忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「去年はいい年になるだろう」読書感想

タイトル 「去年はいい年になるだろう」
著者 山本弘
文庫 295ページ(上下巻)
発売日 2012年9月18日(上下巻)
出版社 PHP研究所


<< かるーい話の流れ >>

24世紀の未来から現代の地球に突如現れた者達。
彼らは人類の平和と進歩を願う、圧倒的な科学力を持つ美男美女アンドロイド集団。
最初に未来のの超科学力で世界中の兵器を解体してしまい、そしてこれから起こりうる大災害や大規模テロ、悲惨な事件などを全て未然に防いだり、知らせて避難させたり、貧しい人々を助けたりする。
未来からやってきた彼らは10年間この時代に滞在した後、もっと昔に戻って同じことをする。そうして人類をより良く幸せにするのが目的だと言う。

主人公の作者は何やら訳知りな(未来から来たから当然か)美少女アンドロイド「カイラ211」と個人的な知り合いになって、彼らのことを色々調べるようになるのだが・・・。(世界中に『知り合い』として選ばれた人間は数多くいる)
アンドロイド達が来たことにより人類は確かにどんどん幸せになっていくが、本来起こりうるはずだったことを未然に防ぐ行為は少しづつ歴史に無かった出来事を作り出すようになる。

防がれたことによって未来は新たな未来を作り出して、起こらなかった事件や事故が発生したり未来を知った人々の中にはショックを受ける者もあらわれたりして・・・。
上巻はほとんど主人公とカイラの交流と世界情勢の変化、下巻もその続きだけど終盤あたりに予想外の出来事と宇宙大戦争的なことが起こってしまい。

上下巻に分かれていてページ数も多いから退屈せずに読めるかな~って不安だったけど、なんてことはなくスラスラ読み進めて楽しめた。


<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

未来から人類お助け万能ロボットが来たからと言って、世界が簡単に平和になるかと思ったらそんなことはないのである。カイラ達の言うことは全て合理的で平和的で問題解決直結なんだけど、人間の考え方はどーしようもならないくらいダメダメでまとまらないし偽情報に流されまくり。
人間達は明らかに間違っていることでも止めることが出来ずに実行してしまう。
カイラ達にはそれが理解出来ず、人間も自分達が理解できない。
悲しきかな人類達よ、でもその展開が読んでいて面白く共感してしまった。

あと設定としては完全なSF作品なんだけど、視点としては大阪弁の主人公視点で語られるのでまだ分かりやすいと言うか、親しみやすいと言うか、ほのぼの日常系を読んでいるみたい。

激変していく世界の状況と、自分と奥さんと娘の未来を心配する主人公。この二つの話に規模のギャップがありすぎて、最後まで飽きずに読んじゃう構成がイイね。


<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

タイムスリップ物はどうしても、過去の時間軸・現在の時間軸・未来の時間軸・そして変化によって枝分かれした時間軸と、とてもややこしくなっていて理解するのを放棄してしまうおじさんがいる(>_<)
本作ではその辺の説明はちょっとだけしかなかったからあまり理解できなくても問題なかったんだけど、しっかり理解できるともっと作品を楽しめるんだろうな~。

あと人間達があまりにもお馬鹿というか、明らかに稚拙なデマだとわかることに流され過ぎというか、意外と人間ってもっとあっさり劇的な変化でも受け入れちゃうような気がするけど・・・でも流されやすいのが日本人だから、はっきり断言する声の大きい意見を信じちゃうかもね。


<< 読み終えてどうだった? >>

上下巻を読み終えて、結末としては結構悲惨な終わり方だったなぁ。
人間は人間でどうしようもないままだし、アンドロイドはアンドロイドであっさり割り切っているし。
世界も時間軸も枝分かれ時間軸も、どんどんぐちゃぐちゃになるけどアンドロイド達は己の信じる本能に従って世界を逆行し続けて、人間は大変なことがあった次の日でも会社へ出勤して変わりなく生活していく。
『神は天にいまし、全て世は事もなし』ってことかな(´-ω-`)

思い返してみると、アンドロイド達はほんとに引っ掻き回しただけだったな(笑)
でも結局のところ未来を教えられたことによって、また未来が変化するのであれば本人次第で良くすることも悪くすることもどーとでもなるって訳だし、つまりは先のことを知っても知らなくてもあんまり変わんない感じがするよね?

未来で起こった不運な事故とか事件は防げる訳だから有り難いけど、起こりえなかったことで結局死んでしまう可能性も出てくる。
(頭に浮かぶのは映画の「ファイナル・デスティネーション」だけど、運命とかも変えられるのかなぁ)


<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

本書は第42回星雲賞日本長編部門受賞作品とのこと。

この作品は主人公が作者自身だし、実在する団体や人物、作品が沢山語られている。
ほとんど知らない物や人が多かったけど、その中で一つめちゃめちゃ気になったのがあった。
この作者が書いた「アイの物語」というSF小説
めっちゃ読みたくなったので今度購入しよう!

作者の「山本弘」って人はなんだか凄い人物だね。
奇跡体験アンビリバボーにも出演したり、ゲームを作ったり、トンデモ本を楽しむ集団「と学会」の初代会長としても有名らしい。
そんでもって沢山書いてる小説も面白そうなモノが多いし、本書以外でもいろいろ賞を受賞しちゃっていたり。
まさしくハイパーメディアクリエイターって感じ(←使い方あっているのかな(^^;))


<< 挿絵で見たい場面や物など >>

現在の主人公がカイラから未来のメッセージを貰って、それを読んでから奥さんになる予定の女性(高校1年)に初めて会ってデートをするシーン。
このエピローグがあるおかげで読了感が悪くない感じに仕上がっている。

履き古したジーンズと普段着のような格好の冴えない主人公。
白いワンピース姿でメガネが可愛い15歳の元気そうな未来の奥さん予定少女。
受け取ったメッセージには、異性に対しては理解できないということを理解するべし!というアドバイス

おじさんも参考にさせていただきます!
(ちなみに上記のアドバイスは、『アイの物語』を読んだ時にズビシっと心にさらなる衝撃を与えてきた言葉だ)