忘れないでね 読んだこと。

せっかく読んでも忘れちゃ勿体ないってコトで、ね。

「爛れた闇」読書感想

タイトル 「爛れた闇」
著者 飴村行
文庫 314ページ
出版社 角川書店
発売日 2013年3月23日

f:id:mitemite753kakuyo:20181006123340j:plain

 

<< かるーい話の流れ >>

おそらく現代の日本が舞台。
そこでおとなしい系の高校生である正也は自身の41歳になる母親が、同じ高校の一学年先輩である山崎と付き合っている状況に日々絶望している。
この山崎がとにかくデカくて強くて乱暴で性格も極悪で、彼の五つ上の兄は暴力団組員で完全に悪人そのもの。
母親は山崎にベタ惚れで山崎も(体だけの関係を)気に入っているようで、平日の昼過ぎから正也の自宅アパートに来てはセック〇しまくっていると言う最悪な毎日。
しかしある日、母親は山崎の子を妊娠したと正也に告げた。
間違いなく妊娠した母親は山崎に捨てられると分かっていながらも、何も出来ない正也。
そして母親はいつものようにやってきた山崎に嬉々として妊娠報告をするのだが・・・。

ところかわって、アジアのどっかにある軍事施設の地下室。
記憶を亡くした全裸の男は、鎖につながれた磔状態で拘束されている。
そしてやってきた憲兵は彼を容赦なく拷問しながら、どうしてこうなったのかを小出し小出しに教えていく。
男は拷問を受けるたびに、忘れていた記憶の断片がちょっとづつ思い出されていくのだが・・・。

二つの物語が交互に進んで行って、徐々にその距離は縮まっていく。
果たしてこの物語はどんなふうに絡まっていくのだろうか!?
いやー、もう夢中になってランチを食べるのもそっちのけで読み耽っていたわ。



<< 特に良かった部分・良かったセリフ・シーンなど >>

この作者の得意分野なシーンだね。
全裸の磔男に対して初っ端から容赦のない拷問をしていくところが強く印象に残っている。
拷問することが目的になっているかのような酷いやり方にはちゃんと理由もあるんだけど。
それにしてもエグイ暴力だわわ(/ω\)

あと旧日本軍っぽい設定の憲兵もすご~く良い味のキャラクターで、彼の一語一句がとても雰囲気があって「爛れた闇」の世界観を盛り上げてくれるんだ。
っていうか、全裸男拷問側のストーリーがインパクト強すぎて正也側のストーリーがちょっと食われ気味なくらいだよ。

そんな正也サイドでも盛り上げてくれたのがこのキャラクターだ!
自称カミソリの水原!!
この冴えない工場勤務のおっさんがまた笑えるキャラクターなんだよ。
完全にギャグ要員だし、予想通りに使えない男なんだけどどこか憎めなくて愛嬌がある。
作品全体が欝々として禍々しいオーラを放っているから、こういうキャラが登場するとちょっと口直しみたいな、清涼飲料水のような感じで気分が少しだけスッキリするから有り難いのさぁ。
(なんにもスッキリするような結果は残せていないキャラクターだけどね)



<< 気になった・予想外だった・悪かったところ >>

ちょっとだけ気になったところとしては、正也が同級生女子のエミリー(あだ名)に対してずっと色恋な関心が無かったと思っていたんだけど、終盤の部分でなんで急にやる気全開になっていたのかが気になったかな。
まあ手紙を読んで彼女の本心を知ったから急に心変わりしたってことなんだろうけどねぇ。
(オンとオフが激しいのが十代の特徴ってことなのか?)

あとネタバレにならない様に書くけど、彼がアレな状態になってからの体質が気になった。
薬品とか毒物とか病気では死んでしまうってことなのかな?っていうかちゃんと死ぬこ
とが出来るのか?

最後にもひとつ!
なんで正也と全裸男は夢の中で何度も対話することが出来たんだろうか。
境遇やら心境がシンクロしたからってこと?



<< 読み終えてどうだった? >>

いやもう期待していた以上の内容で面白かったわ(*´▽`*)
ほとんどの登場人物がみーんなどうしようもない奴らばかりで全員悪人なアウトレイジ状態が爛れた世界観にばっちり(笑)
そんでもって酷い目に遭うのはまともな良い奴だけってのがもう救いの無い飴村ワールド。

二つの世界がコロコロ変わることによって、読み飽きないように作られているのが嬉しい。
ずっと拷問続きとか、ずっとウジウジ続きとかじゃ読んでて萎えてきちゃうよね。

そして二つの世界が繋がる終盤!
あの展開は良いね!アリだね!
毎度のことながら予想外だったし、なーるほどねそう繋がっていたのねって納得した。
この作者の小説を読んでいるとほーんと毎回ゲスい世界を覗き見ているって感じで、自分でもよくこんなの読むよなーって思うんだけど。
ゲスいお話って・・・・・オモシロイじゃん(笑)
さてさて読了感は、
「あ~あ、最後の最後で馬鹿だねぇこの子はほんとに」って感じですわ( ;´Д`)



<< 聞きなれない言葉とか、備考的なおまけ的なモノなど >>

おじさんは「粘膜人間」を初めて読んでそこから一気にハマったんだ。
粘膜シリーズを全部読んだけど、個人的には「粘膜蜥蜴」が一番面白かったかな。
もちろん他のも全部面白く読ませてもらったけど。

これを書いているときに気づいたけど、前々から気になっていた「ジムグリ」という作品が文庫化されていることを知った。
それに「粘膜シリーズ」の最新刊も発売されている。
うむむ・・・・・これは読まねば(; ・`д・´)

最後に個人的な予想だけど、いつかこの人の作品のどれかが実写映画化しそうな気がするんだよね~。
その時は新進気鋭の若手監督が、年齢制限付けてめっちゃ過激な内容で作ってほしい。



<< 挿絵で見たい場面や物など >>

壁に磔にされた全裸男が憲兵と対峙するシーン。
軍帽で黒い色眼鏡、襟詰め軍衣左腕に赤字で憲兵の腕章、右の腰にホルスター左に軍刀、黒い長靴。
面長で鼻筋が通った薄い唇を尖らせた神経質そうな男。
薄暗い地下室にはアジアの地図が壁に貼ってあり、周りには銃剣の刺さった七輪、二段の弾薬箱、木製の机、そして壁を這うヤモリ。