲も良くなってきた味沢だったが、自分の担当する女性が保険金目当てで事故死にされたのでは?と疑問を持ち、単独で調査することに。
しかし死亡した女性の夫は羽代市最大のヤクザ中戸一家の者で、彼等を私兵として黙認しているのが羽代市を牛耳っている大場一族だった。

保険金事故の真相や、不正な土地取引を明るみに出されたくない中戸一家と大場一族は、ジリジリと味沢を追い詰めていく。
さらに山村大量殺人事件を捜査している岩手県警の刑事も味沢の隠された過去に目を付ける。

剥がされた爪、泥、プラスチックコンクリート、茄子、異能、Z種隊員、キュウリ揉み、マリオットの盲点、軟腐病・・・・・小さな手がかりと入り組んだ人間関係を辿った先にある真実とは?
果たして味沢は羽代市を支配する大場一族に一矢報いることができるのか?
山村大量殺人事件の犯人は誰なのか?
野性の証明」とは、一体どういうことなのか!?


<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///チラリと見せてくれた特殊工作員の実力///
338Pのところから。
自衛隊員でさらに特殊な訓練を受けていた味沢が、その実力をチラ見せしたところが印象に残る。
脅しをかけてきた暴走族三人組に対して、バイクを発進させる瞬間にあるモノを使用して一台のバイクを急停止させた味沢。もちろん搭乗者は放り出されて激しく地面を転がった。
なるほど、アレを使えば簡単にバイクを急停止させることが出来るのかぁ・・・。
って、素人が真似したって出来るわけないんだろうけどさ(;^ω^)
長いこと焦らされてようやく見せてくれたカッコイイ場面がすごく印象に残ったよ。

///今回の森村節も切れ味は鋭い///
暴走族に入ってイキがっているボンボン学生を皮肉る文章が素晴らしい。
350Pより。
―――それは高度化する機械文明の中で、精神だけ未発達のまま取り残されてしまった哀れな若者の姿である。彼はせめて高性能のマシンにまたがって、精神の遅れを取り戻そうとしていたのかもしれない。―――
前に読んだ「人間の証明」にて描かれていた豪華な食事に対する皮肉もそうだけど、この作者の世相を切る的な言葉が気に入っているおじさんなのです(´▽`)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///頼子の特殊能力は一体なんだったのか?///
物語の中盤辺りから農村大量殺人事件唯一の生存者である頼子にある能力が芽生えてくる。
それが超能力なのか直感像という症例なのかは判らない。
でもどう考えても未来予知としか思えない出来事が多すぎる!
そしてそのスゴイ能力が物語の鍵となるって訳でもなく流されていく・・・。
(個人的な感想なんだけど、頼子のこの設定は必要だったのかなぁ)

///アレの感染経路は?///
これはネタバレになるから知りたい人だけ反転してみてね↓
軟腐病の病原菌であるエルウィニア菌がどうやって人間に感染するのか?
この経緯を是非とも知りたかったわ。
結局のところ、暴力行為をする原因のようなものが人間の性なのか、自衛隊訓練の影響なのか、エルウィニア菌感染なのか、どれもわからないまま終わったのが残念だったね。
野性の証明」ってタイトルだから、きっちり証明してほしかったかなぁ。
気になる人は今すぐ「野性の証明」を読むべし↑


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
野性の証明」・・・う~む・・・映画と小説はまったくの別物と考えたほうがよろしい!
映画がアクションエンタメな作品で、小説は推理サスペンスな作品かと。
僅かな手がかりを頼りにコツコツ真実へと近づいていく展開は「人間の証明」とかなり似ているんだけど、「野性の証明」はソコに暴力描写を少量プラスした感じかな。
個人的には映画版の内容を期待していたから、悪い方の予想外になってしまったね(;^ω^)
(だからってつまらないお話ではなかったし、最後の味沢野性解放シーンは凄く迫力あったし!)

///話のオチはどうだった?///
あぁ~・・・こーゆー終わり方でしたかぁ・・・(・・;)
まぁ好みの問題なんだけど、おじさんは「人間の証明」みたいな終わり方のほうが好きだなぁ。
いろいろ判らないままな部分もあるし、その後あのヒトの行方を知る者はいないってのも寂しい。
(あと大場成明を仕留めきれなかったのも個人的に残念でならない!)
あれだ!急にバッサリ幕を下ろされた感が強い(笑)
ちなみに映画の方もアレがラストシーンだったとは・・・。
(おまけ短篇の「深海の隠れ家」ってのがこれまた予想外なお話だった。このボランティアって実際にあるのかな?)

///まとめとして///
優しくて強くて誠実な味沢さんがとにかくツイてないことに巻き込まれていき、あの結末・・・。
ちょっと後味は良くないわなぁ。
期待していた内容と違っていたことも後味の悪さを増幅させている気がする。
(予告を観ずに読んでいたらもっと違う感想だったかもね)
ネットで知ったことだけど映画「人間の証明」の大ヒットを受けて、最初から映画化前提で書き下ろしてくれと頼まれて書いたのが「野性の証明」ってことらしい。
スクリーン映えする派手なモノを作ってくれって言われたのかなぁ・・・。
静かに深く響いてい来る人間ドラマが得意って感じの作風なのにねぇ(おじさん個人の感想です)
てなわけで、今回はちょっと低めの満読感75点!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

147Pより。
―――そのうずきが、味沢をしてゴールデンゲートで聞き込みをした帰途襲撃された事実と、交通事故偽装殺人の暴露が、そのまま警察と中戸一家の癒着の剔抉につながる可能性を、忘れさせてしまった。―――
「てつけつ」
えぐりだす、悪事などを暴き出すっていう意味らしい。

157Pより。
―――工事はおおむね、盛り土の転圧と、水に接する「のり面」を固める土羽打ちと仕上げた斜面の芝付けの三つに分けられている。―――
「てんあつ」
土砂やアスファルトなどに力を加えて空気を押し出し、粒子同士の接触を密にして密度を高めること、らしい。

189Pより。
―――かたわらでいぎたなく眠っていた若い女が、ようやくもぞもぞと体を動かした。―――
「いぎたなく」
いつまでも眠りこけている、もしくは寝相が醜い様子ってことみたい。

225Pより。
―――いまの子供は進んでいましてね、おとな顔負けの劇を考え出します。とにかく小学生がロッキード汚職を諷刺した寸劇なんかをやるんですから。―――
ロッキード事件アメリカの航空機製造大手のロッキード社による、主に同社の旅客機の受注をめぐって、1976年2月に明るみに出た世界的な大規模汚職事件のこと。
事件当時現職だった田中角栄首相も逮捕された戦後最大の汚職事件って、名前は知っていたけど詳しい内容は知らんかったわ・・・・・興味もなかったし(;^ω^)

260Pより。
―――だが、このハプニングに羽代署以上に仰天した者があった。大場一成である。彼は早速一族の主だった者を集めて鳩首会議した。―――
「きゅうしゅ」
人々が集まり、額を寄せ合って熱心に相談すること。まるで鳩の群れみたいにってことかと。

299Pより。
―――侵犯とその後の強迫によって自家薬籠中のものとした獲物である。電話一本で易々と呼び出せるだろう。―――
「じかやくろうちゅう」
自分の所有する薬籠の中にある物っていう表現。
いつでも好きなように使うことができる、完全に手中にある、てな意味で使われるらしい。

313Pより。
―――民主主義は、絶えざる疑心と監視によって成立維持される制度である―――と言った学者の言葉が村長の心に植えつけられている。―――
↑ダメだぁ・・・・・誰が言っていたのかさっぱりわかりませんですわ(>_<)

404Pより。
―――最近は、羽代地裁にも青法協の影響があって、逮捕状の発付が厳格になっている。―――
青年法律家協会
1954年に憲法を擁護し平和と民主主義および基本的人権を守ることを目的として、若手の法律研究者や弁護士、裁判官などによって設立された団体・・・とのこと。

487Pより。
―――世間は、彼を犯人として疑わないだろう。"第二のソンミ事件"としてマスコミが大々的に取り上げることは、火を見るより明らかである。―――
ソンミ村虐殺事件
ベトナム戦争中の1968年3月16日、アメリカ軍兵士がクアンガイ省ソンティン県ソンミ村で非武装ベトナム人住民を虐殺した事件。無抵抗の村民504人が無差別射撃などで虐殺された。
↑やっぱり戦争は地獄だよ・・・。


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
482Pのところから。

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雪の降りだした夜に暴走族マッドドッグの集団相手に素手で孤立奮闘するもやられそうになる味沢。
しかし不意に手渡された斧を使って一気に攻勢逆転する。
自衛隊特殊工作員の味沢が武器を手にした時、いくら多勢とはいえ素人が敵う訳がない。
怒りと疲労と痛みで思考が麻痺した味沢は、本能だけで次々とマッドドッグを切りつけて屠っていく。
すでに戦意喪失して逃げ出そうとする者でさえ、後ろから切りつけて背骨を割る容赦ない斬撃。

野性の証明 (角川文庫)

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メルキオールの惨劇 読書感想

タイトル 「メルキオールの惨劇」(文庫版)
著者 平山 夢明
文庫 293ページ
出版社 角川春樹事務所
発売日 2000年11月1日

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この作者の作品で既に読んだもの
・「独白するユニバーサル横メルカトル」


<< ここ最近の思うこと >>

来たのよ、私が来たのよ、ここパリに・・・・・じゃなくて遂にきたのよ!
平山夢明の長編作品を読む時が!
前回「独白するユニバーサル横メルカトル」を読んでバチバチと感性を刺激されたおじさんはこの作者の作品を読み漁ることを決意して、第二段に選んだのが今回のコレ。
ちなみに「ダイナー」も一緒に購入したけど、これはもうちょい後で読むのだ。
一番気になる美味しそうな一品は、最後にとっておくタイプなのだ。
さぁ~て平山プレゼンツの狂喜な世界へ、ダイブするぜ~~~(=゚ω゚)ノ


<< かるーい話のながれ >>

前途ある者の死を好み、その遺品や情報をコレクションするのが生きる喜びの寝たきり病人オギー。
彼に雇われている男の12(トウエルブ)は、そういったモノを高額で買取りオギーに献上するのが仕事。
今回は自分の子供を殺して死体の首を切断した後妻がターゲット。
子供を殺した時と、首を切断した時の心情を録音して、未だ見つかっていない頭部を手に入れるのだ。

美人で気が強く優しい母親の美和、長男は剛力で巨体で白痴の朔太郎、次男は白髪で底の知れない礫。
「薄情」が名産の寂れた町でひっそりと暮らす一家に12が混ざった時、惨劇の幕が上がる。

天才の血筋と避けられない運命。
禁忌を侵し、さらにおぞましい悪夢のような計画。
異常な量のピーナツバターを摂取し続ける謎の男12。
ヤバい・・・ワクワクが止まらないぜよ(`・ω・´)

<< 印象に残った部分・良かったセリフ・シーンなど >>

///あのキャラクターに対する考え方が強烈///
12が事故に遭い、気がつくと見知らぬ部屋で寝かされていて、壁に貼ってあるポスターを見た場面。
32Pより。
―――正面には白手袋のネズミのポスター。悲劇の象徴。世界中どこへ行っても餓鬼と肉体労働者の財布を狡っ辛く狙うドブ鼠。こいつにかかっては女子供も容赦なし、普段なら親に玩具一つねだらないような賢い子供すら、この鼠にはイチコロだった。―――
あのキャラクターの悪口をこれほど強烈に語られたのは初めてだよ。(↑はまだ悪口の一部ね)
もう辛辣過ぎて読んでいてにやけてしまったわ(笑)
まあ、あくまでも12個人の考え方だから、ね(;^ω^)

///ピーナツバターの為なら、どんな手でも使ってやる///
特殊な体質の12は日常生活を送る為にチャンクのピーナツバターが必要不可欠。
でもこの町にはソレが無い!ってことで、料理の天才である朔太郎に作らせようとするんだけど、美和との約束で勝手なものは絶対に作らないとのこと。
限界でもあった12はあることを教える代価として、作らせようとする。
それを朔太郎に教えたら美和が永遠に12を許さなくなるとしても・・・。
どんなコトかというと・・・今までは美和に教えられた筋トレをして、性欲を発散させていた朔太郎。
(180kgの重さでガンガン上げまくるくらいの性欲量)
・・・・・・・・・・そうです、12はアレのやり方を取引条件にしたのだった。
結果は、読んでのお楽しみで(;^ω^)

///今回の平山夢明グロ場面はいかほどか///
201Pの場面にて。
夜、洞窟状の洞の中で、岩の上に寝かされている少女キキ。
彼女は全裸の状態で腹部がぱっくりと切り開かれており、主な血管や神経がクリップで止められている。
目を覚まして自身の状態を確認しても、特に動じないキキはすでに覚醒剤でトリップしていた。
(自分の内臓を見て最初の言葉が「あ、カワイイ」って言えるくらいキマッている)
それからゆっくり死に向かうキキとおしゃべりをしたり、内臓を弄ったり・・・。
最後の死に様も強烈だったわ。
空っぽの腹と脊髄だけで立ち上がろうとしてバキっと・・・・・。
むか~しにそんな悪夢を見た気がするから、余計に恐ろしいイメージが浮かんだのよ(/ω\)


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

///動物が酷い目に遭う描写はやっぱり苦手///
今回は犬や猫が虐待されたり殺されたりする描写がままあったなぁ。
犬は朔太郎によって振り回されたり引き裂かれたり・・・。
子猫はオギーによって放り込まれたり・・・。
おじさんみたいに動物虐待描写が生理的に無理って人は、読むのが辛くなるかも(>_<)

///死体のどこかに現れる言葉の意味は?///
殺した相手のどこか(隅々まで解体しないと現れない)に描かれている文字や数字、それらは12が確認すると綺麗に消えてしまう。
12はこの現象の理由を知りたいと思っている。
おじさんも知りたいと思っているが、叶わなかった。
キキの死に際で発せられた謎の言葉も、結局は12の幻聴だったみたいだし。
・・・・・・・・・・・つまりそこら辺のことは幻覚&幻聴ってことなのかな?

///おじさんも美和のキスが欲しい!///
美和は12のことを決して快く思っていないはずなんだけど、どうしてこんなことをしたのか気になる。
225Pより。
―――「男の人の涙は二度目」美和は俺の前にしゃがんだ。胸元から柔らかく健康そうな乳房が見えた。
「主人と・・・・・」不意に俺の唇が美和のそれと重なった。―――
泣いている人間に同情してしまう優しい性格だから?
美和自身もちょっと心が落ち込んでいたから?
それとも車ではねたことにたいしての後ろめたさと、あわよくば12を篭絡できる可能性に賭けたとか・・・ってそれは無いだろうなぁ。
なんにせよ、羨ましいぜ12さんよ。(おじさんのイメージはやっぱり浅尾美和だなぁ)


<< 読み終えてどうだった? >>

///全体の印象とか///
なかなか癖のある12の語りでストーリーは進んで行くんだけど、ニヒルというか斜に構えるというか、好き嫌いのはっきり分かれる文章って感じ。(もちろんおじさんは大好きですが)
ところどころで笑えるセリフのセンスもお気に入りだよ。特に良かった箇所を上げるなら・・・。
17Pより。
―――都合の良い理由をつけて女の側に近づくには方法がひとつしかなかった。一度、シカゴで試して成功したやつだ。死にかけるか死ぬかするが、まだ死んだことはない。―――
そりゃ生きてるんだからまだ死んだことはないのが当たり前だからね(笑)
241Pより。
―――「詳しくは知らん。ただ頸動脈に二本注射を打ち込むことで達成する。このまんまじゃ、あんたより百倍も奴のほうが分が良いぜ」
「そうだな。彼は躊躇しない」
「ズリセンもな」―――
真面目な話をしているのにこの返し!思わず吹き出しそうになるわ(笑)
そんでもってお宝ハントに来たはずが、いつの間にかメルキオールとバルタザールの戦いに巻き込まれちゃって物語がどんどん予測不可能な展開になっていくのがたまらなく面白い。
ハルキ・ホラー文庫だけど、恐怖よりも肉体的精神的グロテスクな描写がメインって感じのエンタメ小説だったかと。

///話のオチはどうだった?///
最後のアレ・・・あの老婆がもしかしてあの人?
掘立小屋内の数字はなんなの?
最後の最後まで気になる疑問ばかりだよ!!
そして12の質問の答えはどちらが言ったのか・・・?
(悩んで頭を殴っていたってことは、出てこようとするのを食い止めてたのかも)
とにかく約束を律儀に守りに来た12が意外にも粋のある人間だったのが好印象で、あの憎たらしい警察官をバールしたのもスッキリだね。
(でも12が来なければ美和一家はトラブルも無く平和に暮らせていたんじゃないかと・・・・・彼に関しても、結局ほっといてもすぐにアレな状態になり果てたと思われるし)

///まとめとして///
いや~やっぱイイわ!もう完全にファンになっちゃったよ平山センセイ(*‘∀‘)
恐ろしくてグロテスクで好奇心をくすぐってくる世界観と強烈なキャラクター達がサイコーですわ!
今回もトンデモナイ世界を覗き見させて頂きました。
哀愁っていうのかな?全部過ぎ去ってしまった感のある終わり方が染みるんだよね。
猿の手」は3人全員の願いを叶えたけど、望んだとおりに叶えてくれる訳ではない。
(あぁ・・・どこからか・・・歓喜の叫びが聞こえてくる・・・)
「独白するユニバーサル横メルカトル」に引き続き、今回もおじさん大満足だわさ(≧▽≦)
満読感はもちろん高めの95点!
さぁ~て、次はどれを読もうかな・・・。


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

18Pより。
―――俺はお祈りの代わりにシカゴで殺した女の最後の言葉を呟いてみた。「アズラエルの翼がきこえる」意味は判らないが験はは良さそうだ。―――
「神が助ける者」という意味の名前で、肉体から離れた魂を天国へと導き、愛する人を失った人々に癒しを与える大天使。
ユダヤ教及びイスラム教では「死を司る天使」とも言われているようで。
死の天使の翼が聞こえたら験は良くない気がする・・・。

29Pより。
―――続いて奴が氏名を尋ねて来たので俺はたっぷり時間を取って思い出せないふりをした。映画『ディア・ハンター』でC・ウォーレンが演ったのを真似たのだ。―――
1978年公開のアメリカ映画。
ベトナム戦争に赴いて心に傷を負った3人の若者の生と死を描いたストーリー。
いろいろと受賞している名作みたいだね、いつか観てみたいわ。

115Pより。
―――「ほう、グラン・コンプリカシオンか。君は自分の世界を持っているな」朔太郎は目を輝かせた。「当てた奴は初めてだ。ピゲが感涙にむせぶだろう」俺の言葉を朔太郎は手を上げて制した。―――
オーデマ・ピゲは、スイスの時計・宝飾品メーカー。
カニックなデザインの腕時計でめちゃめちゃお高い(;´Д`)

197Pより。
―――俺の気配に気づいた医師は顔色をまったく変えず、手にした本を掲げた。「タニザキだ」細く長い指の間から『陰翳礼賛』というタイトルがのぞいていた。それがオギーだった。―――
谷崎潤一郎 の小説、なのかな?
写真と文章が載っていて日本的な美しさが描かれているみたい。
日本文化に興味がある人は読んで損はないって感じかと。

281Pより。
―――そのとき、上の林道から激しい笛の音が響き、木霊した。と同時にパラフィンを擦り合わせたような掠れた若い警官の声が聞こえてきた。「すぐ家に戻ってください。お宅が・・・・・」―――
原油をセ氏三百度以上で蒸留し、得た重油をひやして析出する白いろう状の固体。
ろうそくの原料やつや出し・防水・クレヨン用に使われるみたいで。
パラフィンか・・・昔触った時はカラカラ、シャラシャラと高い音をたてていた気がするね。

288Pより。
―――思えば、かの夭逝した文豪も同等の事を述べているではないか。〔殺人こそが我が成長であり、忘れられていた生に近づく手だて〕と。―――
「ようせい」
若い内に死んでしまうこと、らしい。
おそらく三島由紀夫のことを言っているみたいだけど、〔殺人こそが我が成長であり、忘れられていた生に近づく手だて〕って言葉は何かの作品で使われていたのかな?


<< 作中場面を勝手に想像したお絵描きコーナー >>

今回はコチラの場面を描いてみた(=゚ω゚)ノ
254Pより。
―――「トゥーブ、きらい」朔太郎がのしかかっていいた。耳の下で筋肉や神経、血管などの組織がみりみりと音を立てて潰されていくのが判った。朔太郎は怒り狂っていた・・・・・無理もない。―――

f:id:mitemite753kakuyo:20210111170943j:plain

―――しかし、顔に何かが当たった。目を開けると朔太郎の泪だった。奴は泣いていた。
その背後から礫が忍び寄るのが判った。―――
雷を受けて全身火傷っていうのがどんな感じなのかわからない。
画像検索で調べれば出るかもしれないけど、生々しい画像を見るのが怖いからむり~(>_<)

 

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